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「このたび、お客様のアカウントが最適化されました」の罠

先日、Google AdSenseからこういうメールが届いた。

「自動最適化が有効化されています。」だそうで「お客様側での対応は必要ございません。」が強調されている。ブログの広告表示の設定をテスト的に変えてみて、収益が増えたので本適用しましたということらしい。

テスト名は「Vignette ads」。あれ、「ビネット広告」ってブラウザの表示領域全体にオーバーレイされる全画面広告のことでは。あれを自分のブログに適用されるのはいやだなあ。

果たして自分のブログ(ここ)を見に行ったら全画面広告が表示された。これはたまらん。AdSenseの管理ページへ行ってビネット広告の表示と「自動最適化」をオフにした。

まめちしき
全画面広告を消すには[閉じる]や[×]をクリックするだけでなく、広告領域外のグレーの範囲をクリックしてもよい

Googleとしては広告をたくさん出してもらって自社の収益につなげたいのだろう。Webサイトの管理者も収益が増えてうれしいかもしれないが、このブログの収益はもともととても少ないので39%増えても雀の涙なのは変わらない。代わりに全画面広告が出るというのでは割に合わない。AdSenseの自動最適化をオンにしていたのは自分だが、「最適化されました」がいいこととは限らないものだ。

カシオの電子辞書XD-4800シリーズ全機種の収録コンテンツを表にまとめた

電子辞書がひとつあると便利だなと思った。特に百科事典がほしい。電子辞書ならいちいちブラウザを開く必要がないし、広告にわずらわされることもない。カシオの電子辞書のうち、高校生向けをうたうXD-4800シリーズがよさそうだ。最新モデルにこだわる必要はないので型落ちの中古品を探そう。

となったとき、各機種に収録されているコンテンツを調べるのがとても大変だった。

電子辞書に収録されているコンテンツは機種ごとに一覧がある。たとえば最新機種のXD-SX4820(2023年発売)は以下。

XD-4800シリーズとして最初のXD-ST4800(2006年発売)のコンテンツ一覧はこちら。

17年間でコンテンツ数が50から230に増えているのがすごい。画面もカラーになって解像度が上がったりしている。じゃあこの中間のどれを買ったらいいだろうか。XD-4800シリーズは2006年以降、ほぼ毎年新機種が発売されている。それぞれのコンテンツ一覧を見ていると、この年だけ収録されなかったコンテンツなんてのもあるようだ。各機種のコンテンツ一覧では「これが収録されていない」ことがわからない。

そこで各機種のコンテンツ一覧を、最新機種から順に表にまとめていくことにした。一日で終わる量ではないので毎日少しずつ。その間にメルカリなどを見て、収録内容と価格で折り合いがつくものを探した。

新しい方から表にまとめていると、辞書類の版が古くなったりその辞典がそもそも収録されなくなったりしていく。また逆に、最近の機種では収録されていないものが古い機種で登場したりもする。漢検TOEIC向けのコンテンツが典型的だ。電子辞書の歴史をさかのぼることになり、なかなか面白い作業だった。

そして完成したのが下の表である。フルHDのモニタでブラウザのウィンドウを最大化すると、表の横幅が全部入るようにしたつもり。

で結局買ったのはというと、2019年発売のXD-SR4800だった。百科事典は『日本大百科全書(ニッポニカ)』と『ブリタニカ国際大百科事典小項目電子辞書版』が収録されている。

最新機種のXD-SX4820と比べると新明解国語辞典が1つ前の第7版であったり、次の機種や前の機種には収録されている旺文社古語辞典が抜けていたりするが気にしない。デジタル大辞泉の代わりに広辞苑(7版)が収録されているのもむしろ好みだ。

とすると、2018年より前の機種についてはコンテンツをまとめる必要はなかったのだろうか。確かに2006年までさかのぼって購入を検討することはなかっただろうから、全機種の収録コンテンツ一覧をまとめる気になったのは編集者的な情報整理欲が大きい。一方、コンテンツの収録傾向を知る上では、ある程度昔の機種についても表にまとめた意味があったと感じた。

