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小惑星探査機「はやぶさ2」記者説明会(豪州の着陸許可とリエントリ誘導計画)

日時

  • 2020年9月2日(水)14:00~15:00

前回の記者説明会

登壇者

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JAXA 宇宙科学研究所はやぶさ2プロジェクトチーム

(左から津田氏、中澤氏、吉川氏)

中継録画

関連リンク

本日の内容

(吉川氏から)

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.再突入カプセルのオーストラリアへの着陸許可

(中澤氏から)

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3.リエントリー最終誘導の運用計画

(津田氏から)

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①~⑦は放っておいてもこう飛ぶ(弾道飛行)という軌道。イオンエンジンの軌道制御で①から⑦へ近づけていった。

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イオンエンジンの使用はTCM-0で終了、TCM-1からは化学推進エンジン(RCS)を使用。カプセル分離後、はやぶさ2本体が地球を離脱するためのTCM-5を行う。

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地球を通過するとき、探査機のカメラでカプセルを撮影する計画がある。カプセルは自動シーケンスで高度10キロメートル程度でパラシュートを開き降下する。

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動画は以下のページで見られます
はやぶさ2」地球帰還 - その他 | ギャラリー | JAXA はやぶさ2プロジェクト(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/galleries/othermovie/pages/HAYABUSA2_ReturnMission_jp.html

4.アウトリーチ

(吉川氏から)

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記者説明会終了後応援メッセージの募集を開始。

リュウグウ観測キャンペーン:ただしリュウグウはかなり暗いので大きな望遠鏡でないと難しいかも。

5.今後の予定

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参考資料

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帰還巡航運用計画

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質疑応答

東京とびもの学会金木:TCMについて、はやぶさ2で特徴的な変更点は

津田:初代はイオンエンジンで軌道修正したが今回は化学推進系(RCS)を使った。初号機はRCSが使えなくなっていたため。はやぶさ2は幸いそこは健全なので、初号機の当初計画と同様RCSを使う。
TCM-3で初めてウーメラを狙うのも初号機と同じ計画。初号機は(結果的に)特殊な計画で、はやぶさ2は運用しやすい能力が残されているためそれを利用して軌道制御する。
深宇宙からの地球リエントリは初号機と今回の2回しか経験がない。中でもRCSを使ったリエントリ計画は今回が初めて。慎重に計画して間違いが起こらないように。

金木:カプセル着陸の申請は初号機のときと同様?

中澤:手続は同じでAROLSOを発行してもらった。

金木:初代を踏まえた申請?

中澤:初号機の経験がありますので同様の申請をしている。

NHK寺西:切り離しのタイミングが12時間前、20万キロの距離になった理由は。また新型コロナウイルスの影響で入国の計画状況は

津田:一般的な軌道の性質として、カプセルは軌道制御できないので精度よく着陸させるにはなるべくぎりぎりまで探査機が持っていて切り離すのがよい。一方で探査機は地球から離脱する必要があり、カプセル分離は早いほうがよいという綱引きがある。初号機は7~8時間前の分離。今回少し遅くしているのはナビゲーション能力が上がっていることを加味して初代と同じ精度でカプセルを落とせると判断。逃げやすさでも12時間前に分離し10~11時間前にTCM-5を行うことで逃げ切れると考えた。

中澤:オーストラリアは現在原則として外国人の入国は禁じられている。回収作業のため特別な許可をもらうようやり取りをしている。カプセル回収部隊の人数は減らさず、アウトリーチ要員など回収に直接関わらない人員は減らしている。

寺西:人員の入国の許可はまだもらっていない?

