日時
- 2026年7月30日(木)15:30~16:30
登壇者
- JAXA宇宙科学研究所 はやぶさ2 拡張ミッションチーム チーム長 三桝裕也(みます・ゆうや)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙科学プログラムディレクタ付 研究開発主幹)
- JAXA宇宙科学研究所 はやぶさ2 拡張ミッションチーム 吉川真(よしかわ・まこと)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
- JAXA宇宙科学研究所 はやぶさ2 拡張ミッションチーム 竹内央(たけうち・ひろし)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 教授)
プレスリリース
関連リンク
本日の内容
(三桝氏より)

本日のポイント

1.トリフネフライバイ探査の概要

重要な観測データはフライバイ時のもの、残りのデータはそれより前や後のデータ。
2.フライバイの再接近距離

非常によい軌道誘導精度でフライバイができた。
3.フライバイにおける航法誘導制御の状況
(竹内氏より)

オンボード制御はJAXA研究開発本部のふじわら氏が中心となって開発した。非常にきれいな制御ができた。
電波光学複合航法の概要

2-wayドップラと2-wayレンジは探査機との距離を測定。DDORはパルサーを用いて平面上の位置を測定する手法。
OP-NAV観測は6月20日くらいから(はやぶさ2がトリフネをとらえらえるようになってから)。Astrometry観測をはやぶさ2から行うようなもの。
NASA DSN局による運用サポート

NASAの運用サポートにはたいへん感謝している。おかげで高精度な軌道推定ができた。
TCM-B(2026-07-01 14:50)の実績

TCM-B実施前は緑のところ、実施後はオレンジの場所。
TCM-C(2026-07-04 17:50)の実績

TCM-D(2026-07-05 15:27)の実績

地上からのTCMで、目標点まで950メートルのところへ持っていった。
フライバイ航法誘導制御運用を行った機関

4.トリフネの大きさと軌道精度

トリフネ軌道の不定性の改善

(フライバイによってトリフネの軌道の不定性を下げることができた)
プラネタリーディフェンスに向けたよいデモンストレーションになった。
5.LIDARによる距離計測
(吉川氏より)

小惑星フライバイにおけるLIDAR計測は世界初。
フライバイでLIDAR計測ができると、日照側以外からの接近でも探査できる可能性がある。


計測時刻がより正確にわかった。

6.地球防衛(プラネタリーディフェンス)に関する所見

はやぶさ2はランデブー用の探査機。フライバイ用でない探査機で高精度なフライバイができた意義は大きい。
参考資料

はやぶさ2拡張ミッション概要

サイエンス機器

過去のフライバイ探査の実績

赤で囲った項目は、表の中で一番天体に近づいたもの。嫦娥2号が小惑星表面から770メートルだった。今回この記録を上回った。
質疑応答
産経新聞伊藤:現在の気持ち、それからはやぶさ2にかけたい言葉は
三桝:現在の気持ちは…再接近距離が744メートルと近いところを通すことができた。すばらしい技術を獲得できた。ここまでがんばってきたチームのことを誇りに思う。達成した探査機にもすばらしい成果をだしてくれてお疲れさまといいたい。
伊藤:再接近距離はレーザー測距でわかったのか
三桝:撮影した画像とLIDAR測距の情報を総合して解析して得た。
フリーランス茜:LIDARでの測距はJAXAの開発者が創意工夫したものなのか。またプラネタリーディフェンスに際して世界各国で協力するにあたって観測のコツを共有したりするのか
吉川:JAXAの技術者とメーカーによる大変な開発だったと聞いている。はやぶさ2はランデブー用の探査機。秒速5キロという高速で使うことを想定していなかった。そんなLIDARで計測できたこと、今後小惑星の軌道を正確に知りたいとなったときLIDARの活用が有効であろうという知見を得たことが重要。
日本経済新聞森:はやぶさ2がトリフネの表面から400メートルに接近したとのこと。史上最接近と考えてよいか
三桝:その通り。過去のフライバイ探査と比較して一番近いところを通った結果になっている。
月刊星ナビ中野:航法誘導制御について。トリフネに対する航法誘導制御で、過去の小惑星探査でと比べての違いは。最終目的地の小惑星探査に関してなにが役立つか
竹内:航法誘導制御は地球から遠いところにいる方が格段に難しい。遠方での1キロという制御は非常に精度が高い。リュウグウとの違いは、リュウグウはランデブーなので相対速度がゼロになる。そのときの距離2,000キロはトリフネの場合最接近400秒前。ランデブーと違って短時間で精度が必要。違った難しさがある。究極な状況で高精度を出せたので、ランデブーならより早く接近できたりするような成果が得られたと思う。
NVS齋藤:資料4ページ。画像の日時は29分59秒とあり最接近1秒前。このときトリフネとの距離は5.3キロほどか

