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9月30日には東京都の新規感染確認者数はかなり減りそう

これまでの記事

案の定、9月12日に緊急事態宣言を解除することはできなかった。9月8日には、30日まで宣言を延長するという話になった。

前回の記事を書いた8月22日時点のグラフはこんな感じ。

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8月22日は、新規感染確認者数の7日間平均の前週比は1倍より少し大きかった。これが1倍を切れば新規感染確認者数は減少傾向にあるといえる。

その後、9月12日にはこうなった。

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7日間平均の前週比は8月25日に1倍を切った。そのあともどんどん下がっていき、9月12日には0.54倍まで来ている。この水準まで下がったのは2020年5月、1回目の緊急事態宣言の終盤以来である。都が発表する陽性率も最大約25パーセントから10パーセント程度まで下がった。どうやら第5波は乗り切ったようだ。

ここまで下がると毎日の新規感染確認者数はぐんぐん減っていく。とてもいい傾向だ。とはいえ12日の新規感染確認者数の7日間平均は1,384人で、緊急事態宣言を解除するにはまだ多かった。今回の第5波は1日の新規感染確認者が5,000人以上と今までになく上がってしまったため、減るのにも時間がかかっている。

6月16日に新規感染確認者数の7日間平均が上がり始めてから9月12日まで、感染者数の累計は約20万人である(166,915人→366,553人)。1日の新規感染確認者がこれまでで一番増えた第3波の始まりを去年の10月26日、終わりを今年3月8日とすると、この期間の感染者数の累計は約83,000人だった(30,013人→113,571人)。第5波の3か月間の感染者は、第3波の4か月半の2.4倍にもなった計算となる。

9月30日までに、新規感染確認者数の7日間平均はどのくらい減るだろうか。下のようなグラフができた。

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これは右の軸の一番上が6,000人と高いので、最近の数字に合わせて一番上を1,500人にしてみると下のようになる。

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この中の赤い線、7日間平均の前週比が9月12日の0.53倍を維持したまま減っていくとどうなるか。下のような計算になった。

  • 9月17日に新規感染確認者数の7日間平均が1,000人を下回る
  • 9月24日に新規感染確認者数の7日間平均が500人を下回る
  • 9月30日に新規感染確認者数の7日間平均は277人になる

7日間平均の前週比が今後さらに下がっていけばこれらはもっと早まるし、30日の予想人数も小さくなる。そしてそれはあり得ない話でもなさそうだ。

ところで、そもそもなぜ第5波ではここまで数字が上がり、そして急激に下がっていったのだろうか。すべては緊急事態宣言下で起きたことなので、もはや宣言そのものに感染者を増やしたり減らしたりする効果はないように思える。

今までと異なり、1日の新規感染確認者数が5,000人になるまで増え続けた理由はなんだろうか。やっぱりオリンピックがかもし出すゆるみの雰囲気があったからか。政府がどれだけ自粛を要請しても、オリンピック開催が「私は好きにした、君らも好きにしろ」というメッセージになっていたことはまず間違いがないだろう。それに開会式のために祝日を移動した結果の4連休や閉会式の3連休も外出を後押ししただろうから、これも間接的にオリンピックが原因といえる。本当は自粛なんてしたくない人たちに「オリンピックもやっているのだから」と口実を与えてしまったのではないだろうか。

一方急激に減った理由についてはこちらの記事で考察されている。

この記事で減少の原因としてありそうなのは、「リスク認識による自粛と緊急事態宣言での接触減」および「ワクチンの普及」とされている。

つまり感染者が増えるとびっくりして感染対策を思い出すのと、ワクチン接種が進んできたからというもの。リスク認識の話は個人的な感覚でも思い当たるものがある。お店の入口で手にアルコールをシュッとやる人が7月ごろは減っていたが、8月以降はまた増えてきたと感じる。こういう細かいことの積み重ねとワクチン接種によって、感染者が減ってきたという話は納得がいく。

一方デルタ株は子供に感染しやすいから、9月の新学期でまた増えるのではないかという意見もあった。しかし今のところ減少傾向は続いている。新学期での増加分は減少傾向をひっくり返すほどではなかったようだ。

ワクチンの効果は、亡くなる人の数が減っていることでもわかる。先ほど第5波の感染者数は第3波よりずっと多いと書いた。一方で同じ期間の死亡者数を見ると、第3波が1,032人(447人→1,479人)だったのに対し、第5波は495人だった(2,171人→2,666人)。これは高齢者から順にワクチン接種が進んだ結果ではないだろうか。

この調子で9月30日に緊急事態宣言は解除されるだろうか。少なくとも新規感染確認者数は100人とまではいかなくてもだいぶ少なくなりそうだ。でも今回は「減ったから解除しまーす」と単純なことにはならない。新型コロナウイルス感染症対策分科会は9月8日、緊急事態宣言の解除を新規感染確認者数ではなく医療負荷から判断するよう変更するとした。

医療負荷については以下の指標を確認する。

  • 病床使用率:50%未満
  • 重症病床使用率:50%未満
  • 入院率:改善傾向にあること
  • 重症者数:継続して減少傾向にあること
  • 中等症者数:継続して減少傾向にあること
  • 自宅療養者数及び療養等調整中の数の合計値:大都市圏では60人/10万人程度に向かって確実に減少していること

