- これまでの記事
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- 2021年2月18日:東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は順調に減っています(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/02/18/104500)
- 2021年4月30日:東京都の緊急事態宣言は5月11日には解除できないでしょう(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/04/30/183000)
- 2021年5月11日:東京都の緊急事態宣言は5月31日の解除も難しそう(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/05/11/210000)
- 2021年6月1日:東京都の緊急事態宣言を6月20日に解除するのはやっぱり難しいのでは(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/06/01/150000)
- 2021年6月21日:東京都の新規感染確認者数を7月11日までに100人程度に減らすのはまず無理(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/06/21/235900)
- 2021年7月13日:東京都の緊急事態宣言を8月22日に解除するにはどうしたらいいだろうか(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/07/13/151500)
緊急事態宣言が発出された日や延長される前の最終日を区切りに、上のように現状をまとめている。前回と今回では深刻度がだいぶ変わってしまった。
- 4月25日から7月12日までのグラフ
- 7月13日から8月22日までを追加したグラフ
2つとも始まりと終わりは同じ日だが、8月22日まで来ると縦のスケールがとても大きくなった。2枚目のグラフでは7月までの線がずいぶん下に押し込められている。右軸の感染者数は当初1,250人までだったのが6,000人までになってしまった。約5倍である。1日の新規感染確認者数が1,000人を超えたのはグラフの最初のころ。それがいったん下がったあと、オリンピックの期間を含む7月中旬から8月にかけては1,000人を軽々と超えてしまい、それは今も続いている。
8月に入ると1日の新規感染確認者数が4,000人や5,000人以上になる日が珍しくなくなった。7日間平均の前週比がいったん2倍以上になったあと今は1.2倍前後に落ち着いているのがせめてもの救いだが、これも1倍を切らないと感染者は減っていかない。
今までは、新規感染確認者数が1,000人を超えるとさすがに危ないという雰囲気が広がるのか、少しずつ減り始めることが多かった。しかし自粛疲れなのかオリンピックのせいなのか、今回は減る様子がぜんぜん出てこない。7月下旬の4連休も一因かもしれない。2,000人、3,000人と増えていって、あれよあれよという間に4,000人台や5,000人台が珍しくなくなってしまった。
Twiterなどで「今回の第5波では直接の知人が感染したという話をよく聞くようになってきた」という話を見かける。感染者が毎日4,000~5,000人増えていく勢いは恐ろしい。
医療はますます逼迫している。千葉県では新型コロナウイルスに感染した8か月の妊婦が搬送先が見つからないまま自宅で早産し、新型コロナウイルスに対応したNICUを備えた病院に搬送できず赤ちゃんが亡くなるという痛ましいできごとがあった。ほかに必要な治療を受けられないまま自宅で亡くなる人も出ている。
こうなると新型コロナウイルスだけでなく、ほかの病気やけがでも搬送先がなかなか見つからなくなる。突然の脳卒中や事故のけがで一刻を争うときに致命的になるかもしれない。あるいは事故で他人をけがさせてしまうと、ふだんのような治療ができずに亡くなってしまって過失傷害が過失致死になるかもしれない。医療崩壊に定義はないというが、すでに崩壊していることは明らかだ。
8月22日までとされていた東京都の緊急事態宣言は、いったん8月31日までに延長されたあと9月12日までに再延長された。
- 7月30日付の記事(8月31日まで延長)
- 【詳細】菅首相会見「今回の宣言が最後となるような覚悟で」 | 新型コロナウイルス | NHKニュース(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210730/k10013171341000.html)
- 8月16日付の記事(9月12日まで延長)
- 「緊急事態宣言」7府県を追加へ 6都府県の宣言も延長の方針 | 新型コロナウイルス | NHKニュース(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210816/k10013206461000.html)
4月25日から8月22日までのグラフは1日分の幅が狭い。さらに9月12日までを足すのはやめて、新しく6月21日から9月12日までのグラフを作った。
6月21日は前回の緊急事態宣言が蔓延防止等重点措置に切り替わる一方、7日間平均の前週比が1倍を超えた日である。この日の新規感染確認者数の7日間平均は391.9人だった。それが8月22日には4,732.9人。さて、ここから新規感染確認者数を減らしていけるだろうか。
8月22日から9月12日までに1,000人に減るペースは、8月22日時点で週4割減(0.60倍)である。これでも今の約1.2倍より相当に下げなければ達成できない。
8月22日から9月12日までに100人に減るペースとなると毎週約7割減(0.28倍)にしなければならない。このように低い数字になったことはあるだろうか。調べてみると第1波の終わりごろ、2020年5月13日に0.26倍、翌日に0.29倍という記録がある。がそのくらいしかない。
今から感染者が減っていったとしても100人はまず無理、1,000人に減らすのだってまあ難しいですよね。この感じだと9月12日には緊急事態宣言が再延長されるだろう。こま切れの延長にどのくらい意味があるかはわからない。
今年に入って、東京都が緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置でなかった期間は1月1日から7日(7日間)と、3月22日から4月11日(21日間)だけである。そもそもこんな長期にわたる緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置に意味があるのだろうか。
今回、宣言を発出してから新規感染確認者数が増えるのは、宣言に伴う施策が間違っているからだ。デルタ株の感染力は今までの新型コロナウイルスとは比べものにならない。にもかかわらず今までとあまり変わらないように見える感染対策ではこのような結果になるのも無理はない。