中澤:その通りですが着陸許可は出ていますのであとは手続きだけと思っています。

共同通信矢野:カプセル分離時の姿勢変更の難易度は。またカプセルの大気圏突入時の様子を探査機から撮影することの難しさは

津田:姿勢制御の難易度はリュウグウ探査のときこれよりもアクロバティックなことをしている。することに不安はない。イオンエンジン運転中は姿勢を維持してきたがTCMでは短時間にグリグリ姿勢を変更する。慎重に見ていく必要はある。自信はあるが安心はしていない。
カプセルの撮影について。このとき探査機には太陽光が当たっておらず太陽電池に日を当てなくてもよい状態で飛行する。ふだんは太陽電池に光が当たる範囲で姿勢制御しているが日陰に入るので今までにない姿勢制御を行うことになる。

毎日新聞池田:カプセル分離時の姿勢変更は具体的にどのように? またどういう理由で姿勢を変更するのか。またイオンエンジンの運転が99.9%終了とあるがこれは運転時間ベース?

津田:カプセル分離時は探査機の進行方向に分離するわけではなく、進行方向に対して直角に向けてから分離する。カプセルは姿勢制御できない。少しスピンして分離していく。中華鍋の鍋底を進行方向に向けて大気圏突入してほしい。分離の手前で軌道がグーッと曲がる。その曲がり具合を予測して、カプセルの進行方向と姿勢が一致するような姿勢にするために、突入の12時間前の分離時には直角に向けたような姿勢変更になる。
99.9%は加速ベース。どれくらいの加速量が必要かという中での数値。

フリーライター荒舩:飛行の姿勢から分離姿勢に変更するのにかかる時間は。またカプセル分離から元に姿勢に戻すまでどのくらいかかるのか

津田:詳細は検討中。おおまかなイメージとしてはカプセル分離の数時間前、最後の臼田での運用が5日の朝から夜まで。5日午前8時~10時ごろ始まり姿勢変更にもっていく。その状態で数時間おいてから分離する。分離確認後即座にTCM-5のための姿勢変更を行う。カプセル分離からTCM-5までは1~2時間しか余裕がないためすぐにそのために姿勢変更する。

荒舩:リエントリの中で緊張するところは

津田:カプセル分離からTMC-5に至るまで。

荒舩:カプセルに推進系がなくて緊張するところと思うが自信のほどは

津田:カプセルは切り離してしまったらどこに落ちるかは運命に任せるしかない。運命を決めるのはその前数日間の運用。TCM-4の成果でどのくらい正確に狙ったところを飛んでいるかが決まる。最終の軌道設計ができたところで狙ったところに落ちるかどうか自信が持てる。切り離せるかの緊張感も5日にある。

NVS齋藤:TCM-4は事前にコマンドを打っておいてタイマーで変更するのか

津田:この段階では電波の往復が数秒しかかからずリアルタイムでできるが、多くの場合あらかじめコマンドを打っておく。TCMがうまくいったか確認してからコマンドを打つ必要があるときは、短時間で判断してOKであれば次のコマンドを打つことも。
予定を作ってコマンドを打っていくが、今回は(わずか)数分後の予定を打っていくようなこともある。

齋藤:C型小惑星からのサンプルリターンで検疫は強化されているのか

中澤:イトカワはS型、リュウグウはC型。COSPARという組織に検疫を評価してもらっている。リュウグウのサンプル持ち込みにケアは不要であるとされており初号機と大きく変わることはない。

齋藤:宇宙から有機物を持ち帰る可能性がある検疫より、人間の検疫のほうが厳しくなっていると思うが

中澤:新型コロナウイルス対策でオーストラリアへの行き来の間も隔離が必要で、検討事項が増えて大変です(笑い)

月間星ナビ中野:分離したカプセルの写真撮影について。初号機では地球の画像が印象的だった。今回は地球を撮影する?