タイマーつきのコンロでマクロを組みたい

我が家のコンロにはタイマーがついている。キッチンタイマーと違って時間が来たらオフにしてくれるから、火を消すタイミングでコンロの前に来る必要がない。さらに火力を10段階のデジタルで指定できるので、「火力5で5分間」のように火加減の積分を正確に指定できる。同じ料理をまた作るとき、火力の条件が固定されるので再現性が上がる。

最近圧力鍋で米を炊くようになって、火力とタイマーを組み合わせたマクロ機能が欲しくなってきた。米と水を圧力鍋に入れてふたをし、火力5で6分間、火力2で2分間炊く。その後12分間蒸らしてでき上がりである。炊けたご飯はすぐにラップにくるみ、粗熱を取ったら冷凍するので保温機能はなくてもよい。我が家の年季の入った炊飯器よりおいしく炊ける。

この「火力5で6分間、火力2で2分間」を一度に指定できたらいいなと思うようになってきた。今は火をつけたら6分後に台所へ行き、火力2と2分間のタイマーをセットしなければならない。火をつけてからの6分間+2分間をまとめてセットできたら、台所へ行く回数が一回減ってさらに便利になる。そういうコンロもたぶんあるのだろうな。

検索してみたら、お湯が沸いたら火が止まるコンロや、炊飯モードがあるコンロが見つかった。ただし炊飯には専用の鍋が必要で、圧力鍋での炊飯には対応していないようだった。

五十肩はつらいよ

鎮まれッ……俺の肩(の炎症)……ッ!

去年の7月くらいから、左腕を動かすと肩に痛みが出るようになっていた。これは五十肩ですね。9年前の前回は四十肩だったが今はもう五十肩だ。

今回も時間はかかってもそのうち治るだろうと思っていたら痛みが強くなってきて、左腕で左の脇腹を触ろうとするくらいでも激痛が走るようになった。さすがにちょっとまずい気がして11月から整形外科へ通っていた。

四十肩や五十肩は正式には「肩関節周囲炎」というそうだ。根治する方法はなく、半年から2年ほどでおさまるのを待つ。その間できるのは炎症を抑える注射や投薬、そしてリハビリテーションということになる。

まずヒアルロン酸を注射された。1週間に1回のペースで計6回注射するそうだ。注射はそのあともペースを落として何回か行った。最初に処方された飲み薬と貼り薬は以下。調子がよくなってきたら処方を減らした。

ロキソプロフェンNa錠60mg(毎食後1錠服用)
炎症を和らげ、痛みを抑えたり、熱を下げる薬です。炎症や痛み、発熱の原因であるプロスタグランジンの生成を抑えることにより、抗炎症作用や鎮痛、解熱作用を示します。
レバミピド錠100mg(毎食後1錠服用)
胃粘膜を保護修復する薬です。胃の粘膜を保護する物質(プロスタグランジン)を増やしたり、胃の粘液の増加を促して、潰瘍や胃炎の治癒を促します。
ロキソプロフェンNaテープ100mg(10×14cm非温)(1日1枚14日分)
炎症を和らげたり、痛みを抑える貼り薬です。炎症や痛みの原因であるプロスタグランジンの生成を抑えることにより、抗炎症作用や鎮痛作用を示します。

リハビリテーションでは理学療法士さんが30分ほどかけて肩の周囲をほぐしていく。「手のひらをこの向きにして、こちらへ腕を動かしてください」のように細かく指示され、その通りにしていると腕の可動範囲が少し広くなって面白い。骨や筋肉、腱の構造を熟知しているのだな。

それから「肩がぜんぜん凝ってませんね」と言われた。肩が凝らない自覚はあっても実は凝っているのではないかと疑っていたがお墨付きをもらえた。「凝っていないと言いつつ凝っている人もいるんですけど違いますね」と言うのだから間違いないだろう。

そんな具合で4か月ほど通い、痛みはずいぶん出にくくなった。治療を始めたころは左腕を横から水平に上げるだけでイテテテテだったのが、今はほぼ右腕と変わらない動きができる。上着を脱ごうとしたときや、シャツの背中側の裾をズボンに入れようとしたときは少し痛むが、それももうイテテテテではない。

