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『キューブサット物語』の電子版が7月24日ごろ発売の予定です

わたしが編集を担当して2005年にエクスナレッジから発売した本が、川島レイさんの『キューブサット物語』です。東大と東工大の学生たちが10センチ立方、重さ1キロの超小型人工衛星を作って宇宙へ打ち上げるという、当時はまず考えられなかった快挙を2003年になし遂げるまでの話です。

2005年当時の発売告知記事
キューブサット物語〜超小型手作り衛星、宇宙へ』3月22日発売(https://ima.hatenablog.jp/entry/20050311/cubesat

本は数年前に絶版となり、版元から著作権を引き上げた著者の川島さんから依頼されて編集と電子化を担当することになりました。

人工衛星を作るにあたっては、どんなことをさせるか=ミッションが決まったら、いきなり本番の機体を設計し組み立てるわけではありません。ブレッドボードモデル、エンジニアリングモデルを順に作ってブラッシュアップした上で、実際に打ち上げるフライトモデルを作ります。

東大と東工大のチームはお互いの様子をうかがいながら、競うようにキューブサットを開発していきました。同じ目標を目指す仲間であり、同時にライバルでもある関係がうまく作用したと感じます。2つの大学の学生たちは数々の試験とトラブルを乗り越え、2機の超小型人工衛星を作り上げました。

同時に、人工衛星を宇宙へ打ち上げるロケットも探さなければなりません。大きな人工衛星を打ち上げるロケットについでに安く載せてもらう方式なので、メインの衛星が遅れるとキューブサットの打ち上げも自動的に遅れたりします。自分でコントロールできないもどかしさがあり、ロケットの調達は衛星の製作とはまだ別の苦労があったかもしれません。

ほかにもいろいろ語りたくなりますがこれくらいにして、実際に読んでみてください。

電子版では表紙に記載した通り、本書に登場する教員や当時の学生の皆さんにメッセージを寄せていただいています。今は「はやぶさ2」のプロマネになった津田雄一さん、同じく「はやぶさ2」プロジェクトメンバーの澤田弘崇さん、イプシロンロケットの開発メンバーの宇井恭一さん、スペースXで再利用型ロケットを開発している桑田良昭さん、超小型人工衛星でビジネスを行うアクセルスペースを起業し代表を務める中村友哉さん。そのほか総勢27人の方に18年前をふり返っていただきました。

さらに東大のキューブサットXIサイ-IVフォー」が宇宙から撮影した地球の画像も多数収録しました。書籍ではカバーの見返しに8枚載せただけでしたが、カラー写真をたくさんご覧いただくことができるのは電子版のメリットですね。打ち上げから時間が経つにつれてレンズが変色していく様子がよくわかります。

キューブサット物語』電子版の目次
  • キューブサット物語』電子版のための前書き
  • はじめに
  • 第一章 始まりはいつもハワイ[1999年11月]
  • 第二章 キューブサット・プロジェクト始動[1999年12月~2000年11月]
  • 第三章 汗と涙の開発競争[2000年11月~2001年5月]
  • 第四章 キューブサット試練の日々[2001年5月~2001年12月]
  • 第五章 二転三転する打ち上げ[2002年1月~2003年5月]
  • 第六章 ロシア経由宇宙行き[2003年6月]
  • 第七章 打ち上げの日[2003年6月30日]
  • エピローグ[2004年6月30日]
  • あとがき
  • キューブサット物語』から18年後のメッセージ
    • 中須賀真一/松永三郎/ボブ・トイッグス/山元透/津田雄一/澤田弘崇/永島隆/酒匂信匡/宇井恭一/中谷幸司/有川善久/村上誠典/伊藤孝浩/宮村典秀/宮下直己/此上一也/小田靖久/岡田英人/居相政史/船瀬龍/程島竜一/桑田良昭/占部智之/金色一賢/中村友哉/新井達也/程毓梁
  • キューブサット「Ⅺ-Ⅳ」が撮影した地球
  • 関連サイト

