小惑星探査機「はやぶさ2」再突入カプセルの相模原キャンパス到着後記者会見

日時

  • 2020年12月8日12時30分~13時30分(の予定が14時20分まで)

前回の記者会見

登壇者

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JAXA宇宙科学研究所

  • 所長 國中均(くになか・ひとし)

JAXA宇宙科学研究所はやぶさ2」プロジェクトチーム

JAXA宇宙科学研究所地球外物質研究グループ

  • グループ長 臼井寛裕(うすい・ともひろ)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授)

(上段左から國中氏、臼井氏、津田氏、吉川氏)

中継録画

NVS@nvslive)による中継

関連リンク

國中氏より


カプセルをオーストラリアで回収、チャーター機で羽田に今朝到着。1時間ほど前、11時27分にコンテナをキュレーション設備に搬入成功、これ以降は分析フェーズに入る。科学的勝ちを最大限に高める措置をとる。
陸路沿道では見送って応援いただき、正門前では地元の方々にお迎えをいただき、たいへん厚いご声援をいただきありがとうございます。
キュレーションを確実に実施していきます。

少し所感を。3月から4月にかけて日本中がロックダウンした。宇宙研としては見たこともないような状況に追い込まれ、カプセル回収ができるのか困った状況に追い込まれた。豪州政府から着陸許可が出ておらず状況が悪化すれば入国できなくなる可能性もあった。
ほかに考えていた計画も企業活動は低下し不景気になることは明らかだった。空路が安定的に運用されるかも見通せなかった。はやぶさ2の軌道を調整して12月の帰還を延期することも頭をよぎった。
しかし宇宙科学研究所は本来業務として自律的なカプセル回収をするべきと考え直した。人員輸送はチャーター機を確保して宇宙研は万難を排してオーストラリアに乗り込む。そういう姿勢を世界に示すべきと考えた。そうすれば豪州政府にも意気込みが伝わり、着陸許可が加速されると考えた。
コロナで世界中の人類活動が低下する中、JAXAこそ世界に向けて人類の活性な活動を示すことでカンフル剤となることを目指した。
結果的に地元から大きな支援をいただき、豪州政府とも強い関係を築くことができた。
オーストラリアへ渡航するのが難しくなったことで、ウーメラでの見学者による混乱を避けられたなど、コロナが悪い方ばかりにふれてはいなかったと感じている。
豪州での回収は前回の経験を生かし、より緻密で確実な回収を心がけ、技術開発を前広に実施してきた。今回は3重4重の構えでカプセルを回収できるよう技術的にも体制的にも作ることを目標として10年間開発してきた。
幸い天候に恵まれほぼ無風でもあり、従来の構えだけでも無事に回収できた。レッスンズアンドラーン(得られた教訓)として、2029年のMMXのサンプル回収に向けてより確実にするべく結果を分析し備えたい。
2010年の回収活動は少ない人数で昼夜なく働いてきた。最後には朝起きられなくなるくらいになった。今回の回収チームにはシフト業務を整理して睡眠時間を取るようにと指導してきた。
しかし手抜かりが一つあった。日本に所長(=自分)が1人しかいないことに思いが至らず、先週の土曜日からイベントが各種あって自分は睡眠不足、体力の限界。
今朝起きてテレビをつけたとたん「カプセルを積んだ飛行機が着陸」とやっていて、コーヒーも飲ませてもらえないのかよと思った次第。
こういった経過もレッスンズアンドラーンとして引き継いでいきたい。

津田氏より

ついに相模原にカプセルが戻ってきました。正門で出迎えた。52億キロの往復飛行から戻ってきたという実感がわいた。心に迫るものがあった。朝早くから待っていただいた報道の方、市民など一般の方も待っていただいて、時間がかかったのでやきもきしたかもしれないが渋滞があった程度で時間通りに到着した。たくさんの方にお迎えいただきありがとうございます。
カプセルは11時27分にキュレーション設備に入っている。開封準備から始めて中身を開ける作業に入っていく。貴重な宇宙飛行をして帰ってきたカプセルが手元にある状態なので、まずはきちんと保管することから始めたい。
帰ってきて本当によかった。新しい科学がここからスタートできる、それにはやぶさ2が貢献できてよかった。

