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小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星リュウグウからのサンプルリターン結果に関する記者会見

日時

  • 2020年12月15日13時~14時(実際には14時35分まで)

前回の記者会見

登壇者

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はやぶさ2」プロジェクトチーム

  • ミッションマネージャ 吉川真(よしかわ まこと)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
  • プロジェクトサイエンティスト 渡邉誠一郎(わたなべ・せいいちろう)(名古屋大学大学院 環境学研究科 地球環境科学専攻 教授)
  • サンプラ主担当 澤田弘崇(さわだ・ひろたか)(JAXA 宇宙科学研究所 はやぶさ2プロジェクトチーム 主任研究開発員)
  • サンプリングチームサイエンス PI*、初期分析チーム PI 橘省吾(たちばな・しょうご)(東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構 教授)
  • サンプリングチームメンバー、初期分析揮発性物質チームリーダー 岡崎隆司(おかざき・りゅうじ)(九州大学理学研究院地球惑星科学部門 准教授)

JAXA 宇宙科学研究所地球外物質研究グループ

  • グループ長 臼井寛裕(うすい・ともひろ)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授、「はやぶさ2」プロジェクトチーム 統合サイエンスチームメンバー)

※PI:Principal Investigator、研究代表者

(上段左から吉川氏、臼井氏、渡邊氏。下段左から橘氏、澤田氏。岡崎氏は音声のみで登壇)

中継録画

小惑星探査機「はやぶさ2」による小惑星Ryuguからのサンプルリターン結果に関する記者会見 - YouTube

関連リンク

プロジェクトマネージャの津田雄一氏からのビデオメッセージ

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12月6日に無事地球帰還したはやぶさ2のカプセルはオーストラリア、ウーメラの地で回収されたあと現地回収チームの手で即座に日本のキュレーション設備に搬入され、約1週間かけてカプセルを開封する作業を続けてきましたが、このたび、その中に明らかにリュウグウで採取された砂が相当量入っていることが確認できました。さらに、豪州の即時の分析と、日本に帰国してからの分析で、我々はリュウグウ由来の気体も採取できていたことを確認いたしました。これではやぶさ2はサンプルリターンミッションを完全完遂できたことになります。

計画してから10年以上、打ち上げてから6年、私たちが夢にまで見た小惑星の砂、地球外の天体のサンプルがいま私たちの手元にあるのです。今日この大きな科学的な節目となる日にプロジェクトの科学代表としてプロジェクトサイエンティストの渡邊先生、そして現場で開封作業を一生懸命してきたサンプラーチームとキュレーションチームから説明させていただく機会を設けました。私自身もずっと心血を注ぎ、やり遂げた先がこのような大成果につながり感無量です。この大きな大きな成果と私たちの喜びをぜひ共有できればと思います。

渡邊氏から

嬉しい報告ができて喜んでいる。いろいろなミッションをこなしつつ最後には採れたサンプルを持ち帰ることが最大の目的。それがキュレーションチームに渡った。

46億年前に地球に水や有機物がもたらされ地球環境が作られていったと考えている。地球外からフレッシュな形で表面物質を持ち帰ることができた。しかも2か所。特に2か所目は地下物質も含めて持ち帰れた意義は大きい。

今まで隕石をもとに研究してきたが地球の物質と混ざってしまっているのではないか、隕石から見つかっても地上のものが混ざってしまったのではないかと考えられてきた。そういうものが混ざっていない。ガスも採取できたのはよく密封されているということ。予想をはるかに超える量を得ることができた。科学的価値を明らかにしていく。

はやぶさ2はサンプルを落としてオーストラリアでトライを決めた。次は高速自転する小惑星に向かっている。バトンが続いていくことを期待している。

本日の内容

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QLFでのガス採取

(澤田氏より)

カプセルを回収してから日本に空輸するまで

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我々のチームは豪州で回収したカプセルと関連機器を回収した後サンプルコンテナを分解し、いち早く中からガスを取り出し簡易分析にかけた。

