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映像になった「ルックバック」は強すぎて危険


「ルックバック」はそもそもとてもよい作品で、そのよさをそのまま映像にしてしまったから大変だ。藤野と京本が動いて話し、音楽までついてくる。その結果、破壊力がありすぎる作品になってしまった。するとどうなるか。

年を取ると涙もろくなるというがそれどころではない。前兆はあって、予告映像を見たりするとグッと来るものがあった。ああ、あのシーンがこんなふうに動いている。そしてマンガの内容を思い出すとまたじんとしてくる。まずい、この調子で映画館に行ったら本編が始まった瞬間から危ないのでは。そして大体その通りになってしまった。

「開始3分からもう無言で泣いてた」というツイートを見た。内容をあらかじめ知っていたらそうなっちゃいますよね。わかります。「30分くらいほかの席からの泣き声を聞かされて最悪だった、もう泣くの? みたいなところから泣いていた」といったツイートもあった。どうもすみません。いやでも自分は声は出してないし鼻をすすったりもしてませんからね。でも後ろの席の人には動きが怪しいと思われたかもしれない。

とかいいつつ、最初の4コマ「ファーストキス」のアニメは生々しさが増しててちょっとウッとなったりはした。ほかの4コマ作品「奇策士ミカ」「真実」ももうちょっとじっくり見たかった。それからあのシーンは止め絵ではなく動かしてほしかったなあ。とかはあるけれど、冒頭のカメラが下りてくる全作画のカットとか、教室で呆然とする藤野のオリジナル演出、予告編にもある、京本の部屋のドアにマンガが吸い込まれていくカットなどはとてもすばらしい。思い出し始めるときりがない。

映画の紹介記事はこちらなどいかがでしょうか。藤野の名前があちこち「藤本」になってしまっていているのが玉にきずだが、作品の魅力をよく伝えている。原作者である藤本タツキへのインタビューに対する言及もあり、あのシーンにはこういういきさつがあったのかとわかったりする。

予告編

日本語うる覚え集

慣用句やことわざ、その他の表現の覚え違いで、独特な日本語になっていることがある。たとえば「うる覚え」とか(正しくは「うろ覚え」)。そういうのを見つけるたびにメモしていたらけっこう集まったので披露したい。

間違っていることをばかにしたいとか、こちらの知識をひけらかしたいわけではない。どれも独特の趣や面白さがある。これはリスト入りかなと調べると実は正しいなんてこともあった。お互い気をつけましょう。そしてこの種の「うる覚え」表現がほかにあったらブコメTwitterで教えてください。追記します。

あ行

  • 青色吐息→青息吐息
  • 挙げ連ねる→あげつらう+言い連ねる/書き連ねる
  • あたな→あなた(なぜかちょくちょく見かける)
  • 辺り来たり→ありきたり
  • あぶり出てくる→あぶり出されてくる
  • あまりものインパクトに→あまりのインパクトに
  • あらよあらよという間に→あれよあれよという間に
  • 怒り立つ→いきり立つ
  • 意思を突き通す→意思を貫き通す
  • いたいけない→いたいけな
  • 一糸まとわぬ演奏→一糸乱れぬ演奏
  • (状況が)一転する→(状況が)一変する
  • 一髪触発→一触即発いっしょくそくはつ
  • 今だに→未だに
  • 上に下にの大騒ぎ→上を下への大騒ぎ
  • 伺った見方→穿うがった見方
  • うず高く→うずたか
  • 鬱蒼とした気分→「陰鬱な気分」など
  • うる覚え→うろ覚え
  • 永遠と→延々と
  • エスケープゴート→スケープゴート
  • おおっぴろげ→大っぴら+あけっぴろげ
  • 押しも押されぬ→押しも押されもせぬ
  • 落とし入れる→おとしいれる
  • 思い入れ深い→思い出深い