2003年にロシアの小型ロケットで打ち上げられた2つの人工衛星は、今でも宇宙にいて運用されています。

キューブサットという10センチ立方の人工衛星はその後、超小型衛星のデファクトサイズになりました。当時は打ち上げロケットを探すのにとても苦労しましたが、今では国際宇宙ステーションからキューブサットを放出するプログラムが運用されています。高校生や個人のグループもキューブサットを製作するようになりました。

キューブサット物語』電子版は7月24日ごろ、AmazonKindleで発売予定です。ぜひご覧ください。

それから、著者の川島レイさんはこの本の前に書いた『上がれ! 空き缶衛星』をすでに電子化してKindleで発売しています。こちらは『キューブサット物語』の前日譚で、大学生たちがジュース缶の中に人工衛星の機能を詰め込み、モデルロケットで大空へ打ち上げるまでが描かれています。ご興味のある方はぜひどうぞ。

親本のレビュー

関連記事

追記

無事発売できました。よろしくお願いいたします。

東京都の緊急事態宣言を8月22日に解除するにはどうしたらいいだろうか

これまでの記事

7月11日までの蔓延防止等重点措置は終了し、12日に再度緊急事態宣言が発出された。4回目の緊急事態宣言である。今回は8月22日までと長い期間なので、それまでに新規感染確認者数を100人程度に減らしたい。しかし今は7日間平均の前週比が1.2倍と増加傾向にある。まずこれを1倍以下に下げ、減少傾向にしない限り毎日の新規感染確認者数は増え続ける。

前回の緊急事態宣言は4月25日からで、そこから昨日までのグラフは下の通り。

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東京都は7日間平均の前週比が上がって1倍を超えそうなときに緊急事態宣言を解除して、蔓延防止等重点措置に移行した。感染者が減る理由はなく、そのまま前週比は1.2~1.3倍に上昇、たまらずわずか3週間で緊急事態宣言を再発出することになってしまった。

これは今後どう推移するだろうか。上のグラフの右端を8月22日まで引き延ばして、新規感染確認者数が100人程度に減るペースと、今日の7日間平均の前週比がこのまま変化しなかったとき、8月22日に新規感染確認者数が何人程度になるかを計算した。

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これまでは新規感染確認者数が100人程度になれば、その後緊急事態宣言を出さずにすむとされていた。しかし感染力が強いデルタ株が広がっていくと、もっと減らさないと再拡大するかもしれない。一方でワクチンの接種も進んでいて、今までほどには感染拡大しにくくなっていくかもしれない。上のグラフは今後のそういった変化を考慮しない、ごく単純な計算結果である。

8月22日に新規感染確認者数を100人にするには、明日から7日間平均の前週比が0.71倍まで急減しなければならないという計算になった。あまりに非現実的でまず無理である。毎回書いているが今回も、政府が設定した期限までに新規感染確認者数が十分減ることはなさそうだ。そしてこれも毎回書いているが政府がこういうグラフを作っていないわけがない。でも8月22日を期限にしてしまうんだな。

また今の調子(1週間で1.29倍)で新規感染確認者数が増えていくと、8月22日にはなんと3,397人になるという計算になった。グラフではそこまで描くと上を突き抜けてしまうので省略した。

だってこんなになっちゃいますからね。期間が長い指数関数は恐ろしい。

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もちろん本当にこうなるとは思っていない。今までは新規感染確認者数が1,000人! みたいな高い数字が出ると人々の行動が抑制的になるのか、なんとなく波が下がってきた。しかし回数を重ねるうち、あまり下がらないまま次の波が上がり始めるようになってきている。

下のグラフは去年の3月1日から今年の7月12日までの新規感染確認者数とその7日間平均、7日間平均の前週比とさらにその前後7日間平均をまとめたもの。第3波や第4波では、下がってもあまり谷が深くならないまま再び数値が上がっていることがわかる。

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(→大きい画像を見る

現在はすでに第5波といっていい山ができ始めている。政府は働き盛りの人たち(ワクチン接種が後回しになっている人たちでもある)が仕事のために家を出なくてすむよう、「金は出すから家にいろ」をやってほしい。方法は特別定額給付金でもいいし消費税の減税でもいい。そしてオリンピックはやめてほしい。政府の感染対策が不十分で感染者が減らず、緊急事態宣言を出して飲食店やそのほか国民に苦労を強いておきながら、なぜオリンピックだけが特別扱いなのか。ウイルスは対策がゆるいところがあればそこから必ず感染を広げる。そういうことをしているから人々はうんざりして外に出てしまう。自分の命や健康よりオリンピックが大事という人はいない。希望だの感動だのの代わりに自分の命が危険にさらされるなんて願い下げだ。

