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東京都の新規感染確認者数を7月11日までに100人程度に減らすのはまず無理

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東京都の緊急事態宣言は6月20日で解除され、蔓延防止等重点措置に移行してしまった。東京都の場合、新規感染確認者数が100人程度まで減らないとそのうちまた緊急事態宣言を出さなければならなくなる。

しかるに4月25日に発出された緊急事態宣言から昨日までの推移はこんな感じだった。

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新規感染確認者数の7日間平均の前週比は、5月中旬から1倍を切る日が続いた。1倍未満になると新規感染確認者数は減少傾向にあるといえる。倍率はおおむね0.8倍程度で減り方はゆっくりだが、新規感染確認者数の7日間平均のグラフは6月上旬まで少しずつ減っていった。

しかしその後は7日間平均の前週比が上がり始め、減り方がゆるやかになっていく。6月18日と20日にはついに1倍を上回った。どうやらリバウンドが本格的に始まったようである。20日の新規感染確認者数の7日間平均は391.9人だった。前回もそうだが、感染者がこんなに多い状態で緊急事態宣言を解除してしまうのはおかしいと思う。

  • 第1回の緊急事態宣言を解除した日(2020年5月25日)の7日間平均:6.9人
  • 第2回の緊急事態宣言を解除した日(2021年3月21日)の7日間平均:301.1人
  • 第3回の緊急事態宣言を解除した日(2021年6月20日)の7日間平均:391.9人

緊急事態宣言を発出するたび、解除のときの新規感染確認者数は増えている。それでも大丈夫と思ってのことかもしれないが、2回目までは結局感染者が増えて緊急事態宣言を再発出することになった。今回もおそらく、近いうちに同じことになるだろう。

今回の緊急事態宣言が発出された4月25日から今日までの推移と、そこからどんなペースで減らしていく必要があるかのグラフを今回も作っている。

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(毎日の推移はTwitterのスレッドで見ることができる。→4月分〔4月7日から〕、5月分6月分/画像だけを見たければはてなフォトライフの「covid-19」フォルダへ)

7月11日までに新規感染確認者数の7日間平均を100人にするには、明日から週0.62倍のペースで減らしていく必要がある(青い線)。今日の7日間平均の前週比は週1.03倍だった。そんなペースはまず無理だろう。

では2月ごろの、週0.7倍に減るペースだとどうなるだろうか。7月11日には141人まで減る計算になった(紫の線)。このペースで100人になる日はいつだろうか。それが下のグラフである。

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7月18日に99人になる計算となった。とはいえ明日から突然週0.7倍に下がるとは思えないのでこれも現実的ではない。どちらにしても、7月11日に蔓延防止等重点措置は解除できないだろう。

一方、ワクチンの接種は少しずつ進んでいる。東京都の場合、6月18日時点で高齢者約311万人のうち、1回目を接種した人は132万人(42.4パーセント)、2回目を接種した人は32万人(10.3パーセント)となった。

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東京都新型コロナウイルスワクチン接種ポータルサイト 東京都福祉保健局

体の中に十分な抗体ができるのは、2回目の接種から2週間後だという。企業などでワクチン接種を行う「職域接種」も今日から本格的に始まった。しかしワクチン接種が東京都の新規感染確認者数を抑えるようになるのはもう少し先になりそうだ。

さて、オリンピックの開会式は7月23日である。政府はいつの間にか開催するかどうかの話をしなくなり、ここ数日は観客を入れるかどうかの話ばかりになっていた。そして今日、「観客席の半分、1万人まで」という基準を決めたという。

メインスタジアムの収容人数は68,000人だそうなので、1万人となると約15パーセント、おおむね6席に1人という計算になる。ただし学校連携の見学と関係者は含めないそうなので、もうちょっと混雑するかもしれない。競泳が行われるアクアティクスセンターは定員15,000人だから半分まで入れることになる。2席に1人は最近の映画館がよくやっている。換気をよくして、声を出さずに応援するのを徹底できれば大丈夫…だろうか?

いやいや、そもそも無観客のほうが感染のリスクが少ない。もっといえば開催しないのが一番低リスクだ。当たり前である。「野球やJリーグではクラスターは発生していない」というが、これらは海外から選手や関係者を、国内では全国からボランティアを数万人単位で集めたりしない。加えてオリンピックは単発のイベントなので関係者も観客も感染対策に慣れていない。またオリンピック関係で移動する人は1日あたり数十万人になるという。野球やJリーグは数万人。開催規模が違いすぎて同列に語ることはできない。

感染を抑えるにはオリンピックを開催しないのが手っ取り早い。オリンピックはそもそも単なるスポーツ大会である。自分の命や健康よりオリンピックが大事という人はいない。でも政府や関係者はどうしても開催したいようだ。あげく菅総理は「オリンピックで希望と勇気を世界に届ける」などと言っている。それと引き換えに我々国民の命や健康がリスクにさらされるのだから、どう考えてもつり合う話ではない。

菅総理は「国民の命と健康を守るのが最大の責務」とも語っている。でも言っていることとやっていることがちぐはぐすぎる。記者会見でオリンピック開催について質問されても関係ない話しかしない。こちらの頭がおかしくなりそうだ。

政府は安心、安全なオリンピックを開催したいならもっと本気で対策を取ればいいのに中途半端だし、人の流れを抑えたいなら仕事で家を出る人を減らすために「金は出すから家にいろ」とするのが一番なのにそれもしない。自殺者が増えてもおかまいなしだ。国民の生活のことを考えているようにはまったく見えない。

政府の分科会の尾身茂会長に「パンデミック下では普通オリンピックを開催しない」と言われると自民党幹部が「言葉が過ぎる」などと不快感を示したり、会長の見解が政府の方針に合わないと田村厚生労働大臣が「自主研究の発表にすぎない」と牽制したりする。「専門家の考えを受け止めてしっかり対応したい」みたいな建前すら出さず、専門家の意見の中から政府に都合のいいところだけつまみ食いしたい意思がはっきり見える。おまけに昨日は橋本聖子組織委員会会長が「尾身会長から中止の提言がなかった(から開催する)」などと言い出した。直前の提言ではそうだが、上の「普通はやらない」を都合よく忘れてしまったらしい。あきれて何も言えない。

毎回書いているが、上のようなグラフを政府関係者が作っていないわけがない。これを見れば緊急事態宣言を解除できるタイミングではないのは明らかだ。にもかかわらず知らんぷりして解除してしまう。その結果オリンピックを開催できれば政府/自民党やお友達の財布はふくらむし、自動的にドラマが生まれて国民は勝手に感動し支持率回復を期待できる。そのまま総選挙に入れば今回も勝てるという腹なのだろう。オリンピックのあとに感染が拡大しても「オリンピック開催と感染拡大の因果関係は不明」と言うだろうし、「責任を痛感している」と言ったとしてもそれだけで、自ら責任を取ることはないだろう。

ウイルスは人間の都合を忖度しない。感染対策をゆるめれば必ずそこから感染が拡大する。水際対策を徹底せず新型コロナウイルスやその変異株を流入させてしまったのが典型的だ。緊急事態宣言もあわてて解除するとすぐに感染が再拡大する。それで大阪府は大変なことになってしまった。オリンピックも同様で、感染対策がオリンピック向けの特例でゆるめられれば必ず感染が広がる。これは確率が上がるという話なので「必ず」は「おそらく」にはならない。

早くワクチンを打たせてもらいたい。新規感染確認者数が100人に減るには、ワクチンが若い人にも十分普及するまで待たなければいけないのだろうか。

追記

続きを書きました。