小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(サンプルのキュレーション、再突入カプセルの公開など)

日時

  • 2021年3月5日(金)14:00~15:00

前回の記者説明会

登壇者

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JAXA 宇宙科学研究所地球外物質研究グループ

  • グループ長 臼井寛裕(うすい・ともひろ)(JAXA 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系 教授/「はやぶさ2」プロジェクトチーム 統合サイエンスチームメンバー)

はやぶさ2」プロジェクトチーム

  • ミッションマネージャ 吉川真(よしかわ・まこと)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
  • 再突入カプセル、回収班 RHQ(本部)担当 山田哲哉(やまだ・てつや)(JAXA 宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
  • 再突入カプセル担当 吉原圭介(よしはら・けいすけ)(JAXA一宇宙技術部門先進光学衛星プロジェクトチーム ファンクションマネージャ)

(上段左から臼井氏、吉川氏。下段左から山田氏、吉原氏)

中継録画

関連リンク

本日の内容

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プロジェクトの現状(概要)

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1.キュレーション作業

(臼井氏より)

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C室は2回目のタッチダウン(人工クレーター内から採取)で得られたサンプルを観察中。

大きな粒子は別に取り分けて光学顕微鏡観察をしており、このページに示された重さは採取された試料の総重量ではない。

2.再突入カプセルの解析

(吉原氏より)

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前面ヒートシールドを前にして大気圏へ再突入してくる。形状としては元の形状を保っている。この内側についてはとてもきれいな状態。熱防御がきちんと働いたことがわかる。

背面ヒートシールドは空力加熱での温度上昇がゆるやか。黄色の筋は打ち上げ前にカプセルのヒートシールドに貼っていた熱制御用テープ。その一部が残っている。前面ヒートシールドにも金色のテープを貼ってあるがこちらは全部溶けている。

インスツルメントモジュールはカプセルが再突入し高度10キロでパラシュートを開くもの。ここでヒートシールドは分離する。パラシュートに吊り下げられて下りてくる本体がインスツルメントモジュール。非常にきれいな状態で戻ってきた。打ち上げ前に見ていたのとほぼ変わらない状態で帰ってきた。熱防御系がしっかり働いた、大きな荷重がかからなかった。
電子機器も6年の宇宙の旅や大気圏再突入のあとでも正常に動作した。
外形の詳細な状態や内面の状態の詳細分析を実施中。

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REMMは初代はやぶさには搭載されていなかった。写真でいうと一番上の緑色の基板全体がREMM。惑星間軌道から超高速で大気圏再突入する物体のデータは貴重で、日本では初めて取得できた。

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サンプラー担当からは80度以下と要望されていた。快適な環境で地球に送り届けることができたのではないか。

3.再突入カプセルの公開

(吉川氏より)

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相模原市立博物館
はやぶさ2」帰還カプセル世界初公開展示(https://sagamiharacitymuseum.jp/blog/2021/02/19/hayabusa2capsule/
国立科学博物館
企画展 小惑星探査機「はやぶさ2」-小惑星リュウグウからのサンプルリターン- :: 国立科学博物館 National Museum of Nature and Science,Tokyo(https://www.kahaku.go.jp/event/2021/03hayabusa2/

4.メモリチップデータ検索システム

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参考:星の王子さまミリオンキャンペーン2

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5.今後の予定

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参考資料

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はやぶさ2」概要

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プロジェクトの全体スケジュール

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ミッションの流れ概要

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クリーンチャンバー概要

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キャッチャー開封作業

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観察用容器の概要

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再突入カプセルの概要

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ターゲットマーカに搭載された名前の検索

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質疑応答

産経新聞伊藤:再突入カプセルのデータについて。内部の温度は具体的に何度から何度程度か

吉原:今日の資料では「常温を大きく超えない」と書いている。温度はズバリ何度というのが難しい。REMMで取得しているのは9か所の温度。時々刻々と変わっていく。はっきり何度というには詳細な解析が必要。学会発表で報告したい。申し訳ございません。

伊藤:内部の試料が変質しない環境が保たれた?

吉原:そこは間違いなく保たれたとデータから判断している。

伊藤:カプセルの表面は何度くらいまで温度が上がったと思われるのか

吉原:3,000度程度と思われる。

山田:設計通りです。今後NASAの分光データも解析するとより正確な表面温度がわかるだろう。

ライター荒舩:前面ヒートシールドの形状について。資料5ページを見ると欠けている部分があるように見える

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吉原:先端部分がスパッと切れているように見えるかもしれないが、実際は大きく欠損しているところはない。