か行

  • 怪文章→怪文書
  • 考え深い→感慨深い
  • 兼ね揃えた→兼ね備えた+取り揃えた
  • (〜を)かんがみ→(〜に)かんがみ
  • 気が気でならない→気が気でない
  • きめ細やかな→きめ細かな+細やかな
  • 驚異深い→興味深い
  • 狂気の沙汰ではない→正気の沙汰ではない
  • 凶弾する→糾弾きゅうだんする
  • 玉石混交→玉石混淆ぎょくせきこんこう
  • 玉石混合→玉石混淆
  • 食うや食わざるや→食うや食わず
  • 苦肉の選択→苦肉の策/苦渋の選択
  • 組みやすし→くみしやすし
  • 繰り替えす→繰り返す
  • けんもほろほろ→けんもほろろ
  • 傲慢不遜→傲岸不遜ごうがんふそん
  • 興奮冷めやまず→興奮冷めやらず
  • ご教授ください→ご教示ください
  • 語気を荒げた→語気を強めた+声を荒げた
  • こけおとす→こき下ろす
  • 固定概念→固定観念+既成概念

さ行

  • 差し違いない→差し支えない
  • 瑣末な作り→粗末な作り
  • 座右の目→座右のめい
  • 惨憺たる気持ち→暗澹あんたんたる気持ち
  • 時期早々→時期尚早じきしょうそう
  • じゃぁ→じゃあ(なぜかよく見かける)
  • 趣向返し→意趣いしゅ返し
  • 趣味趣向→趣味嗜好しこう
  • 趣味に高じる→趣味に興じる/趣味が高じて
  • 少数先鋭→少数精鋭
  • 知ら無い→知らない(参考:「ない」をなんでも「無い」と書か無いでほしい
  • 心機一変→心機一転いってん
  • 水泡と化す→水泡に帰す
  • スッタフ→スタッフ(なぜかよく見かける)
  • (それは)晴眼→(それは)慧眼けいがん
  • 聖人君主→聖人君子
  • 責任転換→責任転嫁
  • せざろう得ない→せざるを得ない
  • 想像を駆り立てられる→想像をかき立てられる
  • そぐう→ふさわしい
  • そぐわしい→ふさわしい
  • それ相当→それ相応
  • それともなければ→そうでなければ/さもなくば

た行

  • 対処療法→対症療法
  • 誰しもが→誰しも
  • 遠去ける→遠ざける
  • 通り一辺倒→通り一遍+~一辺倒
  • 朱鷺トキの一声→鶴の一声
  • 時より→時折ときおり
  • 突飛もない→突飛な+途方もない

な行

  • 鍋ぶたに綴じぶた→割れ鍋に綴じ蓋

は行

  • 歯がいじめ→羽交い締め
  • (現実と)剥離した→(現実と)乖離かいりした
  • ひっぺがえし→しっぺがえし
  • 物議を醸し出す→物議を醸す
  • 不用の長物→無用の長物

ま行

  • 紛いなりにも→曲がりなりにも
  • 曲がり間違って→まかり間違って
  • ままなっていない→ままならない
  • みるみると→みるみる/みるみるうちに
  • 向かい入れる→迎え入れる
  • 見え見え白々→明々白々
  • 門口を開く→門戸もんこを開く
  • 門徒を開く→門戸を開く

や行

  • 焼き回し→焼き直し+使い回し

ら行

わ行

  • 湾曲表現→婉曲えんきょく表現

記事公開後の追記分

  • 辛うじで→辛うじて(@ikishichiさん)
  • 通りで→道理で(@ikishichiさん)
  • せざる終えない→せざるを得ない
  • せざる負えない→せざるを得ない
  • 満遍の笑顔→満面の笑顔
  • 飛沫候補→泡沫ほうまつ候補

関連記事

はてなブログの本文中に差し込まれる広告を見分けやすくするCSS

最近のGoogle広告にはブログの本文の途中に差し込まれるものがあり、記事と広告の区別がわかりづらいことがある。PCからの閲覧時に広告が目立つよう、下のようなCSSをしつらえた。

div.entry-content div.google-auto-placed.ap_container {
    margin: 4em 0;  /* 広告と本文との上下間隔を広くとる */
    padding: 2em 0; /* 広告の上下に広告領域の背景色が見える場所を作る */
    background-color: rgb(0 0 0 / 0.1); /* 背景色の指定。透明度10%の黒 */
    border-radius: 5em; /* 背景色の領域に大きめのRをつけて目立たせる */
}
これが
こんな感じになる(画像処理ソフトで制作したイメージです)

