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小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(第2回タッチダウンについて)

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(19/7/9)ライブ配信 | ファン!ファン!JAXA!

小惑星探査機「はやぶさ2」は、現在、リュウグウの中心から約20km上空のホームポジションの位置にいて、第2回タッチダウン運用の準備を行っています。

今回の説明会では第2回タッチダウン運用開始直前の「はやぶさ2」の状況、運用のスケジュールについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(19/7/9)ライブ配信 | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2019年7月9日(火)10:30~12:00

登壇者

中継録画

関連リンク

配付資料

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本日の内容

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.第2回タッチダウン運用について

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タッチダウン時刻は機上時刻で10時5分~10時45分ごろ。

PPTD-TM1画像/PPTD-TM1B画像

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C01-Cb領域

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PPTD-TM1Aの上昇時にONC-Tで撮影した画像

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運用シーケンス(全体)

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運用シーケンス(低高度)

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ターゲットマーカを常に視界に入れたまま降下するのが前回との違い。

高度8.5mからの探査機の動き

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赤が姿勢、青の枠が視界、緑の円がタッチダウン領域

運用途中での判断ポイント

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第1回タッチダウンシーケンスからの変更点

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キャッチャB室の閉鎖

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1回目(TD1)と2回目(TD2)のタッチダウンの場所

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3.第2回タッチダウンを行う科学的意義

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4.JAXA宇宙科学研究所 所長からのメッセージ

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5.今後の予定

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参考資料

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第2回タッチダウン運用実施可否判断経緯

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タッチダウン候補地点

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質疑応答

日刊工業新聞とみい:10時5分くらいのタッチダウン後、成功の報告は最速で何時ごろ?

吉川:資料p15。判断ポイントがある。

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ドップラーデータで探査機の上昇はすぐわかる。運用室は喜ぶだろうが上昇したとわかるだけ。
テレメトリを取って探査機の健全性を確認できたら成功。プロマネから宣言がある。
プロジェクタイルが発射されたかなどは14時からの記者説明会で。

とみい:機体をGate5で確認できるがサンプラーホーンの作動がわかるのはいつ?

吉川:運用状況によって変わる可能性があるが、現段階では14時の会見で。

久保田:いろいろな機器がありデータを確認するのに少し時間がかかる。シーケンスが動いたことはすぐにある程度判断できるが、弾丸が発射されたかは、物理的な変化(温度上昇など)のデータを下ろすまでわからない。14時の段階で弾丸発射できたかを報告したいがシーケンスがうまくいったとわかったらチームは一安心して拍手が出たりするだろう。随時報告していきたい。

赤旗新聞なかむら:ターゲットマーカの直上へ下りていき平行移動は高度2.6メートル?

久保田:ホバリングして姿勢を変えてから、ターゲットマーカが画像の真ん中に入るよう数メートル移動する。

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ターゲットマーカからタッチダウンエリアの中心まで2メートルくらい離れているので。

なかむら:タッチダウン時刻に40分の幅があるのは、40分の間にタッチダウンしなかったら切り上げて上昇せよと仕込んである?

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久保田:いろいろなケースを想定している。探査機自身がターゲットマーカをとらえるのはAIで行う。トラッキングや姿勢の変化などにかかる時間が読めないところがある。
それ以上かかることはないと思っている。強制的に「帰ってきなさい」とプログラムしてあるわけではない。

なかむら:運用のキモは

久保田:前回と異なり、LRFの光量が落ちているので慎重に検討してきた。最初のポイントは高度35メートルでターゲットマーカを認識できるか。前回より高度が低いので狭いエリアを見ることになる。そこにとらえられるか。
ターゲットマーカをとらえられればあとはおおむね同じだがLRFに切り替えられるか。ホバリングと姿勢変化もこれまでの実績から可能と思うがそこもポイント。上空へ来ればあとは目を閉じて下りることになる。運を天に任せる。ターゲットマーカの捕捉が最初の関門になるだろう。

