小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(キュレーションチームの活動状況など)

登壇者

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(image credit:JAXA

はやぶさ2」プロジェクトチーム

(左から臼井氏、津田氏、吉川氏)

中継録画

津田プロマネから


あれからあっという間に1年、あの日のことを思い出すと涙が出る。

着陸を確認するまで緊張感があり、カプセル発見に安堵、オーストラリアから届いた喜びの声。そのあとはお祝いの嵐。開発や運用に関わった企業、宇宙機関から。個人的にはたくさんの知り合い、メールや電話をいただいた。全国の子供たちからもとても嬉しかった。日本の宇宙科学が最も輝いた日だった。

はやぶさ2はまだまだ元気。次の目的地である2001CC21に向けて順調に飛行中。またサンプル分析も順調で面白いことが次々に出てきている。この1年でサンプル分析に関わる人たちと話をしていると皆さんいい顔をしている。サンプルが多すぎるという不満も。隕石学が書き換わる成果ですよと耳打ちされたこともある。

全容をお披露目できる状況ではないのが申し訳ない、もう少しお時間をいただきたい。はやぶさ2とサンプルの最新状況をお知らせしたい。

ひとつ残念なのが新型コロナウイルス。地球帰還以降全員でお祝いすることもできずにいる。今日一日は地球帰還一周年を祝う発信をしていただきたい。

配付資料

後日英語版も含めてPDFが「資料 | 楽しむ | JAXA はやぶさ2プロジェクト」に掲載されます。

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記者説明会の概要と目次

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1.キュレーションの活動状況および今後の予定

(臼井氏から)

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JAXAの臼井氏、東覚氏が飛行機で直接NASAへ移送

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2.探査機運用の状況

(吉川氏から)

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参考:イオンエンジン運転状況

(津田氏から)

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イオンエンジンは大事に扱っている。初号機と比べると地球帰還時に厳しくない状況。故障もない。その後も運転を続けている。

現在は2001CC21に向かっている。先日累計力積(出した力の総量)が初号機を超えた。はやぶさを超える稼働実績となった。イオンエンジンの未踏領域をテストしていることになる。

拡張ミッションでは長期航行における性能変化、劣化を見ていく。

「はや2NOW」を見るとわかるが今は1台だけ運転を続けている。性能の変化、劣化が徐々に見えてきている。どういう運転をしたら長生きできるか、データを取れるかを考えて運転を変更している。当初は3台運転でいけるかなと思っていたが1台ずつデータを取り長時間運転できるように。

順調とはいえ性能変化があり、見たかったこととはいえ劣化なのでこれから先も慎重に見極めながら調整していきたい。

3.リュウグウサンプル公開

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参考資料

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JAXAのサンプルリターン探査・キュレーションの将来

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初期分析チーム

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ノミナルミッションにおけるイオンエンジン運転のまとめ

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IAF World Space Awardの受賞

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質疑応答

時事通信神田:イオンエンジンの劣化について。具体的にはどういう症状が出ているのか。4台のうち劣化具合の違い、拡張ミッション遂行に不安はあるか

津田:範疇としては変化に近い。高電圧を使うエンジン。打ち上げ当初から電流と電圧のバランスが変化している。マイクロ波発生装置や中和器に変化が起きている。その反映。温度や電気のバランスが変わってきている。
変化そのものは予定通りだが、見えてきたからにはミッション遂行できるよう1台運転にした。拡張ミッションへの影響はないと思うが、1台運転だと推力が10mNとなり長時間運転が必要。大きい推力のほうが燃費はよいので今は余分に燃料を使っている状態。
劣化といっても変化に近く、それ以上の心配はしていない。

神田:出力に変化があるわけではなく、運用そのものに影響がないのか

津田:3台運転をやめて1台運転にするのは複雑なコマンドが必要だが直接の影響はない。

フリーランス秋山:資料7ページ、サンプル引き渡しについて。引き渡しの場所がジョンソン宇宙センターだったのはどんな意味や理由があるのか

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臼井:アポロ計画からの蓄積があるキュレーション施設が置かれているのがジョンソン宇宙センター。
宇宙物質をキュレーションできる技術は今のところNASAJAXAしか持っていない。JAXAは相模原のISASNASAはジョンソン宇宙センターで行っている。NASAはアポロ、太陽風ジェネシス、彗星のスターダストとさまざまなキュレーションを行ってきた。そのすべてがジョンソン宇宙センターでハンドリングされている。
はやぶさ2の試料も専用のキュレーション室へ運ばれて分析される。