宇宙作家クラブ上坂:カプセルの巡回展はこのあと行われるのか

吉川:決まってはいないがJAXAの広報と中心になって進めていきたい。

上坂:拡張ミッションは予算が下りて正式に実行となったのか

吉川:今の国会で予算が正式に認められれば。確かまだ正式に承認はされていないはず。

JAXA広報岸:現在国会で審議中です。

東京新聞増井:カプセルについて。REMMを搭載した目的は。また温度のほかになにがわかったのか。日本初の意義は。相模原で公開されるカプセルの見どころは。

吉原:REMMは小惑星からのサンプルリターンという全体ミッションの成功には直接関係しないが、惑星間軌道からの大気圏再突入は機会が少ない。そのデータを蓄積するのはとても重要。このようなデータを取得する試みは今までもあったが今回まで成功していなかった。
初代はやぶさと比べて電子技術の進展があり装置を小型化できた。REMMは70グラム。探査機に厳しい質量制限が課されるなかで小さくできたため搭載できた。

山田:DASHの話をしたい。軌道脱出速度以上の速度からエントリーするときにいろいろな問題がある。それがわからないままはやぶさの初号機を飛ばすことに不安があった。
高速飛行実験機のDASHを2002年に打ち上げて試験しようとしたが、分離がうまくいかず実験は中止になった。今回は18年ぶりの悲願達成。
データを取得する意義は2つある。姿勢や運動の観点と熱的な観点。
姿勢について。カプセルはスピンをかけつつ分離する。コマの原理でまっすぐ前を向いて突入させたいから。空気はねばっこいのでスピンが止まってしまったりスピンが止まらず思わぬ方向のままになったりしないようにしたい。ちょうどいいところで止まるよう分離しているが、それがその通りだったか、計測してみないとわからない。今回はデータを取れた。
熱的な話。秒速10キロを超えると空力加熱の状況が変わる。空気の分子が電離してくる。その領域では輻射加熱という光による加熱現象が起きる。カプセルの設計時は、背中側に熱が回ってしまわないか心配だった。10パーセントくらい(輻射が?)あるという仮定を入れて設計した。実際どうだったのかのデータを取得した。裏の温度も測った。
うまく動作したことはわかった。将来のために詳しく解析していきたい。

吉原:カプセルの内部は美しい状態だった。今回見ていただけるものの中にインスツルメントモジュールの構体や搭載機器がある。新品なんじゃないかというくらいきれい。空力加熱から内部を守ったことがよくわかる、内側の美しさを見てほしい。

山田:空力加熱回廊を通り抜けていたカプセルを見てほしい。
それから、パラシュートはカプセルの内部が真空のままだと空気圧の関係で開かない。カプセルには穴が空いていて、外と中を同じ空気圧にしてからヒートシールドを分離してパラシュートを開く。背面ヒートシールドの「キノコ」と呼ばれるところのわきにある小さな穴(ベントホール)から空気を入れる。ぜひ見つけてほしい。

吉原:資料19ページの図。左上の「背面ヒートシールド」という矢印の右に2つの円がある。その隣に小さな切り欠きがあり、そこに穴が空いている。この「キノコ」は上面に2つある。

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山田:ベントホールの大きさは1.5ミリくらい。
それから前面ヒートシールドの中央部は剥離といってはげかかったりしないように「すだれアブレータ」という技術で作られている。再突入後はメロンパンのような格子になっている。これも見てほしい。

東京とびもの学会金木:カプセル公開について。
資料8ページの「展示内容」でインスツルメントモジュールに「搭載電子機器部は除く」とあるが次の項に「搭載電子機器」と書かれている。電子機器部はインスツルメントモジュールとは別に置かれる状態で公開されるのか

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吉川:その通り。

吉原:公開されるのは写真で紹介した構体だけでなく支持アブレータやサンプラーアブレータといったアブレータ部分もくっついた状態。

金木:名前が入ったメモリチップが小惑星へ往復できたが、名前を投稿した方々へのメッセージを

吉川:初代のときはターゲットマーカに名前を入れただけだったが、小惑星へ行って帰ってくるということを疑似体験してもらうためにメッセージやイラストをメモリカードに入れカプセルに搭載した。
我々自身がリュウグウへ行ってこられるのはまだ先だが、名前やメッセージが小惑星を往復してきたことに思いをはせてほしい。

吉原:メモリカードを埋めるときはなにも考えなかったが、帰還したカプセルからカードを回収するときは無事かどうか心配で、断熱材を切って取り出すのに手が震えて時間がかかった。美しい状態で取り出せて、皆さんのメッセージをお返しすることができたと思う。

フリーランス秋山:2010年の初号機帰還の後カプセルが公開された。その時の展示では前面ヒートシールドの公開が限定的だった。レプリカに差し替えられたりも。今回は積極的に公開される状態のようだが10年間での変化は

山田:基本的な考え方は初号機と変わらない。開発メーカーとの研究契約で進めていて知財を守らなければいけない。競合他社がバックエンジニアリングできる公開はしないというふうにしている。
展示のときにレプリカになってしまったのは、前面ヒートシールドが弱い状態だから。輸送の振動などで表面が崩れてしまう。
公開できる状況に変化があったわけではない。

テレビ神奈川富樫:もし新型コロナウイルスの緊急事態宣言が21日まで延長されたら、相模原市立博物館でのカプセルの展示(3月12日から16日を予定)はどうなる見込みか。

吉川:相模原市JAXAで調整中と思う。

富樫:実際なってみないとという感じ?