なかむら:國中先生のコメント、定量的に評価したとあるが詳しく

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久保田:1回目のタッチダウンで目標地点の半径3メートルの中心を目指し1メートルの精度でタッチダウンできた。今回は別の場所であること、光学系の変化も定量的にとらえ、いろいろなケースでタッチダウンできるか考えた。あり得ないだろうというケースも含めて数値的に問題ないと結論。
ターゲットマーカを落とすなど降下運用を繰り返して評価した。

なかむら:成功確率は出ているのか

久保田:数値は出せないがいろいろなケースを考えてもタッチダウンできるだろう。ノーマルアボートといって戻ることもシーケンスに入っている。シーケンスの一貫性が出ているか、誤差を見積もっても3.5メートルの地域に入るということが最も大事な定量的評価。

ライター林:資料p16。「安全設定は第1回タッチダウンのレベルを維持ないし強化」とあるが、ここでいう安全設計とはアボートの基準についてのことか

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久保田:アボートの基準は数値的には少し変えているが基本的な考え方は変わらない。水平移動する高度を下げたこと、タッチダウン目標点がターゲットマーカの近くであることにもとづき、見失ったときのアボートなど強化したところはある。
アボートの考え方は前回もかなり強固に組んでいる。低高度にいる時間が長くなるのでなるべく短縮したシーケンスを組んで、なにかあったら上昇するよう安全強化している。

林:「サンプリング達成確率が若干低下」は、アボートの確率が少し上がっているということ?

久保田:そうですね、タッチダウンエリアが前回の3メートルより少し広くなっているので精度的にはよいが近づいて運用するのでアボートの確率は上がっている。
高度30メートルでターゲットマーカを見つけられるかどうか。高度45メートルから下がっていることは成功確率を下げている。

林:前回「目をつぶってのやぶさめ」というたとえがあったが今回は

吉川:とくに考えていなかった。1回目のときは「甲子園球場のマウンドに下りる」とたとえたが大きく変わらない。難しさそのものは光学系の曇りというハンディがある。

林:チームの雰囲気、緊張感など今の状況は

久保田:インパクター運用のあと第2回タッチダウンを行うか議論があった。なにができるか、なにが抜けているかチーム一丸となって検討してきた。サイエンスチームも地図を作ったりデータを揃えてきた。
いよいよ本番ということで緊張している人もいると思うが平常心と思う。

林:ミッションの最大の山場か

久保田:1回タッチダウンに成功しているが2回目もうまくいくかはリスクもありわからない。チーム一丸となってしっかり準備をしてきた。
小惑星内部の物質をサンプリングするのは世界初。しかもインパクターを使って自分たちで小惑星内部を露出させた。はやぶさ2のある意味正念場、山場を迎えたといっていいと思う。

時事通信かんだ:工学的な意味で1つのミッションで複数回タッチダウンする意義は

久保田:技術は2回、3回やって獲得するもの。初号機でやったことに対していろいろ改良、進化させてきたはやぶさ2でもう一度やるのは技術の進歩とともに確立するものと思う。一度うまくいったら確立というわけではなく進化させることが重要。
2回目のタッチダウンは場所が違うし探査機の状態も異なる。2回目を行うことで技術が高まる。それが自信と誇りになって次のミッションにつながる。

かんだ:地図の作成など工学的な判断にサイエンスの支援があったと思うが、このような連携は過去の探査機と違いがあるのか

吉川:探査が違うと直接比べるのは難しいが…はやぶさ2のサイエンスチームは人数は倍くらい強化されている(今村註:おそらく初号機と比較して)。工学的な運用にサイエンスチームの協力が大いに得られていて感謝している。たとえばこのリュウグウの表面模型は近畿大学の道川先生が作った。作るのはかなり大変だそうだ。このようなものがあると直感的に把握できて運用に役立つ。それぞれのボルダーの高さもサイエンスチームが検討。複数のチームが独立して測定し、それを比較して高精度のデータができた。サイエンスチームの献身的な貢献のおかげでできている。

