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「ルックバック」が単行本での再修正でとてもいい感じになった

この記事の続きです。

藤本タツキの「ルックバック」の単行本が発売された。

これにともない、「少年ジャンプ+」の作品ページは途中までの公開になっている。

「ルックバック」は7月19日に公開されたあと、8月2日に一部のセリフなどが修正された。そして単行本ではさらに修正するという告知があった。

単行本を買って読んでみた。幻聴を示唆するセリフがなくなり、自分の作品が「パクられた」と思い込んだ人による理不尽な暴力という流れになった。印象は初出のバージョンに近くなっている。それでいて特定の病気の人への誤ったステレオタイプを強化する描き方ではない。これはいいですね。最初の記事で書いた「京アニの事件を思い起こさせつつ、それを統合失調症ステレオタイプに寄せず描けるものだろうか」は完全に達成されていると感じた。すごい。

人気マンガ家になると、知らない人から「自分の作品のアイデアを無断で使ったのでは」と言われるのはよくあることらしい。本作のモチーフになったと思われる京都アニメーションの放火殺人事件でも、犯人は自分の作品が盗用されていると考えて現地へ向かったとされている。言う側にも言われる側にも不幸な話である。

そして改めて読んでみて、藤本タツキは実にいいマンガを描いたものだと思う。創作に対する止められない思いが伝わってくる。打ち込めるものを見つけられた人生は幸せだ…と言いたくなるが、作中の犯人もまた創作者である。自分の作品があったからこそ、それを他人に盗用されたと思い込むことになった。そこがこの作品のままならないところだと思う。

この作品では動きを表す線が1コマを除き出てこない。擬音の書き文字(「ガチャ」「ドカッ」など)はまったく使われていない。多田由美だ。『ルックバック』がよく映画的といわれるのは、こういったマンガならではの表現を封印していることも一因だろう。