治療を始めて少し経ったら、二の腕のひじ寄りが痛むようになったことがあった。先生によるとそれは筋肉痛だそうだ。「左肩が痛いから無意識に左腕をかばってあまり使わなくなる。治療で回復してきて左腕をまた使うようになると、使わなくなっていた筋肉が筋肉痛になることがある」とのこと。へぇー、そんなことがあるんだ。宇宙飛行士が宇宙ステーションで体がなまらないよう、運動をたくさんしているのを思い浮かべた。

保険診療リハビリテーションを受けられるのは150日間までと決まっているそうで、期限が近くなってきた。次は1か月後くらいに予約を取ってまた様子を見るか、いったん治療を終了して、痛みがまた強くなったら改めて電話で予約を取るかという話になった。ここまで順調に痛みが引けば、あとは自然に痛みがなくなるのを待つのでもいいだろう。次の予約は取らなかった。

五十肩は治療法がないという知識だけがあったので、医者にかかっても仕方がないと痛みが増す中で思い込んでいた。しかし根治はできなくても対症療法はある。肩が痛み始めたらひどくなる前に整形外科にかかればよかった。

自作キーボードがひとまず完成してしまったがここからが沼

回路から自分で設計したキーボードが普通に使えるようになった。致命的な設計ミスや組み立てミスがなく自分でも驚きだ。名前は「ThumbShift5-15TB」とした。親指シフト入力に向く作りになっている。

KiCad(というフリーの回路設計CAD)で回路図を描いて、

KiCADで基板も設計して、

トッププレートやボトムプレートも設計して、

データをまとめてJLCPCBに発注すると送料込み1万円程度で2週間もかからず基板が届いて、

基板の横を黒く塗って(このひと手間で見栄えがよくなる)、

Pro Micro(マイコン)にコンスルーをはんだづけして、

LEDを基板にはんだづけして、

ダイオードを基板にはんだづけして、

トラックボールユニットにピンヘッダをはんだづけして、

基板にはトラックボールユニット用のピンソケットをはんだづけして、

スイッチソケットを基板にはんだづけして、

リセットスイッチを基板にはんだづけして、

キースイッチとキーキャップとトラックボールユニットを装着してボトムプレートをねじ止めするとハードウェア的には完成して、

ファームウェアを書いて、

QMK MSYSからファームウェアマイコンに書き込むと、

なんと! キーボードとして使えるようになっちゃったのだった。(トラックボールファームウェアはうまく動かなくて修正中)

今回キーボードをわざわざ設計して自作したのは、今使っているキーボードがすでに販売終了しているから。エレコムのTK-FBP044BKという機種である。気に入っているが別に高級キーボードというわけでもない、普通のメンブレンのキーボードだ。

TK-FBP044BKはWindowsMac OSの両方で使えて、Bluetoothで複数台とマルチペアリングでき、USBでも接続できてその間は無線接続でも電池がほぼ減らない。自分にとって申し分のない仕様で10年近く使ってきた。その間に調子が悪くなったり水をこぼしたりして、今使っているのは確か3台目である。

エレコムはTK-FBP044BKの後継機種を出していない。終売になって時間が経ち、中古品を入手しづらくなってきた。今のが使えなくなる前に代わりを用意しておきたい。(これ、地球が隕石で滅亡する前に人類が宇宙で暮らせるようにならなければならない話に似てますね)

幸い、今は好きなキースイッチ、好きなキーキャップ、好きな配列でキーボードを自作できる環境が整っている。基板を発注するまでのデータはフリーソフトで作れるし、発注もネットにデータを上げるだけでよい。先人が獲得してきた自作キーボードの知恵はたくさんのドキュメントにまとめられている。ありがたい時代だ。

ThumbShift5-15TBのキー配列はずいぶん前に考えたもので、実は一度キーボードとして組んでいる。しかし組み立て時にいろいろミスがあって、結局キーボードとして動作することはなかった。そのときの記事は以下。このキー配列にした理由などはここに書いてある。

今回はこのキー配列を踏襲しつつ、一番手前に小さなトラックボールを配置することにした。パレットシステムの「AZ1UBALL」という。またフルカラーLEDを1つつけた。現在の入力モードを知らせるなどに使えるだろう。

自作キーボードのキットを買うことも検討してみたが、親指シフト入力に適したキットとなるとぴったりくるものはなかなか見つからない。トラックボールつきはなおさらだ。大変かもしれないが、自分が使うものは自分で作ろうと考えた。

