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イプシロンロケットの打上げ状況に関する記者会見

プレスリリース

参考リンク(8月28日追記)

要約

記者会見第一部(打上げ状況に関する記者会見)

登壇者

f:id:Imamura:20130827161523j:plain

奥村理事長から

イプシロンロケット試験機を発射できなかったことに関してご期待に添えずまことに申し訳ございませんでした。原因究明して必ずやこの国民の期待に添えるよう努力していきたいと思います。失礼ながら座って状況をご説明させていただきます。
お手元に内容を書いた紙がございます。読み上げます。

イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打上げ中止について》読み上げ

改めてお詫び申し上げたいと思います。

山本一太大臣から

今回安倍内閣の宇宙政策への推進への意欲を示すために来た。試験機の打ち上げが中止されたことはたいへん残念。我が国独自の固体燃料技術を使い低コスト化も実現、宇宙基本計画の中で打ち出した自律性の確保、宇宙利用の拡大のためにも打ち上げは成功させなければならない。
原因をしっかり究明してできるだけ早くJAXAの英知を結集して打ち上げを実現してほしい。

福井副大臣から

原因究明を確実に行うのが重要。改めて十分な対策を講じた上でロケットの一日も早い打ち上げに万全を期していきたい。

葛西委員長から

宇宙政策の基本は山本大臣のいうとおり自律性の確保と利用の拡大が2本の柱。その大切な一つがイプシロンロケット。なんとしても成功させてほしい。一刻も早く成功することを期待している。

質疑応答

(技術的なこと以外で、との断りつき)

NHKこぐれ:奥村理事長へ。姿勢異常を検知とはどういうものが検知されたのか

奥村:姿勢制御を示すセンサーが姿勢の異常をあるリミットを超えて出した。本当にそういうことが起きたのか、設定値の問題かはこれから原因究明し対策を立てていきたい。

朝日新聞はたの:山本大臣へ。厳しい洗礼だったが

山本:たいへん残念に思っている。イプシロンロケットの位置づけ、イプシロンロケットも基幹としたい。できるだけ早く打ち上げを成功させてほしいと期待している。

東京新聞:奥村理事長へ。次の打ち上げのめどは

奥村:原因による。原因究明をしたあとで再設定。原因究明が第一。

東京新聞:たとえば2日後にということはあるか

奥村:それも検証の内容による。

読売新聞ながの:奥村理事長へ。打ち上げ中止に遭遇したことについて率直な気持ちを

奥村:7年ぶりの固体ロケットに期待していただけに厳しい思いを抱いているのが正直なところ。しかしながら原因がまったくわからないでもなさそうだとわかっている。原因を究明して対策を立て、必ずや可能な限り早いうちに打ち上げができると信じている。

読売新聞のより:奥村理事長へ。今回の打ち上げ中止を受けてJAXA内のチェック体制の見直しは考えているか。

奥村:そういった検討の必要性も原因によっては出てくるかもしれない。何度も恐縮だが原因究明が第一。

(東京会場へ)

日本経済新聞むらまつ:奥村理事長へ。今回の打ち上げ中止が次のイプシロンロケットの打ち上げに影響するだろうがH-IIA/Bのスケジュールにどういう影響を与えるか

奥村:原因によってはそういうこともあるかもしれない。原因の究明が第一で全力を挙げたい。

(つくば会場へ)

内之浦会場へ)

産経新聞くさかべ:H-IIBはパンクチュアリティがあり誇ることと山本大臣は言っていた。期待と違ってしまったが

山本:残念なこと。JAXAの英知を結集してこれをふまえ日本のロケット産業の強みに変えていけるよう次につなげていただきたい。日本の宇宙政策が後退することはあってはならない。日程が合うかわからないが次の打ち上げにも来たい。

NVS齋藤:奥村理事長と山本大臣へ。ちゃんと止めたという考え方もあるがどう評価するか。

奥村:そういう考え方は当然ある。自動シーケンスの中で機能が働いたということ。さはさりながら設定がよかったのかも含めて虚心坦懐に原因究明に全力を挙げたい。

山本:とにかくなにが原因かその究明。

(終了)

広報:続いて森田プロマネの記者会見。

記者会見第二部(イプシロンロケットの打ち上げ状況に関する技術説明)

登壇者

f:id:Imamura:20130827162741j:plain

森田:打ち上げが延期になってしまい、しかも絶好の打ち上げ日和で残念、ご迷惑をおかけして申し訳なかった。原因究明、安全かつ確実な打ち上げへ原因究明と検証を行いたい。