吉川氏より

カプセルが相模原に戻ってきて本当にほっとした。一つだけ残っている気がかりはサンプルが入っているか、入っているとしたらどのくらいか。あとはすべて完璧にできたと思う。

ウーメラの本部におけるガス採取・分析

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コンテナのメタルシールは完璧で密閉されていた。ガス採取も成功、簡易分析によるとサンプルから出たガスかどうかはまだわからない。詳しい分析はこれから国内で。

カプセルが入った箱を飛行機に搭載

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飛行機は昨夜22時半に出発、今朝7時すぎに羽田に到着。輸送も問題なく実行できた。

はやぶさ2試料の初期記載・分析

(臼井氏より)

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我々はこれから分析する立場。運用チームやかかわった多くの大学、企業の関係者などありがとうございました。
1万点の状態で届けていただきありがとうございます。緊張するががんばっていきたい。羽田からコンテナと一緒に戻ってきた。国民の皆さんからの厚い支援、期待に応えられるようにして1万点を2万点、3万点になるようにしていきたい。

ウーメラ(Quick Look Facility)でのガス採取・分析

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きちんとシーリングされていてガスを採取できたのはとてもよかった。

ISASクリーンルーム内での解体作業

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はやぶさ2クリーン・クリーンチャンバー

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クリーンルームは5つの部屋に仕切られていてCC3-1から始めて4-2へ試料が移動していく。
なるべく宇宙にあった状態のまま分析していく。真空下でのキュレーションは日本独自の技術。
せっかく宇宙空間からそのまま持ち帰ってきていただいた試料を地球の環境になるべく汚染させず、リュウグウにあった状態のまま記載し研究者に提供するのが我々の仕事。

CC3-1でのサンプル回収の様子(リハーサル)

(動画)

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模擬物質を使ったリハーサルの様子。マニピュレータの先にトングのようなものがついていて、内視鏡のようなもので見ながら取り出して下から出てきた保管用容器へ試料を移し替える。
いくつかは真空下で保管し、窒素環境下にも移動しない。将来何十年先の世代のために取っておく。

窒素雰囲気下(CC-4)での初期記載作業

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光学顕微鏡で外見などを観察、マイクロ天秤で重さを量り、可視や近赤外カメラによる観察。
サンプルの多くは保管し一部を分配。

資料分配スケジュール(予定)

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質疑応答

共同通信須江:採取したガスの簡易解析でどんなことがわかったのか。またメタルシールの密封はよかったのか

吉川:自分が把握している範囲だが、分子量は測ったとのこと。物質の種類は今後詳しく調べたいと。リュウグウ由来と断定するには至っていない。チームが慎重に対応している。はっきりしたときにご報告したい。

須江:リュウグウ由来であると判断できる可能性は高まっているのか

吉川:少なくともガスが入っていたのは事実。リュウグウ由来と期待はしたいがまだなんともいえない。

フリーライター荒舩:キュレーション施設から初期分析に回すまでに6か月というのは一般的には長いのか短いのか

臼井:平均的な期間と思う。とはいえこういう作業は前回のはやぶさが初めてでNASAを含めてもそうそうないこと。
最初が肝心なのでサンプルをきっちり開けて分取するところまで進めたい。

毎日新聞いけだ:試料の取り出しはいつごろ始めるのか。分量がいつ判明するのか

臼井:チャンバーのふたを開けるのは来週以降。全体の重量がわかるのは…1月か2月くらいまでかかるだろう

フリーランス秋山:初期記載作業では可視と近赤外線で観察するとのことだが、近赤外線のMicrOmegaはMASCOT(ローバー)に搭載されていたものの地上版? MASCOTの観測を地上で答え合わせするということか

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臼井:初期記載に使うMicrOmegaはMASCOTに積んでいたのと同じもの。MASCOTでの観測が完全ではなかったこともありある程度の答え合わせとなる。
はやぶさ2が積んでいた近赤外線カメラのNIRS3もあって、同じ波長領域で答え合わせする。
空間分解能が遠方から見るのと近くで見るのではだいぶ違うので、NIRS3ではのっぺりしていてどこでも変わらないようなスペクトラムだったが近くで見ると構成要素が違うというような結果が出ることを期待している。