設計の参考にしたページや電子書籍など

GL516 デザインガイド
テンプレートとなるファイルをもとに、KiCADで回路や基板を設計していく手順が解説されている。ThumbShift5-15TBは基本的にこのデザインガイドを見て設計した。これがなければ自力での設計はとても完遂できなかっただろう。ありがたいことです。ファームウェアまわりの記述はQMK 0.18準拠で古いので、新しいバージョンに合わせて書き直した。
自作キーボード設計ガイド Vol1 設計入門編 - 自キ温泉街販売所 - BOOTH
上のデザインガイドをまとめたサリチル酸さんは、自作キーボード設計の電子書籍も出している。この本ではGuide68という分割型のキーボードを設計していく。デザインガイドより情報量が多く、また設計の手順がちょっと違っていて、そこがまた知見になった。
「自キ温泉街案内所」Discord
サリチル酸さんが運営しているDiscord。キーボードの自作に関するトピックが日々やり取りされている。基板のデザインや発注、ファームウェアのことなど質問させてもらった。とても助かりました。ありがとうございました。
Remap
キーボードのファームウェアを登録し、キーを押したときなにが入力されるかをブラウザ上のGUIで編集できるサービス。ほかにも登録されているキーボードをカタログ的に閲覧し、それぞれのファームウェアのソースリストへのリンクをたどるなどもできる。先人の知恵をいろいろ拝借させてもらった。

パーツを買った店

遊舎工房
秋葉原の近くに実店舗がある自作キーボードのショップ。レーザーカットのサービスもある。ねじやスペーサーを買った。
TALPKEYBOARD SHOP
自作キーボードのパーツ類を販売しているネットショップ。遊舎工房より価格、送料とも安め。ダイオードなどを買った。
秋月電子通商
電子工作全般の総本山ともいえるショップ。秋葉原の実店舗でLEDなどを買った。
千石電商(せんごくネット通販)
秋月電子と同様の電子工作ショップ。秋葉原の実店舗でピンソケットなどを買った。

基板を製造してくれるサービス

PCB Prototype & PCB Fabrication Manufacturer - JLCPCB
今回はここに発注した。基板の製造だけでなく3Dプリントサービスなどもある。安めで早めだが品質はやや劣るという意見が多いようだ。(参考:JLCPCBの発注方法を解説するよ! - 自作キーボード温泉街の歩き方
Elecrow: PCB Prototype & Open Hardware For Makers
JLCPCBと並んでよく知られた基板製造サービス。やや高めだが品質は比較的よいらしく、頒布のための量産はこちらのほうがいいかも。

このあとすること(遠大な目標も含む)

することが多い! カスタマイズもまだまだこれからで、まったくもって沼である。楽しくやっていこう。

この記事はThumbShift5-15TBで書きました。(←これずっとやりたかった)

基板をほしい人いますか?

基板の注文は5枚からだったのでトッププレート、実装基板、ボトムプレートとも5枚ずつ注文しました。ほしい方がいらしたら32名までお譲りします。Twitterなどでご連絡ください。頒布価格はこれから決めます(追記:送料別3,0002,000円にします)。今はトラックボールファームウェアが未完成です。EnterキーのスタビライザーはCostar用の穴がありますが、位置をミスして機能しません。キーケットでお渡しできたら送料がかからなくていいですね。

2024/5/9追記:組み立てのための情報を簡単にまとめました

天キー6で基板を譲った方向けに、ThumbShift5-15TBの組み立てに必要な最低限の情報をまとめました。ビルドガイドとしては不完全ですが、これで一応組み立てられるでしょう。

電話機を買い替える

コードレス電話機の液晶画面がつかなくなって数か月。やっぱり不便なので新しいのを買った。

これまで

サンヨーのTEL-DJ3という子機だけのワイヤレス電話機を使っていた。何度か電池交換をして、今回液晶画面になにも表示されなくなったのも電池切れかと思ったらそうではなかった。買ったのは2010年2月19日だったから14年間使ったことになる。