また、救急搬送困難事案が、大都市圏で減少傾向にあることも確認する。

新規陽性者数については、「2週間ほど継続して安定的に下降傾向にあること」を前提とする。

緊急事態宣言の解除基準は「医療負荷」重視に - Impress Watch

(上の指針は「新型インフルエンザ等対策推進会議|内閣官房ホームページ」の「第16回資料(PDF/15.98MB)」内、185ページにある)

ワクチンの接種率が上がると感染確認者数は減っていく。でもそこが減ったからといって医療提供体制が厳しいまま緊急事態宣言を解除するわけにもいかない。病床の使用率から判断するよう変更するのは妥当に思える。

ワクチンの接種は毎日進んでいる。「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)) | 政府CIOポータル」によると9月12日現在で2回接種した人は44.64パーセントだそうだ。そろそろ半数がワクチン接種済みということになる。

追記
今日「ワクチン2回接種 人口の50%超に 接種開始から7か月 政府公表 | 新型コロナ ワクチン(日本国内) | NHKニュース」という記事が出ました

ただしワクチンの接種率が上がっても、それだけではデルタ株を克服できないらしいという話は前回も書いた。これがいよいよはっきりしてきたようだ。

デルタ株の感染力が思った以上に強いことと、ワクチンの効果が案外早く落ちてくるとわかってきた。もちろん、だからワクチンを打っても意味がないということはない。ワクチンでつく抗体はとても強いから、それが半分や1/4になってもワクチン未接種よりはずっといい。

感染後の後遺症について、ちょうど忽那医師が記事を書いた。

生活への影響が大きい後遺症としては、息苦しさや倦怠感、意識障害(ブレインフォグ)、味覚障害、そして脱毛などがある。いわゆる慢性疲労症候群になったという報告もある。注射が怖いとか副反応がいやだという人もいるようだが、そんなことを言っている場合ではない。注射は一瞬、副反応は長くても数日だけだ。一方後遺症はいつまで続くかわからない。ワクチンを打たない選択肢はないと考えてほしいものだ。

それにしても、新型コロナウイルスが出てきてどうなるかと思ったらmRNAワクチンが爆速で開発された、しかし今度はデルタ株が出てきた、という具合でなかなか抑え込むことができない。人間と新型コロナウイルスのせめぎ合いはまだ続くようだ。

私は、そういった流行対策を続けていけば、数年から(長くて)5年くらいの時間をかけて次第に未来が切り開かれていくものと見込んでいる。どこかで頓挫して流行が大きくなるリスクもあるかもしれない。どこかで新しい展開が生じるかもしれない。それでも、大枠は変わらないものと考えている。

西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開”(西浦 博) | 現代ビジネス | 講談社

長くて5年か。でもわかったことははっきり言ってくれたほうがいい。

あとそうそう、これは書いておかないと。田村厚生労働大臣は10日、この調子なら9月30日に緊急事態宣言を解除できそうと話したそうだ。

「感染者数は減少傾向に入っているので、順調に減っていけば、多くの地域で解除できる水準まで下がってくることが見えてきている」だそうだ。これ自体は悪い話ではない。当然そうだろうと思っていたが、やっぱり上で出したグラフのようなのを作って傾向を見ているんだなと確証を得られた。

ここで以前の記事から引用しよう。

ところで、こういう試算は東京都や政府も行っているはずである。5月11日に緊急事態宣言を解除するのはまず無理と最初からわかっているだろう。ではなぜ期限を5月11日までとしたのか。

東京都の緊急事態宣言は5月11日には解除できないでしょう - ただいま村

ここまでの計算を見ると達成は難しいのではないかなーと思うと同時に、上のような計算を政府がしていないわけがないと思う。でも月末を期限にしてしまうし、その日に解除したいと言ってしまう。

東京都の緊急事態宣言は5月31日の解除も難しそう【追記あり】 - ただいま村

で、毎回書いているが政府もこういう計算をしていないはずがない。でも最初から無理とわかっている6月20日を期限にしてしまう。これは一体なんなんでしょうね。

東京都の緊急事態宣言を6月20日に解除するのはやっぱり難しいのでは - ただいま村

毎回書いているが、上のようなグラフを政府関係者が作っていないわけがない。これを見れば緊急事態宣言を解除できるタイミングではないのは明らかだ。にもかかわらず知らんぷりして解除してしまう。

東京都の新規感染確認者数を7月11日までに100人程度に減らすのはまず無理 - ただいま村

毎回書いているが今回も、政府が設定した期限までに新規感染確認者数が十分減ることはなさそうだ。そしてこれも毎回書いているが政府がこういうグラフを作っていないわけがない。でも8月22日を期限にしてしまうんだな。

東京都の緊急事態宣言を8月22日に解除するにはどうしたらいいだろうか - ただいま村

今まで緊急事態宣言の期限と設定された日付に納得がいったことはない。感染者数の傾向を見ていれば、期限とされた日が解除できるタイミングでないことはすぐにわかる。でもとりあえずその日にしてしまい、案の定解除できず延長する。テレビではお店の人が「また延長か、もうもたない」と話している。緊急事態宣言の期限は、ちゃんと解除できると見込んでいる日にしてほしい。

緊急事態宣言をいよいよ解除できそうになったら傾向の話をするが、まず解除できないとわかっているときは傾向の話などおくびにも出さず、恣意的な期限を設定してしまう。そういう姿勢が政府の信用をなくすんですよ。

関連リンク

毎日の新規感染確認者数をもとにしたグラフのツイート

画像だけを見るなら:id:Imamuraのはてなフォトライフにある「covid-19」フォルダ(CC-BYにしてありますのでルール内でどうぞご利用ください)

追記

続きを書きました。