ニッポン放送畑中:吉川さんが12月の帰還延期も頭をよぎったと言ったが具体的には

津田:純粋に軌道力学的には帰還を遅らせることは可能。技術的に可能かという検討はコロナの影響で始めていた。
地球に帰還するとき探査機はTCM-5でスイングバイしたがそれをカプセルを切り離さず行う。カプセルを落とさずもう一周して帰ってくるという軌道にする。
帰還を1年後や2年後にすることは可能だが、着陸地域をオーストラリアにできるか、できたとしてもウーメラに着陸させられるかなど不確定性が出てきた。また世の中が1年後や2年後にどうなっているかもわからない。せっかくリュウグウで取ってきたサンプルをどこに落とせるか確定できなくなるため「これは予定通り地球に返したい」と決めた。

共同通信やの:これからどんなことを解き明かしていきたいか

津田:地下物質を手に入れたこと、表面物質と一緒に手に入れた。入れた手を胸元に引き戻したのが今の状況。その手を開くわけだから何を発見できるか楽しみ。仮説を元にC型小惑星へ行った。水が見つかることをまず期待している。思ってもみなかったようなもの、複雑な分子構造を持つ有機物などが見つかることを期待している。

NHKてらにし:6年ぶりにカプセルが帰ってきたときの思いを

津田:本当によく帰ってきてくれた。52.4億キロの旅をして、遠くのリュウグウに到着して帰ってきた。目の前…といってもトラックの中だが搬入されたということで大きな実感がわいている。まだカプセルを見ていないので回収メンバーを信頼しているだけだが、自分の目で見るのを楽しみにしている。天気もよくいい日に帰ってきてくれた。

てらにし:火星の調査専門だったと思うがC型小惑星の分析を世界最初にすることについて

臼井:ここまでとてもうまくいっていて、たすきを引き継いだ。まずは役割、ミッションをこなさなければならない。いい意味の緊張感を持って準備してきた。結果につなげたい。
有機物は専門ではないが、特に興味があるのは水、水酸基の痕跡があるC型小惑星有機物が複雑に進化していったのか、どこまで進化して地球や火星へもたらされたのか。
専門からいうと無機物のほう。ああいった小惑星の歴史を知るとき大事なのは事件の年表を入れていくこと。放射線同位体を使ってイベントの時期を理論・実証で決めていきたい。

産経新聞おさない:試料の有無がわかる時期について確認。カプセルの中にリュウグウの試料が入っているとわかるのは早くて来週?

臼井:予定通り行けば来週です。

東京とびもの学会金木:資料の選択基準について。将来に残すものと分析に回すものをどう分類するのか

臼井:選択基準は…ミッション目的を達成するために必要な試料がまずあって、宇宙風化を知りたいとか有機物の同定をしたいという目的に合った選択をする。その上で残りを将来へ残しておく。

金木:今回オーストラリアから羽田にカプセルを届けた飛行機の名前が「ファルコン(はやぶさ)」だったことについて

津田:完全にたまたまです。気を利かせてくれた人がいるのかどうかは把握していない。

NHK水野:有機物の情報を得るために近赤外カメラを使うとのことだがいつごろ行うのか。有機物のどんな情報を得られるのか。また水はどんな方法で調べていつごろわかるのか

臼井:有機物や含水鉱物の情報を得られそうなのは年明け以降。どういった有機物で分子構造はというのはキュレーションから初期分析チームに渡さないとわからない。夏以降に初期分析チームにわたったあとになる。
含水鉱物についてもチャンバーから取り出してX線などで分析。夏以降になる。存在するなら容易にわかる。

AP通信長谷川:採取されたガスがリュウグウ由来だとすると、ガスの研究でわかると期待されることはどんなことか

臼井:小惑星のガスからはいろいろなことがわかる。太陽風が吹き付けられてリュウグウの粒子に吸着している。そういうものが分析されて太陽風の組成がわかったりする。
岩石そのものの中に内包されている物質から出てくるガスもある。リュウグウは水があって有機物と岩石と水があった時代の状態が取り込まれているとそういう情報がわかる。

下野新聞社田崎:吉川さんの冒頭発言で完璧だったとあったが全体をふり返ってどうか

吉川:ふり返ると話が長くなるが、ミッションを立ち上げてから探査機の製作というハードルがあり、そのあとも予想外のことを乗り越えてきた。大きなトラブルはなかったがリュウグウという初めて行った小惑星では予想外のことが多かった。
タッチダウンが非常に難しかった。そろばんの玉のような形だったことも驚き。探査機がどこまで挑戦できるか気がかりだったが想定以上にデータを取れて探査できた。ここまで来たということでほっとしている。あとはサンプルがどのくらい入っているか。