充電池を2度目に交換した記事でこんなことを書いていた。「充電池を次に交換するのは2021年の半ばくらいかな。東京オリンピックが終わって1年経ってる」。実際は、充電池は2024年の今でもへたっていないしオリンピックはコロナで1年延期された。未来は先の見えないハイウェイだ。

充電池が案外もっているのは、固定電話を使う機会が減っているからだな。なにしろ最近かかってくる電話といえば「リサイクルできるものはありませんか」ばかりだ。

これから

パナソニックのVE-GDL48DL。電話機としては今までと同様子機だけだが、それとは別に親機もある。とはいえ親機には電話をかけたりする機能はなく、小さい家庭用ルータのような外観だ。

電話線は親機につないでおき、子機はスタンドごと離れた場所に置いておけるのが特徴。子機の置き場所に電話のコンセントは必要なく、電気のコンセントだけあればよいのが便利だ。といってもそうしたい希望があったわけではなく、単に子機だけのワイヤレス電話機より安かったのでこれにした。今は親機のすぐ隣に子機を置いてあり真価を発揮していない。「この電話機にしておいてよかった!」となる日がいつか来るといいな。

電話帳登録は漢字変換できるようになっていて技術の進歩を感じる。しかしスマートフォンなら当たり前のことだ。固定電話が個人間のコミュニケーションで主力だった時代はとうに終わっている。スマートフォンを固定電話の子機にできるようになる前に固定電話そのものがなくなりそうだ。

手紙は文字や絵を非同期にやり取りする通信で、郵便局と自宅のポストを介する上に送達に時間がかかる。電話は音声による同期通信でリアルタイム、ただし固定電話しかない時代は電話機のある場所にいる必要があった。どこにいても通話できる携帯電話は便利だが、同期通信なので相手の状況を選ぶ。メールなどのメッセージアプリは文字や絵の非同期なやり取りで、手紙と異なり送達は瞬時だし携帯電話やスマートフォンがあれば場所を選ばない。人々のコミュニケーション方法は案外どんどん変わっているのだな。

今回買った電話機を14年間使ったとしたら交換は2039年。うわー。2035年にあるという関東地方の皆既日食もずいぶん前に終わっている。一体どんな世の中になっているだろうか。

小型月着陸実証機(SLIM)および小型プローブ(LEV)の月面着陸の結果・成果等の記者会見

日時

  • 2024年1月25日(木)14時00分~

登壇者

冒頭言

(國中氏より)

100メートル精度のピンポイント軟着陸に成功と確認。

スラスタの1本が脱落し推力が減衰しつつ目標点から50メートル離れた場所に着陸。

最終着陸の姿勢が予定と異なっていた。

月面撮像には成功。LEV-2はSLIMの姿を撮影に成功。

配付資料

小型月着陸実証機(SLIM)月面着陸の結果について

(坂井氏より)


本日のご報告内容


着陸シーケンスの概要


着陸目標地点の精位置情報


実際の着陸降下について


高度50m付近までの評価/画像照合結果


高度50m付近までの評価/障害物検知結果


高度50m付近までの評価/着陸目標地点へ向けて


高度50m付近までの評価/ピンポイント着陸精度評価


高度50m付近で発生した事象について


異常発生以降の挙動の推定について


推定されている着陸地点


推定されている着陸姿勢


着陸直後の運用について


マルチバンド分光カメラの観測運用結果


今後の復帰運用の見通しについて


まとめ(月面降下・着陸の結果)


まとめ(得られた成果と課題)


応援ありがとうございました。


SLIM搭載超小型月面探査ローバLEV-1

(大槻氏より)


LEV-1ミッションイメージ


LEV-1の運用結果(1月20日


LEV-1達成事項


月面探査ロボットとしての活動時間


跳躍(ホッピング)ならびに車輪回転


地球との直接通信


月面からのUHF帯電波送信


LEV-1の現状と今後について


LEV-2のSLIM撮影およびデータ送信結果

(平野氏より)


LEV-2とは?


