- これまでの記事
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- 2021年2月18日:東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数は順調に減っています
- 2021年4月30日:東京都の緊急事態宣言は5月11日には解除できないでしょう
- 2021年5月11日:東京都の緊急事態宣言は5月31日の解除も難しそう
- 2021年6月1日:東京都の緊急事態宣言を6月20日に解除するのはやっぱり難しいのでは
- 2021年6月21日:東京都の新規感染確認者数を7月11日までに100人程度に減らすのはまず無理
- 2021年7月13日:東京都の緊急事態宣言を8月22日に解除するにはどうしたらいいだろうか
- 2021年8月23日:東京都の緊急事態宣言が終わる9月12日までに感染者が十分減るとは思えない
- 2021年9月13日:9月30日には東京都の新規感染確認者数はかなり減りそう
19都道府県に出されていた緊急事態宣言と、8県に出されていた蔓延防止等重点措置はすべて9月30日をもって解除される。
「これまでの記事」の期間で東京都の緊急事態宣言が解除されたのは3月21日と6月20日。いずれも新規感染確認者数が十分に減ったとはいえず、これで解除しちゃって大丈夫かねと思っていたら案の定、どちらも3週間ほどで蔓延防止等重点措置や緊急事態宣言に逆戻りしていた。
しかし今回はだいぶ事情が違う。8月の感染爆発を乗り切って、1日の新規感染確認者数は1か月後には10分の1に激減した。30日の新規感染確認者数の7日間平均は257.6人。よかった。今までの感覚だと、もうちょっと減るまで宣言は解除しないのがいい気もしないではない。しかしここまで一気に減った要因には今までと違う要素、つまりワクチンの普及があるだろう。とするとこれくらいで解除してもリバウンドはそう大きくならないかもしれない。
8月は毎日夕方に発表される新規感染確認者数が恐怖だった。今日も一気に増えているのではないか。医療機関からは悲鳴のようなツイートが流れてくる。うっかりけがをしたり倒れたりしたら、ふだんなら助かるものでも助からない可能性がある。となるとなるべく家にこもっているのがいい。このままさらに増えたらどうなるのか。用事で都心に出るときはなるべく周囲のものに触らず、アルコールボトルを見つけたらこまめに手を消毒する。用事が済んだら寄り道しないでまっすぐ帰る。ずいぶん気を遣っていた。
こういうストレスは自分にとって意外と大きかったようだ。9月に入って新規感染確認者数がはっきり減ってきたら、趣味の活動をする意欲が出てきた。気持ちに余裕が出てきたと感じる。
7月12日の緊急事態宣言発出から9月30日まで、東京都の新規感染確認者数のグラフは下のようになった。
すごい勢いで上がったあと、8月下旬からすごい勢いで減っている。新規感染確認者数が1,000人を切った9月中旬を過ぎると、数字が小さくなりすぎてグラフを追いにくくなるレベルである。
7日間平均の前週比は0.5倍前後ときわめて低い水準を保っている。これは去年の5月、最初の緊急事態宣言の終盤ごろの数字である。
あのころニュースで見る都心は人影がまばらでがらんとしていた。ああいう状態にならなくても今のような減少傾向を作れるようになったのは、ワクチンの接種率が上がったのと新型コロナウイルスへの対処法がわかってきた成果といえるだろう。
陽性率も今は3パーセントほどと落ち着いた。陽性率は検査数に対する感染者数の比で、陽性率が高いと検査されていない感染者が市中に多い、つまり検査が追いついていないという目安になる。ふだんは5パーセント前後だが、8月の流行期は24パーセントまで上がった日もあった。陽性率が十分下がったので、「検査数を減らして新規感染確認者数を少なく見せているに違いない」みたいな意見が間違っているとわかる。
- 東京都の陽性率のデータはここで見られる
- モニタリング項目(4)検査の陽性率,検査人数 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/positive-rate/)
10月1日からのグラフをどうするか考えた。緊急事態宣言などは出ていないから期限はなく、いつまでのグラフにするかの目安がない。グラフの右端をいつも最新の日にして、棒グラフの1本の幅が毎日少しずつ狭くなっていく方式に戻してもよいが、あれはGoogleスプレッドシートだとグラフの設定を毎日変えねばならず面倒だ。
そこで、新規感染確認者数が500人を切り、同時に7日間平均の前週比が0.5倍を切った9月24日を起点にして、11月30日までのグラフにしてみた。
左の軸の上端は0.6倍、右の軸の上端は500人しかない。すばらしい。第5波のグラフは左軸が2.5倍、右軸が6,000人だった。
今の7日間平均の前週比が続くと、新規感染確認者数の7日間平均は10月9日に100人を切る。10月31日には9.1人、11月30日には0.4人まで減ってしまう。そこまでいけば本当にすごいが、10月1日に全国の緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が全部解除されたらさすがにゆるんで、7日間平均の前週比はもうちょっと上がるのではないか。上のグラフでいうと、赤い線は11月30日に紫の線(7日間平均100人)と青い線(7日間平均10人)の間に収まりそうな気がなんとなくする。(※今までの傾向からそう感じるだけで根拠はありません)
8月の毎日5,000人という状況から9月の終わりにここまで一気に減ったのはなぜか、専門家にも確かなことはわからないらしい。ワクチンの接種が進んだことと、感染者がものすごく増えたためにみんながびっくりして行動を抑制したからという予想はできるが、それが正しいといえる根拠は今のところないようだ。
個人的には減った理由よりも増えた理由を知りたい。1月の第3波では一日の感染確認者数が2,000人を超えたあたりで下がり始めた。5月の第4波では1,000人に届かず下降に転じている。しかし今回は5,000人まで上がり続けた。これはなぜなのか。デルタ株の感染力のせいか。オリンピックの浮かれた空気が関係していたのか。これとこれが理由でした、という結論は出ないかもしれない。でも今後もそこまで上がりうると思うと、どんな可能性が考えられるか程度でも知っておきたい。
