「コンビニにトラックが突っ込んだ」というニュースを見た。店はなかなか派手に壊れてしまっていたが、幸い客が1人、ごく軽いけがをしただけですんだそうだ。
ニュースによると、運転者は「アクセルとブレーキを間違えた」と言っていたという。もちろん「ブレーキを踏もうとして、間違えてアクセルを踏んだ」という意味だろう。
「アクセルとブレーキを間違えた」。これは「ブレーキとアクセルを間違えた」とも書ける。
「アクセルとブレーキを間違えた」=「ブレーキを踏もうとして、間違えてアクセルを踏んだ」。
これは通じる。でも言葉を入れ換えても、
「ブレーキとアクセルを間違えた」=「アクセルを踏もうとして、間違えてブレーキを踏んだ」。
ということにはならない。いやなってもいいけど、それは多分ないと受け取るだろう。
そもそも、アクセルを踏もうとしてブレーキを踏んでしまっても、車は動かないからなかなか事件にはならないし、もちろんニュースもならない。当たり前だけれど、そこが何となく面白い。
クイズか何かで、これをトリックにできないかと思った。「AとBを間違えた」という表現は一般的には「AのつもりがBをした」と受け取れるが、実は「BのつもりがAをした」という意味だったのだ! ドーン! みたいな。
おや。ここで気がついた。
「アクセルとブレーキを間違えた」は、結局どちらを踏んだのかわからない。でも、
「アクセルをブレーキと間違えた」ら、ニュースになりかねないとわかる。さらに、
「ブレーキをアクセルと間違えた」ら、車は止まったままとわかる。ほほー、これは面白い。文章の主体が届く範囲は、「を」が決めているのだ。って、なんだか当たり前なことを書いている気がしてきたが。
こういう話を面白いと思った方には、本多勝一の『実戦・日本語の作文技術』(ISBN:4022610530)をおすすめします。
コメント
- id:mohri『アクセルと間違えてブレーキを踏んだので急停車し、後続の車が追突、玉突き事故となり……というシナリオを思いつきました。「を」についての考察おもしろかったです。』
- id:manpukuya『ありがとうございます。なーるほど、間違えてブレーキを踏んでもニュースにはなりえますね。面白いです。』