先日の都議選で、自民党の候補はオリンピックの話をしないよう気をつけていたそうだ。下は片山さつき議員のツイート。「五輪開催色前面に出さない」とある。反対が多いことは理解しているようだ。それでも開催してしまう。

オリンピックは開催してしまえば自動的にドラマが生まれて国民は自動的に感動し支持率も回復すると見込んでいたのだろうが、ここまで来るとそれも厳しくなってきたと感じる。スポンサーも「オリンピックを応援しています」と言いにくくなっているそうだ。

「逆風下の五輪で、今は『とにかく目立たない』が最優先。億単位の金を払って何をやってんだ、という感じ」だそうだ。これはこれでスポンサーは自業自得、国民の命や健康より自分たちの商売の方が大事だったんですねとも思っちゃう。スポンサーは被害者のつもりかもしれないが、外から見れば共犯者だ。

さて、明日あたりに新規感染確認者数が1,000人を超えるという予測も出ている。これでみんながびっくりして、グラフが下がり始めたらいいな。

その予測というのはこちら。id:Knoaさん(はてなブログはまだ記事がないのか…じゃあはてなブックマークで)によるものである。

これが特に最初はなかなか当たっている。今までの予測と実際の数字との比較を下のグラフにまとめた。

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後半やや高めに出てはいるものの、特に最初の1週間はかなり正確な予測だった。

この予測は現在8月15日まで出ている。今後どうなると予測しているだろうか。

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新規感染確認者数は明日1,000人を超えたあと、水曜から土曜を中心に1,000人以上の日が続く。8月7日に1,798人をつけたあと下がり始める予測となっている。もちろんこれはあくまで予測で、今後も1週間ごとに更新されるようだし必ずこうなるとは言えない。でもなんとなくの目安にしていれば、新規感染確認者数が急増したときの心構えになるのではないだろうか。

関連リンク

デルタ株について読んだ記事。

デルタ株は子供が発病しやすいので学校閉鎖を考えておくべきという話など。西浦博教授インタビュー。

ワクチンについて。これも西浦博教授インタビュー。

さらに西浦博教授のツイート。ワクチンの接種率が上がった国(イギリスなど)で感染が再拡大するなど、ワクチン後にも対策が必要という話。


関連記事

1回目を打ちました。

追記

続きを書きました。

新型コロナウイルスのワクチン接種(第1回)

1週間ほど前、新型コロナウイルスワクチンの接種券が自治体から届いた。えっもう? こんなに早く来るとは思っていなかったので、さあゴールへ向かって接種予約の争奪戦に参加しましょうと言われても気持ちがついていかない。

近所のかかりつけに電話をしてみたら、1日に接種する人を絞っているそうで高齢者もまだすんでいないとのこと。

先日、自治体の接種会場の予約受付があった。ワクチンはファイザー製。指定された日時にアクセスしてみると案の定「現在混雑しているため接続数を制限しています」と出る。F5アタックを10分ほど続けて通り抜け、無事に予約を取ることができた。

今日、予約した時刻を少し過ぎてから接種会場へ。入ってみると、接種待ちの人たちが行列を作っている。わりとどんどん流れて、5分ほどで持参した書類の事前チェックに進んだ。問診票の内容を確認される。そこから数分で受付へ進み、パソコンに情報が入力された。次は待ち時間なしで問診。問診のブースはいくつもある。医師にひと通り聞かれて答えたら次へ。パイプ椅子の後ろに同じ椅子、という並び方で椅子が4つ置かれていて、その列が複数作られている。指定された列の前から順に座っていく。壁には「肩を出しておいてください」の貼り紙。すぐに4人たまるので「立って前に進んでくださーい」と言われ、4つ並んだオープンのブースに前から順に配置された。このブースの列もいくつかあった。椅子に座って荷物をかごに入れていたらワゴンがやってきた。医師がとなりの椅子に座って「アルコール消毒して大丈夫ですか」と聞かれ「大丈夫です」と答えると、肩にガーゼでいつものように消毒が行われてブスッ。えっもう?

