自分で設計したキーボード「ThumbShift5-15TB」をエンドゲームにするつもりだったが、欲が出てきてまたキーボードを自作してしまった。ファームウェアの機能をいろいろ使おうとすると容量が大きくなりすぎてマイコンに入らない。あれとかこれとかを実現するために大容量のマイコンに変え、ついでに設計をちょっと変更した。キーの配列は変わらない。
- ThumbShift5-15TBが完成したときの記事
自作キーボードがひとまず完成してしまったがここからが沼
- いろいろカスタマイズして見た目がだいぶ変わった
今年自作したキーボードのカスタマイズ記録
- ファームウェアの減量に苦労した話
自作したキーボードのファームウェアをVialに対応させようとしたら大変だった
前作「ThumbShift5-15TB」と共通の特徴
- 数字列やファンクションキーを省略したコンパクトな59キーキーボード
- 数字キーやファンクションキーはない。無変換キー(変更可能)と一緒にアルファベットキーを押すことで入力する。たとえば「1」は無変換+A、「2」は無変換+S。ファンクションキーはXCV…の行を使う。(標準のファームウェアではF1のみ誤入力に配慮して、異なるキーアサインにしている)ホームポジションに手を置いたまま数字キーやファンクションキーを操作できる。同じようにカーソルキーもホームポジションから入力できるキーアサインにしている。
- 一方でカーソルキーは残した
- 片手で操作したいときなどのためにカーソルキーは残してある。PageUp/Down、Home/Endはカーソルキー左の(写真では「FN」)キーを押しながらカーソルキーを押す。
- 小型のトラックボールを装着可能
AZ1UBALLというミニトラックボールをつけることができる。マウスポインタを移動するだけでなくスクロールモードへ移行してロータリーエンコーダのように使うことも可能。ただしマウスポインタ移動の精度があまり高くなく、マウスいらずにはならないと思う。
- 親指シフト入力に適したキー配列
- Bキーの下にキーが2つ並ぶ、いわゆる「B割れ」の配置になっており、親指シフトキーを割り当てるのにちょうどよい。(現在のところ、親指シフト配列にするのは「やまぶきR」や「紅皿」などのソフトを使う)
- CherryMX互換キーとChoc V2キーの両方に対応
- 背の高いCherryMX互換キーと、背が低い(ロープロファイルの)Choc V2キーのどちらでも装着できる(両種を混在させることはできない)。Gateron LP 3.0キースイッチも装着できると思われる(未確認)。
- 一般的なロースタッガード配列のため移行しやすい
- キーが行ごとに横方向にずれている「ロースタッガード配列」は市販されている一般的なキーボードと共通なので、縦方向にずれている「カラムスタッガード配列」や左右のずれがない「格子配列(オーソリニア)」と比較して、使い始めの学習コストが低くすむ。
- Vial対応でキーアサインを変更しやすい
- GUIでキーアサインを変更するとすぐにキーボードに反映される。設定ファイルをテキストエディタで書き換えて、黒い画面でファームウェアをコンパイルするなどの必要はない。
- アクリルカットのパーツを追加してデコレーション可能
- 基板むき出しのいかにも電子工作という見た目を変え、個性を演出できる。
ThumbShift5-15TBとの違い
- マイコンをPro MicroからRP2040-Zeroに変更
- Pro Microはメモリが32KBしかなく、ファームウェアの機能を最低限に減らさなければならなかった。RP2040-Zeroのメモリは2MBもある。欲しい機能をたくさん盛り込むことができた。
- Vialでタップダンスやコンボを設定できるようになった
- これもファームウェアの容量を大きくできるようになった恩恵。
- キーボード側のUSBコネクタが筐体の外枠に出てきた
- USBケーブルのコネクタ形状によってはスペーサを長く(=キーボードを厚く)しなけれぱならなかった状況が改善された。
- デコレーションプレートを装着する際のねじの数が増えた
- 四隅だけでなく左右の中央部にもねじを配置した。キーボードを手でつかむとき、デコレーションプレートがゆがむことがなくなった。(説明が難しい)
- サイズが上下1ミリ、左右2ミリ大きくなった
- ねじの数を増やした結果、アクリルの枠が太くなった。それに合わせて全体のサイズも少しだけ大きくなった。
- macOSに対応可能
- ファームウェアの容量に大幅な余裕が出たため追加可能になった。実際の対応はこれから。
設計時のいろいろ
ThumbShift2の回路図は以下。
最初はピン数が足りるのだからと通常マトリクスで組んだら配線がとても複雑になって手に負えず、結局倍マトリクスに組み直した。またRP2040-ZeroでフルカラーLED(SK-6812MINI-E)を使う場合、電源線は本来レベルシフトが必要なところ、普通のダイオード(1N4148)を1つ入れるだけでよいという話を聞いて実装してみた。問題なく光っている。
(参考:「LEDを配置する - 自作キーボード初心者のためのでかいキーボード設計法|Cheena」)
配線では当初マイコンを裏返しに配置していて、そのまま基板を発注したらファームウェアを更新するにはキースイッチを全部外さないといけなくなるところだった。危なかった。AZ1UBALLをRP2040-Zeroの信号電圧に合わせて3.3Vの電源線につなぐのも、かなり後になってDiscordで指摘された。感謝です。
下はThumbShift2の配線図。左下がちょっと飛び出ているのがUSBコネクタの部分。
Pro MicroをRP2040-Zeroに変更したことで、AZ1UBALLをQMK Firmwareで動作させる方法が変わった。詳しくは以下の記事で解説している。
頒布する予定です
ThumbShift5-15TBは余った基板をほそぼそと人に譲っていたが、ThumbShift2はねじやスペーサを揃えてBOOTHとか遊舎工房できちんと頒布したい。いま準備中です。よろしくお願いします。
追記:9月14日のキーフリで頒布します
2025年9月14日に秋葉原で開催される「キーボードフリーマーケット トーキョー 2025」に出店できることになりました。ここでThumbShift2を頒布します。
完成品1点、キット3点の予定です。またThumbShift5-15TB(完成品1点、キット2点)やそのほか小物も出しますのでぜひお越しください。
- キーフリで頒布するもののまとめ:
キーフリおしながき
追記2:BOOTHに出しました
ぜひご覧になってください。
前モデルのThumbShift5-15TBもあります。