月刊星ナビ中野:NASAとの合意について。機関間合意はNASAからどんな助力をもらった見返りなのか。またOSIRIS-RExの試料のやりとりについて

臼井:DSN(深宇宙ネットワーク)の利用、オーストラリアでの帰還時の観測など、NASAから協力をもらっている。NASAは科学者も参加させている。
OSIRIS-RExのサンプルを今度は我々が譲り受ける。サンプルの交換であり最も大きい交換/提供アイテム。

日本経済新聞小玉:キュレーションについて、現段階でこういうデータが出たなど話せる範囲のことはあるか

臼井:フェーズ1でわかったことはお話できることをお知らせしたい。
リュウグウの試料はリモートセンシングで見られた水の特徴(含水鉱物)の水酸基の特徴が見られている。
水と岩石が反応してできる炭酸塩や有機物、同定はできていないが特徴が分光学的に得られている。
リモセンで探査機が観測していた含水鉱物の吸収をサポートするデータが出てきている。それが実際目の前にあるのでより詳しく、広い波長領域で見えてきている。
炭酸塩や有機物が入っているとするとどんなものが入っているのかは今後サンプルを出して分析する。

東京新聞増井:11月24日にNASADARTが打ち上げられた。小惑星に衝突するミッション。はやぶさも似たようなミッションを遂行してきた。DARTの所感は。共同研究したりしているのか

津田:DART小惑星の月に衝突体をぶつけて軌道を変える実験を行う。はやぶさ2を提案したときはこの実験だった。小惑星にクレーターを作り軌道を変更させる。2つ探査機を作って1つを小惑星にぶつけるというもの。予算などの観点で認められなかったが、はやぶさ2は衝突装置を持っていってクレーターを作れた。DARTには期待している。実現できていいなと思っている。
研究者レベルでは知り合いもおり、やり取りをしたりもしている。
DARTはヘラというヨーロッパのミッションもある。衝突後の小惑星を探査するもの。はやぶさ2で搭載された中間赤外カメラ最新型が搭載されている。はやぶさ2の成果があったので有力なものはどんどん協力しあいましょうと貢献できている。ヘラのメンバーにははやぶさ2のメンバーもいる。DART、ヘラとも我々自身も楽しみ。

産経新聞伊藤:年内に論文発表したいと以前言っていたがどんな状況か

臼井:年内には論文を投稿したいという話をしていた。投稿後審査を経て、通れば掲載されることになる。来春には結果を報告したい。
お待たせしてすみません。はやぶさ2は特に世界中の研究者だけでない方々から注目を浴びている。いいジャーナルでいい審査を受けた結果を報告したいので少しお待ちください。

伊藤:隕石の研究が塗り替えられるような大発見になるのか

臼井:してもいいと思います。私も隕石学者。サンプルが地球に突入するときの変化をいかに抑えて取り出すかが隕石学の一つのテーマ。はやぶさ2はそれをほとんど何も考えなくてよく、打ち込む弾丸の影響程度で、キュレーションのチャンバーで分析できる。ジャングルや南極で何万年も保存されていたり大気圏突入時にあぶられていないサンプル。大きな発見があるだろう。

読売新聞渡辺:NASAにサンプルが渡されて、向こうの最先端の分析に期待することは

津田:小惑星の分析で最先端なのはJAXAも引けを取らない。NASAは長い経験があるのでJAXAが調べていることを裏付けるのを期待している。我々が見逃していることが見えればいい。

臼井:NASAJAXAは両方とも世界の最先端を行っている。自分はサンプルを持ってジョンソン宇宙センターへ行ったし以前はジョンソン宇宙センターで研究していた。クリーンルームの管理や移動、人員態勢で学ぶところは十二分以上にある。
機関間合意にも書かれているように、サンプルの行き来だけではなくて、キュレーターやサンプル分析者の人的交流、技術的交流も考えられている。コロナがなければ1年前に向こうのキュレーターはJAXAに来てJAXAからも向こうへ行くはずだったが、今後人的交流を活発化させていこうという話をした。
50年にわたる彼らの経験とこちらの小惑星の経験、サンプル交換が2つをつなぐ糸になっている。

NHK絹田:資料8ページ、一般公開に向けた準備状況について。現段階で国際公募用のカタログ化は終わっているのか。またサンプルのカタログ化は総量5.4グラムについて行っているのか。それとも国際公募用のみカタログ化しているのか