広告と本文がよりはっきり分離されて、だいぶわかりやすくなったのではないだろうか。

丸みのある背景色の領域は、黒を透明度10%で敷いた。単に薄いグレーを指定するとブログの背景色に溶け込んでしまうことがある。そこでブログの背景色に10%のグレーが追加されるようになっている。

上のCSSを、Stylusなどの拡張機能を使って以下のドメインに設定する。独自ドメインはてなブログにこのCSSを適用させたい場合は追加する。

  • hatenablog.com
  • hatenablog.jp
  • hatenadiary.com
  • hatenadiary.jp
  • hateblo.jp

Stylusの設定画面ではこんな感じ。

Stylusの使い方については、下の記事で少し解説している。

「やっと」は「ついに」にしていきたい

「やっと」ってネガティブな言い回しにつきもので、案外後ろ向きな言葉だと思う。そこで「やっと」の代わりに「ついに」を使うようにしている。同じことに対する言い方でも印象がだいぶ変わるのではないだろうか。

  • バスがやっと来た→バスがついに来た
  • やっと資料ができた→ついに資料ができた

こんな調子でやっていきたい。

関連記事

こういう言い換え関連の記事を今までけっこう書いていた。

これらの記事を含む「言い換え」カテゴリや、対象範囲がより広い「言葉」カテゴリもよろしければご覧ください。

ThumbShift5-15TB組み立てのためのサポートページ

自分で設計したキーボード、ThumbShift5-15TBを組み立てるための情報を簡単にまとめました。

ThumbShift5-15TBの特徴

数字キー列やファンクションキーなどを省略したコンパクトな59キーキーボード
組み立ての工数を減らすため、数字キーの列やファンクションキーなどを省略しました。これらは特定のキーを押しながら入力します。
親指シフト入力に適したキー配列
親指部分にいわゆる「B割れ」のキーを配置しており、親指シフト入力に向いています。
一般的なロースタッガード配列のため移行コストが低い
一般的なキーボードの配列を踏襲しており、このキーボードに慣れるための練習が少なくすみます。
Cherry MX、Choc V2(Lofree FLOW含む)に対応
幅広い種類のキースイッチを装着できます。
キーキャップを調達しやすい
日本語キー配列の自作キーボードは英語配列に比べてキーキャップの調達が難しいですが、FILCOのMajestouch用に販売されている日本語キーキャップセットがあれば追加で調達するキーは7個ですみます。

ThumbShift5-15TBの購入方法

BOOTHなどの販売プラットフォームはありませんので、Twitter(現X)の@yimamuraなどへ連絡してください。価格は現在、以下の3枚の基板のみで2,000円としています。

3枚の基板について

スイッチプレート

トッププレートと呼ばれることもあります。キースイッチを物理的に固定するためのプレートです。画像右上の細い穴は、Majestouchが採用しているCostarのスタビライザーを装着する想定でしたが、穴の位置をミスしているため使えません。ご了承ください。


メイン基板

電子回路が組み込まれた基板です。ダイオードやスイッチソケットなどはここにはんだ付けします。


ボトムプレート

キーボードの底面になるプレートです。穴はタクトスイッチを押すためのものです。


基板のほかに必要なパーツ

続きを読む

八王子の川瀬巴水展を見に行った

八王子市夢美術館で開催されている川瀬巴水の展覧会を見に行った。展示は約150点で、ゆっくり見て1時間半くらい。

https://www.yumebi.com/index.html

川瀬巴水は明治末期から昭和32年まで活動した版画家で、旅と東京の風景を多く題材にした。微妙なグラデーションや川面、月明かりの表現が美しい。

月明かりは現代の都会で暮らしていると完全に失ってしまった光なのに、こういう作品として見せられると「知らないのに懐かしい」という不思議な郷愁を覚える。

旅先の川瀬巴水から版元の渡邊庄三郎へ宛てて書かれた手紙も読み方とともに展示されていて、大正時代の言葉遣いや文字の書き方がとても興味深かった。封筒の宛名書きは達筆すぎて、今だと届かなさそうだった。