田崎:広報を担当した吉川さん、周囲の方々にどういう気持ちか

吉川:今回はたくさんの情報をリアルタイムにどんどん発信しようと意識してきた。わりと年齢層の低い小学生や中学生にもはやぶさ2の興味を持ってもらえて本当にうれしい。応援メッセージが大人だけでなく小さいお子さんからイラストなど届く。とても嬉しく力になった。若い人が新しいミッションに進んでいただけると嬉しい。

朝日新聞石倉:分析したガスがリュウグウ由来と断定するには時間がかかるとのことだがどう分析するのか。地球由来のガスと区別する方法は

臼井:ポイントがいくつかある。太陽風は地球の地表には来ていない。地球大気と異なるヘリウムの同位体などを持っていることがきっちり分析できれば確実に判断できる。

毎日新聞永山:國中さんに。6日の会見でチームに厳しく指導してきたと聞いた。カプセル帰還で工学についてはミッション完遂となったが、このはやぶさ2のチームをミッション全体でどう評価しているか。何点あげたいかなど

國中:あのーあのーあのーそうですね、(自分は)現場からは評判が悪いので、今日はじゃあ大変よくやってくれましたということで1万点やっていただいて申し分ないと思います。
現場の人たちは大変熱心に、特に近接運用で創意工夫を発揮して、はやぶさ2の持つパフォーマンスを最高に引き出してくれた。その手前でアボートもあった事実は受け止めてほしい。
当初の考えとして、着いて最初の1年間は挑戦と思っていた。行ったことのない場所へ行って着陸しようということ。使える情報はせいぜいはやぶさで行ったイトカワのものが精一杯。
イトカワでは平らなところがあって、そこを目指して着陸した。だからリュウグウにも平らなところがあるだろうと。使える情報としてそれしかなかったから同じように着陸できると考えた。ところが着いてみると平らなところがなかった。それが初めての場所に分け入る探査の醍醐味。尻込みしていては着陸なんかできない。最初は挑戦がベースライン。創意工夫が発揮できるようにして活動を行っていた。
しかし後半、1回目の着陸ができてインパクターによる人工クレーターができた上で次のフェーズはやはりチェンジマインドする必要があると思っていた。十分引き締めを行い、確実に地球に返すことが優先されるべきというのが自分の哲学。アボートしたから大丈夫とは許されない。
その成果もあってか2回目も精密にタッチダウンできた。その後カプセルを地球に誘導して、はやぶさ1ではできなかったTCM-5で深宇宙へ戻すこともできた。ここまでの誘導制御はお見事だった。このあと拡張ミッションが行われるが、ここについてもまた少しみんなと議論して、どういう体制、どういうプライオリティで実施するか考えていく。
拡張ミッションは気がかりではあったがまずは地球にカプセルを戻さないといけなかったので、これから話をしていく。

永山:残しておくサンプルは真空環境のまま保存するのか

臼井:両方あります。窒素環境下のもののほうがだいぶ多いです。

ライター林:はやぶさ2クリーンルームは初代とどう違うのか

臼井:クリーンルーム自体は大きさがだいぶ違う。なぜならクリーンチャンバーの大きさが倍くらいになったため。
真空環境下でハンドリングするのを新しく取り入れたためチャンバーが大きくなり、クリーンルームも大きくなった。
C型小惑星は揮発性成分が多いと思うので手順が変わってくる。真空環境で扱うのもそう。
リモセン観測で得られているがリュウグウは真っ黒。多孔質な物質なのではないかと言われている。そういうものをつぶさずにすくう技術を準備している。
試料が多いと期待している。大きな粒子もあるだろう。静電気で取るようなものではないハンドリング方法も準備している。

林:準備で大変だったことは

臼井:コロナがこのタイミングでやってきたこと。JAXAのキャンパスも一部クローズする状況。テレワークできない準備作業なので心配したが、限られた必要な部分の作業を続けてよいと許可をもらい、今日に合わせてやるべきことは全部できた。大変だったがよかった。
工夫したところはいろいろある。よかったなと思うのは、ハンドリング技術の一つはJAXAの新人研修で回ってきた新卒一年生の偶然から生まれたような技術があった。瓢箪から駒。キーとなる技術になっていて嬉しく思う。
具体的には…金属の先をわざと変形させて弾力性を持たせて引っかけるようなもの。