サンプルコンテナ内のガス分析について

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キュレーションクリーンルーム内でのコンテナ開封作業

サンプルコンテナからアブレータ取り外し、サンプルコンテナ開封作業

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クリーンチャンバCC3-1接続、サンプルコンテナ開封

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サンプルコンテナ内に予想以上に粒子が入っていた。リュウグウにいる際に入ったものと確信を持って言える。リュウグウ由来の試料ということ。

キャッチャーA室開封作業

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キャッチャーA室内の粒子確認

真空中で今日の午前中に撮った写真。コンテナ内に粒子があったので、キャッチャー室にも入っているだろうと自信はあったが、開けて見たときは言葉を失うくらい、予想を超えて感動するほど入っていた。微粒子ではなく数ミリサイズのサンプルがゴロゴロ入っている。どっさり入っている。当初の期待をはるかに上回る量を採取できた。大喜びした。

保管するサンプルをこの中から取り出す。次にCC3-3室へ移動、窒素環境で試料を取り出していく。

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参考資料

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参考資料:クリーンチャンバー概要

自信を持ってサンプルリターン成功とご報告したい。

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質疑応答

月刊星ナビ中野:今回公開された画像でのキャッチャーと粒子の大きさを確認したい。また粒子の重さも

澤田:キャッチャーは48ミリの筒。粒子は数ミリほど。設計上サンプルが入っていると思われる空間は2cc。空間の比率や一般の密度から重さを推測はできるが具体的な数値はまだ。
ミッションの目標、要求値は100ミリグラム。これは確実に超えている。

東京とびもの学会金木:ガスも採取できたとのことだがそのような計画が最初からあったのか。おとぎ話では竜宮城から持ち帰った玉手箱を開けると年を取ったが、このガスはどんな効果があるのか

橘:C型小惑星は炭素、水素、窒素などからなる有機物、有機分子を氷で含んでいた、今も含んでいると期待されている。それらがサンプルから出てくることが期待されていた。
澤田さん、九州大学の岡崎さんとガス採取の開発をしてきた。
ガスから考えられることは…揮発性のガスは惑星が誕生しようとする場所に豊富に存在すると天文観測でわかっている。このガスでわれわれが年を取ることはないが、太陽系の始まりという遠い過去へ連れていってくれるガスということを期待して分析を進めていきたい。

ライター荒舩:カプセルを時間をかけて開封しているイメージがある。地球の物質が入らないようにするため? また輸送で大変だったことはあるか。渡邊さんにはガスとサンプルがたくさん入っている様子を見て思ったことを聞きたい

澤田:作業をしている側としては間髪入れずやっているつもり。初号機は豪州を出発するまで4日くらいかかっている。今回ガス採取という新しい作業を追加したが2日かけず豪州を出発した。
事前にたくさんの準備をしてきたことが成功につながっている。アブレーターを取り外して開封しクリーンチャンバに接続する。アブレータも工学的に価値があり、ていねいに取り外した。
今回、すべて金属のシールドを開発した。シールドが壊れないようにしつつクリーンチャンバに入れるために慎重に作業をした。
我々としてはかなりがんばって、最速でチャンバに接続できたと思う。

渡邊:昨日の写真はコピー機で使うカーボンのようだと思った。今日の写真を見て相当いろいろなことができるとわくわくしている。
有機物がどういうふうにリュウグウの母天体で進化してきたか、有機物がたくさん入っていそうなのでそのあたりがわかることを期待している。

毎日新聞元村:澤田さんは開けたときに言葉を失ったそうだが、次に出た一言は

澤田:正直覚えていないが、「おおー」とか叫び声を上げたと思う。想像していた量と全然違っていた。感動した。

元村:複数人で作業をしていた?

