先日、千葉県にあるDIC川村記念美術館とホキ美術館へ行ってきた。休日の様子をレポートしたい。
DIC川村記念美術館は1月に休館することが先日発表され、そうしたらだいぶ混雑するようになったそうで休館を3月まで延長するとのこと。
当館の運営母体であるDIC株式会社は、8月27日付で当館の運営に関する対外公表を行い、2025年1月下旬より当館を休館することを発表しましたが、休館開始予定を2025年3月下旬からに延期することを改めて発表しましたので、お知らせいたします。
当館の休館開始予定の延期に関するお知らせ | DIC川村記念美術館
美術館へ向かう道や駐車場の出口には「休館しないで」の看板がいくつもあった。地元の雇用を守ってほしいということだろうか? 近隣にはこのほかに商業施設はない。
車で朝9時すぎに着いたら(開館は9時半)すでに10人ほどが待っていた。9時15分ごろに大きな門(バスが出入りするほう)ではなく、「DIC川村記念美術館」のロゴの左側にある通路の門が開いた。券売所は2列あり、左の列がカード支払い対応の有人窓口、右の列が現金のみの券売機。券売機のほうが列は短いようだった。券売所に並んだあたりで、たぶん佐倉駅からのシャトルバスが着いた。入場券を買ったら券売機の正面から見て右手の門で開館を待ってもよいが、左手の坂を下ってレストランやギフトショップの下にある門で待つ方が、開館時に美術館の建物に早く着きそうに思えた。
入館したらとりあえずロスコ・ルームへ向かった。1階の一番奥にある。
マーク・ロスコの抽象画は印刷や画面で見ると「ふーん」くらいの感じに思うかもしれないが、実物は縦2メートル以上の巨大なキャンバスに絵の具が塗り重ねられており重厚感や迫力がある。それを薄暗い専用の部屋で7点も鑑賞できるのだから大したものだ。部屋の中央に置かれたソファから見てもいいし、部屋の角から反対側の絵を遠目に見てもよい。実に独特の空間。混雑しているときは入場待ちになったりするとどこかで見たが、今回はそこまで混んではいなかった。
展示の最初の方に戻ると、有名画家の作品がたくさん並んでいる。モネ、ルノワール、ピカソ、シャガール、藤田嗣治、マリー・ローランサン、レンブラントなど。こういうのからコレクションをスタートしたのかな。1枚の絵にいつも2~3人がついているような混雑になっていた。見ていくとジョルジュ・ブラックやジャクソン・ポロック、ルネ・マグリットなども出てくる。展示の後半は現代の抽象作家のコレクション展示や企画展だった。フランク・ステラの黒や灰色のキャンバスに直線を構成した作品がよかった。
音声ガイドはスマートフォンのアプリとして提供されている。イヤホンを持っていくとよさそう。電話をするみたいに端末を耳に当てて聞いている人をちらほら見かけた。館内は電波状態が悪いところもあるので、事前にダウンロードしておくとよい。
ミュージアムショップは狭く、品物を選びたい人と会計をしたい人がたくさんで店内を移動するのも難しかった。今までこんなに混雑することはなかったのかもしれない。先ほど見たフランク・ステラの作品がTシャツになっていた。レンブラントの肖像画を金太郎飴にした「レンブラント飴」はとても秀逸なおみやげだが見つけられなかった。
美術館の外には噴水つきの大きな池、林の中の散策路、サッカーグラウンドより広そうな広場、白鳥がいる小さな池などがある。ぶらぶらすると気持ちがいい。併設のレストランはずっと先まで予約でいっぱいとのこと。10月26日(土)、27日(日)と11月3日(日)、4日(月)はキッチンカーが来るそうだけど、美術館の周囲にはコンビニもない。キッチンカーが来ない日の昼食はここに来る前に用意しておかなければならない。広場で弁当を広げて食事というのもいい。
ホキ美術館
DIC川村記念美術館とホキ美術館は車で30分くらいの距離にある。このあたりの道は歩道がない1車線。
ホキ美術館といえば、空中にぐっと突き出た外観が有名だ。
写真で見ると大きさがわかりにくいが、この部分は1フロアの高さで案外こぢんまりしていた。すぐ隣が普通の住宅地なのも意外だった。反対側にはとても大きな公園(千葉市昭和の森)がある。
こちらは閉館の予定はなく、館内はガラガラでもなく混雑でもない、ほどよい人口密度だった。
さて、ホキ美術館は写実画の美術館である。まるで写真のようにリアルな絵を展示している。作品を印刷物や画面で見ると単に写真と同じなので「なぜこれをわざわざ描くのか、写真があるのに」と感じるかもしれない。しかしマーク・ロスコと同様、実物を間近で見てみると印象が変わるはず。髪の毛の1本、木の葉の1枚が細かく描かれているのがわかる。超絶技巧の世界である。思わず1点ずつ近づいてじっくり見てしまう。
展示されている作品を見ていてなんだか不思議な気分になった。絵画を鑑賞するポイントは「なにを描いているか」と「どう描いているか」だと思うんだけれど、ここの作品たちは「どう描くか」が全部共通で「見たままそっくりに描く」しかない。写実画ではそのぶん「何を描くか」がより重要になるのかもしれない。
ミュージアムショップには展示作品の絵はがきがたくさんある。でもこれは人に送ったり見せたりするより、作品を見た自分の記憶を呼び戻すためのものだと感じた。写実画は細密画でもあるので、小さく印刷された作品だけを見ても魅力が伝わりにくい。大きなキャンバスに描かれた実物を見ておくと、絵はがきサイズでも「ああ、あれだ」と思い出せる。
音声ガイドはこちらもスマートフォンを使う。一部の作品のパネルにQRコードがついていて、これを読み込むと解説を読んだり聞いたりできるしくみだった。館内にはフリーWi-Fiがある。
食事はというと、1階のレストランではフルコースのランチやディナーが提供される。地下1階のカフェには飲み物のほかにサンドイッチやハヤシライスがある。隣の昭和の森の広場にはキッチンカーも来ていたので、散策がてらそちらで昼食というのもいいかもしれない(ホキ美術館は当日なら出入り自由)。