林:ガスのことについて。岩石の中で閉じ込められているものが地球で反応して出てきているのか

臼井:機械的に揺さぶられたりしてガスが出てくることはよくある。

林:今日もはやぶさ2の運用で忙しいとのことだが

津田:はやぶさ2は今だいたい100万キロを越えて遠ざかっている。今日はLiDARの光リンク試験をしている。各国のアンテナとやり取りしている。光リンクなので天気が大事。信号を取ろうとしている。今の探査機はLiDARの光軸が地球を向いている。

林:運用体制は今後どう変わっていくか

津田:帰還フェーズは6日で終了。同じ運用メンバーで今年度中は今の体制。拡張ミッションに正式にGOがかかったら来年度は体制を引き継いでいくと考えている。

時事通信神田:カプセルのヒートシールドなどの分析や飛行計測モジュールの分析について

津田:キュレーションにいつづけるのはコンテナのみで、ガワやインスツルメントモジュールなどは別の場所で保管。回収チームの大半が今はまだオーストラリアにいる。帰国後始めるので来年になるだろう。
宇宙から戻ってきたものなのでたいへん貴重。みなさんにお見せするスケジュールも出していきたい。

神田:突入の様子の分析などは時期的にMMXに反映されたりするのか

津田:もちろん何らかの形でフィードバックします。

読売新聞中居:カプセルのふたを開けるのが来週とのことだが、何かが入っていたら開けて中を見た瞬間見えるものか

臼井:カプセルは少し複雑な構造をしている。見えるところにあればアルミナの銀色の空間に入っているものはすぐわかるだろう。

中居:黒い物質が入っているのを見た時点で「採取成功」となるのか、分析後なのか

臼井:採取成功はミッションの判断もあると思う。シーリングがよくできたカプセルの中に物質があればほぼ確実にリュウグウの物質と言える。傍証としてあったかどうかは来週わかる。ただし科学的な評価としては分析が必要。
年内にリュウグウの物質だったと言えるかどうかは…どうでしょう。

津田:中に何かが見つかったときはそのようにお知らせします。

フリーランス大塚:カプセルは今回再突入飛行計測モジュール「REMM」を搭載して再突入中の挙動をデータ収集しているが、データは取れているか

津田:電子回路を取り出して中身を分析する。解析チームがオーストラリアから帰ってきてからデータを取り出す。

大塚:ヒートシールドを見て現状でなにか言えることはあるか

津田:少しテープが残っているものの全体的に黒くなっているというのは見たが、詳しくはまだ見ていない。楽しみにしている

大塚:ヒートシールドが見つかったときの状況は

津田:レーダーでどのあたりに落ちたか推定できた。前面と背面があってパラシュートが開くと同時に落ちる。風に流されるパラシュートよりはだいぶ手前に落ちる。落下地点の推測は比較的早くできた。推定場所に対して最初に行ったのはヘリコプターかドローンで。その日の午前のうちに見つかった。

大塚:カプセルは初号機に続いて連勝と思う。開発担当の感想は

津田:たいへん喜んでいた。カプセルがきちんと動作するかは事前にチェックできない。単独飛行のためのバッテリーは分離当日まで火を入れないし、分離機構もちゃんと動くかどうかは技術データでしか証明できない。そういうプレッシャーを受けつつ「最後のバトンは君たちだから」という中できちんと証明していただいた。
我々は冷やかし半分に「でも本当に動くんですか」と聞いていたが完璧だった。着陸したとき「ホラできたでしょ」という顔をこちらに向けていました。

宇宙作家クラブ上坂:カプセルの巡回展は予定されているか

吉川:具体的な日程は未定だが広報と検討したい。カプセルやヒートシールドの状況、コロナの状況も見てなるべく多くの方に見ていただけるよう検討する。

上坂:はやぶさ2にはたくさんのファンがいる。はやぶさ2ロスの方に一言

津田:まずはそういうロスが起こるほど愛していただいて感謝しています。打ち上げ前から応援いただいた。運用チームの力になった。さみしいと思われる方は拡張ミッション、11年間飛行し続けますので応援してほしいし、はやぶさ2によって生まれた新しい面白いミッションがいろいろある。ここははやぶさ2に似ているとか、はやぶさ2があったからこれをするんだなとわかることがあると思う。
はやぶさ2のことを愛し続けてほしい。

