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H3ロケット試験機1号機打ち上げ中止に関する記者会見

開催日時

  • 2月17日(金)14時~

登壇者

  • 岡田匡史(おかだ・まさし) JAXA H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ

プレスリリース

JAXA | H3ロケット試験機1号機による先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)の本日の打上げ中止について

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構JAXA)は、種子島宇宙センターから先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)を搭載したH3ロケット試験機1号機の打上げを2023年2月17日10時37分55秒(日本標準時)に予定し、作業を進めておりましたが、ロケットの自動カウントダウンシーケンス中に、1段機体システムが異常を検知し、固体ロケットブースタ(SRB-3)の着火信号を送出しなかったため、本日の打上げを中止することといたしました。

現在、詳細状況を確認中です。

JAXA | H3ロケット試験機1号機による先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)の本日の打上げ中止について

配付資料


中継録画

質疑応答

MBC・濵田:率直な受け止めを

岡田:…………今日の日を待っておられた方、見守ってくださっていた方が大勢いる。申し訳ないと思っているし我々もものすごく悔しいです。(涙を拭く)

産経新聞伊藤:先日の会見でおっしゃっていたがまだ足りないことがあったと

岡田:初めての打ち上げはこういうこともあると実感。100パーセントとはなかなかいかないと思っていたので万全の体制で臨んだが中止になってしまったのは残念。

伊藤:原因究明しての対策のスケジュール感は

岡田:数時間前に起きたことなのでまだわからない。できるだけ早く原因を究明し打ち上げに臨みたい。

NHKの堀川:部品を交換するようなことが発生するのか、その場で修正できるのか

岡田:まだ見きわめがついていない。原因の切り分けをしているところ。結果を早く出してどうリカバーするかを大至急検討する。

堀川:打ち上げ中止であり失敗ではないと言う認識?

岡田:失敗にはいろいろ定義があるがカウントダウンシーケンスの途中で止まったものは打ち上げ中止。

堀川:Xマイナス6.3秒で止まったとのことだがトラブルなのか

岡田:ロケットがスタートして打ち上げの時は安全第一。安全に止まった状態。異常を検知して止まるシーケンスが働いて安全に止まった。LE-9エンジンは正常に立ち上がっていると思われるし停止シーケンスもきちんと働いた。

堀川:年度内の打ち上げは可能か

岡田:それを目指します。

読売新聞笹本:SRBに電気信号を送るシステムの異常?

岡田:そこがまだわからない。一段の制御用機器が異常を検知したのは事実。検知のトリガーにSRB-3への信号送出を行わなかったのもこれ。異常がどこで起きたのかはこれから調べる。制御用機器の異常はないと考えている。

笹本:電気信号を送らなかった異常ではなく、異常を検知したから信号を送らなかった?

岡田:いろいろなところからの入力信号がある。その中のなにかが原因になったと思うが具体的には調査中。

笹本:LE-9はおそらく正常に立ち上がったとのことだが

岡田:自分自身が全部のデータを見ていないため確定的なことは申し上げたくなかったが、正常に立ち上がったことは検知している。ロケットはそこは正常だったと認識している。

笹本:自動車部品が9割入っているとのことだがここも?

岡田:自動車部品を使っている装置ではある。

KYT磯脇:LE-9の立ち上がりからSRBへの点火の間の中止ということで、SRBに異常があった?

岡田:まずないと思っている。SRBに信号が送られなかったために点火しなかった。

磯脇:第一段部分の制御機器について。ほかの段も制御する?

岡田:おもに第一段を制御する。

磯脇:異常は第一段のどこかで間違いない?

岡田:そう考えている。

朝日新聞玉木:何らかの異常を検知したとのことだが、どこに異常があった可能性が高いのかなど分析は進んでいるか

岡田:まだそこまでは至っていない。検討中。

玉木:つながっている電子機器の数は

岡田:ひと箱を1と数えると5から10くらい。大きい箱も小さい箱もある

玉木:それぞれ可能性を分析し調べていく?

岡田:全体がシステムとして構成されている。ここに異常が検知されるのはどういう状況が考えられるのか、エンジニアは回路図を見て危機のつながりを想定し当たりをつける。箱を開けてみるわけではなく回路を見る。自分は電気は専門ではないが、一般的にはそうする。

玉木:予備期間の中で打ち上げるのが目標?

岡田:それが第一歩。

毎日新聞垂水:SRB-AからSRB-3への変更点で接続部分の簡素化で点検が減ったとのことだがそれが原因としてありそうか

岡田:そこが原因ではないと考えている。接続の方法などはあるかもしれないが、設計を変更したからということはないと考えている。

JSTサイエンスポータル草下:一段エンジンに着火後燃焼も始まっていた?

