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さらば3Dプリンタ

キットを買って自分で組み立てたデルタ型の3Dプリンタ「K800」を知人に譲った。

これを作った10年前、電子工作のスキルは今ほどではない。本当に完成するのか、ちゃんと動くのかとても不安だったのを覚えている。当時よく聞いていた曲を思い出すと、この時の気分がよみがえってくるくらい。

結果的にメカ部分はうまくできた。でもきれいに出力するのは大変だった。ノズルの温度やフィラメントの送り速度を変えたり、ノズルやホットエンドを交換したり、冷却ファンの強さを変えたり。ヒーテッドベッドを組み込んでABS中心の出力になったらわりといい感じになった。

その後も改造は続いた。電源ボックスを立てるスタンドを作ったり、ステッピングモータードライバーを静かなものに交換したり、エスクトルーダやエフェクターのパーツを3Dプリントサービスに発注したり。アイデアがいろいろ出てくるので「これで完成」という状態には結局ならなかった。最後は造形テーブルを照らすためのLEDテープを取り付けたものの、それを固定するマウンタを出力するところまでは行かなかった。

3Dプリンタは生活上も活躍した。3Dプリンタは一品ものを精度よく出せるので、「これをここにくっつけたい」という用途に向いている。自作の棚につけるフックや充電池ホルダ、ペットボトルを使ったマウンタなどを作った。

こんなふうに書くとわりと楽しくやってきたように思うかもしれない。確かに楽しかった時期もあった。アイデアをデータにし、それを実物として手に取れるのはとてもよい。でも肝心の出力のための調整がだんだんつらくなってきたのだった。出力したいデータがあっても、それをすぐきれいに出力できるわけではない。フィラメントがちゃんと送られて、最後までノズルが詰まらないようにする。調整部分はたくさんあって、今回どれが効くのかはやってみないとわからない。ある程度ノウハウがたまっても、これで万全とはならなかった。ノズルが詰まったらまた交換である。

そう思うと3Dプリンタを使うのがおっくうになっていった。3Dプリンタをいじることそのものが楽しい人ならそういうことはなかっただろう。自分もそういう方面だと思っていたが限度があった。

最近の市販の3Dプリンタは安いし出力もよい。匠の技による調整は必要なく、買ってきてただデータを送ればきれいに出してくれる。ああいうのを見ると、ますます自分の3Dプリンタの大変さが身にしみた。

最近の市販の3Dプリンタ(Bambu LabのA1 mini)

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そうして死蔵していた3Dプリンタの話をネットでしたら、譲ってほしいという話をもらった。ちょっと前の3Dプリンタをすでに持っている人で、調整が大変なことは理解している。それなら3Dプリンタへの期待値が高すぎることもなくてよいだろう。久しぶりにフィラメントを通さずに動かしてみたところ、基本的な動作に問題はないようだった。そうそう、ちゃんと動くことは動くんだよね。

ということでK800は新天地へ旅立っていった。向こうで楽しくやっていってくれ。