上坂:チームの中でもミッションが終わってどんな感じか。津田さんはどうか

津田:肩の荷は下りた。宇宙飛行パートは終わったが、プロジェクトとして成果はどうだったか。1年ほどかけて、サンプルまで含めて成果をまとめていく作業があるのでまだ寂しいとは言っていられない。宇宙にある探査機がすべてやり遂げたあとというのは寂しい部分があるかもしれない。
ただはやぶさ2自身は生きているので、そういう意味の寂しさはない。

日刊工業新聞いいだ:初期分析について。どのくらいの量が必要なのか。量が少ないと削られてしまうステップがあるのか

臼井:100ミリグラムほど必要。少なかった場合なにかを切らないといけない。
サンプル分析チームは有機物、無機物、ガスなど分かれている。各チームには確実に回り、それぞれで分析していく。

いいだ:優先順位が高い分析は

臼井:鉱物チームだったら同定、有機物なら種類や構造の同定が優先順位が高い。年代学も優先順位が高い。

いいだ:初期分析のあと6チームくらいで分析と思う。どのような分析をしてどんな成果を望むのか

臼井:初期分析が国内外6チーム。もっとあとの国際公募では世界中のどんな人でもプロボーザルを出してもらう。どんなものが出てくるのかはわからない。我々が思いつかないような提案を期待しているし、刺激になるようなカタログ作りをしていきたい。

テレビ朝日こいけ:もしリュウグウの物質が入っていたら我々の生活にどんな影響があるか。新薬を作れる可能性があるなどは

臼井:これは基礎研究の分野なので、5年後の新薬や安全保障などに結びつくのは難しい。知的好奇心をかきたてるというのはよく言われること。ドキドキするだとかモチベーションが上がったりすることはあるだろう。
10年前にはやぶさが帰ってきたとき自分はNASAの一研究者で、自分自身の将来を模索していたときに同僚たちが映像を見て盛り上がっていたとき、自分だけ別の感情を持っていると思った。
自分が生まれ育った国で先輩たちが積み上げてきた技術でやっていると思った。自国の役に立てるようなことをしたいと思った。それが何百万人の一人なのではないか。一人一人が異なる感情を持って、科学では説明できない大きなムーブメントにつながればよい。

國中:6日も話したが、アステロイドマイニングという考え方がある。小惑星を資源の炭坑にする。小惑星から物質を取り出す。小惑星を資源にするベンチャー企業もすでにある。ルクセンブルク小惑星の開発権益を企業に与えるという法律を作っていて、企業が誘致され投資されるというのが進んでいる。
宇宙資源の取り扱いについては日本でも法制化が進んでいる。月の極域で水を回収して電気分解して燃料にという話も進んでいる。
おとといはカーボンの含有量が多いなら地球の石炭と同じだろうから燃料として燃やせるだろうという話をした。
小惑星は出かけていくのもそこで採掘するのも大変で、大量の物質を持ち帰ってくるのも大変。今すぐ宇宙の資源を活用できるものではないが、小惑星に出かけていって量はともかくサンプルを採取して地球に持って帰ってこれたのは今のところ日本だけ。
どこになにがあるのか知る、出かけていくことができサンプルを取り出せる、サンプルを持って帰れる。これが揃わないと空にものを言っているに過ぎない。我々はその実行力を持っている。ガンダムの世界では小惑星を引っぱってきて資源としスペースコロニーを作っている。そういう世界が来年できるとは言わないができるようになっていくし国家はそれに対応しようとしてきている。

津田:惑星防衛の話をしたい。地球には隕石が毎日何トンという量で降り注いでいて、時には街や人に被害が出ている。その故郷である小惑星を理解するのは惑星防衛の基本。
太陽系や生命の成り立ちの理解を深めるのは基礎科学として大変重要。加えて我々の生存のために世界をさらに知る、自分たちのいる環境を知る。その上で手立てを考える。我々はその先頭を走っている。このプラネタリーディフェンスは世界的に議論されるようになってきていて、我々は力を出せるのではないか。

