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東京都の緊急事態宣言を6月20日に解除するのはやっぱり難しいのでは

東京都の緊急事態宣言が6月20日まで再延長された。ということで下の記事の続きです。

今回も結論は変わらない。今日から6月20日までに新規感染確認者数を十分減らすのは、今の減少率からみると厳しい。

緊急事態宣言の解除には新規感染確認者数を100人程度に減らす必要がある。この目安は「“感染者減らずに宣言解除 経済損失膨らむ” 学者グループ試算 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース」で示された試算(下)に従っている。

  • 5月第2週に新規感染確認者数500人未満で解除→6月第4週には1000人突破、年内に2回緊急事態宣言を出すレベルに
  • 6月第2週に新規感染確認者数250人未満で解除→8月第3週には1808人まで増加し緊急事態宣言が必要なレベルに
  • 7月第4週に新規感染確認者数100人未満で解除→緊急事態宣言が出るレベルまでは増えず

さて、4月25日に始まった緊急事態宣言は当初5月11日までとされた。しかし新規感染確認者数は横ばいで、5月31日まで延長された。下は5月11日までのグラフである。

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5月11日の時点で、5月31日までに新規感染確認者数を100人程度にするのはまず無理でしょうという話を書いた。それが「東京都の緊急事態宣言は5月31日の解除も難しそう【追記あり】」である。

それでも5月10日を過ぎたあたりから新規の感染者は減り始めた。新規感染確認者数の7日間平均を1週間前と比べた値が1を切ると、新規感染確認者数は減少傾向にあるといえる。5月18日に1を切ったあとは、おおむね0.8倍で推移している。新規感染確認者数の7日間平均は確かに下がってきている。

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この調子で6月20日を迎えるころにはどのくらい減っているだろうか。

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5月31日の新規感染確認者数の7日間平均は547.1人。その7日前との比は0.86倍である。つまり1週間で0.86倍に減るということで、この調子で減っていくと6月20日には353人になると出た。これだと減り方が足りない。

6月20日に新規感染確認者数を100人にするには、1週間の減少率が0.55倍でなければならない。これは1年前、最初の緊急事態宣言の終盤のころの数字だ。あの誰もいない都心のような状態にしてやっと達成できるかもしれない数字である。

2回目の緊急事態宣言が出ていた1月中旬から1か月ほど、7日間平均の前週比が0.7倍だったことがあった。このくらいのペースで減っていくとどうだろう。6月20日には197人。もう一声減ってほしい数字だ。

週0.7倍のペースを維持した場合、いつ新規感染確認者数が100人になるだろうか。グラフを伸ばしてみた。

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7月3日に102人、4日に97人になるという計算になった。

5月27日に東京都医師会の尾崎治夫会長は記者会見でこう述べている。

「今の感染者数の7日間平均は600~650人くらいだが、仮に週の増加率が0.7ぐらいになれば、5週後(引用者註:7月1日ごろ)には大体100に近い数字になるはずだ」

緊急事態宣言の延長「日数で決めるのではなく数値目標で」、東京五輪開催へ「今が最後のチャンス」 都医師会・尾崎会長 【ABEMA TIMES】

この数字は上の計算とも整合する。しかし週0.7倍は今回の緊急事態宣言では達成できていない。

つまり、第3回の緊急事態宣言ではまだ出ていない減り方に今日から突然なったとしても、6月20日までに新規感染確認者数を100人に減らすことはできないということになる。

で、毎回書いているが政府もこういう計算をしていないはずがない。でも最初から無理とわかっている6月20日を期限にしてしまう。これは一体なんなんでしょうね。なにか奇跡が起きて20日に100人に減ってしまうことを期待している? もしそうなら、それこそ「シン・ゴジラ」のこのセリフそのままではないか。

先の戦争では旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたたために国民に300万人以上もの犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です。

さて、4月12日に高齢者へのワクチン接種が始まった。早い自治体ではもう高齢者は2回のワクチンを終え、さらに若い人にワクチンを打ち始めている。東京都はどうだろうか。

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東京都新型コロナウイルスワクチン接種ポータルサイト 東京都福祉保健局

高齢者311万人のうち、5月30日時点で1回目を打ったのは474,487人(15.2パーセント)、2回目は17,303人(0.5パーセント)。ワクチンで十分な免疫ができるのは2回目の接種から2週間後とのことなので、今はまだワクチンが新規感染確認者数に変化を及ぼすほどではないようだ。

ワクチンは疫病を抑え込む最終的なゴールである。今はまだ接種者が少ないが、ワクチンの接種状況を気にする段階にようやく来た。この調子なら年内か、遅くとも来年にはほとんどの人がワクチンを打ち終えて、新型コロナウイルスとの戦いはひとまず落ち着くのではないだろうか(ただし戦いが終わることはない)。それまで我々はマスク、手洗い、3密の回避を続けて新型コロナウイルスにかからないようにする生活をがんばろう。

そのためには政府にも今後の感染者を増やさない対策を求めたい。「できることはすべてやる」そうなので、以前できた特別定額給付金をもう一度やって「金は出すから家にいろ」を実行してほしい。ごく一部の困窮世帯向けの条件が厳しい30万円給付(想定対象は20万世帯、予算500億円)でお茶を濁さないでほしい。感染リスクを高めるオリンピックはやめてもらいたい(強引に開催して、終わった後でぬけぬけと「オリンピックが感染者を増やしたというエビデンスはない」とかなんとか言うんだろうけど)。何度も書いているが、自分の命や健康よりオリンピックが大事という人はいない。ワクチンを打ってもまったく感染しなくなるわけではない。世界中から新型コロナウイルスを集めてミックスすることになるから、イギリス株、インド株などに続いて「東京株」と呼ばれる変異株を出しかねない。

追記

続きを書きました。