一緒に考えて、サイエンスの要求に工学が応えたり、議論しながら進久保田:サイエンスと工学が一丸にならないと実現できないプロジェクト。今までの科学ミッションでもやってきていたが、リュウグウが難しい天体なのでそれがよく見えているのでは。
めてきた。サイエンスでなにができるか、工学でなにができるかを一緒に考えないといけない難関の天体であったことがこのような密な関係になったものと思う。

かんだ:資料p17。第1回タッチダウン後に開いていたB室を閉鎖してC室に第2回タッチダウン分が入るとのことだが、これまでの降下運用などでタッチダウン時以外の微粒子がB室に入っていることは考えられるか

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吉川:その可能性はあると思う。3回目のタッチダウンはしないと決めているので、リュウグウの内部物質を入れるC室はなるべくほかと混ざらないようB室を閉じた。

かんだ:B室も初号機のように微粒子が入っていないか調べる?

吉川:その通りです。

読売新聞まつだ:資料p15。タッチダウンからGate5まで50分ほどあり、これは第1回より長くなっていると思うかなぜか

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運用途中の判断ポイントと情報発信
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小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(タッチダウン運用計画) - ただいま村

久保田:第1回はタッチダウン予想時刻として考えられる時間帯の真ん中当たりを言っていた。今回はタッチダウン時刻として最速の10時5分(機上時刻)、地上では10時18分を示している。いろいろなシーケンスの関係でこう組んでいるというのもある。

まつだ:1回目をプレスセンターで見ていた。ドップラーデータで上昇が確認されて喜ぶ様子があり、それから15分から20分くらいでもう一度ワッと喜んでいた。これはテレメトリが届いたときかと思うが

久保田:ドップラーデータは常に見られる。電波は常にとらえているので、LGA(低速通信アンテナ)に切り替えたGate4以降はドップラーモニタで探査機の速度変化を見ている。いま降下を始めたといったことがわかる。速度が上昇に向いたらタッチダウンしたんだろうとわかる。

吉川:「LGA→HGA(高速通信アンテナ)」を11時9分(機上では10時56分)としたが、これは考えられる一番遅い時刻。タッチダウンから上昇する時刻によってはもっと早くアンテナ切り替えがあるかも。

まつだ:タッチダウン後のアンテナ切り替えは最速だと何時ごろになるか

久保田:タッチダウンしているときはHGAは地球に向いていない。浮上してある程度離れたら姿勢を変えてHGAを地上へ向ける。その時刻はいろいろなケースが考えられ読めない。数十分かかることもある。

まつだ:早くて数十分?

久保田:いろいろなケースがあるので上昇の状態を見て…我々も早く見たいと思っているんですが。
小惑星から十分に離れて姿勢を地球に向けられるときになったらアンテナを切り替える。

まつだ:1回目のタッチダウンのときはドップラーデータを確認後、あらかじめ予定されていた記者会見の前にブリーフィングがあった。今回もそのように?

また先ほど、プロジェクタイルが発射されたか確認後14時から記者会見となっているが、この時刻は変更される可能性がある?

久保田:管制室の様子を見ていると上昇してデータが届き始めたらチームはひと安心となる。プレスルームのモニター越しではなにが起きているかわかりづらいと思うので、どういうことが起きたかを途中でお話しようと思っている。
いろいろなデータが揃うのを待つことを考えて14時と設定した。プロマネはじめチームのメンバーはすぐには持ち場を離れられない。アンテナの切り替えが早くなってデータが早く届いたとしても14時というのは変わらないだろう。

毎日新聞永山:資料p16。サンプリングを達成するかどうかのポイントは、ターゲットマーカを捕捉できるか、LRFへ切り替えられるか、位置や姿勢を調整できるか、といったところか

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久保田:ノーマルアボートにはいろいろなところで仕掛けを作っている。一番大きいのは、高度30メートルという前回より低い高度でターゲットマーカを捕捉できるか。できない場合はノーマルアボートする。(高度が低いとカメラがとらえられる範囲が狭くなるため)ここのノーマルアボート確率は上がっている。
ほかにも安全対策はいろいろとっている。その3つが主要となって達成確率が下がると考えている。

永山:ターゲットマーカのトラッキングの猶予はどのくらいか

久保田:最大10分くらいでとらえられると思っている。具体的に何分間見つからなかったらアボートするかというのは調整中。

永山:たとえば20分以内にターゲットマーカをとらえられなかったらアボート?