澤田:はい。

元村:キャッチャー内を最初に見たのは

澤田:私です。「とにかく見て」と次の人に回しました。

フリーランス秋山:すごい量が入っていたとのことで嬉しくなる。澤田さん、思った以上にたくさん入っていた場合の計画は? また8日の会見では半年ほどかけてサンプルをカタログ記載するとのことだが、この量だと進め方に変化はあるか

澤田:サンプルとガスを日本に持ち帰りキュレーションチャンバーに移すのが仕事で、肩の荷が下りてほっと一息。分析については橘さんから

橘:分析する科学者が当初考えていた必要量は100ミリグラム=0.1グラム。今の分析技術でできる最低量。とはいえ科学者は欲張りなので「あったらいいな」はグラムオーダー。私としては本当にほしい量を採れた。比較したり分析でできることが増えていく。ぜひこのサンプルで太陽系の起源についてサイエンステーマで研究していきたい。
こういうことが実現できたのは澤田さんを始めとするサンプラーチームが工学と理学で開発してきたサンプラーのおかげ。

臼井:キュレーション作業に変更はなくすみそう。まずは何グラム採れたかを見る。見た目は予想は多いが想定内。量も大事だが大きなサイズの粒子、1ミリメートルを超えるサイズのものが多い。これを壊さないようにハンドリングすることに注意したい。とはいえそれも準備はしてあり想定内。予定通りに作業できるだろう。

毎日新聞永山:橘さんにガス分析について。リュウグウ由来と思われる根拠と、どういうガスが見つかったのか。左の方にミリメートル級の粒子が見えるがキャッチャー内全体も黒くなっているように見える。大きな粒子の周囲もリュウグウの粒子なのか

橘:分析結果について。地球の大気の窒素と酸素が4:1で含まれるものとは成分が違っていたためリュウグウ由来のものと判断。こういうものを扱うのは初めてなので慎重にデータ解析を進めた。豪州ですべてのガスを回収してきたと思ったらコンテナ内にまだガスがあることがわかり、そのガスを収集して分析したところ豪州で採取したガスと同じだった。
サンプルキャッチャーを動かしたときにも同じガスが出ているということでリュウグウ由来のガスと判断。
行ったのは質量分析。同じ重さの分子は複数あるので、詳しいことはこれから。
左側に偏っているのはコンテナを何度か回転させたりしている。壁のあたりが黒いのもリュウグウの試料で、細かいものが壁を覆っている。

読売新聞中居:イトカワの試料との比較について。イトカワのサンプルは微粒子がいくつ見つかっているか。今回量が多くて前回できなかったどういう分析ができそうか。また分析技術が進んでできるようになった分析はどんなものか

渡邊:初号機がイトカワから持ち帰った粒子と比較して圧倒的に多い、そして黒い。いろいろな分析ができるだろう。

臼井:イトカワの微粒子は現在1,500粒くらい。今日のような目で見えるサイズではない。電子顕微鏡やイオンビームを使った分析に限られる。今回はハンドピッキングできるサイズなので溶液を使うなど、より大量の試料が必要な分析が可能になる。
酸で試料を溶かしてしまうような分析も考えられる。

中居:サンプルコンテナを開けて見たときの感想は

橘:澤田さんと同じで「おおー」というか、嬉しさというか。科学機器は分光装置や熱測定などあり、サンプラーは弾丸発射したこともふた閉めもできたとわかっていたがどのくらい入っているかは最後までわからず不安だったがこのような量が出てきてほっとした。
初期分析では同位体や大きな試料については組織、どういう組み合わせになっているか、有機物を解析したりできる。
ガスもいろいろできる。せっかくなので九州大学の岡崎さんからコメントがあれば。

岡崎:コンテナ内にガスがたくさん封じられていた。鉱物の表面がこすれるなどして出てきたものと考えられる。せっかく大きな試料があるので真空中で機械的に破砕して同じようにガスが出るかなどを分析したい。

中居:サンプルコンテナの外側、そこにたまっているサンプルを見たのは誰が最初?

澤田:キュレーション作業のどなたかと思うがちょっとわからない。我々の後ろで今も作業中。

中居:次のキャッチャー室を開けるのはいつごろになりそうか

臼井:A室を開けるのに時間がかかるので次は年明けになる。

共同通信須江:澤田さんに。リュウグウ由来のサンプルであるという決め手を再確認したい。密封されていること、色などの中でどれが決め手か。

澤田:我々が今断定できるのは、リュウグウの軌道上でサンプルコンテナを閉めたときに入っていたものだということ。地球外の物質であることは確かで、状況からするとリュウグウの物質であることはまず間違いないが、本当にそうかはリモセンの分析結果などと比較するといった今後の分析で初めて科学的にはいえることになるだろう。

須江:キャッチャー室を開けたときはどう見たのか

澤田:肉眼で見ました。

須江:エクストラサクセスまでできたことになる?

