オープンソースの画像生成AIをセットアップから使い方まで解説する『Stable Diffusion AI画像生成ガイドブック』(ソシム刊)発売中(→本のサポートページ

東京都の緊急事態宣言は5月11日には解除できないでしょう

なぜなら、今よりずっといい調子で新規感染確認者数が減っていっても、5月11日までという短い期間では感染者数が減りきらないから。

これまでの、東京都における新規感染者数の推移は以下の通り。

f:id:Imamura:20210217235404p:plain

この記事を書いた2月18日ごろまで、7日間平均の前週比は0.7倍程度だった。しかし記事を読んだ新型コロナウイルスが「させるかぁー」とがんばったのか、2月18日を過ぎたあたりから数字が上がり始めた。その後、今日までの推移は下の通り。

f:id:Imamura:20210430150928p:plain

7日間平均の前週比が1倍未満だと感染者数は下降トレンドといえるが、3月初頭には1倍を上回った。そして倍率が少しずつ上がる中、政府は3月21日に東京都などの緊急事態宣言を解除した。

7日間平均の前週比はその後も上がり続けた。その結果、東京都は4月12日に蔓延防止等重点措置を発出、その後4月25日に3回目の緊急事態宣言を発出するに至っている。緊急事態宣言の期限は5月11日とされた。

上のグラフを見てみると、7日間平均の前週比は4月21日に1.34倍の最高値を記録したあと下がり始めている。4月22日以降は昨日(29日)にわずかに上がっただけである。この調子だと連休中に1倍を下回り、新規感染確認者数は減少に転じそうな気がする。

しかし、5月11日までに新規感染確認者数が十分少なくなるだろうか。計算してグラフにしてみた。

f:id:Imamura:20210430203547p:plain

緊急事態宣言が発出された4月25日を基準にした線と、今日を基準にした線がある。これらが5月11日にどうなるかを見てほしい。

「週に0.7倍に減るペース」は4月25日基準だと5月11日に281人、今日を基準にすると399人になるという結果が出た。0.7倍というのは2月上旬ごろの減少率をあてはめた。

7日間平均の前週比は、4月25日は1.24倍、今日は1.11倍である。これが翌日から突然0.7倍になっても4月25日基準で5月11日には281人までしか減らない。そして実際はそんな下がり方はしなかった。明日からなぜか0.7倍になったとしても5月11日には399人。まだまだ減り方が足りない。

(前回の緊急事態宣言の最終日である3月21日の新規感染確認者数は256人だった)

実際どれくらい減るまで緊急事態宣言を続けるべきなのだろうか。参考になるのが下の記事で紹介されているシミュレーションである。

記事中で示された試算は以下の通り。

  • 5月第2週に新規感染確認者数500人未満で解除→6月第4週には1000人突破、年内に2回緊急事態宣言を出すレベルに
  • 6月第2週に新規感染確認者数250人未満で解除→8月第3週には1808人まで増加し緊急事態宣言が必要なレベルに
  • 7月第4週に新規感染確認者数100人未満で解除→緊急事態宣言が出るレベルまでは増えず

もう緊急事態宣言を出さないようにするには、新規感染確認者数を100人まで減らす必要があるという。

ここで先ほどのグラフをもう一度見てもらいたい。

f:id:Imamura:20210430203547p:plain

「4月25日を起点に5月11日に100人に減るペース(週0.45倍)」と、「今日を起点に5月11日に100人に減るペース(週0.29倍)」という線を描いてある。週あたりの倍率が1倍を超えている現在、5月11日までにこのような減り方になることはまずないだろう。

最後に、今日の7日間平均の前週比のまま新規感染確認者数が今日から増えていくと、今日の698人に対して5月11日には821人になるという線も示した。前週比が1倍を切らない限り、ゆっくりでも確実に増えていくことになる。

ということで、東京都の緊急事態宣言を5月11日に解除するには、7日間平均の前週比が非現実的な倍率まで下がる必要があるとわかった。今の調子だと新規感染確認者数は減っていくかもしれないが、5月11日までに宣言を解除できるほど十分に減ることはまずないだろう。

ところで、こういう試算は東京都や政府も行っているはずである。5月11日に緊急事態宣言を解除するのはまず無理と最初からわかっているだろう。ではなぜ期限を5月11日までとしたのか。

IOCのバッハ会長が5月17日に来日する予定があり、その時点で緊急事態宣言にならないようにしたいからだ、というまことしやかな噂がある。それが本当かどうかはわからないが、いかにもありそうな話だと思える程度には、政府のオリンピックに対する前のめりな姿勢が連日の報道からうかがえる。しかし自分の命や健康よりオリンピックが大事という人はいない。今からでも、違約金を払うのもやむを得ないから延期か中止にしてもらいたい。

「金は出すから家にいろ」が、政府がとるべき感染症対策の基本である。生きていくために働かざるを得ず家を出る人がいるのでは感染拡大は止まらない。今はとにかく減税したり国が国民に直接お金を配ったりして国民の生活を守るべきで、財政健全化のための緊縮財政(増税を含む)などもってのほかだ。去年特別定額給付金を10万円配った結果、日本がインフレになっただろうか。菅総理の「国民のために働く。」というスローガンは「一部の国民のために働く。」なのではないか。

こういう匿名ダイアリーの記事もある。オリンピックをやりたいなら感染症を封じ込めればいいのに本気でやらないから、結局オリンピックすら難しい雰囲気になってきている。皮肉なものである。

追記:続きを書きました