宇宙作家クラブ松浦:未来の話を聞きたい。この先の太陽系探査と、それに必要な工学的技術の開発について。
國中所長は太陽系全体に艦隊を送ると盛んに書いていて技術開発の布石を打っていると感じる。
はやぶさ2が成功してその次が必要。いまMMXというサンプルリターンミッションが動いているが、はやぶさの帰還からはやぶさ2の打ち上げまで4年あいた。はやぶさ2の帰還とMMXの打ち上げも4年あいている。
一方で世界の宇宙開発は加速している。理由はスペースXのようなニュースペースの登場、そして中国の積極的な投資、月探査など。
中国も小惑星サンプルリターンを目指していて、小惑星探査の完了は2031年になるという。
そういった中で宇宙研はどういうふうに探査を広げていくか。またそのために今後どういう工学的な技術を開発していくつもりか

國中:ぜひ答えたい質問をありがとうございます。いま水星から木星土星まで宇宙研のDNAが入った探査機を展開しつつある。残念なことに水星、木星土星ESANASAとの協力で「連れていってもらう」状況。木星圏、土星圏に自分たちの船を出したいということは宇宙研内で常日頃から申し上げている。
こういった領域に進出するにはエネルギー問題の解決(活動のためのエネルギーをどう取り出すか、取り出したエネルギーをどう効率的に使うか)が必要。そこにどういう布石を置けるのか。
また推進のテクノロジー。これを我々の手のひらに載った領域で他国とは違う使い方をできないか。それらが大きなパラメータ。
こういった技術開発と人材育成、企業を見いだし予算を確保するのは政府からもご信任をいただき着実に実施している。フロントローディングという枠を確保していただいている。
そういったものを総動員して我々の新しい船を組み上げ、より遠い宇宙へ行きたい。それを仕込んでいるところ。これは世界各国と競合するので具体的なことを申し上げられないが、いつかみなさんにご紹介したいと思う。
スペースXなど海外、特に民間企業の活動について。宇宙研は民間企業とコンピートする存在ではない。経済的なベネフィットを取り出す組織でもない。我々をドライブするのはあくまでも科学的なマインドであり、それを糧により遠くの宇宙へ出かけていきまずは知ること、人間の地平線を拡張することが目的。火星での民間企業の活動理念などとは一線を引く。

松浦:2つ観点がある。科学探査なくして経済(?)もなにもあったものではない。そして中国という強力な競争相手が出てきている。日本には2000年ごろ月周回、着陸、サンプルリターンという計画がかつてあったが、それを達成したのは中国だった。
次の世代はこれからどういうふうに動いていくか、どういうふうに次へ渡していくかを考えなければならない。
これからどうやっていくか、なにをしたいのか。オケアノスのような探査構想を進めるのか。あるいはもっと遠くへの探査をするのか。
私見では次にはやぶさ3という話があるとしたら理学ミッション。新しいところへ行くなら工学ミッションを立ち上げる必要がある。どう考えているか

津田:次の次の世代のミッションとしては、科学と技術で世界をドライブできるミッションを考えていかなければならない。それが使命。。そして民間が関わってきている。その力を取り入れ力を貸しながらうまい方向へ進めていくことも必要。
宇宙活動は低軌道からだんだん月へ向いていて、その先は月でとどまらず火星への…サンプルリターンは進んでいるし、その先には人が行き来する世界が見据えられている。その中で我々が何をできるのか考えなければならない。
同じ道をとるのは必ずしもとるべき道ではないが、協力はしていかなければならない。はやぶさ2でしたことは、オリジナリティを出す方向に使える余地がたくさんあるだろう。
惑星間の往復飛行ははやぶさ1とはやぶさ2が世界のすべての実績。我々ができたのは近地球小惑星への往復。ここから考えると大きい天体、遠い天体だとどうなるかを考えるのは我々の独自性につながる。
はやぶさ2は非常に高精度で3億キロ先の天体に着陸した。地球から離れた場所で探査機を自在に扱えるということ。相手が天体でなく、人工物どうしでも結合や切り離しなどをできる。火星や木星の衛星からのサンプルリターンでは遠方でのランデブードッキングなと自在な動きが必要で、我々はそこに一番近いポジションにいるともいえる。
はやぶさ2でやったことをスクラップ&ビルドしていくと面白い世界を10年後、20年後に描けるのではないかと思っている。

(以上)

次回の記者会見