吉川:探査機ができたことではエクストラまでできている。プロジェクト全体としては初期分析を含むので、サクセスクライテリアは残っている。

フリーランス大塚:ガス分析の結果について。有機物や水が入っているとしたら分子量の予測はあったのか。あったとしたら分析結果との比較は

橘:水なら化学式を考えるとこういう質量であるというのはわかる。現時点では具体的なことをお話するのは難しいが、ちゃんと分析メニューにはある。データが揃ったら後日報告したい。

岡崎:詳細な結果がわかったらまた説明したい。

大塚:タイミング的に初期分析の前にガス分析でわかることがありそうなのか

橘:初期分析は基本的には宇宙研のキュレーション施設で大気に触れない分析のあとに行う。ガス分析はフレッシュなうちに宇宙研のキュレーションによる初期分析の一環で半年後の初期分析前に分析を開始したい。プロジェクトと相談して。

東京新聞増井:ガス分析について。ウーメラと相模原で同じものが出てきたとのことで、それはリュウグウの表面にあるものなのか

岡崎:リュウグウの大気というわけではなく岩石のすき間にあったもの、鉱物の表面にあるような揮発性のガスがこすれてコンテナの中に遊離していたと考えている。

増井:太陽風が含まれているとしたらジェネシスが持ち帰ったものは?

岡崎:鉱物の表面に滞在している太陽風は気体として存在するわけではない。今回目指したのは割れると出てきて逃げてしまうような気体も採取することで、それができた。

増井:サンプルは想定として「ティースプーン1さじ」とのことだったが

臼井:コンテナの容積内に含まれるものは当然想定内。ティースプーン1さじというのもこの容積からすると想定の中。リュウグウから持ち帰ったものをなるべくそのまま研究に供したい。粒間からガスが出てくるということはハンドリングを慎重に、ベストなものを選択して期日以内に初期記載できるようにしたい。

増井:B室にはなにか入っているのか

臼井:ないと思うがすき間があるので入り込むものがあるかもしれない

澤田:すき間があるというか、入口を切り替えて(B室が開放されて)いるときにスラスターを噴いたりした際に飛び込んできた微粒子があるかもしれない。
B室を開けたまま運用していたときに入ったものがあるかも。

NVS金子:アブレーターの様子は初号機と比べて大きな違いはあったか

澤田:アブレーターは削ってねじを回して取り外した。初号機は穴を開けるのが大変だったのでぶれずに削れるようなものにしたり、スパイラル状に削れるようにしたり。穴の開け方は工夫をしたが工程は基本的に変わらない。
アブレーターの様子はそんなに差はなかったと思う。今回メタルシールなので振動で部品が浮いてしまうと密封でなくなってしまうのでそこを気にしながら訓練してきた。全体の様子は初号機と変わらなかった。

金子:大きな粒子があることで期待される発見は

渡邊:惑星科学ではダストがどう結合していったか、その強さなどが重要。化学的な分析だけでなく物理的な結合状態、粒子の強度、空げき率などを調べることがリュウグウの母天体でどういう物質変化が起きたのかという情報を持ってきてくれる。
ひとつステージが上がった惑星の形成論にいけるのではないかと期待している。

(以下、中継終了後の追加質問)

時事通信神田:このようにガスが出ているとすると冷凍保存などは考えているか

臼井:そのようなことは考えていない。リュウグウの表面は100度くらいになるのでこのままでこれ以上脱ガスすることはないだろう。
なるべく壊さないよう初期分析チームに渡してから破壊してみたりするだろう。

宇宙作家クラブ今村:次のキャッチャー室の開封をネット中継できないか

吉川:いい質問だがなかなか難しい。情報は随時Twitterなどでお知らせしていきたい。

※あと2問ほどありましたがこちらの設定不備で聞き取れませんでした

次回の記者説明会