JAXA広報岸:その通り。

フリーランス大塚:ヒートシールドの炭化や熱の具合について初号機と同じように見えるが、違いなど印象があったら

山田:詳細解析を進めている。表面の変化を定量的に知るために、3次元のレーザー計測し打ち上げ前と比較しようとしている。またX線モグラフィーを使って内部の欠損があるか(実際はないが)チェック、熱分解層の状態も。
今回やられたか~? とドキドキしながら見たが、初号機のヒートシールドと並べてみるとだいたい同じと感じる。
解析の性能は初号機の時代から上がっているが、異常なところは今のところ見つかっていない。詳細はこれから。

大塚:高高度の大気の具合はわかっておらずいつ回転が止まるかわからないことが多いと以前聞いたが、今回わかったことがあったか

山田:ロールダンピングといって、ロールがどのくらいの比率でなくなっていくかが、スピンがいつ止まるかを決める係数になる。我々はそれを広くとって、この範囲内だろうねとしていた。その数字がこのあたりみたいと決まるのがREMMのデータ。今解析中。
新しい知見はないかもしれないが設計の範囲内におさまっていることがわかるだろう。変なやられ具合がないことから明らかではあるが。

大塚:予想通りの範囲内?

山田:だいたいその通り。

宇宙作家クラブ渡部:REMMの取得期間、420秒間の始まりはどんなタイミングで決まる?

山田:空気があるのは高度200キロくらいからと仮に設定している。それより10秒以上前なら空気の影響を受けず飛ぶ。
空気のないところを飛んでいるときのデータも欲しいが、メモリの容量の関係であまりそこを長くしたくなかった。
またパラシュートが開かないと地上に激突する。その前に電子機器をオフにしておけば、電子機器が壊れても少なくともデータの記録で問題は起きないだろうと考え、減速せず地面に激突するまでの時間から記録時間を420秒とした。
激突するタイミングは飛行解析を行い、少なくともこの前なら激突しないという数字を決めた。

吉原:高度200キロの50秒前から取得開始して空気のないところのデータも取得している。

JST草下:初代はやぶさのカプセルと比較しての所感は

吉原:全体としては先ほどの山田先生のコメントと同じ。真ん中の背面ヒートシールドの写真。黄色のテープの溶け残りや
支持アブレータの熱制御用テープの残り方、はやぶさ2のほうがやや少ないと思われるかもしれない。
このように少ないのはなにが影響しているのかは今後の解析で。

草下:初代はやぶさのカプセルは相模原で展示中?

岸:JAXA相模原キャンパスにあります。今は緊急事態宣言で休館中ですが。

日刊工業新聞加藤:3月に2度目の説明会を設定したのは何か重要な発表の予告と受け止めました。どんな分野に関するものか、チラっとお聞かせ頂けますでしょうか。

吉川:サンプルの初期分析への関心が高い。キュレーションチームと初期分析チームを紹介することを考えている。

時事通信神田:取り出されたメモリーチップは耐放射線性能があるのか。またデータをなにか展示に利用したりするのか

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吉川:ファイルはすべて正常に読み出すことができた。名前とメッセージ、イラストが入っている。名前とメッセージを検索できるシステムを作っている。イラストはどうするか検討中。個人情報が入っていると公開できないので個人で確認するレベルかなと思っている。

吉原:メモリチップは一般の市販のもの。埋め込んだ場所は支持アブレータ、つまりカプセルの背中。ここは探査機の内側を向いている。アプレータに囲まれたうえで探査機の内部にある。これらがシールドになって大丈夫だろうと思っていた。
熱でデータが破損しないことも事前に確認してから搭載した。

神田:これはmicroSDか。またビット反転はあったのか

吉原:microSDです。

吉川:取りだしたデータの細かい解析はまだ。ビット反転もほとんどしていないのではないか。チェックが大変。

吉原:メモリチップは2枚とも同じ内容を入れている。片方にビット反転があってももう一方から取り出せるように。

ライター荒舩:キュレーションで観察用容器に入れなかった粒子の数などは

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臼井:A室とC室から15粒ずつぐらい分取してある。サイズ以外で大きな違いはなく、どちらも予想以上に硬いサンプルだった。
色や形に違いはない。

(以上)

次回の記者説明会