Wikipedia川瀬巴水の項目に作品が掲載されていた。今回展示されているものから何点か紹介。

大阪 道とん掘の朝
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/ef/Tabi_miyage_dai_nish%C5%AB%2C_%C5%8Csaka_D%C5%8Dtonbori_no_asa_by_Kawase_Hasui.jpg/800px-Tabi_miyage_dai_nish%C5%AB%2C_%C5%8Csaka_D%C5%8Dtonbori_no_asa_by_Kawase_Hasui.jpg
深川上の橋
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/cc/T%C5%8Dky%C5%8D_j%C5%ABnidai%2C_Fukagawa_Kaminohashi_by_Kawase_Hasui.jpg/800px-T%C5%8Dky%C5%8D_j%C5%ABnidai%2C_Fukagawa_Kaminohashi_by_Kawase_Hasui.jpg?20170602033229
増上寺
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8d/Kawase_Z%C3%B4j%C3%B4ji.jpg/398px-Kawase_Z%C3%B4j%C3%B4ji.jpg?20130119112901

ここで自分が撮った写真を紹介したい。こういう写真を好んで撮っていると、川瀬巴水と比べるのもおこがましいがシンパシーを勝手に感じる。

ところでスティーブ・ジョブズ川瀬巴水のコレクターとしても知られている。これがMacintoshiPhoneなど、アップルの製品開発にどう影響を与えたかというテーマをNHKの佐伯健太郎記者は長いこと追いかけていた。記事もいくつも書いている。

会場の最後のコーナーは「スティーブ・ジョブズと巴水」で、ジョブズが所有していた作品と同じものが何点かと、Macintoshを発表した当時の写真が載った雑誌などが展示されていた。

ところでその2。八王子の国道20号沿いにはブックオフハードオフのほかいろんなオフが集まった「全部オフ」があるそうだ。実際はオフシリーズ全部ではないらしいとはいえものすごい品揃えだというので興味があったが今回は寄れず。いつか行ってみたい。

キーボードのイベント、天キー6に参加した

キーボードを持ち寄ってわいわいする「天下一キーボードわいわい会 Vol.6」、略して「天キー6」に参加した。2018年の1回目から参加してきて、今回ついに初めてキーボードを持ち込んだ。それも自分で設計したキーボードであり感慨深い。あわせて昔販売されていた小型のキーボードも持っていった。


展示したキーボード(左から)

説明の紙も掲示したけれど字が細かすぎた。その上自分で設計したキーボードを見せたいのか、親指シフトを体験してもらいたいのかがはっきりしなかったので、見てくれた人を混乱させてしまったかもしれない。次回はなにをどう見せるかよく考えよう。会場で親指シフトトークができたのはよかった。ありがとうございました。

小型キーボードのCUT KeyとCUT Key Pocketはテンキーだけのキーボードに見えるかもしれないが、これでも片手で日本語を入力できる。これは興味を持って見てくれる人が多かった。

驚いたことに、CUT Key Pocketを持参した方がもう一人いらして、並べて写真を撮ってしまった。

あと驚きがもう一つ。なんとThumbShift5-15TBを作りたいという方に基板をお譲りしたのだった。ビルドガイドとファームウェアを公開しないと。少しお時間ください。(→追記:書きました。ThumbShift5-15TB組み立てのためのサポートページ

そのほかに撮った写真。といっても持ち込んだキーボードについて説明したりトークセッションを聞いたりしているとあまりじっくり見て回れず、ほんの少しだけ。

富士通親指シフトキーボード
壊れたエフェクターを買ってきて、1キーのフットスイッチに改造したもの。すごい。なかむらメリさん作

ほかにどんなキーボードが出ていたのかは、手抜きだけれどTwitterの検索でどうぞ。

写真で出展キーボードを網羅しようとした方々。

YouTubeで配信されていた会場の様子も。

今回は、自分のキーボードを持ち込んだのがエポックメイキングな天キーだった。そのぶん見て回る時間が少なくなったけれどやむを得まい。次回も楽しみだ。