岡田:その通りです。推力が立ち上がったところを検知している。エンジンは正常だったとみている。

NewsPicks中居:中止で機体や衛星への影響は

岡田:衛星に影響はない。機体も損傷はないし今回の中止を除けば健全とみている。

中居:機体はどうなるのか

岡田:燃料を抜いたあとでVAB(組立棟)へ戻し点検。燃料の抜き取りは今日の午後いっぱいかけて。機体を移動する処置(接続配管の解除など)をし返送は夜8時か9時ごろと思う。

中居:組立棟の中で点検?

岡田:まずは設計的にみて、何が起きているのか追えるのでまずそこを。ハードウェアを見なければならない状況なのかはその次のこと。

共同通信七井:LE-9エンジンは正常に着火し燃焼したとのことだが再打ち上げで使える?

岡田:こういうことも想定して設計してある。打ち上げが一度中止しても次に使える設計。点検はしてその結果次第だが今のデータ的には問題がなく、次も使えるものと思っている。

NHK鹿児島放送局平田:延期で機体が長く置かれていたことの影響はあるか

岡田:原因がわからないのでなんとも言いにくいが、種子島に来てからきちんと保管されているし機器の保管期限を決めている中で待機しているため問題はないと考えている。原因の究明次第。

共同通信社鎮目(しずめ):中止と失敗について、モヤモヤするので。一般的に、意図的に計画を途中で止めることを中止という。飛ぶはずの機体が飛ばない、意図しない異常による中断、中止は一般的にいう失敗ではないか

岡田:こういうことはときどきあるが、こういう状況で失敗とは言わない。

鎮目:みなさんの中では失敗とは言わないが、失敗と言われることも甘受しなければならないのではないか

岡田:解釈は受け止め方がある。ロケットは安全に止まる状態で設計している。設計の範囲内で止めている。「意図しない」は設計の範囲を超えること。想定している中の話なので失敗とはいいがたいと思う。

鎮目:システムで対応できる範囲内の異常で止まったということか

岡田:検知できる異常によって安全に止まっているという状況です。

鎮目:それを一般に失敗という。ありがとうございました

日刊工業新聞加藤:エンジンを一度着火した。安全なところで止まった?

岡田:安全に止まるよう設計していてエンジンは通常通り止まった。止める信号が機体から来て、止まるべくして止まっているため問題はないと考えている。ロケットの打ち上げ中止はひと通り点検しその中で判断する。

南日本新聞五反田:一段の制御用機器やその他の機器で、H-IIAとの違いは

岡田:なかなか一言では説明しづらい。ロケットの機能はだいたい決まっている。それをどう一つの箱に機能を割り当てるか、どういうつなぎ方をするのかなどの違いはある。一段エンジンの舵角を振る、首振り運動をさせる機器はH-IIAでは油圧だったがH3は電動という違いがある。全体にいろいろ違っている。

五反田:電気信号を送るところに省電力化などはあるのか

岡田:それが今回の現象とどうつながるのかわからないのでどう答えればいいか難しいが、
機器の機能の配分を変えている、電動の制御装置がつながっているなどの違いがある。

アラフネ計画荒舩:今回の不具合はロケットを打ち上げする状態に組み立てて初めて起こることという理解でよいか。また、SRB-3を着火する際のチェック項目は何項目くらいあるのか

岡田:模擬的に負荷をかけることはこれまでもあった。シーケンスを流すのは何度かしているが実際に現物で動作させるのは初めてのところもある。だいたいのところは模擬できていると考えている。SRBに信号を送るところで止まっているためSRBそのものに原因はないと考えている。詳細は原因を究明しつつ。
チェック項目の数はどう答えたらいいか…カウントダウンシーケンスは順次進んでいく。LE-9の立ち上がりがどこまで進んでいるか、推力がどのくらい立ち上がったかなどを見るし各機器の状態も見ている。オールグリーンならSRB-3の着火に入る。その間に割り込みで信号が入ってくる。

読売新聞渡辺:再打ち上げについて改めて。予備期間のうちにとのことだが少なくともどのくらい時間が必要なのか。数日か数週間か、現実的にどのくらいかかるものか

岡田:原因次第。ロケット本体を外に出して、燃料を充填したあとでも再打ち上げは数日でできる。原因によって日程が見えてくる。原因究明中なのでわかり次第考えていく。

渡辺:新規の1号機だが信頼性への影響はどう考えているか

岡田:原因がどこかをはっきりさせた上で、信頼性が高いH-IIAの後継機なのでそれ以上にしていきたい。原因を究明してから評価していただければ。

産経新聞伊藤:異常検知部分、第一段ロケットを制御するシステムの中で異常が起きたということ?