第5波は乗り切ったが、第6波が来ないということはないだろう。ワクチンをたくさんの人が打ったので重症化しづらいとはいえ、減ったら増えるのが今までの流れである。それがいつ来るのか、どこまで上がるのか事前にわからないのがもどかしい。
岩田健太郎医師は第5波の感染爆発を乗り切った経験から慣れが出て、感染確認者数が第5波より多くなるかもと書いている。
- コロナの急激な収束をもたらした要因とは ワクチン、行動自粛、そして…… | ヨミドクター(読売新聞)(https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20210929-OYTET50011/)
感染者がものすごく増えれば、重症化率が低くても絶対数は増えてしまう。ワクチンは打ったし第5波を乗り切ったといっても安心はできない。ワクチン接種が日本より早く進んだ国でも感染が再拡大している。同じことを起こさないように、今しばらくはマスク、手洗い、3密の回避を続けていきましょう。
- 第5波の総括はこちらでも
- 新型コロナ第5波を振り返って 過去最多感染者数と低下した致死率 今後取るべき対策は?(忽那賢志) - 個人 - Yahoo!ニュース(https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210930-00259117)
そしてほどなく発足する岸田文雄首相の新政権では国民の生活をきちんと支え、安心して暮らせる政策を進めてほしい。
関連リンク
東京都の感染者数などの情報源
以前も書いたが、改めてまとめておきたい。
毎日の新規感染確認者数
東京都福祉保健局のページ最上部にある「新型コロナ関連 患者の発生(第n報)」のリンクから見ることができる。過去の分はページ下の「報道発表」から。
発表は毎日16時45分で、この段階では「別紙のとおり」でPDFへのリンクが作られる。ここで発表されるおもな数字は以下。
- 新規感染確認者数(性別ごとの人数、65歳以上の高齢者の人数を含む)
- 直近7日間の移動平均と前週7日間の移動平均、対前週比(このブログで「7日間平均の前週比」と書いている数字)
- (参考)行政検査数
- 検査件数の3日間移動平均と、そのもととなる3日間の検査数(この数字は速報で、後日増えることが多い。最終的な数字は「東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数 - データセット - 東京都オープンデータカタログサイト」で見ることができる)
- 重症者数
次に18時に追加情報が発表され、PDFへのリンクが追記される。おもな数字は以下。
- 都内での感染者発生数
- 累計の人数のほか、入院中、宿泊療養、自宅療養、入院や療養を調整中の各人数
毎日の死亡確認者数
上と同様、「東京都福祉保健局」。ページ最上部にある「新型コロナ関連 患者の死亡(第n報)」のリンクから見られる。過去分はページ下部の「報道発表」から。
重要なのは、ここで発表されるのはあくまで、新型コロナウイルスで亡くなったことがこの日に確認された人数であること。つまりこの日亡くなった人数ではない。
例として9月30日分は以下である。
- 新型コロナウイルスに関連した患者の死亡について(第2529報) 東京都福祉保健局(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/hodo/saishin/corona2529.html)
亡くなった方の年代や性別、居住地、診断日のほかに「死亡日」の欄がある。9月30日発表分で一番昔は8月17日。ほかの方の死亡日も9月29日や30日は一人もいない。なので、発表された死亡者数を見て前日より増えたとか減ったと考察するのは適切ではない。
「都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」にある「死亡日別による死亡者数の推移」には、発表される死亡日に合わせて修正されていくグラフが公開されている。
これを見ると、やはり8月は死亡者が多めで、その後減ってきているとわかる。
PCR検査や抗原検査の検査数
「都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」の中の「検査実施件数」で公開されている。ただしこれは東京都福祉保健局の発表数字と同じ速報値であり、最終的な数字は既出の「東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数 - データセット - 東京都オープンデータカタログサイト」で確認できる。
陽性率
「都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」にある「モニタリング項目」で、毎日18時から21時ごろに更新される。この数字は7日間平均なので、曜日や休日での検査数の変動はならされている。
陽性率の変化のグラフは、この記事では既出の「モニタリング項目(4)検査の陽性率,検査人数 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」で見ることができ、また発表されたデータの細かい数字は検査数と同様「東京都 新型コロナウイルス感染症検査の陽性率・検査人数 - データセット - 東京都オープンデータカタログサイト」から閲覧・ダウンロードできる。
病床の逼迫率
「国のステージ判断のための指標 東京都福祉保健局」で1週間おきに更新されている。確保病床の使用率、入院率、入院率のうち重症者用病床の使用率がわかる。
全国の状況は「COVID-19 Japan - 新型コロナウイルス対策ダッシュボード #StopCOVID19JP」で見ることができる。8月は多くの都道府県が黒かったが、今も黒いのは愛知県だけである。(追記:数日後には愛知県の病床逼迫も解消された)
ワクチンの接種状況
「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)) | 政府CIOポータル」で見ることができる。9月29日の全人口に対する接種率は、1回目が63.51パーセント、2回目が53.50パーセントとのこと。