LEV-2の主な機能


LEV-2の月面動作シーケンス


LEV-2がフロントカメラで撮影した画像


LEV-2の画像から確認できたこと


今後の方針


質疑応答

ニコニコ動画ななお:質問の前にJAXAの名誉をかけて確認したい。國中氏は「ぎりぎり合格の60点」と以前の会見で話していたが改めて点数を聞きたい

國中:のちほど質問があれば答えたい。60点ではないですね。

ななお:LEV-1、撮像は未確認とのことだがどういう状況か

大槻:撮像結果がデータの中に含まれていない。

JSTサイエンスポータルくさか:100メートル精度について、悪く見積もって10メートル、よければ3~4メートルの結果についてどう理解したらいいのか

坂井:従来の月着陸の精度はキロメートルオーダーだった。悪く見積もって10メートルは自分でも信じられない飛躍と思う。正常に着陸するなら10回中7回は10メートルで着陸できると見込んでおり驚くことではないという受け止め。

フリーライター荒舩:あの着陸姿勢はスラスター1本がなくなった結果自分で制御してああなったのか。坂井さんの受け止めは

坂井:現在はいろいろ解析中。接地以降にどうなったかはまだわかっていない。探査機は下向きに下りてきて接地したということはわかっている。姿勢は復帰見込みのこともありいろいろ解析していた。あの姿勢を見たのは我々もおとといの夜くらい。ただあの姿勢は早めに予想していた。よくあの姿勢でとどまってくれた。太陽電池が地面に向いていては太陽光が当たらない。

フリーランス秋山:20日の会見の時、試験的に越夜を試みるとあったが

坂井:SLIMは越夜の機能は持っていない。昼間であっても月の昼間は高温になる。絶対に耐える設計にはなっておらず数日は運用できるようにしている。バッテリの切り離しと越夜には直接の関係はない。発生電力が失われたらすぐにバッテリを切り離す計画だった。
越夜の可能性はゼロではないと考えており実験しようと思っている。そのときはやはりバッテリを切り離すと考えていた。

ニッポン放送畑中:着陸以降いろいろ節目があったと思うが坂井さんの心境、管制室の様子は

坂井:チームは冷静に対応してくれた。短い時間でやれることはしっかりできた。チームメンバーにたいへん感銘を受けた。
そのあとは分光観測させたいと思っている。
着陸後に衝撃を受けたのはLEV-2の画像。あれすごいですよね。CGで見ていたとおりと言えばそうなんですが、自分たちが創ったものが月面にあることの衝撃。見たときに腰が抜けそうになった。LEV-2のチームに感謝。

月探査情報ステーション寺薗:着陸直後に電力がとだえたが、その場合の運用手順はあったのか、訓練をしていたのか

坂井:運用訓練はいろいろ行っていた。電力喪失の原因はいろいろ考えられた。あの姿勢になる想定はなかったが。

NewsPicks中居:太陽電池の復旧の可能性についてですが、月の昼間は100℃以上になり、半導体が壊れてしまう可能性もあると伺いました。半導体が耐えられたかどうかはどの時点でわかるのでしょうか。また高温化以外のリスクは何かありますでしょうか。

坂井:特定が難しい。大きなリスクになるがなにが起きたのか確認できた限り異常な機器はないが、太陽電池は確認できておらずリスクはある。またリスクとしては考えにくいが、着陸姿勢がどのくらい安定しているかも気になる。全力で復旧運用したい。

宇宙作家クラブ今村:LEV-2は複数の画像を撮影しているのかや、撮影したが破棄した画像の枚数はわかるか

平野:複数の画像を撮影しているのはわかっている。解析中。

今村:今後新しい画像が出てくる可能性はある?

平野:はい。

NVS齋藤:LEV-2の稼働時間や移動距離などは

平野:それも解析中。

日刊工業新聞飯田:太陽電池に光が当たるのはいつごろか。充電の操作について詳しく

坂井:このあと1月中は陽が当たるだろうと考えている。自分で電源オンになったあと指示待ちになる。こちらから一定の間隔で「返信を送れ」という信号を送る。その後は分光観測などを行う。

フリーランス鳥嶋:スライド14ページ。メインエンジンの問題は外的な要因がとあったがたとえばどういうことが考えられるのか

坂井:メインエンジンは正常に動作していたため外的要因と考えている。具体的には調査中。考えていることはあるが言及は差し控えたい。

鳥嶋:メインエンジンそのものになにかあった可能性もある?