採血されるときなどは椅子に座ってから血管を浮かせるために肘の内側をこすったり叩いたりするし、針がうまく血管に刺さるように看護師さんもしばし集中する。しかし筋肉注射だとそういう儀式がまったくなく、消毒したらいきなりブスリなのであっけなかった。

ブースを出たらまたパソコンがある机に案内され、そこで係の人がなにか入力したりシールを貼ったり。ここで次回の予約についての紙を渡された。そして15分の待機時間を過ごすコーナーへ。椅子は100人分以上あるが今日座っていたのは50人くらい、案内されて座ると椅子にかけられていたキッチンタイマーがセットされた。

さっき受け取った紙を見た。2回目の接種予約はこのURLかQRコードからとある。アクセスすると混雑していることもなく、あっさり3週間後に2回目の予約を取ることができた。

15分たつとキッチンタイマーがピピピと鳴る。全員が同じキッチンタイマーで、椅子にはランダムではなく案内された順に座っているため「ピピピ」の音がだんだん近づいてくるのが面白かった。アナフィラキシー的な症状は出ず、今日はこれで終了。お疲れさまでした。

接種会場の流れはとてもスムーズで、最後の待機時間を含めても建物に入って30分ほどで出てこられた。混雑に応じて受付や問診、接種など、人がたまる場所にいくつコーナーを置くべきかといったノウハウが積み重ねられてきているのだろう。

2回目のワクチンをすませて2週間経ったら、晴れて免疫が完成することになる。新型コロナウイルスが日本に入ってきて約1年半、ついに出口が見えてきた。ワクチンを打っても感染を100パーセント防ぐわけではないから、感染を心配しながらの生活はまだ続く。とはいえずっと暗いトンネルの中を進んでいたのが終わりに向かっていると実感できるのは晴れやかな気分になる。

追記

3週間後に2回目を打ちました。

『Make: Electronics 実践編』販売開始

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電子工作を基礎から独習する本、『Make: Electronics第2版』に続いて、同じ著者による『実践編』が刊行されました。わたしはこの本の編集をお手伝いしています。

本書は“21世紀のエレクトロニクス入門書”として、米国そして日本でも読者に支持されている『Make: Electronics 第2版』の続編です。この「実践編」では、最初に実験または製作を行い、理論を解説するという「発見による学習」というプロセスをさらに深めます。デジタル電子回路、オペアンプとそのフィードバック回路を中心に、555タイマー、コンパレータ、マルチプレクサ、加算器、エンコーダー、ポジティブ/ネガティブフィードバック、オーディオアンプなどについて、詳細に解説。そのための作例は、「擬似乱数生成器」、「易占マシン」、「危機一髪型コインゲーム」など、ユニークなものばかり。回路同士を組み合わせて、応用プロジェクトを生み出すための考え方、試行錯誤の過程についても知ることが可能です。本文オールカラー。

O'Reilly Japan - Make: Electronics 実践編

『実践編』では、『第2版』で学んだ知識を土台にしたさまざまな作例が紹介されます。ここまで来ると自分程度の知識ではついていくのが大変で、本の内容の通りに作ることはできたとしても原理までちゃんと理解するのは難しそう。でもAdruinoのようなマイコンボードに頼らず、ロジックICやコンデンサなどの電子部品をパズルのように組み合わせて作り上げていくのが楽しい人にはたまらないでしょう。

Make: Electronics第2版』の骨のある応用編として、手に取っていただければと思います。

関連記事:『第2版』刊行時のエントリ

東京都の新規感染確認者数を7月11日までに100人程度に減らすのはまず無理

これまでの記事

東京都の緊急事態宣言は6月20日で解除され、蔓延防止等重点措置に移行してしまった。東京都の場合、新規感染確認者数が100人程度まで減らないとそのうちまた緊急事態宣言を出さなければならなくなる。