津田:いま申し上げられるのはカプセルの降下していくところの撮影のチャレンジ。地球の撮影については、初号機はカプセル分離後大気圏突入直前に撮影して下ろした。今回はカプセルを分離後地球から離れなければならず、検討はしたが地球の撮影はできない。
地球から離れていくときに地球や月を撮影したい。これは科学観測も兼ねている。

中野:TCM-5後に地球離脱の噴射があるが、これができなかった場合探査機は大気圏に突入するのか

津田:その通りです。その場合の見え方は初号機と同じになる。間が悪くてカプセル分離後に探査機が壊れたらどうするかなどの異常ケースは検討中。そのあたりも想定してオーストラリアと調整中。

TELSTAR種田:アウトリーチについて。カプセルが地球に帰還する様子をリアルタイムで見るのは難しいかもしれないが、いまの状況を知ることができるような方法は提供されるのか

津田:カプセル分離後の様子などは発信したい。リエントリ時の映像公開は検討中。カプセルが大気圏に突入する様子を見ることはこちらもできないので、今こうなっているといった情報は発信したい。
オーストラリアにマスコミが行けないなど情報収集が厳しいことは理解している。情報発信についていくつかの手段を用意しようとしている。いいアイデアがあれば教えてほしい。

フリーランス大塚:カプセルを進行方向と直角に向けて分離するとのことだが初号機ではどうだったのか

津田:あまり覚えていないが、想像するに少なくとも進行方向ではないと思う。

大塚:分離直後のカプセルは撮影するのか

津田:やりたくてチームの中では考えたが断念した。初号機ではカプセルと同じ面についているスタートラッカーで撮影した。今回はカプセルを太陽方向に分離するため撮影しても写らない。カプセル分離後はTCM-5の準備で忙しいため分離直後のカプセルを撮影するのは断念した。

大塚:再突入時のカプセルを撮影するカメラは。またどのくらいの大きさで写りそうか

津田:撮影はONC-W2を使う。光っていれば点が見えるといったくらい。地球の夜景の手前に発光するカプセルが見えたらいいなと思っている。

毎日新聞永山:カプセルの分離距離が地球から22万キロというのは初号機よりかなり遠い。その理由は。またはやぶさ2の追加ミッションの検討状況は

津田:分離が12時間前になったのは運用上の心配があったわけではない。カプセルは単独飛行の間、内部の電池で動作する。12時間あっても健全に動作することは確認済み。降下の軌道をきちんと狙えること、TCM-5できちんと逃げられることを重視して決めた。
分離後の探査機のミッションはどちらにするか精査中。

NHK筒井:リエントリ直前の探査機の撮影は日本から可能か。探査機はカプセル離脱後はどちら方向へ飛んでいくのか

吉川:探査機が地球に近づいてきてカプセル分離する前後くらいに日本から探査機本体を観測できそう。探査機が地球から離れるときは昼間側に行ってしまうので望遠鏡による観測は難しいだろう。

筒井:日本上空を通ってオーストラリアへ向かう軌道をとる?

津田:地球の上にはやぶさ2の航跡を描くと、日本の近くを通ってオーストラリアへ向かう。

筒井:明るさはどのくらいになる?

吉川:予測は非常に難しい。初号機はすばる望遠鏡など大きな望遠鏡で撮影できた。探査機の姿勢によっても明るさが変わるのでどのくらいになりそうか計算中。

筒井:個人の望遠鏡で見るのは難しい?

吉川:はい。しかしベピ・コロンボの地球スイングバイでもアマチュアがかなり暗くなるまで撮影できた。今回もかなり暗くても撮影できるかもしれない。

NVS金子:TCM-5の噴射時間は。またTCM-5が終わって計画通り地球を離脱できたかわかるのはいつごろ?

津田:TCM-5は地球が近いので全力に近い噴射。4本のRCSを30秒間、3セット噴く予定。1セットは30分から1時間おき。結果は即座に判明する。探査機が正しい方向に飛んでいるかわかるのは地球スイングバイ後。6日のどこかでわかる。
目標天体に向けた正しい方向かどうかは1週間くらいかけて精密な観測が必要。

宇宙作家クラブ渡部:カプセル再突入してから拡張ミッションを決定する可能性はあるのか

津田:そうはしたくない。プロジェクト側はすでに提案している。一本化は即座にしたい。結果を受けてJAXAや政府レベルで拡張ミッションにGOがかかるかはこちらでコントロールできない。計画決定がリエントリ後になる可能性はあるかもしれないが、そうならないようにしたい。

(以上)

次回の記者説明会