(編集中)
日時
- 2021年4月27日(火)14:00~15:00
前回の記者説明会
- 2021年3月19日:小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(サンプルのキュレーションチームと初期分析チームの紹介)(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/03/19/150000)
登壇者
JAXA 宇宙科学研究所はやぶさ2プロジェクトチーム
- 統合サイエンスチームメンバー 臼井寛裕(うすい・ともひろ)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授、JAXA 宇宙科学研究所地球外物質研究グループ グループ長)
- プロジェクトマネージャ 津田雄一(つだ・ゆういち)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授)
- ミッションマネージャ 吉川真(よしかわ・まこと)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
- マイクロオメガ担当(Co-PI)岡田達明(おかだ・たつあき)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 准教授)
- ONC開発副責任者 亀田真吾(かめだ・しんご)(立教大学 理学部物理学科 教授、JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 特任教授)
- 地上観測チーム 黒田大介(くろだ・だいすけ)(京都大学 理学研究科 特定助教)
- マイクロオメガ PI* Jean-Pierre Bibring(ジャン-ピエール ビブリン)(Institut d’Astrophysique Spatiale, professor emeritus:フランス宇宙天体物理学研究所 名誉教授)
※PI: Principal Investigator、研究代表者
中継録画
:【録画】小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(21/4/27) - YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=xMeqG0z_PjQ):>
配付資料
- 資料 | 楽しむ | JAXA はやぶさ2プロジェクト(https://www.hayabusa2.jaxa.jp/enjoy/material/)
- 【PDF】https://www.hayabusa2.jaxa.jp/enjoy/material/press/Hayabusa2_Press_20210427_ver8.pdf
本日の内容
目次
1.プロジェクトの現状概要
4.科学成果:地上望遠鏡による偏光観測
5.探査機の状況
こういう状況は10年間の追加ミッションでいろいろ出てくるだろう。その状況を蓄積、経験するのも重要なミッション。
参考:分離カメラ制御部(CAM-C)と関連機器
参考:CAM-Hが撮影した代表的な画像
6.今後の予定
質疑応答
TBSテレビ宮:0.7μメートルは赤外域か、またCAM-Hのほかにカメラはいくつあるのか
亀田:0.7μメートルは可視光。
津田:ミッションで使うのは3つ。科学観測用のカメラはすべて健在。
毎日新聞永山:CAM-Cについて。カメラの制御について具体的に。CAM-Cの故障の結果で、CAM-Hに問題はなかった?
津田:CAM-CはCAM-Hに電源を供給する。送られてくる映像信号を処理してデータ化する。信号処理の部分が放射線でやられたものと推定。CAM-Hは火が入ることはわかるが状況がわからなくなるので、根元がやられてしまった。CAM-Hは生きていると思うが意味のある状況ではない。
読売新聞中居:分光観測結果について。はやぶさ2の搭載機器による観測結果を肯定するもので、リュウグウの試料に水や有機物が含まれることがよりわかったということ?
また赤青の画像はそのように色を割り当てているということ?
岡田:リモセンで取った観測データは反射率が非常に低い天体のためS/Nの確からしさを出すのに苦労した。地上では時間をかけて測定できる。リモセンで取得したデータが正しいことが改めて確認された。
赤青はその通り。波長を3つ選び目立つ色をつけた。
中居:水や有機物が含まれていることがまだ確実ではない? より確かな証拠が得られた?
岡田:より確かな証拠が得られたが、確実な実証にはいろいろな段階がある。推定はより確かだが絶対というにはさまざまな分析が必要。
今は一次記載。初期分析前の分析。前処理なしでできる分析しかしていない。表面出し(きれいな面を出す)して分析するのはこれから。
フリーランス秋山:資料12ページ。「新鮮さ」について。どのくらいの年代スケールでの「新鮮」か。
マイナス30度について
亀田:今回の論文ではなくほかの論文で出ているが、数百万年から数十万年前以降に表面に露出してきたとみられている。
マイナス30度が正しい。
月刊星ナビ中野:画像だと5ミリ角のところに1つあったとのことだがシャーレ全体での分布は。
岡田:実際の粒の数は数えていない。細かいものはもっとたくさんある。現状そこまで細かく調べ尽くしていない。解像度的にもMicrOMEGAの解像度は22
粒子の周囲
100ミクロン、0.1ミリのものであれば確かといえるが、それより小さくなるとスペクトルに影響が出て変なスペクトルになる。物質を特定できなくなる。
目立つものでも300ミクロン。まともに測定できる粒子はそう多くない。小さいものもそれなりにあるがどのくらいあるかは調べ尽くされていない。
シャーレ内にはいくつかあるという感じ。
共同通信須江:含水鉱物の存在が確からしくなったとのことだが、探査機のリモート観測と同じ方法を地上でより精密に行ったということか
臼井:探査機が出した結果と調和的なのはその通り。資料5ページに3ミクロン、長い波長の領域でも見つかっている。はやぶさ2のNIRS3では見えなかったところ。
特定の吸収が見られたのは質的には新しいデータが出ているということ。
岡田:リモセンは小惑星表面をくまなく測定しているが、サンプルは限られた地点の物質を代表している。両者の相補的な特徴がある。
全体の特徴とローカルな特徴の分析を合わせて研究していく。
ビブリン:マイクロメガの特徴はサブミリメーターで分光イメージを撮れること。CH帯の吸収も見られている。
サブミリメートルで見えることでサンプルの不均一性、全体として見えていたものから粒子ごとの特徴が見えるようになっていて
リュウグウの歴史の情報を得られるだろう。
JST草下:スラスターのヒーターの故障でも心配ないとのことだが、一部とはどのくらいで起きているのか。
津田:スラスター12基のうち2基が今回の故障の影響を受ける。故障したのは噴射口を温めているヒーター。液体が通る流路なのでヒーターは比較的手厚く設置しており少し手前にもある。配管でつながっているのでそこを温めると効率は下がるが熱が伝わる。
場所によっては太陽に当てて温めるといったテクニックが必要になる。
このような方法は12基すべてにできる対処法ではない。ヒーターは200チャンネルくらいある。そのどれが壊れるかによって対処法は変わってくる。スラスターについては今回と同じような方法をとれる。
フリーランス大塚:放射線劣化で壊れたのはCAM-Cが初めてと思う。放射線に特別弱いなどの特徴はあるのか。ONCが放射線劣化していないか心配
津田:CAM-Cは民生品の使用率が高い。ONCなどミッションの根幹に関わるところは宇宙用部品で作られている。小型で高機能なものを作ろうとすると宇宙用コンポーネントではよくあるが、クイックにできるだけのことをということで民生品が増える。
そういう意味では放射線に弱いといえる。
大塚:イオンエンジンの噴射を遅らせた理由は
津田:はやぶさ2はCC21のフライバイから軌道制御せず地球スイングバイに向かう。先日の帰還から7年後にまた地球に戻ってくる。この状態だと軌道変更の感度は低く、どこで噴いてもあまり変わらない。効率がよい運用を考えて計画をアップデートする中で噴射を遅らせた。
大塚:忙しさのような事情?