質疑応答

朝日新聞東山:自動停止とは人工知能が停止させたのか。機体の姿勢制御について詳しく

森田:自動停止とは簡単なしきい値による判定。人工知能のROSEとは関係ないところ。
姿勢角異常の検出についてはそういうセンサーが載っている。そのセンサーの姿勢角にもとづいて姿勢を制御する。姿勢角センサーはロケットの飛行制御で重要。今回はこのセンサーの値、ロケットの姿勢を測るセンサーの値がもともと自動で点検される装置が決めた値を外れた。

東山:センサーとはジャイロか

森田:その通り。ロケットのPBS(4段目)、3段計器部と我々は呼ぶが姿勢を測るジャイロがありロール、ピッチ、ヨーを測る。ロールの姿勢角に引っかかった。実はロケットの(これは原因究明中でお話しにくいが)ロケットの中に計算機が載っていてジャイロからの信号を元に演算し地上の装置へ送る。計算した値が設定から外れたということでジャイロ自身には異常はなかったものと推定している。

東山:演算結果に異常があったのか

森田:正しい演算プロセスであったと。計算機は2つあって地上のものと機体のもの。相互の連関のところで原因を究明中。

東山:20秒前までは正常だったのか

森田:20秒前までは演算していない。演算を始めて最初の19秒のところで異常値が出た。

読売新聞ながの:カウントダウンはゼロまで続いた。自動停止はカウントダウンを管制していた人に伝わっていなかったのか

森田:中止は全員が共通の認識として理解していた。しかしカウントダウンの人は停止する理由がなかったため継続した。

NHKこぐれ:ジャイロの説明について、自律点検とは関係なく別のところで点検しているのか

森田:自律点検は発射の直前ではなく発射前の点検。今回はセンサーからの演算がしきい値に入っているかをチェックしていて。

こぐれ:絶対成功間違いなしの確信を持ってとのことだったがその自信は変わらないのか

森田:変わらない。不手際があったと見えるかもしれないが何も知らずに飛ばすのが一番危険という観点に立てばちゃんとわかったというのが今回の事象。

朝日新聞たかはし:姿勢の異常で演算過程で外れるのは想定外だったか

森田:原因究明中なので途中経過を話しにくい。センサーがおかしいとか計算機のプロセスに異常があったとかではなく、計算結果を地上に送るがそのやりとりに想定外のことがあったのではないかと考えている。機体には異常がないと考えている。

KYTはっとり:ロケットの機体に異常がなかったというのは傾いていなかったのか

森田:傾いていないしセンサーにも異常はないと考えている。

共同通信ふかや:姿勢制御の異常について。ロケット全体の姿勢を見ているのか

森田:その通り。ロケット各段の姿勢を制御するのに使われる。

原因究明はどのくらいかかりそうか。次の打ち上げは

森田:機体に異常はないだろうということは突き止めているが念には念を入れしっかり原因を究明し対策、その効果も検証して万全の打ち上げをしたい。現時点では何日ということはなく少し時間をいただきたい。

ふかや:ウィンドウは9月30日までだが

森田:とてもそんなところには及びがつかないと考えている。そんなに時間がかかるとはとうてい考えていない。

時事通信かんだ:計算機のハードウェア面ではなくソフトウェアの異常ということか

森田:現時点では両方の可能性を考えて究明中。現時点では切り分けはできていない。おそらく自動シーケンスを走らせる機能の中に異常はなかったと考えている。

毎日新聞さいとう:たとえば使っている計算機が(射場がM-Vからということで)古かったり互換性や接続がうまくいかなかったということはないか

森田:それはまったくなく、地上の計算機はわたしの自慢のモバイル管制装置に入っているため胸を張って違うと言える。

読売新聞のより:地上の計算機とロケット側の計算機の関係について。センサーの位置情報にもとづきどのくらいのずれがあるかをロケット側で計算して地上に送る流れと思うが地上の計算機はなにをしているのか。またどういう齟齬が生じうるのか。センサーに異常がないというのはどうやって確信したか

森田:地上の計算機は搭載計算機が送ってきた値を自分の中のしきい値と比べて安全かどうかを比較するだけというしくみ。今回はそれが外れた。
齟齬についてはその表現がいいかは別としてそこをまさに原因究明中。両者のタイミングのようなものが正しく測られていたのかなということを考えている。
センサーの健全性について。値はテレメーターで監視していて正常と確認している。計算値とは別にセンサーの値を人間が見て正常と判断。

NHK鹿児島すずき:X-19秒で停止、X-22秒でフライト準備モードか

森田:X-20秒にオンボードのコンピュータが演算を始めるということ。
フライト準備モードのシーケンスがそろわないと演算を始めるきっかけにならない。演算を始めるところまではまったく正常だった。