しかるに4月25日に発出された緊急事態宣言から昨日までの推移はこんな感じだった。

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新規感染確認者数の7日間平均の前週比は、5月中旬から1倍を切る日が続いた。1倍未満になると新規感染確認者数は減少傾向にあるといえる。倍率はおおむね0.8倍程度で減り方はゆっくりだが、新規感染確認者数の7日間平均のグラフは6月上旬まで少しずつ減っていった。

しかしその後は7日間平均の前週比が上がり始め、減り方がゆるやかになっていく。6月18日と20日にはついに1倍を上回った。どうやらリバウンドが本格的に始まったようである。20日の新規感染確認者数の7日間平均は391.9人だった。前回もそうだが、感染者がこんなに多い状態で緊急事態宣言を解除してしまうのはおかしいと思う。

  • 第1回の緊急事態宣言を解除した日(2020年5月25日)の7日間平均:6.9人
  • 第2回の緊急事態宣言を解除した日(2021年3月21日)の7日間平均:301.1人
  • 第3回の緊急事態宣言を解除した日(2021年6月20日)の7日間平均:391.9人

緊急事態宣言を発出するたび、解除のときの新規感染確認者数は増えている。それでも大丈夫と思ってのことかもしれないが、2回目までは結局感染者が増えて緊急事態宣言を再発出することになった。今回もおそらく、近いうちに同じことになるだろう。

今回の緊急事態宣言が発出された4月25日から今日までの推移と、そこからどんなペースで減らしていく必要があるかのグラフを今回も作っている。

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(毎日の推移はTwitterのスレッドで見ることができる。→4月分〔4月7日から〕、5月分6月分/画像だけを見たければはてなフォトライフの「covid-19」フォルダへ)

7月11日までに新規感染確認者数の7日間平均を100人にするには、明日から週0.62倍のペースで減らしていく必要がある(青い線)。今日の7日間平均の前週比は週1.03倍だった。そんなペースはまず無理だろう。

では2月ごろの、週0.7倍に減るペースだとどうなるだろうか。7月11日には141人まで減る計算になった(紫の線)。このペースで100人になる日はいつだろうか。それが下のグラフである。

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7月18日に99人になる計算となった。とはいえ明日から突然週0.7倍に下がるとは思えないのでこれも現実的ではない。どちらにしても、7月11日に蔓延防止等重点措置は解除できないだろう。

一方、ワクチンの接種は少しずつ進んでいる。東京都の場合、6月18日時点で高齢者約311万人のうち、1回目を接種した人は132万人(42.4パーセント)、2回目を接種した人は32万人(10.3パーセント)となった。

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東京都新型コロナウイルスワクチン接種ポータルサイト 東京都福祉保健局

体の中に十分な抗体ができるのは、2回目の接種から2週間後だという。企業などでワクチン接種を行う「職域接種」も今日から本格的に始まった。しかしワクチン接種が東京都の新規感染確認者数を抑えるようになるのはもう少し先になりそうだ。

さて、オリンピックの開会式は7月23日である。政府はいつの間にか開催するかどうかの話をしなくなり、ここ数日は観客を入れるかどうかの話ばかりになっていた。そして今日、「観客席の半分、1万人まで」という基準を決めたという。

メインスタジアムの収容人数は68,000人だそうなので、1万人となると約15パーセント、おおむね6席に1人という計算になる。ただし学校連携の見学と関係者は含めないそうなので、もうちょっと混雑するかもしれない。競泳が行われるアクアティクスセンターは定員15,000人だから半分まで入れることになる。2席に1人は最近の映画館がよくやっている。換気をよくして、声を出さずに応援するのを徹底できれば大丈夫…だろうか?