久保田:時間と、探査機は自分が取得したデータで判断する。

永山:6月25日の記者説明会以降どんなことを検討して着陸すると決めたのか

久保田:前回の記者説明会では2回目のタッチダウンを行うと決定したことをお話した。いろいろなケースを考えてシナリオができていて、それを探査機に教えなければならない。探査機に教える事項が問題ないかどうか、探査機の状態も確認。
前回はタッチダウン時刻が決まっていなかったと思う。時刻を決めてそれにのっとって探査機が正しく動くかシミュレーションを行い、何時何分にこうするというコマンドを組み上げていろいろな観点で確認した。
「ここで画像データを撮る」といったシーケンスを含めてトータルなものを組み上げ、それを探査機に教えている準備をしているところ。

永山:その中で新たな課題は出てきているか

久保田:課題はない。

永山:25日に想定したとおりに作業が進んでいる?

久保田:はい。具体的な時刻をどうするかを詰めてきました。

ニッポン放送はたなか:國中所長のメッセージ。所長は当初、2回目のタッチダウンに前向きではなかった?

久保田:所長は宇宙科学のミッション全体を統括している。非常に冷静に見てアドバイスや質問をする。1回目のタッチダウンは成功したが2回目探査機の状態、タッチダウン場所についての情報がどのくらいあるか、そこは砂が表面に降り積もっている可能性が高いがタッチダウンで舞い上がってLIDARやカメラの光量が落ちる、最悪使えなくなることも想定して、いろいろなケースを考えてトータルに判断するのが重要だという主張をしていた。慎重、冷静に見ていて、プロジェクトにはこういう検討が足りないのでは、こういう検討をしたほうがいいといったアドバイスのやりとりを5月6月に行い、その結果定量的にもタッチダウンが可能であると確認した。6月21日にデータに基づきリスク最小で達成できるという判断をして、25日にはJAXAの経営層にも話して了解を得た。
所長は冷静で、1回うまくいったから次も大丈夫と考えず、いろいろなケースを考えて慎重に見ていた。そばで見ていて冷静に見ていると感じた。

はたなか:現場の熱い部分をクールダウンする感じ?

久保田:チームも割と冷静。2回目をチャレンジしたいというのはありますが、プロマネ含めて冷静に判断しましたね。本当にできるのか、なにか見落としがないかと常に自問しながらやっていた。
端から見ると…いろいろ検討しているのは熱意がありますから、それをクールダウンする効果はあったと思います。

ライターあらふね:低高度のシーケンスで位置と姿勢を制御するそうだが、ヒップアップの姿勢で移動するのは難しい?

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久保田:ターゲットマーカが近くにあって常に見えているのが前回との大きな違い。地形の傾きに合わせて20~30度傾けたあとヒップアップする。ターゲットマーカが視野の端に行くので、なるべく中心にとらえられるようにした状態でタッチダウン姿勢にする。
そのあとなるべく確率を上げるため、タッチダウンエリアの中心に降下したいので横移動する。距離は大きくないので難しい技術ではない。

あらふね:ここまでいろいろ準備して、期待はどのように持っているか

吉川:タッチダウンはアボートするリスクはある。危険回避のため中断する「ノーマルアボート」なら歓迎。もう一度挑戦できるので。タッチダウンで探査機が壊れてしまうよりははるかによい。
それを含めて検討している。希望としてはぜひ成功して地球に戻ってきたとき、2回目のタッチダウンをして本当によかった、地下物質からこんなにいいサイエンスができたという結果になることを期待して2回目に臨みたい。

久保田:地下物質を取るのは科学的にも重要。工学的、技術的にも一度できたから完成するわけではなく二度行うのが非常に大きい。今回は時間をかけて用意周到に準備し、挑戦できる状況がそろったので果敢に挑戦して成果を出していきたい。

あらふね:考えられる準備はできた?

