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99/07/30 (Fri.)−並びに並ぶ顔の写真

元記事:夜の記憶−99/07/30 (Fri.)−並びに並ぶ顔の写真】

今日の日経新聞に、NECの見開き広告が載っていた。内容は「NECはがんばりますよ」のような感じだったのだが、この見開きを覆い尽くしていた写真がただひたすらに顔顔顔。紙面の中心から輪を描き、幾重にもなったたくさんの人人人が上を、つまりこちら側を見上げている。いろんな人がいる。性別はもちろん、人種、年齢、笑ってる人、神妙な顔の人、にらんでる人。たくさんのいろんな顔が、こちらを見上げている(写真の一部が、新スローガンを紹介するページに使われている)。
 そして、これを見たときにしたことといえば、目をつむってる人を捜すことなのだった。結婚式に出たことがある人ならわかるだろう。集合写真を撮ろうとするとたいてい、じゃあ撮りますよ〜、ハイッ。あ、まばたきしてしまった方がいますね〜。ではもう一枚撮りましょう、ハイッ。あ、またまばたきしてしまいましたね〜。ではもう一枚、ハイッ。と永遠に続く写真撮影をしたことがあるはずだ。結婚式の集合写真は多くても100人くらい? その程度でも、誰もまばたきしていない写真を撮るのは難しい。それがこの見開きには…数えていないが数百人はいるはずだ。これだけ人が集まっているならば、誰かが絶対に目をつむっているはず。
 しかし不思議なことに、目をつむっている人は見つからなかった。これはどういうことだろう。

  1. 「さあまばたきしてください、ハイッ」と言って、一瞬間をおいてから撮影する
  2. 数枚連写しておいて、目をつむってる人のカットは別の写真から貼り付ける

どちらかといえば後者がありそうだ。これだけの数の人を集めて写真を撮っておきながら撮り直しなんてことになったら、コストがかかってしょうがない。写真の加工は、今ならフォトレタッチソフトのPhotoshopあたりを使えば簡単にできてしまう。フォトレタッチ劇場(1/2)なんてのが比較的簡単に作れるのと、原理は同じだ。うん、多分そうだ。
 ところでまた理屈っぽい話になるが、n人が入る写真を1枚撮ったときに目をつむっている人がいる確率って算出できるのだろうか。まばたきの頻度を便宜上10秒のうち0.1秒として、9.9秒目を開け、0.1秒目をつむるものとする。複数の人が同時にまばたきすることもある。さてn人が写るときの期待値Eは? というところ。
 目をつむっている写真といえば思い出す映画が、竹中直人の『119』。記念写真を撮ったら、ほぼ全員が目をつむってしまった、というシーンがある。あまりに不自然で逆にそれがおかしみを誘うという場面なのだが、この映画のパンフに載っているスタッフの集合写真もほぼ全員が目をつむっていて、その徹底さがさらにおかしかった。
 NECの広告写真に出ている人全員がまばたき中だったら、それはそれで不気味かつ無類に面白い写真になるだろうな。