小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウを出発し、現在、地球へ向けて順調に航行を続けています。
今回の説明会では、現在の運用状況、イオンエンジン運用結果などについて説明を行う予定です。
小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(20/2/20)ライブ配信 - YouTube
日時
- 2020年2月20日(木)14:00~15:00
前回の記者説明会
- 2019年12月19日:小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(小惑星近傍運用の総括など) - ただいま村(https://ima.hatenablog.jp/entry/2019/12/19/150000)
登壇者
(image credit:JAXA)
(左から久保田氏、細田氏、吉川氏)
中継録画
関連リンク
- はやぶさ2特設サイト | ファン!ファン!JAXA!(http://fanfun.jaxa.jp/countdown/hayabusa2/)
- JAXA Hayabusa2 Project(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/)
「はやぶさ2」概要
「イオンエンジンジンバル自動制御の確認(重心に対する推力軸の制御)」の説明
参考資料
参考:イオンエンジンのしくみ
参考:イオンエンジン技術のスピンオフ
(細田氏から)
自分はJAXAのイノベーションハブの仕事もしている。真空中で除電する装置を開発した。
- JAXA | 小惑星探査機「はやぶさ2」のイオンエンジン技術を応用した「マイクロ波プラズマ除電処理システム」の開発について(http://www.jaxa.jp/press/2019/10/20191008a_j.html)
2019/11/13 リュウグウ離脱の記念写真
質疑応答
共同通信やまだ:きわめて順調のようだが機体の状態について所感は
細田:イオンエンジンは計画通りに噴かないといけない。順調に運転している。
やまだ:具体的な帰還日はいつごろ見えてくるか
久保田:いまは12月ごろと言っているが第2期のイオンエンジン運転の結果次第。イオンエンジン、機体ともすこぶる順調。
東京とびもの学会金木:4台のイオンエンジンでBをバックアップにした理由は
細田:イオンエンジンはプラズマ源が4つあるが電源は3つのみ。エンジンとリレーボックスでつながっていて切り替える。端のAとDは選べる電源が1つしかなくこれをまず使う。残るBとCのうちBをバックアップとした。
金木:資料11ページ、砂を浴びたかもしれない場合考えられる不具合は
細田:イオンエンジンは1ミリほどの狭いところ(3枚あるグリッドのすき間)に強い電位をかける。狭いところに高電圧をかけるので砂が入ったらどうなるか。中和器にも穴があいていて、そこにも入るかもしれない。
ライター荒舩:ジンバル制御について。サンプルを取って重心が変わったのか
細田:サンプルではあまり変わらないがSCIやMASCOTなどを分離しているため重心が変わった。メカとしてちゃんと動き、姿勢制御も正しく制御してくれている。
荒舩:重さが変わることで制御が難しくなる不安はあるのか
久保田:MASCOT、MINERVA、SCIは重量があった。外れたあとの重心位置は計算できている。姿勢の乱れが想定内、重心位置の変化も想定内とわかった。アンローディングができることも確認済み。
細田:アンローディングできると化学燃料を節約できます。
時事通信かんだ:軌道決定について。いまの誤差はどのくらい? リエントリに向けた精密誘導とどのくらい違うのか
吉川:手元に情報がないので後日。
かんだ:キセノンの消費量について。残量を検知する方法はあるか
細田:重さを推定する方法はなく、バルブを開けた時間などから推定。
久保田:使用実績から計算。
かんだ:カプセルを離して離脱したとき、残る燃料の予測値はあるか
久保田:目標残量はある。
かんだ:十分残るか
細田:計画内。
細田:イオンエンジンは一度つけてしまえば見守るが予想と予防が担当の大仕事。Bは頭の端に引っかかっていた。ちゃんとバックアップになっているか。試運転して心配事がクリアされた。いま自分の考える心配事はクリア。ただ気をゆるめず。
今のところは準備通り。見落としがないように。
永山:帰還後について。いまどういう計画なのか、進行の度合いなどを知りたい
吉川:一番最初にしたのは、どのくらい燃料が残るかを推定すること。帰還後どこまで行けるかの確認。今後も計算し直すが1月の段階でどのくらいの小惑星や惑星に行けるか、軌道だけの観点から調べた。300個くらいの候補天体から、帰還後10年前後で考えると数十個。小惑星に行くと決まったわけではないし小惑星の軌道精度が悪かったりもする。行くとしたら確実に行けそうなところ、科学的に意味のありそうな天体を絞り込む。
小惑星ではなく惑星フライバイとか、かなり遠方まで行くなども考えられる。なにが一番有意義かを議論していく。
永山:ゴーサインはどのように出るものか
吉川:可能性をプロジェクトとして出す。どのくらいの期間かかるかがわかれば運用コストもわかる。議論を詰めていく。今後の検討課題。
永山:募金活動がまた始まった。どんな反応か
吉川:プロジェクトではまだ把握していない。
広報:あとで確認します。
フリーランス大塚:細田さんに。スラスタBについて去年の試運転で試していなかったのはなぜ
細田:時間の都合。8ページの図でいうと線が混み合っている。必要なものを優先した。
トリム運転で使ったのはC。48時間噴射した。
大塚:次のミッションでは砂が舞い上がることへの対策アイデアはあるか
細田:まるで砂が入ったかのような口ぶりで離しているがそうとは限らない。エンジンが少し上を向いた状態でタッチダウンしたのはよかったかも。対策はいろいろ実験している。
探査ハブの仕事でもダスト除去(太陽電池パネル上の)などを研究している。宇宙探査では必要になる技術。
久保田:砂の中で導電性があるものが近くにあると放電することを心配していた。コンタミセンサーがありモニタしていて問題ないとわかっている。安心はしているが実際にイオンエンジンを点火しないとわからないことがありうまくいってほっとしている。
細田:タッチダウン中も検査はしていた。うまく運転できて安心した。
大塚:今後の対策はお尻を上げるくらい?