いやいや、そもそも無観客のほうが感染のリスクが少ない。もっといえば開催しないのが一番低リスクだ。当たり前である。「野球やJリーグではクラスターは発生していない」というが、これらは海外から選手や関係者を、国内では全国からボランティアを数万人単位で集めたりしない。加えてオリンピックは単発のイベントなので関係者も観客も感染対策に慣れていない。またオリンピック関係で移動する人は1日あたり数十万人になるという。野球やJリーグは数万人。開催規模が違いすぎて同列に語ることはできない。

感染を抑えるにはオリンピックを開催しないのが手っ取り早い。オリンピックはそもそも単なるスポーツ大会である。自分の命や健康よりオリンピックが大事という人はいない。でも政府や関係者はどうしても開催したいようだ。あげく菅総理は「オリンピックで希望と勇気を世界に届ける」などと言っている。それと引き換えに我々国民の命や健康がリスクにさらされるのだから、どう考えてもつり合う話ではない。

菅総理は「国民の命と健康を守るのが最大の責務」とも語っている。でも言っていることとやっていることがちぐはぐすぎる。記者会見でオリンピック開催について質問されても関係ない話しかしない。こちらの頭がおかしくなりそうだ。

政府は安心、安全なオリンピックを開催したいならもっと本気で対策を取ればいいのに中途半端だし、人の流れを抑えたいなら仕事で家を出る人を減らすために「金は出すから家にいろ」とするのが一番なのにそれもしない。自殺者が増えてもおかまいなしだ。国民の生活のことを考えているようにはまったく見えない。

政府の分科会の尾身茂会長に「パンデミック下では普通オリンピックを開催しない」と言われると自民党幹部が「言葉が過ぎる」などと不快感を示したり、会長の見解が政府の方針に合わないと田村厚生労働大臣が「自主研究の発表にすぎない」と牽制したりする。「専門家の考えを受け止めてしっかり対応したい」みたいな建前すら出さず、専門家の意見の中から政府に都合のいいところだけつまみ食いしたい意思がはっきり見える。おまけに昨日は橋本聖子組織委員会会長が「尾身会長から中止の提言がなかった(から開催する)」などと言い出した。直前の提言ではそうだが、上の「普通はやらない」を都合よく忘れてしまったらしい。あきれて何も言えない。

毎回書いているが、上のようなグラフを政府関係者が作っていないわけがない。これを見れば緊急事態宣言を解除できるタイミングではないのは明らかだ。にもかかわらず知らんぷりして解除してしまう。その結果オリンピックを開催できれば政府/自民党やお友達の財布はふくらむし、自動的にドラマが生まれて国民は勝手に感動し支持率回復を期待できる。そのまま総選挙に入れば今回も勝てるという腹なのだろう。オリンピックのあとに感染が拡大しても「オリンピック開催と感染拡大の因果関係は不明」と言うだろうし、「責任を痛感している」と言ったとしてもそれだけで、自ら責任を取ることはないだろう。

ウイルスは人間の都合を忖度しない。感染対策をゆるめれば必ずそこから感染が拡大する。水際対策を徹底せず新型コロナウイルスやその変異株を流入させてしまったのが典型的だ。緊急事態宣言もあわてて解除するとすぐに感染が再拡大する。それで大阪府は大変なことになってしまった。オリンピックも同様で、感染対策がオリンピック向けの特例でゆるめられれば必ず感染が広がる。これは確率が上がるという話なので「必ず」は「おそらく」にはならない。

早くワクチンを打たせてもらいたい。新規感染確認者数が100人に減るには、ワクチンが若い人にも十分普及するまで待たなければいけないのだろうか。

追記

続きを書きました。

シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇は呪いからの解放だった

(大きなネタバレはありませんがネタバレがまったくないともいえません)

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間があきましたがこの記事の続きです。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」の上映がもうすぐ終わるから、劇場でもらえるおまけもさらにサービスサービスゥ!だそうだ。じゃあやっぱり観ての感想を書いておこう。

さて、劇場へ向かって席に座り、照明が落ちて「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」の上映が始まって終わった。エヴァンゲリオンが終わった。ものすごい勢いで話をまとめて、これでもう続きはないだろうとはっきりわかる形で終わった。

新世紀エヴァンゲリオン」の放送開始から26年、ついに完結したんだなあと思うと感慨深い。

という話をすると、「ガラスの仮面」や「王家の紋章」のファンから26年なんて生ぬるい、ガラスの仮面は1975年連載開始だから46年間、王家の紋章は1976年から45年間完結していない、と言われてしまう。

  • 参考:「続き、しかも終わりを9年間も待たされたエンタメってエヴァの他にあるのかな」とつぶやいたら怒涛のリプが展開された - Togetter(https://togetter.com/li/1680326

