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小惑星探査機「はやぶさ2」記者説明会(カプセル回収後の作業計画、サンプル受け入れの準備状況)

日時

  • 2020年11月16日(月)13時30分~14時30分

前回の記者説明会

登壇者

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JAXA宇宙科学研究所はやぶさ2プロジェクトチーム

JAXA宇宙科学研究所宇宙科学国際調整主幹

  • 東覚芳夫(とうかく・よしお)

(左から吉川氏、安部氏、東覚氏)

中継録画

関連リンク

本日の内容

(吉川氏から)

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.TCM-2の結果

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3.カプセル回収後の作業計画

カプセルを回収してから日本に空輸するまで

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キュレーションのクリーンチャンバーに導入するまで

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4.帰還試料受入れ準備状況

(安部氏から)

キュレーションの観点から

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キュレーションの方針

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サンプルコンテナの構造

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クリーンチャンバーの構成

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試料取り出しまでの作業フロー

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試料取り出し後の作業フロー

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作業スケジュール(予定)

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試料分配方針

「wt%」はウェイトパーセント、重量のパーセンテージのこと。

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試料分配スケジュール(予定)

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5.今後の予定

(吉川氏から)

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参考資料

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帰還巡航運用計画

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リエントリー最終誘導の運用計画

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はやぶさ2」再突入カプセル回収の広報イベント計画と取材要領

(東覚氏から)

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本日の概要

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カプセル分離後のメディアイベントスケジュール

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①回収前会見

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②【ライブイベント】カプセル分離

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③【ライブイベント】カプセル再突入・着陸

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④カプセル捜索・回収

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⑤回収後会見

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⑥カプセル 宇宙研

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豪州ウーメラでの取材について①

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豪州ウーメラでの取材について②

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豪州ウーメラでの取材について③

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豪州ウーメラでの取材について④

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JAXA相模原キャンパスでの取材について①

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JAXA相模原キャンパスでの取材について②

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JAXAからの情報提供予定

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新型コロナウイルス感染対応について

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Woomera周辺地図・現地情報①

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Woomera周辺地図・現地情報②

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Woomera村案内図

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取材申し込み・お問い合わせ先

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質疑応答

産経新聞伊藤:TCM-2まで順調のようだ。勝因は。また判断が難しい局面を教えてほしい

吉川:はやぶさ2は本当に順調。大きなトラブルなしで来た。津田プロマネも話しているがこれまでの経験を生かしている。
これまでの探査機のいろいろな不具合を確認してハードウェアが改良されている。
初号機の運用を参考に事前に訓練してきた。それらの成果。
タッチダウンは当初の想定と違っていたため議論したところと思う。
1回目は想定と異なり小惑星表面に平らな場所がなく、タッチダウンを4か月ほど延期して計画を練った。
2回目はリスクを少なくできるかが判断ポイントだった。

時事通信神田:回収後のスケジュールについて。初号機のときは回収からサンプル確認まで3週間ほどかかった。今回カプセルにサンプルが入っているとわかるのはいつか。またサンプルの画像が出てくるのはいつか。

安部:資料16ページ。12月下旬にバルク試料の取り出し。サンプルキャッチャーは開けられているので中に何が入っているのかわかる。初号機では目視ではなにも入っていなかったので電子顕微鏡を使った。
はやぶさ2はもう少し大きな、目視でわかる粒子が入っていると期待される。
初期記載のときには「こんなものがあった」とご報告できるのでは。

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神田:チャンバーに接続するまで中身はわからない?

安部:現地でできるのはガス採取のみ。地球外の物質からなるガスを採取できたら期待が大きくなるが現地ではそこまで。

フリーライター荒舩:カプセルを回収してから相模原に運ぶまでの時間の目安は。カプセルの日本への移動は回収隊と一緒なのか。

安部:科学者の要求としてはなるべく早くクリーンチャンバーに入れたい。目標としては100時間以内に取り付けたい。
回収班は数名がカプセルの入った輸送コンテナと一緒に日本へ戻る。
コンテナは荷物として載せるので座席に置いたりはしないと思う。

共同通信矢野:試料の分配について。2回タッチダウンがあったが分配では1回目や2回目のわりふりはあるのか

安部:分配試料は重さの割合でという方針。A室とC室に入ってると期待されるが重さはまだわからない。両方を合わせた中から重量で分配。
研究者によっては2回目のタッチダウンの試料をということもあるかもしれないのでそこは調整。

共同通信板井:現地での取材で、再突入の際に「あれが火球だ」という情報がないとうまく撮影できるかわからない。なるべく回収班の近くで取材したいのだが可能だろうか

東覚:現地での見え方など詳しい資料を準備している。火球の見え方がわかるARアプリも準備中。
現地入りしたらどういった距離でお互いいられるかは…光学観測班はセンシティブなので距離が必要と思うが、それ以外はどういった距離で取材していただけるかすり合わせたい。