細田:自分だけではわからないが見込み角があってエンジンから地表が見えないのはよい。
読売新聞みなみだ:第1期運転と第2期運転の違いは
細田:第2期は地球帰還に向けて精密な誘導が必要になる。イオンエンジンはお尻が決まっているとマージンがなくなっていく。第2期のほうが異常に対してより対策を講じる必要がありシビアになる。
みなみだ:難易度は第1期より高い?
細田:難易度はずっと高いし、わたしの胃の痛さもレベルが高いです。
みなみだ:第2期の開始と終了時期は
細田:資料16ページにあるように5月から9月にかけて。
久保田:第1期と第2期は技術は同じだが、第2期は期間が長いしやり直しがきかない。より慎重に。
みなみだ:帰還の成否が第2期にかかっている?
久保田:エンジンの状況に応じてずれることがある。
みなみだ:エンジンがどうなると影響が出るのか
久保田:遠回りしたりすることになるかもしれない。計画通りいくよう進めている。
赤旗新聞なかむら:第2期運転のあと、リエントリ精密運転もイオンエンジンを使う?
吉川:精密誘導は化学エンジンを使う。初号機は化学エンジンが使えずイオンエンジンを使った。
なかむら:第2期のデルタVは
吉川:前回の資料にあったと思うがだいたい150メートル毎秒。
なかむら:スピンオフ技術についてもう少しくわしく
細田:イオンエンジンからはプラス、マイナスとも出せる。イオンエンジンから出てきたイオンと電子に勝手に寄っていて消してしまうという原理。
使われなかったものは壁からイオンエンジンに戻ってくるので余ることはない。
宇宙作家クラブ渡部:第2期運転後も第1期と同様トリム運転があるか
細田:おそらくそうなるはず。
宇宙作家クラブ松浦:キセノン残量60%くらいはデルタVだとどのくらい? 化学スラスタの残りは
細田:往路では24キロ使って1キロ/秒。復路もそのくらい。RCSについてはのちほど。
久保田:特に大きなイベントがない。次のイオンエンジンの運転が5月予定なので4月に。
ふるいち:次の制御などポイントとなるのは
久保田:5月のイオンエンジン運転第2期までは通常の運用。大きなイベントはない。科学データは成果があれば途中で入れさせていただくことがあるかも。
ふるいち:カプセル受け入れの訓練などは始まっているか
久保田:準備中。オーストラリアとも調整中。進んだらお知らせする。
ライター荒舩:帯電防止技術はMMXなど次のタッチダウンがある探査機で使うことは考えているか
細田:検証レベルとしては技術成熟度が低いので地上実験をもう少し。野望としてはすべての探査機にイオンエンジンが積まれれば砂がつかないよとなって最高なんですが。一エンジニアの野望です。
荒舩:ダストがつくことはこれまで想定されてこなかったと思うが今回の経験から新しい探査機に載せるのか
久保田:初号機のときはダストがつく兆候がなかったため大きくつくことはないと思っていた。NASAが着陸して探査しているキュリオシティは着地時に砂が舞い上がることを想定してレンズを二重にし、着陸後に離脱していた。今後そういう方式を採るのか、イオンエンジンを使うのかはいろいろ検討。ひとつの方式ができてきたかなというところ。
細田:野望としてはカメラにも全部使えるとかっこいいのができるが技術成熟度がまだ低い。
東京とびもの学会金木:はやぶさ2の近くへ行ってイオンエンジンを一か所調べることができるとしたらどこを調べたいか
細田:1つだけしかダメですか? 気になるところは山ほどあります。地上実験では國中先生がのべ4万時間近い耐久試験を行って打ち上げたのに、中和器が思いがけず早く劣化した。実験環境と宇宙環境がどう違うのか、なめるように見回したい。中和器はその後6万時間の耐久試験を行った。できるのならイオンエンジンの中に光ファイバーを差し入れて写真をたくさん撮りたい。
フリーランス村沢:今回成功した大きな要因としてリアクションホイールが故障しなかったことが大きいように感じる。RWが故障しないのは初号機とは違うものにしたからか
久保田:初号機はRWが故障したため1つ増やしたし、往路では負荷をかけず大事に使ってきた。ミッション期間を長く取ったので検討する時間をとれた。イオンエンジンも11月前から周到に準備してきた。試運転できて無事に運転できたのではないか。
永山:帰りの運用でもRWをなるべく使わないことをやっているのか
久保田:基本的には行きと同じ考え方。軌道によって使えなかったりもする。アンローディングもできるので機器に負担がないよう慎重に、いろいろ総動員してカプセルを地球へ持ち帰るのが使命。
広報:使途特定寄付金について。昨年末に開始し現在のところ多くの応援をいただいている。今年度の決裁が終われば6月か7月頃Webで公開する。
(以上)
次回の記者説明会
- 2020年06月11日:小惑星探査機「はやぶさ2」記者説明会(第2期イオンエンジンの運転状況、最近発表の論文) - ただいま村(https://ima.hatenablog.jp/entry/2020/06/11/100000)