津田:軌道計画を毎週更新していく中でどちらでもいいが、遅らせたほうがいいと判断したということ。どちらでもよい計画の中で遅らせるほうを選んだ。
NHK寺西:資料13ページ。リュウグウの偏光度が高いのは粒子サイズが影響しているのではということだったが、ベンヌは偏光度が高くないようだが表層の様子は似ているといった話がある。ベンヌの観測結果をどう考えるか
黒田:ベンヌの結果は位相角(偏光度)が大きくなるところまで観測できていない。最終的にどこにピークが来るかは現状得られていない。
寺西:位相角がでれば偏光度も同じになってくると予想?
黒田:そう思いますがそれを確認できるのはリュウグウだけ。
産経新聞伊藤:赤外分光観測の意義について、「持ち帰った試料を収納容器のガラス窓を通して赤外線を使った特殊な顕微鏡で観察したところ、水や有機物の痕跡を改めて確認することができた。今後、試料を直接分析することで、宇宙の水の起源や生命誕生の謎に迫れる可能性がある」という理解でよろしいでしょうか。また、写真の赤い部分は「水の痕跡」と理解してよろしいのでしょうか。
岡田:おおむね正しい。水に関しては赤外線観測で十分観測できていた。有機物はリモセンで波長域の外側、3.4ミクロンまであることでより確かなデータを得られた。
伊藤:有機物の存在を示唆する情報を得られたのは今回初めて?
岡田:今までもあったが確度が低かった。特定の波長で吸収の特徴が変わっているとより確かな情報となる。
我々はものを考えるとき知っているものと比較する。宇宙から来る物質で資源性が高い炭素質コンドライトがある。それに近いと考えている。反射率が非常に低いなどから有機物の存在は予想している。
ただ明確な情報となると確認したとまではいえなくて、あるとすると3.4ミクロン付近に吸収がある。
炭酸塩でもその付近に吸収がある場合があるので、絶対に有機物とはなかなか言えない。これらが含まれる特徴が得られたということは言える。
赤い部分は水がじゃぶじゃぶあるのではなく、水の成分があった痕跡に反応した。石の中に入り込んでいる状態。
ニッポン放送畑中:リュウグウ探査は水や有機物の存在を期待して観測しているが、改めて裏付ける情報が出てきたことへの感想、またこの分析は山でいえば何合目?
またこういう分析への期待感は
臼井:水の特徴を示す吸収が見つかった
サンプルリターン探査でなかったら見つけられない情報を
手の中にある状態はとても興奮する。どういう分析をすればいいかわかっているし高次キュレーションのチームも待機している。
リモートセンシングは手が届かないのでこそばゆい観測になる。今回は手元にあるので
山登りでいうと雲海を抜けて頂上が見えてきたところかなと思う。
毎日新聞池田:探査機の健全性の見通しは
津田:イオンエンジンの燃料は半分くらい残っているので目標天体には到着できる。化学推進系は今1/4くらい残っている。巡行中も化学推進系を使って姿勢を変えたりリアクションホイールのメンテナンスをしたりしている。消費は少しだが10年間となるとちりが積もる。
どういう運用をするか考えている。うまくいけば頂上が見える。雲海をかきわけ模索しているところ。
壊れていくものについて。どれが壊れるかは断定的にはいえないが、可動部があるもの、
中利得アンテナは向きを変える。リアクションホイールはずっとモーターで回っている。
また流体が流れるもの。ヒーターが原因になるかもしれないし燃料がうまく供給できなくなるかもしれない。
こういうところがきちんと機能するか注視していく。バックアップも考えるなど作戦を立てている。
宇宙作家クラブ渡部:化学推進系のヒーター故障が起きたタイミングは。また考えられる原因は
津田:徐々に劣化していくものだが、3月末くらいに最初の事象が生じた。いろいろ調べて今日の発表に至った。原因はヒーターが機能しなくなったので何らかの劣化で、電流供給に問題が生じているなどが考えられる。
(以上)
(編集中)
次回の記者会見
- 2021年6月17日:「はやぶさ2」帰還サンプルの初期分析チーム・Phase 2キュレーションチームへの引き渡し(https://ima.hatenablog.jp/entry/2021/06/17/130000)