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小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(タッチダウン運用計画)

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会のライブ中継(19/2/6) | ファン!ファン!JAXA!

小惑星探査機「はやぶさ2」は、現在、リュウグウの中心から約20km上空のホームポジションの位置にいて、タッチダウンの準備を行っています。

今回の説明会では、「はやぶさ2」の現在の状況、タッチダウンのスケジュールについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会のライブ中継(19/2/6) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2019年2月6日(水)15:00~16:00

登壇者

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(image credit:JAXA

(左から久保田氏、津田氏、吉川氏)

中継録画

JAXA TV

NVS

関連リンク

配付資料

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本日の内容


(吉川氏から)

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2回のBOX-B運用で取得できた画像は近いうちに公開する。

2.タッチダウン運用計画

概要

(津田氏より)

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L08-E1領域

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ピンポイントタッチダウンという手法を選択。ターゲットマーカから離れるほど精度が落ちるためターゲットマーカに近いE1にタッチダウンすると決めた。

この3次元地形図はこれまでのリハーサルで得られたデータをもとにサイエンスチームが作った。何度も改訂を行って精度のよいものができた。そのおかげで当初よりずっと高精度なタッチダウン計画を作ることができた。

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B1領域は岩が多い。はやぶさ2の安全を満たしているが凹凸が多い。その点でもE1が適切。

タッチダウン運用のシーケンス(全体)

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ここに示した時刻は目安で、30分ほど前後する可能性がある。

タッチダウン運用のシーケンス(低高度)

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ここはすべて探査機が自律で動作するところ。45メートルはターゲットマーカを見つけるのによい高度。ここでホバリングして視野の中にターゲットマーカが入ってくるのを待つ。

②はターゲットマーカが視野に入ったまま高度を下げていく。「着陸姿勢へ傾ける」はターゲットマーカを視野の中心に入れたまま行う。

③で水平移動。ターゲットマーカを視野に入れたまま着陸点へ近づく。ターゲットマーカはここで視野の中心から外れる。

いくつかの方法で接地を検知するとプロジェクタイル(弾丸)を発射して上昇する。接地は数秒間。

タッチダウン直前の探査機の動き(動画)

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赤い線はLRF(レーザーレンジファインダー)のレーザー。白い点がターゲットマーカ、緑の円がE1領域。その中心を狙ってタッチダウンする。

タッチダウン運用のポイント

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「当初:」は小惑星の自転に探査機の動きを合わせるためにターゲットマーカを使用する計画

「実際:」はターゲットマーカを速度制御だけでなく位置制御にも使う

はやぶさ2のピンポイントタッチダウン機能

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高精度着陸実現のために実施した施策

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運用途中の判断ポイントと情報発信

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07:27の「アンテナ切り替え」ではHGA(高速通信アンテナ)からLGA(低速通信アンテナ)に切り替える。タッチダウンのために探査機の姿勢を変えるとHGAが地球を向かなくなるから。

タッチダウン運用計画の考え方

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3.プロジェクタイル発射実験

(吉川氏から)

サンプラホーン

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サンプラホーンと搬送のしくみ

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サンプルキャッチャの構造

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サンプラホーン先端の折り返し

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実験:「はやぶさ2」サンプラプロジェクタFM同等品点火作動試験

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実験結果

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4.タッチダウンのサイエンス意義

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5.今後の予定

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訂正

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MINERVA-II1着地点名称の訂正

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参考資料

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小天体探査戦略

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はやぶさ2」のサイエンス:太陽系の誕生と進化

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①惑星を作った物質を調べる

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有機物の解明

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②惑星への成長過程を調べる

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質疑応答

読売新聞とみやま:資料16ページ。「ゲート6」の時刻が18:27とあるが08:27ではない? ゲート6はホームポジションに復帰する時刻ではないが10時間かかる?

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津田:はい。タッチダウンして上昇に転じたあと、そのままではすぐ遠くへ行ってしまうので減速する。「ホームポジション復帰デルタV」は、ある時刻に高度20キロに到達するために減速するもの。どのくらい減速すればいいのかの解析や計算を行うのでこの時刻。
ゲート6のデルタVを確認できたらクリティカル運用の体制は解いて通常運用に切り替わるので、タッチダウン運用計画はここまでとなっている。

とみやま:L08-E1領域は資料7ページでは幅6メートルと書かれていて、これ以降「直径6メートル」と表現されている。タッチダウンを目指すのはこの領域内の直径6メートルの円内ということ?

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津田:はい。この領域のどこに下りてもよいというわけではなく、ここに内接する円を描くと直径6メートルとなる。

とみやま:今回のタッチダウン後、2回目のタッチダウンインパクター運用(クレーター生成)のスケジュールは

津田:7月中までにやりきらなければならない。リュウグウの軌道はこれからリュウグウは太陽に近づいてきて温度が上がり、はやぶさ2もあぶられるため。なにをどの順番で行うかは、今回のタッチダウンの結果を見て決める。