坂井:基本的にはその通り。外的要因を考えたあとメインエンジンに戻ってくることになるだろう。

鹿児島放送南:基本的な質問ですが①SLIMは鹿児島・種子島から打ち上げられた探査機です。鹿児島でも成功を大変喜んでいます。一言コメントをお願いいしたいです。②今回の成功の意義を改めてひとこと総括願います。

坂井:打ち上げは種子島から9月に。思い出してみると天候不順でなかなか打ち上げ日が確定しなかったが9月7日に見事に打ち上げた。
今後の意義は、プロジェクトの公式見解は100メートルのピンポイント着陸ができて一番の成果となるし、数日前までこう答えようと思っていた。
スライド4ページ。SLIMの着陸目標点はクレーターとクレーターのはざまにある場所をあえて選んだ。

分光観測のチームが「あそこに下りたい」と言うのでそこへ行った。SLIMでなければ「そんなの無理、何言ってるの」と追い返されただろう。なるべく安全に下りるものとか、場所を選べるわけはないと思われていた。そこへ挑戦して着陸できた。陸上競技などでも一度記録が伸びるとほかの選手がそれに続くことがある。今後今まで行けなかった所へ行くミッションへの扉を開いたかもしれない。そういうところにSLIMのなしとげた意義があるのではないか。

フリーランス林:坂井さんは画像を見て腰を抜かしたと坂井さんが言っていたが平野さんの印象は。また画像からわかることは

平野:いろいろな感情が大渋滞していた。ちゃんとSLIMが写っている画像を転送できたのでやった、よかったという気持ち、応援と期待にこたえられたという気持ち、SLIMがこういう姿勢になっていて当初の想定と違っていた。着陸後の想定とは同じだったのでそこが。
画像の中心のパケットロスがあったこと。本当はもっときれいな画像を撮れたのだが通信の制限などもあってこうなった。

坂井:こういう写真を撮れたことにたいへんな衝撃を受けた。一枚の写真が多くのことを語る。こういう画像が手に入ったことはとても恵まれている。

林:写真を見るとスラスター1本は残っていますよね。もう1本は

坂井:まだわからない

フリーランスあかね:「今回は技術実証できなかった2段階着陸のダイナミクス」とあるが、まずは1本目の足を出して着陸し倒れ込むものと理解している。実際はどうだったのか

坂井:途中でも申し上げたが接地までの降下速度が遅いこともあり姿勢はわかっている。その後はまだよくわかっていない。降下速度や横方向の速度も条件がある。横方向は決められた範囲を超えてしまったとわかっている。入口の条件を達成できなかった。2段階着陸をできなかった理由。

NHKてらにし:マルチバンド分光カメラについて。333枚中257枚採用というのはどのくらいの成果か

坂井:専門でないので自分の理解だが、全体をまずなめてみてどこを観測するか特定するもの。すでに6個の観測対象を特定できている。その目標はすでに達成している。
分光カメラはとてもいいもので、ズームやオートフォーカスできる。6つの観測対象についてズーム画像を撮影して成分分析を行うことになっている。復旧できればそういう科学観測で月の組成を理解できるだろう。

朝日新聞いしくら:前回の記者会見で國中先生に「何点ですか」と聞いた者だが改めて聞きたい。またその理由。坂井さんにも現時点の評価を。

坂井:所長の採点を聞くと発言できなくなるので私から。自己採点としては、ピンポイント着陸については百点満点。500点や300点とも言いたいが見込んだとおりの性能を発揮してくれたので、エンジニアのメンタリティとしてあえて100点満点と。
ピンポイント着陸についてはまだわかっていないこともある。分光観測を復旧させたいのでなかなか難しい。こういうたとえは不謹慎と思うが飛行機にたとえると、小型の双発の飛行機が、片方のエンジンを失った状態でなんとか着陸したものと感じている。エンジンが故障した原因は必ず突き止めなければならない。一方で無事に着陸させた機長はSLIMくんと思うが、見守っていた我々としては審査員特別賞をあげたい。