こんな記事があった。削除されたため魚拓でどうぞ。
- 助けてくれ…百貨店は隠してんだ…休業すべきなんだ………(https://archive.md/2021.08.21-063555/https://anond.hatelabo.jp/20210821101437)
国が休業補償を出さないため営業せざるを得ないデパートの話が書かれている。匿名ダイアリーだから信憑性はわからないが、いかにもありそうな内容である。
つまりこれはデパート側にとっては「自助」なのだ。国が補償してくれないなら生き残り策を自分で立てなければならない。なにをどうごまかしてもかまわないからとにかく営業するというのは今の状況下で合理的な判断である。このあとどうなるかは知ったことではない。休業協力金がなかなか支払われないので休業要請を無視する飲食店と同じだ。
本来はこういうことが起きないよう、国がきちんと休業補償をしなければならない。生活のために家を出て仕事に行かざるを得ない人を減らす必要がある。異常にケチで「金は出すから家にいろ」が弱すぎる国の責任は重い。
- 融資や貸与が多いけれどこういうものも:新型コロナウイルス(COVID-19) 新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内|各種支援・取組み|内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室(https://corona.go.jp/action/)
ワクチンの進捗状況はどうか。
(この段落、初出時から修正)「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)) | 政府CIOポータル」によると8月23日現在で東京都の接種率は1回目46.87パーセント、2回目33.97パーセントだった。全国の平均は1回目44.92パーセント、2回目34.99パーセントで東京都は平均値に近い。ゆっくりだけどちゃんと進んでいるという印象。
しかしデルタ株は感染力が強く、ワクチンの接種率が高くてもそれだけで感染拡大を防ぐのは難しいとわかってきている。「デルタ株とワクチン集団免疫の夢と現実(小野昌弘) - 個人 - Yahoo!ニュース」によれば、イギリスでは成人の75パーセントが2回の接種を終えたのに感染が広がっているという。「デルタ株まん延、遠い収束 「集団免疫」困難か―新型コロナ:時事ドットコム」には、「感染研の脇田隆字所長は『8、9割の接種率でもどうなるか分からない。接種が進む英国やイスラエルなどの状況を見る必要がある』と慎重な見解」とある。
(ここから追記)
今月号の「数学セミナー」(2021年9月号/719号)に西浦博教授が寄稿した「予防接種完了時の新型コロナウイルス感染症流行をどのように見通しているか」によると、現在のワクチンの接種率が100パーセントになってもデルタ株は感染拡大を続けるそうだ。
◎『数学セミナー』2021年9月号(8月12日発売)
— 数学セミナー (@sugaku_seminar) August 12, 2021
予防接種完了時の新型コロナウイルス感染症流行をどのように見通しているか◎西浦 博
コロナ禍の今後を考えるうえで、きわめて重要な論考と思います。多くの方に読んでいただければ幸いです。 pic.twitter.com/svtfC8KVKE
・デルタ株の再生産数と現行ワクチンに対する免疫回避率から人口の100%がワクチン接種を終えても流行は収束しない
— Compass Rose (@hms_compassrose) August 23, 2021
・全世界的に現状のペースで感染流行が続けば変異は蓄積され、現行ワクチンの免疫を完全に回避する変異株の登場まで時間的余裕はあまりないと思って方がいい
『数学セミナー』9月号,生協に1冊残っていたのでゲット(電子化されていれば早くポチれたのに…)。さっそく西浦博先生のを読む。なぜワクチンだけでは無理になったのか,簡単な数式で解説されている。さぁどうするか
— Haruhiko Okumura (@h_okumura) August 16, 2021
これはあくまでワクチン以外に対策しなかった場合で,ワクチン+従来の対策が両方必要になる。しかし「もう我慢できない,もとの生活へ戻りたい」というモメンタムが・・・というのが後半
— Haruhiko Okumura (@h_okumura) August 16, 2021
(ここまで追記)
ワクチンの接種を進めなければ感染はより拡大するが、接種が進んでも完全に抑え込めるわけではない。新型コロナウイルスと1年半つき合ってきて、なんとなく対処方法がわかった気がしてきたのに変異株が出てきて認識を変えなければならない。これは相当なストレスだ。
いま心配なのは学校で、デルタ株は子供に感染しやすくなっているそうだ。「横浜市 小中学校は夏休み後も今月いっぱい臨時休校へ|NHK 首都圏のニュース」には「夏休みに入ってからの1か月間で、去年1年間を上回るおよそ800人の感染が確認されたということです」というくだりがある。記事では横浜市に加えて相模原市と川崎市の市立小中学校も8月いっぱい休校にすると決めているとのこと。
子供が感染すれば大人にうつるのを防ぐのは難しいだろう。小学生の親はいま30代から40代くらいで、ワクチンの接種が遅れている世代である。子供が軽症でも両親が中等症以上になったら誰が子供の面倒を見ればいいのか。新学期が始まるのが恐ろしい。
新型コロナウイルスは子供には安全という認識を改めて、感染を防ぎつつ子供の教育を進めていかなければならない。タブレットを全生徒に配ってTeamsによる遠隔授業の練習をしている公立学校もある。ネット環境がよくない家庭にはモバイルルータも貸与されたりするとのこと。
個人でできる対策はあまり変わらない。ワクチン接種をすませていても感染することがあり、自分は軽症でも人にうつしてしまうかもしれない。なるべく家を出ない、マスク、手洗い、3密の回避を続けるしかない。公共交通機関で出かけると周囲の乗客から感染するかもしれない。車で出かけると事故を起こしたりもらったりしたとき治療が遅れるかもしれない。もうとにかく家でじっとしている以外に道はない。マスクはウレタン製を避けて不織布のものを。
諏訪中央病院の玉井道裕医師がイラストで解説する「新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書」はわかりやすく参考になる。
- 新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書 – 諏訪中央病院(http://www.suwachuo.jp/info/2020/04/post-117.php)
- 【PDF】新型コロナウイルスをのりこえるための説明書 デルタ株編(https://www.suwachuo.com/pdf/deruta.pdf)
ここにマスクの種類についても記載がある。
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