(東京会場へ)

共同通信なかざわ:AIによる事前点検と今回のトラブルには関係ないか改めて聞きたい。またしきい値の設定など人為的なミスはないのか。19秒前に至るまでのシミュレーションについては

森田:自律点検については先ほどの通り今日使わず、組立のもっと上流で使う。
人為的なミスだったのか思いもよらないことがあったのか、それは原因究明中。もう少し時間をいただきたい。
X-19秒以前のやりとりについて。X-20秒で搭載の計算機が計算を始める。そのプロセスにおいては異常がなさそうだというのが現在わかっている。地上との関係でどうかというところを究明中。

なかざわ:再確認。しきい値の設定値にミスはなかったのか

森田:原因のひとつとして検討中。今のところ断言はできない

なかざわ:X-19秒のシミュレーションも行われていたのか

森田:緊急停止というアクションが正しく行われた。事前には全段組立の前に点検していた。組み上がったあとは搭載の計算機が走り始めて5秒後に熱電池という火を付けると交換が大変なものがあり、熱電池の発動前まで試験している。これまでのリハーサルで行う時間帯のまさにぎりぎりのところで起きた。これまでの点検では見つけにくいところで見つかった事象。

日本経済新聞むらまつ:スケジュールについて。次の打ち上げはまだわからないだろうが少なくとも今後何日以内は難しいということはあるか

森田:原因の特定にざっと半日、対策に半日、検証に半日から1日いただき、大切な試験機なので念には念を入れ2日間は少なくともお時間をいただきたい。

むらまつ:最短3日後もあるか

森田:もちろんある。

NVSかねこ:衛星の健全性は。また一部報道に電池に問題があったようだとあるが熱電池は起動したのか

森田:衛星は健全であることを確認済み。
熱電池はいったん火を付けると二度と使えない。準備作業では発動しないプロセスを取る。内之浦に持って行く前の点検で発動させてノズルを動かし姿勢制御に使う試験をしている。熱電池の稼働は15秒前であり今回は稼働していない。

(つくば会場)

読売新聞はっとり:19秒前の自動停止についてどういうモニターや警報が出て異常を知るのか、それでどういう指示をしたのかディテールを

森田:イプシロンの特徴の一つに発射近傍の時間をかけられない判断は機械による。管制室にいる人間は自動で止まったという表示が画面に出て我々が事態を認識した。

はっとり:続いてどのようなやりとりがあったか

森田:なにが原因で止まったのかという検討を急遽始めた。実際に何秒で止まったのか、どんな値が搭載から送られてきて地上がどう受けたかなど評価を始めた。

共同通信わたなべ:姿勢の異常で自動停止とのことだが停止してどのくらいたってわかったのか

森田:姿勢の異常として事態を検知して地上の計算機が止まったというのが実際。どういう理由があって止めたとかではなく地上の計算機が止めた。それが管制室の画面で得られた。

わたなべ:それはすぐにわかったのか

森田:目の前の画面に「姿勢角を確認する」という項目があり異常のランプがついて止まった。常時何かを判断しているのではない。

内之浦会場へ)

東京新聞さかきばら:イプシロンで管制システムを見直したことと今回のトラブルとの関係は。リハーサルは何秒前までやっているのか。また初号機ならではの難しさはあるか

森田:正確な原因がまだわかっていないので関係はわからない。
リハーサルはX-18秒まで。熱電池の駆動に近づくためそこで止めている。

さかきばら:リハーサルでは確認できていなかったということか

森田:それも含めて原因究明中。
初号機ということで点検項目を厳しめにしているのでどちらかというといっしょうけんめいロケットを止める側に傾きがちではある。限りなく小さい懸念でも止めるということにならざるを得ないところがある。

毎日新聞つしま:最短で2日というが森田先生としては今回の停止は深刻なものではないと考えているのか

森田:みなさんが期待しているイプシロンを中止したのだから深刻ではないというと不謹慎だが対策をすぐに講じることができると現時点では考えている。

朝日新聞はたの:ロール角の値がしきい値を超えたと判断したとのことだが具体的な数値は

森田:角度でいうと±1度。来たデータの数値は…難しいが(話していいか逡巡)さらに1度というくらい。機体は実際には全然動いていません。

森田:隣の部屋のコンピュータにいろいろ仕込んでそのひとつがロール角を判断。

はたの:地上とのやりとりなどに使っているソフトはイプシロン独自か

森田:イプシロンロケットのために新規開発。H-IIA/Bの打ち上げには影響しない。

(以上)

広報:(記者からの質問を受けて)今日これから追加の会見をする予定は現時点ではない。プレス向けのメールなどで知らせる。