岡田:広い意味で全体の機能を制御する中で異常があった。

伊藤:検知されるべき異常はどういうことが対象として考えられるのか

岡田:たとえば回路内の電圧の問題、来るべき信号が来ない、電気的にはそういうこと。

伊藤:第一段の動作がおかしいなども検知されるのか

岡田:機能動作をチェックしている

伊藤:エンジンの噴射口の向きの制御のほかには

岡田:エンジンに電源を供給している部分、つながっている電池からどういう系統で回路がつながっているかなどを見ている。第一段ロケット全体をコントロール、エンジンのノズルの向きを制御する、エンジン自体にも搭載されている電気箱(エンジンの中のバルブをコントロール)などがつながっている。

伊藤:異常を知らせる信号の中に「どこが悪い」という情報は乗っていないのか

岡田:たどっていかなければわからないこともあると思うがわかると思う。エンジニアが回路を今たどっている。ここに異常を検知した、その原因はなんなのかを調べている。
設計者自身が見ているのでなにもわからないわけではなく、技術者同士で議論している。
1秒の1/100単位で動作している回路の中でなにが起きているのか、タイミングも見ていかなければわからないところがある。データを追いながら分析している。

フリーランス鳥嶋:LE-9の立ち上がりは正常だったとのことだが性能の100パーセントまで達していたのか

岡田:100パーセントに近いが100パーセントではない。

鳥嶋:離床に問題のないところまでは来たのか

岡田:はい。機体で判断する限りLE-9は正常です。

鳥嶋:ホールド解除されたのか

岡田:解除されている。ホールドダウンはSRBがないと必ずしなければならない。SRBがついていれば本当の直前でなくてもよく、今回はカウントダウンで18秒前に解除。

鳥嶋:SRBの重みで安定している?

岡田:はい。

鳥嶋:あとはVABに戻す前に固定する?

岡田:いえ、固定せずに戻します。それは問題ありません。

フリーランス大塚:さっきの質問と同じだが、異常が見つかった場所はログを見ればすぐわかるわけではない?

岡田:かなりの短時間でいろいろな信号のやりとりがある。ていねいに追いかけていかないと見誤ることがあるかもしれない。機体の中のデータを吐き出して分析しながら原因がわかってくると想像している。

大塚:ログはまだダウンロードしていない?

岡田:ログはあるのでそのログと回路やロジックを付き合わせながら、おおもとの原因を探っていく。

大塚:どの機器で異常があったかは数日でわかるか

岡田:電気の専門家ではなく感覚で申し上げられないが、こういうことが起きたときの経験では、ある程度の追い込みはわりと短時間でできていたと思う。今回も期待している。

ニッポン放送畑中:カウントダウン0のときに出ていた煙は正しい現象?

岡田:正しい現象です。ロケットエンジンが燃焼するときは煙道に水を噴射していることもあり、高温のガスと水が混ざって全体が雲のように出てくる。

畑中:エンジンには魔物がというがエンジンだけではないのか

岡田:ロケットというのはエネルギーが凝縮されているシステムであり複雑な現象も起こりうる。だからこそ打ち上げの瞬間まで、ぬかっているところはないかとエンジニアたちが考えている。その結果としてこのような事実がある。■

サイエンスポータル草下:打ち上げシーケンスについて。Xマイナス6.3秒がLE-9のスタート、SRBがXマイナス0.4秒といった計画値だったが、今回の速報値は出ているか

岡田:今はまだ出ていない。信号なので計画値からずれることは考えづらい。

草下:LE-9はエンジンスタート、SRBは点火となっているが理由はあるのか

岡田:特にない。液体燃料エンジンに「点火」とは言わないのでこう書いている。「着火」なら使う。

草下:点火と着火の使い分けはあるのか

岡田:なんとなく使い分けている。火薬系は点火と書きたい。

読売新聞笹本:LE-9着火からSRB点火までの間に何かがあったと思うが今わかっていることは

岡田:いつかわかると思うが今はわからない。

笹本:CFTで問題が見つかって修正されている。制御機器は動きも見ると思うが事前点検でどこまで見るのか

岡田:CFTでは今回と同じ現象は起きていない。CFTとの違いを含めて、どんなことがあったのかこれから究明する。

笹本:CFTではどんなところまで見るのか

岡田:シーケンス、コンピュータをどこまで動作させるのか、変な動作をしないのかはいろいろなパターンでチェックしている。ただ実際に着火しているわけではないし、本番と同じだけの電気的負荷はかかっていない。そのあたりも原因究明の材料になる。