國中:宇宙研としては500Nスラスタがたいへん惜しかった、あと数分もってくれればのに大変もったいないという印象です。宇宙研は500Nスラスタはいい成績を出していない。最初の火星探査機のぞみはスラスタシステムのエラーで火星に軌道投入できず、金星探査機あかつきもスラスタシステムの故障があり当初予定の周回軌道に入れなかった。
SLIMでいい成績をおさめて次も使っていこうと思っていた。MMXでは6本使う。方式など違うのでSLIMの結果がMMXに直接影響はしないが、500Nスラスタを使い込めるようにしていかなければならないが影響が出ることを危惧している。
なのでSLIMの点数は当初の「ぎりぎり合格60点」に、マルチバンド分光カメラがうまくいったので1点、LEV-1とLEV-2が正確に動いたことでそれぞれ1点ずつ足して63点でお願いします。

東京新聞かとう:SLIMの着陸姿勢を推定するのにLEV-2の撮影データは補強になったか。また撮影時刻は

坂井:先ほどの資料17ページでCGがあったが、あの画像はLEV-2の写真を見る前に作ったCG画像。LEV-2の画像は答え合わせになった。推定して「きっとこうだろう」が合っていた。

平野:撮影時刻はなんとなくわかっているがその確からしさを分析中。全体の中での時刻も解析中。

共同通信須江:2段階着陸について。機体の回転などに備えるしくみもあったが想定外の挙動をした?

坂井:降下速度は想定内だったが横方向の速度が想定範囲外だった。
解明できていないが、あの姿勢でも着陸できたのは2段階着陸の設計が寄与している可能性はある。

日刊工業新聞飯田:國中所長に。500Nスラスタのどういうところが難しいのか。MMXの設計変更も可能性はあるのか

國中:500NスラスタはJAXAの衛星ではたくさん使っている。HTVなど。しかしなぜか宇宙研が採用すると完璧な成功まで持って行けていない。なぜなのかずっと考えている。使い方が違うのは、燃料を入れてから使い始めるのが半年や1年後であること。そういう宇宙での待機期間の長さでシステム上問題が発生するのかも。あかつきでは長期間運転しない間にえんが発生して失敗。
宇宙研はうまく使いこなせないというのが事実としてある。MMXは500Nがないとどうにもならない。水平展開があれば反映させて成功させたい。
のぞみやあかつきの経験はMMXに入っているがSLIMの知見はまだ。MMXには引き続き最大級の努力をしていきたい。

日経新聞こだま:SLIMのプロジェクトはSELENE-B以降20年ごしの想いがあれば

國中:宇宙研の月へのアプローチという意味ではひてん、LUNAR-A。SELENE-Bもあった。すべてが成功したわけではなく打ち上げまで至らなかったものもある。
SLIMについては実に宇宙研ぽい結末になってしまって申し訳ない限り。ピンポイント着陸の技術を獲得したのは大きい。100メートル精度で山のてっぺんに下りることもできると証明された。MMXフォボスの上に下りなければならない。宇宙研としてはこれをカタパルトにしてますます惑星探査を拡大していきたい。

坂井:プロジェクトを預かってきた者としての20年について。
SLIMに関わるようになったのは2013年ごろ。20年間の半分に参加してきた。20年前からSLIMのことを考えてきたベテランがチームにもいる。そういう人たちが強力な核になってくれた。
プロジェクトが発足してからは多くの人に参加してもらった。中堅、若手メンバーとベテランが大変うまく融合してこの成果につながった。
いいチームでしたので感謝の念しかない。20年前からこの構想をひっぱって来られた澤井、福田両教授には大きく感謝。

TBSテレビこまつ:画像やデータが月の成り立ちの解明にどう役立つか、どんな意義があるか。

坂井:月の成り立ちの解明については分光観測にかかっている。復旧運用にかかっている。
100メートルの意義は今まで誰もできなかったことを実現して下りられるところに下りることを実証。
新しい扉を開き、新しいミッションができることになったのが大きな意義がある。

フリーランス大塚:SLIMとの通信が復旧したときの運用について。スラスターを噴射して姿勢を戻してみたりするか。

坂井:仮定の話になるが運用再開して分光観測できたらそのままの状態で越夜をさせて、その後分光観測に再度トライする。観測できるならあえて倒さず次のチャンスにかける、と考えるだろうが現時点では確定していない。

大塚:縦向きで越夜になることのリスクは

坂井:詳細な熱解析が間に合っていない。越夜でどちらの姿勢がいいのかはわからない。

(以上)