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臼井:公開するときにお話しするので言いにくいこともあるが、サンプルの準備とカタログの準備がある。カタログはウェブのセキュリティの準備が1月中旬に間に合うように進めている。サンプルは公開するのに合わせて初期分析チームやNASAに渡したものとほぼ同じデータを用意できるようにしている。正月休みを考慮しつつ。
5.4グラム全部のカタログ化はもうちょっと先のこと。初期分析チームとNASAへのカタログ試料を作ってきた。国際公募用を優先的にカタログを作っている。15パーセントが国際公募。2022年6月に公募を行うサンプルについて初期記載を行っている。

毎日新聞池田:イオンエンジンの変化の状況について。前回、一部のカメラの制御部や2基分のスラスターについて不具合があったと聞いた。現状を知りたい

津田:故障という意味では、すでにご報告したモニタカメラと推進系のヒーター部分があるが、それ以外は現在のところない。
今日ご報告したイオンエンジンの変化のほかに、特に目立った劣化などはない。
自己修復できるレベルのメモリエラーが起きたといった報告は来るが頻度は上がっていない。全体的には元気。

NHK水野:DART関連で。はやぶさ2の拡張ミッションで小惑星に着陸するのか以前聞いたとき、体当たりすることも検討するかもとのことだった。現在も変わらないか

津田:DARTが行く小惑星はやぶさ2を持っていって、DARTのあとに接近する軌道もできると計算はした。しかしイオンエンジンに無理をさせることや軌道制御が難しく選択肢から外している。
2001CC21に体当たりさせるかは…フライバイなので原理的には可能。
1998KY26へはランデブーなので相対速度ゼロでの到着。当たるとしても非常に低速でコツンと当たる…意味があるのかわかりませんが。
衝突しようと思えばできましたという精度のフライバイができましたと言えればいいが、衝突させる予定はありません。

東京とびもの学会金木:資料10ページ、サンプル公開について。今後決まっていることがあれば知りたい。また採取したサンプルから一般公開用のサンプルを選ぶ基準は

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吉川:日本科学未来館相模原市立博物館に続く公開計画は決まっていない。するとしたらたぶん来年度。いろいろなところで公開できるよう工夫していく。

臼井:サンプルの選び方。まず粉末ではなく粒子を選ぼうとした。また肉眼で観察できるサイズであること。一番大きいものは科学的にも重要なことが多いので、一般公開用はそれより小さい2ミリメートルのもの。1回目のタッチダウンのA室、2回目のタッチダウンのC室からそれぞれ1つずつ選んだ。
ぜひ皆さんの目で直接見ていただければ。

金木:ここを見てほしいといったポイントはあるか

臼井:自分自身、わかっていたけど驚いた黒さ。アルベド=反射率が2~3パーセントしかない。黒髪より黒い物質であるところが見どころかなと。黒い理由はキュレーションチームではまだわかっていない。炭であるとか鉄の酸化したもの、有機物だとか意見があって、初期分析チームはそろそろ答えにたどり着いているかも。こういった鉱物は地球にはない。なぜなのかなど想像力を働かせつつ見てほしい。

津田:今日、相模原市立博物館でサンプルを見てきた。2ミリメートルの粒子が2つ。それだけ見ると小さいもの。しかしこれを採取するためにどれだけの労力がかかっていて、どれだけの科学者がこれを分析したがっているかといった背景も想像して見ていただければ。
初号機が持ち帰ったサンプルは全量で1ミリグラム以下。それから10年以上だが分析は世界中で続いている。今回一般公開しているはやぶさ2のサンプルは1粒でも初号機の全量を超えている。本当に大量。これで大量かと思うかもしれないが大量すぎて困っているとも聞く。どういう分析をしているのかも想像してほしい。

JAXA広報部岸:はやぶさ2の帰還から1周年ということで追加することがあれば。

津田:1年経って思いがこみ上げてくる。こんなにゆったりした年末を過ごすのは久しぶりで、その意味でも達成感がある。拡張ミッション以外にも宇宙科学ミッションは続く。はやぶさ2で獲得した技術や科学成果が反映されていけば。
はやぶさ2は拡張ミッションプロジェクトに引き継がれ、今のはやぶさ2ミッションプロジェクトは来年3月に閉める予定。それまでにいい成果が出ることを期待している。これからもよろしくお願いします。

(以上)