(↑は最終巻がなかなか出ない、という話なのでちょっと違うけど、長期連載で完結していない作品がいろいろ出てくる)

でもエヴァンゲリオンはそういう作品とはちょっと違うと思うのだ。

だって「ガラスの仮面」も「王家の紋章」も、一度も完結したことがないじゃないですか。

エヴァンゲリオンは、これで終わりなの? とかこれで終わらなかった、ということがとても多かった。

こんな調子である。3回目の完結でようやく本当に完結した。

前の記事で「庵野秀明にはエヴァンゲリオンを作り続けなければいけない呪いがかけられているのではないかと考えたことがある」と書いた。そして「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」はその呪いを打ち破る作品だった。これでもう庵野秀明エヴァンゲリオンを作らずにすむ。よかったね。我々もモヤモヤしたものを抱えずに生きていくことができる。

欲を言えば今回のエヴァンゲリオンはまとめ力がものすごく発揮されていたぶん勢いがそがれていて、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」のころのとがった感じはずいぶんなくなっていた。そこは監督も年を取ったということかもしれない。

それから1回観ただけだと目の前で起きていることを理解するのが間に合わず、2回目で落ち着いて観られる場面がたくさんあった。脈絡なく旧ソ連の月ロケットが出てきて「なんでこれがいくつもここに?」となったり、終盤に「あれ、この曲のイントロは聴いたことがある。なんだっけ…」となってセリフをちゃんと聞いていなかったりした。

エヴァンゲリオン庵野秀明そのものの作品で、ほかの人が新シリーズを担当したりすることはないだろう。このころユーロネルフでは…とか、マリの新劇場版登場前のエピソードみたいな企画を思いついても、庵野秀明以外に作ることはできない。そして庵野秀明はもうエヴァンゲリオンを作ることはないだろう。長い間楽しませてくれてありがとう。

「はやぶさ2」帰還サンプルの初期分析チーム・Phase2キュレーションチームへの引き渡し記者会見

日時

  • 2021年6月17日(木)13:00~14:00

前回の記者説明会

中継録画

中継はありません。後日JAXAのYouTubeチャンネルにアップロードされたらここに貼り付けます。

登壇者

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(image credit:JAXA

JAXA 宇宙科学研究所地球外物質研究グループ

  • グループ長 臼井寛裕(うすい・ともひろ)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授 「はやぶさ2」プロジェクトチーム 統合サイエンスチームメンバー)

はやぶさ2」プロジェクトチーム

  • プロジェクトマネージャ 津田雄一(つだ・ゆういち)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授)

キュレーションチーム

  • 高次(Phase 2)キュレーション三朝みささチームリーダー 中村栄三(なかむら・えいぞう)(岡山大学惑星物質研究所 教授)
  • 高次(Phase 2)キュレーション高知チームリーダー、初期分析・化学分析チーム 伊藤元雄(いとう・もとお)(国立研究開発法人海洋研究開発機構・高知コア研究所 同位体地球化学研究グループ グループリーダー代理 主任研究員)

初期分析チーム

  • 初期分析チーム統括 橘省吾(たちばな・しょうご)(東京大学大学院理学系研究科 教授/JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 特任教授)

(写真左から津田氏、臼井氏、中村氏、橘氏、伊藤氏)

津田プロマネから

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(image credit:JAXA

サンプルの観察とカタログ化、キュレーション作業の第一段階が終了。いよいよ相模原の外に出して外部で高度な分析を行っていく。

はやぶさ2の宇宙飛行パートは終了しているが、プロジェクトとしては帰ってきたサンプルを初期分析していく。JAXA外にサンプルを出して詳細な組成や物性の分析を行っていただく。

リュウグウのサンプルからは有機物や水がどうやらあると示唆する情報が集まってきている。リュウグウのサンプルは期待を裏切らない、わくわくする物質。

岡山、高知、東大の先生方にも登壇していただいている。がんばって持ち帰ってきたサンプルの初見や期待を聞けるのを楽しみにしている。

プレスリリース

配付資料

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記者会見の概要と目次

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(image credit:JAXA

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