久保田:はい。ただ宇宙探査はなにが起こるかわからない。宇宙空間を漂っているのではなく着地して物理的に接触するのでなにが起きるのか想像しきれないこともあるだろう。用意周到に、あらゆることを考えたがまだわからないこともあるだろう。覚悟の上で挑戦する。そのための準備をした。

共同通信■(聞き取れず、すえ記者ではない):10日の9時46分に降下開始の可否判断とある。判断が出たタイミングを我々は知ることができるのか。判断が出た直後に下りていくのか

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久保田:可否判断を始めるのが9時46分で、実際に探査機が降下を開始するのが機上で10時46分。1時間とってある。
まず可否を確認するのにたぶん数十分かかる。あらかじめ教えてある時刻に探査機がジェットを噴いて降下を始める。降下を延期すると判断した場合、こちらからその信号を送ってアンサーが返ってくるまで30分近く遅延がある。それを含めて降下開始まで1時間とってある。
判断そのもののはもう少し前。Gate1で「降下開始します」というアナウンスはWebサイトやTwitterで行う予定。

NHKつつい:地下物質の採取について、着陸地点にどのくらい積もっていると考えているか。着陸の前後にONCで着陸地の写真などは撮影するのか

吉川:ONCで接近画像は撮影する予定。

つつい:地表の状況は画像でどのくらいわかるのか

吉川:前回のタッチダウンでも低高度の画像で小さな粒が見えていた。地下物質が降り積もっていいれば粒子の大きさの違いがわかるだろう。

つつい:近くへ接近するまで撮り続ける?

吉川:はい。

フリーランス大塚:資料p13の低高度シーケンス。4つのチェックポイントの①はターゲットマーカの捕捉、②はLRFへの切り替えと思う。③は地形に想定以上の凹凸がないかの確認、④はオフセット点で姿勢と角度が安定するか、これが前回だったが今回も同じか

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久保田:基本的には前回と同じ。位置と姿勢の変更を同時に行うとか高度の値が違うなど少し違いがあるが、基本的には同じ。

大塚:前回のタッチダウンでは地上にならうのは決め打ちの角度としていたが今回も?

久保田:地形のデータはあるので、LRFはモニタリングであり姿勢の角度は決め打ち。

大塚:14ページの動画、地形にならいつつヒップアップする感じ?

久保田:はい、2つを合成しています。角度が違うので姿勢をならう方が大きく見えるかもしれないが、傾くのとヒップアップを同時に行っている。ターゲットマーカをなるべく中心にとらえるよう、位置も少し動かしている。

大塚:シーケンスの短縮が目的とのことだったが、ばらばらに行うのと比べて1分ほどしか違わない。それでもこのようなシーケンスを行う理由は。熱の影響を少なくするため?

久保田:熱の影響は数分では変わらない。
時間をかけると誤差がたまってくる。1回目のタッチダウンの結果もふまえて、位置と姿勢を同時に制御することでターゲットマーカをなるべく中心から外さないようにしたい。姿勢制御の精度を上げたい。

大塚:1回目のタッチダウンでは、タッチダウンした場合とアボートしたときでドップラーデータの変化量が異なる=ドップラーデータで上昇に転じた段階でタッチダウンに成功したかがわかると聞いていた。

久保田:シーケンス通り行ったかアボートしたかは今回もドップラーデータである程度わかるが確証ではない。運用者によって意見が分かれるかも。確定ではないがおおよそのことはわかるだろう。

NHKすずき:タッチダウン成功と宣言する条件は探査機が正常であることとシーケンスが最後まで進んだこと?

吉川:その通り。Gate5で確認する。

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すずき:前回Twitterで発表されたが今回も?

吉川:はい。

久保田:補足すると、シーケンスが最後まで進んだということはプロジェクタイルが撃たれたことも含む。コマンドが最後まで進んだことはわりと早くわかるが、プロジェクタイルが発射されたことが確認されたところでタッチダウン成功となるだろう。

すずき:前回は(火工品の)温度上昇が確認される前に成功と発表されたと思う。発射が物理的に確認された段階で発表?