ネコビデオNVS金子:機体移動から打ち上げまでの作業について。6時間の余裕を見ているとのことだったが順調だったか

岡田:まあまあ順調だったと思う。1つのマイルストーンとして…ロケットは燃料を充填しつつ機能点検をする。それをレビューするタイミングがある。そのタイミングはずれなかった。おおむね順調だったといっていいと思う。

日経クロステック斉藤:過去に日本の宇宙開発で、今回のようなSRBが点火せず延期になったことはあるのか

岡田:一番近いパターンはH2ロケット2号機。メインエンジンは着火したがSRBに点火しなかった。ただしどこから信号が出るかなどは設計が違う。パターンとしては似ている。

斉藤:1994年8月くらいと思うが

岡田:その年の後半ですね。初号機が年初だったので。

毎日新聞池田:説明図で確認したい。第一段制御用機器がその他の機器で発生した異常を検知して着火信号を出さなかった?

岡田:異常が発生した部位は特定できていない。第一段制御機器本体かその他の機器かは特定できていない。全体に網をかけながら分析していく。両方の可能性がある。

池田:対一段制御用機器は姿勢制御や電源制御の機器?

岡田:エンジン制御、電池もぶら下がっている、…詳しいものに聞いてあとでお答えします

池田:センサーに異常があった可能性は

岡田:今のところそこまで識別はしていなかった。可能性のないものは調査から外していく。
(紙が差し入れられる)
先ほどの質問。ロケットの第一段には推進系というバルブがついている。そのコントローラー、エンジンを動作させるコントローラー(制御機器)、首振りのためのコントローラーが第一段制御用機器には入っている。

南日本新聞山田:一号機の打ち上げ費用はいくらくらいを見込んでいたのか。また今回のミッション未達成によって生まれる損失額の見積もりがあれば

岡田:一号機は開発品で、これ自体を開発しながら組み立てている。第一段の打ち上げ費用を切り出すのは難しい。直接的には消費した燃料、打ち上げ単位の費用などが追加になっていく。金額は今のところなんとも申し上げられない。

山田:H-IIAの打ち上げ費用は100億円。それより小さいとはいえないか

岡田:本体だけで申し上げると安くなっていると思うが、試験機一号機にはこれ自身をやってきての今の機体なので一号機だとお答えしづらい。

フリーランス林:H-II2号機が同じパターンで停止した。スペースシャトルにも同じような停止があったと記憶している。止めることができたのは(なにも問題なく打ち上げられるのが最善だが)損失を防いだとも考えられる。ロケットエンジニアとしての考え方、「打ち上げ失敗」とも報道されるが聞かせてほしい

岡田:打ち上げの間際まで、いかに安全な状態で、いざとなったら停止させるかということにかなり気を遣っている。何度もいろいろなパターンで訓練したり停止のしかたを検証したりしている。H3の停止は設計通りと考えている。
だからいいと考えているわけではなくしっかり受け止めて次に臨みたい。

林:CFTのときはSRBは燃焼させなかったが、SRBが働いたと考えられる時間まではリハーサルをしたか

岡田:CFTの前のリハーサル? CFTそのものか

林:CFTはエンジン燃焼まではしたと思うが、それ以前のリハーサルでも行われているのか

岡田:やっている。いつどんなコンフィギュレーションで試験したか見直したい。模擬的な止め方、正常に流すといったことをくり返した。今回なぜこのような現象に至ったかをまずは見極めたい。

林:今までは今回のような不具合はなかった?

岡田:ありませんでした。

読売新聞笹本:CFTではSRBに点火信号を送ることに関しては実績があった?

岡田:いえ、その前に止まっています。

笹本:過去のCFTではSRBが燃焼しないとしても点火信号を送っていた?

岡田:おそらく送っていなかったと思う。点火信号を送るのは今回初めてではないが。

笹本:異常の検知タイミングは

岡田:正確なところはまだわからない。次回お伝えしたい。

笹本:第一段の機体システムのどれかが異常を検知したということで…

岡田:異常を検知したのは第一段の制御用機器。異常がどこで起きたかは特定できていない、という状況。
回路内の電圧値がどうだったのかなども含めて詳細に分析しなければいけない。そんなに時間はかからないと思う。

笹本:システムが変わったこと、新規開発のところが原因かはまだわからない?