三桝:時間が1秒前なのでおよそその通りになる。
齋藤:1秒後の画像はもう小惑星が映っていないのか
三桝:微妙に映っているように見えるものもあるが解析が必要。
サイエンスライター山田:トリフネの大きさをどうやって測ったのか
吉川:写真が撮れるとカメラの特性から角度がわかる。小惑星との距離もわかる。距離と画角がわかると大きさがわかる。必ずしも正対していない。少し曲がっている。その角度も含めて割り出した。
山田:LIDARが届いたポイントは2か所。(…)
吉川:撮影した時刻がわかると探査機の位置がわかる。画面上のトリフネの画像は少し傾いている。
竹内:トリフネに対してななめに進んだことで精度が出たところもある。
フリーライター荒舩:TCMの資料は推定と実測の位置が書いてある。実測の数値を見てからTCMの量を決めるのか。
竹内:実測の位置は到着したあとにわかったもの。
荒舩:推測から動かして正確に誘導できた?
竹内:その通り。
JSTサイエンスポータル草下:今回は探査機運用の結果やプラネタリーディフェンスの話が中心だったが、理学的に新しい話はあるか。小惑星の生成過程についてなど。
吉川:今サイエンスチームはトリフネの観測データを解析している。まだここで言えるような結論にはなっていない。今後いろいろわかってくるだろう。いいデータが取れている。
時事通信神田:資料11ページ。オンボード航法開始時の位置は、はやぶさ2自身は把握していたのか

竹内:わかっていない。フライバイ後のデータを解析してここにいたとわかったもの。
神田:オンボード航法ができなかったら950メートルが限界だった。
竹内:その通り。
神田:オンボードを実施して距離を詰めることができた。そのことをどう評価するか
竹内:本当にきれいにいったと思っている。4回のTCMできれいに目標に向かっている。最後のオンボード制御でうまく近づくことができ感動している。
宇宙作家クラブ渡部:LIDAR照射の頻度について。もともとの使い道では1秒おきでよいと思うが、このような使い方をするとなるともっと高頻度にできたらと考える。そのあたりどうか
三桝:はやぶさ2のLIDARでは1秒おきが仕様として決まっている。最高頻度で取得した。もっと高頻度で取得できるものもある。
吉川:今回のLIDAR計測の成功で、フライバイ用にLIDARを開発していくのが重要になりそうだという感触を得た。
フリーランス大塚:誘導制御について。資料5ページの最接近地点の図。事前の説明では誤差楕円が出ていたが、それとの差分を知りたい

三桝:今回資料中には出せていませんが、3σから若干出ている。
大塚:ちょっと右に傾いている?
三桝:そのような結果になっている。
大塚:ずれたことをどう評価するか
三桝:誘導制御の観点では、最接近位置と目標点のずれが120メートルという距離は世界に誇れる結果と思うが、事前に示した誤差楕円からは少し出ている。オンボード側の光学航法でデータを取り込めない状況があったりして、3σというのもベストエフォート、一番うまくいったらこうという図だった。

大塚:120メートルのずれだったが光学航法がうまくいけばもっと近づけた?
三桝:その通り。
竹内:長軸150メートルの楕円だったと思う。実際はもうちょっと■と聞いている。■も要因のひとつ。
フリーライター荒舩:プラネタリーディフェンスに資する結果とのことだが、ほかの探査機での探査にも使える結果か
三桝:今回の結果はJAXAの今後のDESTINY+でも軌道航法誘導に貢献するだろう。プラネタリーディフェンスではラムセスにつながる。
吉川:ラムセスはアポフィスにランデブー。フライバイではないが役立つことがあるかも。
毎日新聞永山:大塚さんの質問に近いが、6ページ目の図。120メートル足りなかった、ずれたというが結果的によりトリフネに近づいた。怪我の功名? 想定しない何がおきたのか現状でわかっているか

三桝:前回(7/6)以降の解析で何がおきたかはだいぶわかってきた。ソフトウェアの時刻間隔が想定より長かった(?)などで光学航法を取り込めなかったので精度が上がりきらなかった。744メートル、内側に行ったのはたまたま、怪我の功名。逆側に行った可能性もあった。
永山:より近づきすぎて衝突するリスクもあった?
三桝:今回の結果は目標点と最終接近地点の距離が120メートルだとして、結果として小惑星にぶつかるところには行っていない。十分な精度で制御できたと思っている。
共同通信田島:現在のはやぶさ2の状態について知りたい
三桝:9日以降イオンエンジンの運転を再開。現在までは当初見られている劣化に対してより進行しているという情報はなく正常に動作している。そのほかの機器も劣化がみられているが、現在まではこれまでと同じ状態で運用できている。
NVS齋藤:資料8ページ。DSNの運用サポートについて。毎日伝播測距をしていたというが、臼田とゴールドストーンで東西、臼田とキャンベラで南北がとれるのは地理的なメリットがあるのかと思うがどうか

竹内:おっしゃる通りで、日本局がなくゴールドストーンとマドリッド、ゴールドストーンとキャンベラだと時間を分けてとらなければならない。臼田の位置関係は東西と南北のΔドアをとれる大きなメリットがある。キネマティック軌道決定と呼んでいるが、時間をかけずに3次元の位置をとれる。優位性がある手法。今後NASAのミッションでも臼田が貢献することも検討されている。
(以上)


















