読売新聞中居:サンプルの意義について改めて聞きたい。有機物や2回分のサンプルについてなど

吉川:やはりリュウグウというC型小惑星から初めてサンプルを持ち帰る。どんな有機物があるかということ、46億年前の太陽系が生まれたころのものかもしれないので地球の生命との比較が期待。
地球に来ている隕石は熱で変成しているが今回は人類が手に入れたことがない物質があるかもしれない。
太陽系や惑星の起源に迫るデータを得られるかもしれない。
第2回のタッチダウン小惑星内部の物質を採取できたと思われる。太陽の放射線や熱の影響が少ない物質としてほかと比較したい。リモセン観測で地下の物質のほうが黒いという情報がある。どんなものなのか楽しみ。

JSTサイエンスポータル草下:40%の「将来の保管」について。アポロ計画で月から持ち帰った試料も将来分析技術が向上したときのために多くを手つかずで残しているが今回もそういうものなのか。また将来の保管分40%のうち、第2回以降の研究公募で使うのはどのくらいか

安部:将来のための40%は将来分析技術が向上したときのためにとっておく。また新しい分析テーマが見つかるかもしれない。
初号機のときも同じように、最初の分析の時に半分以上は手をつけずに残してある。
試料はたくさん入っていれば50%は残しておきたいが、初期分析分は必要になる。第2回の公募でも使い尽くさないような形で残していく。

フリーランス大塚:初号機はカプセル内が微粒子だったが今回は桁が違うレベルという期待があると思う。その違いでキュレーションのやり方など違いは出てくるのか。またバルク試料と個別試料の違いは

安部:初号機の時は微粒子が小さくて拾い上げるのに苦労した。今回は初号機の100倍や1,000倍帰ってくると期待している。
帰還後6か月は動かさない方針。いかに早く概要をつかむかが大事。拾い方やハンドリング方法も効率よくできるよう考えている。
バルク試料のイメージは、たとえばA室の試料をごそっとシャーレに全部出したような状態。そこから分配したのが個別試料。
個別試料として扱えないものを集合体として扱うとき集合体試料とする。

東京新聞増井:リュウグウでどのくらいサンプルを採れているのか目標や期待の量は。またバルク記載をもう少し詳しく。有機物を扱うことへの意気込みも

安部:今回は科学的な要求からサンプル採取装置を設計。最低100ミリグラム採取できるように設計した。どのくらい採れたかは定かではないが想像以上に舞い上がっていたのでその10倍、1グラム程度は採取できたのではないか。カプセルは最大10グラム程度入るように作られている。その10分の1か100分の1採れていると期待。
バルク記載はひとまず取り出した状態を観測する。光学観測や分光観測、重さを量るなど。その情報を記載するのがバルク記載。
2~3か月かけて試料を拾いバルク記載、のこり3か月ほどをかけて個別試料を取り出す。
有機物の分析についてはとても楽しみにしている。イトカワのサンプルからは大きな有機物は見つからなかったが、リュウグウには事前の観測で有機物が含まれているだろう。隕石と異なる観点で分析できる。
そういった分析が地球の物質と混ざらないように、汚染がないよう注意しながらキュレーション設備を作っている。
今まで見たことがない有機物のことがわかるといいなと思っている。

東京とびもの学会金木:カプセル回収班について。皆さん新型コロナウイルスに感染していないのか。オーストラリアへの渡航の際JALがJAL8823便という便名をつける粋な計らいがあったが、これは事前に協議があったのか

吉川:現時点で回収班は全員オーストラリアに入っている。感染者は出ていない。先発隊は今日ウーメラに移動中。後発隊はアデレードで隔離中。
8823をはやぶさにかける便名は我々も知らなかった。回収班が行ってみたらその番号だった。ありがたく思っている。

宇宙作家クラブ松浦:試料の収量を期待できるとのことだが現地で重量計測は行うのか

安部:現地ではアブレータを外せないので1グラム単位の精度は出ずサンプルの量はわからない。日本でチェンバー内に入れればふたを開けることができる。そこで量がわかる。

NVS齋藤:光学観測について。前回はNASAが航空機を飛ばしたりしていたが今回もそういった連携はあるか

吉川:今回もNASAが航空機を飛ばす。上空から観測する。地上は我々プロジェクトメンバーが観測。光学観測体制は初号機と同じということ。

共同通信須江:当日現地でガスを採取するとのことだが、採取できたかはその場でわかるのか。またカプセル分離後の探査機のオペレーション予定について知りたい

吉川:ガスの採取については現地で簡易的な解析を行う。探査機はカプセル分離後、地球に衝突するのを回避するマヌーバを行ったあといったん日影にちえいに入る。そこから出たら拡張ミッションに入っていく。また地球の観測も行う。

宇宙作家クラブ渡部:クリーンチャンバーでの作業は最初は真空環境、途中から窒素環境下に切り替わるがこの使い分けは

安部:はやぶさ2の分析では一部でいいので真空環境下で試料を取り分けたいという希望があった。窒素に触れることで失われる情報があるのではないかということ。
そこでいったん真空環境下でサンプルを取り出す。ただし真空環境下ですべてのハンドリングをするのは難しいので、その後窒素環境下に置くようにする。

(以上)

次回の記者説明会