久保田:前回も津田プロマネが、温度上昇を確認できたので完全にタッチダウン成功と言ったと思う。シーケンスが終わったところで拍手も出るだろうが、タッチダウンというシナリオの完全な成功というのは異なる。タッチダウンはサンプル採取が目的。プロジェクタイルが発射まで含めて初めて完全な成功と定義している。
前回、シーケンスが終わりまで進んだことが弾丸の発射を含むかどうかは微妙だったと思う。

すずき:資料p15。Gate3のときの高度は

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吉川:たぶん300メートルくらい。確認する。

久保田:(Gate3以降は)なにかあってGo/NoGoコマンドを送っても間に合わないという領域。今回は高度500メートル以下は自律で動く。そこでも多少の微調整がぎりぎり間に合う。500メートルのデータを見て判断する。なにかあったとき戻れる若干のマージンもあるので500メートルといったほうがいいかもしれない。

産経新聞くさか:タッチダウンの時刻について。前回はたしか8時ごろだけれど30分ほど前後するかもと聞いていて、実際は8時から30分ほど早かった(今村註:前回のタッチダウン時刻は機上で7時29分、地上との時差は当時19分なので地上で7時48分)。今回は10時5分からの40分間にタッチダウンとあるが、この時間帯から大幅に…たとえば30分早くなるといったことはないのか

久保田:前回は考えられる時間帯の真ん中を案内していて、8時15分を中心に前後30分と案内していたら一番早いタイミングだった。記者のみなさんが準備中に管制室で拍手が出てしまったかもしれない。ナビゲーションがスムーズにいき、ホバリングや姿勢変更の乱れの収束が早かった。説明の仕方が悪かったので、今回は一番早くて10時5分(地上でわかるのは10時18分)と案内している。ここから前後する可能性もあるがだいたいこのくらい。時間帯が1時間から40分に短くなったのはリハーサルなどで経験を積んだのと、低高度のシーケンスで時間をかけられないという事情もある。
もちろん多少時間が前後することはあるかもしれない。そのときはアナウンスする。

くさか:HGAアンテナの切り替え時刻などは「一番遅くて」と聞いたと思う(久保田「はい」)。とするとアンテナ切り替えの一番遅い時刻(資料では地上で11時9分)は11時49分ごろ?

久保田:場合によってはだが、Gate5はそこまで遅くはならないと思っている。Gate5は地球指向の姿勢に戻せる時刻を想定している。

毎日新聞いけだ:高度500メートル以下は自律とのことだが、完全な自律は30メートル以下?

久保田:このあたりなかなか説明しづらいが、小惑星に近づく速度や位置はオンボード(自律)で処理。横方向の移動も基本的にはオンボードだが、高精度な着陸のために最新の情報で微調整できる。状況によるのでなにもしないこともある。高度500メートルの画像を見て予測と少し違っていたら地上からコマンドを打ってこちらへ動くといいよと支援するかも。それは今までもやってきた。今回は高度30メートルに下げたので、低高度の画像でも指示ができる。たとえば高度400メートルの画像でも間に合えば微調整のコマンドを送る。
微調整でターゲットマーカの上空へ連れていく。完全自律かというと地球から若干指示が行く可能性もある。
高度30メートルでターゲットマーカを捕捉するのは自律。そこまでの横移動は地球から少し修正をかけるかもしれない。

いけだ:前回はプロジェクタイルが発射されたかを火工品の温度上昇から判断していたが、この確認の時刻は

久保田:テレメトリデータはある間隔で届くが、温度の上昇はトレンドである。小惑星に近づくと少しずつ温度が上がっていく。プロジェクタイルの発射による温度上昇は急激に起きる。ある程度データを集めたり、ほかの場所の温度を見たりして最終確認するため、発表するのは14時の会見でと考えている。

いけだ:前回は会見の前に火工品の温度上昇を確認したとアナウンスがあった。今回もできればお願いしたい。

久保田:温度上昇はひとつの証拠なので、ほかにもう少しいろいろな観点で見て確認したいと思っている。

(以上)