オープンソースの画像生成AIをセットアップから使い方まで解説する『Stable Diffusion AI画像生成ガイドブック』(ソシム刊)発売中(→本のサポートページ

『電子書籍の衝撃』をiPhoneで読んで電子書籍の修正について考える

こちらは書籍版。

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

iPhone版はリリース当初の115円セールだったときに買って、少しずつ読んでいった。安いときに買っておいてなかなか読まないというのは、HDDレコーダーに番組がたまっていくのと似ている。電子書籍になっても積ん読はなくならないのだった。

本の内容は、電子書籍の動向や今後をコンパクトにまとめている。紹介される事例が面白くまた的確なのも、いつもの佐々木俊尚らしい。ただ文章は粗削りで、ブラッシュアップのもうひと手間をかければ、格段に読みやすくなりそうだとも感じた。

見つかった誤字はerrataグループにまとめておいた。

電子書籍の世界は実験的な段階から、いよいよ本格的な運用に変化しようとしている。そんな中、誤字脱字などの修正をどのタイミングで入れるかはまだ議論がありそうだ。

紙の本だと、増刷のたびに初版、二刷、三刷とバージョンが変わっていく。それまでに見つかった間違いは、増刷に合わせて直すことになる。

また初版と増刷分は、細かい違いはあっても同じ商品として扱われる。だから注文して届いた本が、常に最新の刷り数とは限らない。

さて、電子書籍には増刷という概念がない。となると、いつ訂正を反映したものだろうか。

紙の本を増刷するときなら、そのために印刷所との連絡が発生する。訂正箇所のまとめや修正指示などは、編集者の仕事としてその中に組み込んでしまえる。修正にかかるコストも、印刷費に少し上乗せする感覚ですむ。

一方電子書籍のデータは、増刷を待たずいつでも修正済みのものに差し替えられるから、本来いつ修正してもよいはずだ。でも電子書籍では、修正のためだけに人を動かし、コストもかけることになる。これは今までの感覚では、なかなかできないのではないか。

下の画像は、電子版の『電子書籍の衝撃』の奥付である。

f:id:Imamura:20100531143711p:plain

先ほどディスカバー21のオンラインストアからダウンロードし直してみたところ、奥付は上と同じだった。書籍版の『電子書籍の衝撃』がいま何刷なのかはわからないし、増刷時に修正をしていないために電子書籍版も初版のままなのかもしれない。(作った本をあとからじっくり読み返すことは基本的にないので、上記のリンク先にまとめた誤字に著者や版元が気づいていなくても不思議ではない)

電子書籍の衝撃』のように書籍版も出ている本ならば、書籍版の増刷時に修正するのに合わせて電子書籍のデータも修正するよう、気が回るかもしれない。ただ電子書籍でのみリリースされた本にいつ修正を加えるかは、編集者の仕事のフローやコスト計算のことを考えると、なかなか難しい話になるんじゃないだろうか。