岡田:電気関係はH-IIAとH3はほぼ違う。新規開発だが新規開発したがために今回の事象に至ったかはわからない。
開発ものはあちらこちらが新しいもので、新しいからどう、継続使用だからどうという見方はしない。

共同通信須江:事象の程度の評価、受け止めは。深刻なものなのか

岡田:ロケットの打ち上げ中止は大きなことと受け止めている。原因が何かはまだ調査中。根深いものがあるのかは次回ご説明の際にはお伝えできると思う。今はなんとも言えない。

須江:第一段と第二段を合わせて第一段という表記を資料で見たことがあるが今回の異常はどこなのか

岡田:第一段と第二段で重なっている部分がある。第一段と第二段の区分けが難しいところもある。場所的には第一段の中でもエンジン部、図の中で拡大しているLE-9周辺で起きている。
まだ原因が特定できていないのでなんとも言えないが、搭載機器はだいたいここなのでここと思う。

須江:SRB-3に点火する自動チェックの中で異常を検知したのか、

岡田:異常を検知したあとSRB-3の点火信号が送出されるタイミングになったため信号を送出しなかった。

NewsPicks中居:LE-9を止めるための装置は一段目制御用機器にないのか

岡田:何かが起きたとき、SRBに点火しないと自動的にLE-9を停止するしかけになっている。短時間の燃焼試験をしたような燃え方になっている。

中居:H-II2号機の中止のときも「失敗」とは言わなかった?

岡田:はい。安全に停止して原因を突き止めてリベンジしたと記憶している。

中居:最初の質問のとき感極まっていたようだが、失敗と受け止めた方もいると思うが失敗ではない?

岡田:失敗したらこんな気持ちにはならないと思うんですけど、打ち上げミッションを待っていた方、一緒にがんばっていただいた方に残念な思いをさせてしまったことが一つと、天気の関係でこの2日間延期したとき、種子島宇宙センターには多くの応援して頂いている方がいらしていていろいろ話もする。…そういうお子さんもいらっしゃいまして、ごめんねという気持ちですかねこれは。すみません。(涙を拭く)

フリーランス秋山:衛星について。だいち3号(ALOS-3)をいったん下ろすのか。その場合衛星分離機構はいったん外してもまた使えるものなのか

岡田:再打ち上げまでの期間によると思う。そういう大きなインパクトがないように備えたい。だいち3号は環境のいい状態でロケットに搭載し次の打ち上げを目指したい。
分離機構の再利用は原理的には可能。

日経クロステック松浦:今後の標準的なトラブルシューティングの手順を教えてもらえますでしょうか。まず機体をVABに返送する。それと並行して電気系の検討を図面レベルで進める。必要に応じて機体の検査を行い真の原因を突き止めて必要に応じて対策を行う。その後に次の打ち上げ日を設定する、というような理解でよろしいでしょうか。

岡田:おおむねその通り。いかに並行して行うかがポイント。

時事通信神田:先ほどの質問で第一段の制御用機器に問題があるかそのほかに問題があるのかわからないとのことだが、異常の誤検知の可能性もあるのか

岡田:その可能性も残しながら検討する。突き詰めていくと誤検知ではなく実現象と見えてくるかもしれない。なんともいえない。その検証はそんなに時間がかからないと思う。
これまでもシーケンスを流して確認しているし、網は広くかけてつぶせるところはつぶしていくのが我々の進め方。急ピッチで進めたい。最初に排除すると見落とすかもしれない。

神田:トラブルの洗い出しに、SRBといういったん点火したら止められないものがからむことは関係するのか

岡田:SRBは主要な登場人物ではないと思う。LE-9も。

日刊工業新聞飯田:打ち上げの予備期間が終わったあと、次の打ち上げ期間はいつなのか

岡田:だいち3号ははやぶさのようにこの期間に打ち上げなければミッションを達成できないものではなく、地元や関係者との調整の中で打ち上げ期間を決めている。技術的にはいつ打ち上げてもよい。

飯田:3月10日以降に延びる可能性はあるのか

岡田:予備期間は決められており、その中で打ち上げを目指す。

宇宙作家クラブ渡部:数字の確認。火工品点火からのシーケンスは

岡田:Xマイナス6.3秒でLE-9エンジンスタート、Xマイナス0.4秒でSRB-3点火。

渡部:LE-9のエンジン停止のコマンドはいつ送出されたか。

岡田:Xプラス何秒で停止のコマンドが入っている。

JAXA広報:今後の予定。原因の究明と対策を鋭意進める。次の説明会がいつになるかは具体的な情報がなく、適宜お知らせしたい。

(以上)