NHKすずき:タッチダウンを22日にした理由は。また精度について

津田:以前はタッチダウンは2月18日の週と申し上げていた。タッチダウンにはNASAESAのアンテナも使うため、調整のためにおおまかなスケジュールを出していた。着陸地点や運用方法が決まったら、着陸地点が太陽を向く時刻(=はやぶさ2太陽電池パネルが太陽を向くタイミング)を選ぶ。さらに着陸時は、海外局ではなく自由度が高い臼田局から運用したい。そうやって22日が最適と判断した。
着陸精度は3メートル必要。今のところ10パーセントのマージンを見て2.7メートルを確保。(E1領域の中心を目指せば)どんなに外れても2.7メートルまでしかずれないだろうということ。

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すずき:当初は100メートル四方を目指していたのが直径6メートルの範囲への着陸を目指すことになった。どのくらい困難なことに挑戦しようとしているのか、どのように乗り越えようとしているのか

津田:技術的には相当違うことをやっている。精度50メートルなら気にもしていなかった数字を詰めるという作業を数か月。たとえば探査機や各機器の重心を考慮するなど。これで精度を確保できたと評価している。神経を使う作業。メンバーやメーカーと総力を挙げて精度を上げてきた。今は着陸方式や数字も固まってきた。押さえるべき数字がわかったので冷静にやっていく。

すずき:今どのような気持ちで、どのように仕事をしていきたいか

津田:着陸地点が決まり、方法も確定した。間違うことなく全力を尽くしたい。できるだけ頭の温度を下げるように、クールにやるようにチーム全体の温度を下げている。

すずき:今回のタッチダウンがどのくらい難しいか、言葉で説明するとしたら?

津田:次までに考えておきたいと思います。

日本テレビいだ:着陸延期で「リュウグウが牙をむいた」とあったが今の気持ちは

津田:リュウグウの厳しい環境のことをそう表現した。リュウグウのことをより正確に知ることに注力してきた。牙の形状がわかってきた。それにはやぶさ2がどう対処すればいいかわかったという状況。攻略方法がわかったので間違うことなく運用を遂行する、そこに力を入れたいと思っている。

いだ:先ほどクールにと言っていたが熱い思いがあると思うが

津田:思いは熱いまま。頭は冷たい状態。

いだ:「絶対成功させたい」などあると思うが強い思いがあれば

津田:絶対成功させたいと思っているが気合いや意気込みだけではできない。リュウグウの素性をきちんと知るようにしてきた。きちんと計画を立ててきた。計画に沿ってきちんとすることをがんばりたい。

いだ:精度向上はかなり難しかったと思うが想定からどのくらい難しかったか、それでもこういうふうに立ち向かうなどあれば

津田:100メートル四方でどこでもいいから下りなさい、というのがはやぶさの設計思想。その状態から6メートルの範囲以外に下りてはいけませんとなるところは技術的なレベルが違う。陸上のトラックのどこでもよいという状態からこのレーンのここにしか下りてはいけないとなった。ここは見るべき数字の細かさ、粒度が変わってくる。探査機の大きさも影響するし、岩のあるなしだけでなく形状も注意する。これを丹念にしなければいけないという状況。やりきれたと安心できる部分。

共同通信すえ:資料15ページなど、今回のタッチダウンのために新しく出てきたアイデアを知りたい。

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津田:このページの図は2つとも新しいアイデア
小惑星の場所によって重力が異なることはよく知られているし科学的に解析されているが、これを運用に反映させようとするとやることがいろいろある。探査機にもともと備わっている機能に手を加える必要がある。探査機はもう打ち上がっている(今村註:今からセンサーなどを追加できない)からやれることは限られているが、重力が場所によって変わっていく状況を、ある意味探査機をどうだまして反映させるかをきちんとできたと思う。
右側の図、探査機は地表へまっすぐ下りるものという既成概念があった。地表がこんな状態でどうしてまっすぐ下りなければいけないんだっけと見直し、安全な姿勢は違うよねと考えて、議論の中から新しいアイデアが出てきた。
ほかにもたくさんあるが例としてはこんなところ。

すえ:打ち上げから到着までは順調だったが、リュウグウに到着して険しい困難な地形を見たときの気持ちは。かえってやる気が出たのか、頭を抱えてしまったのか

津田:複雑で両方ある。リュウグウという新しい天体を皆さんと一緒に人類で初めて目の当たりにしたとき、新しい世界がこのようにゴツゴツした世界だったことに好奇心を駆り立てられた。こんな世界だったのかという面白さを感じた。
一方で役割としてははやぶさ2を成功させなければならない。そこに思い至ってどうしたものか、なぜよりによって、たまたま行ったリュウグウがこのように厳しい小惑星なのか。引きの悪さを感じた。

星ナビなかの:着陸の時の画像撮影について。どんな撮影を行うのか

津田:降下中にONCは探査機をコントロールするため10分おきに画像を下ろしている。その画像はこれまでのように、全部は無理かもしれないがWebでほぼリアルタイムに公開できる。

低高度での画像は我々もリアルタイムで見られないが、ターゲットマーカの上空でホバリングしているところと下りていくところを撮影する。また寄付金で設置したカメラはサンプラーホーンを撮影する。これらはリアルタイムではないが取得できたらすぐにお見せしたい。

なかの:E1に下りる決定まで7か月かかった。このあとTD2やTD3の場所選定も同じくらいの労力がかかるのか

津田:おっしゃる通りで、着陸地点の選定は方法論から作ってきたのでこれだけ時間がかかった。別の地点に着陸する、クレーターを作るとなると再度解析すべきところがいくつもある。そこはTD1の一連の経験をふまえてスケジュールを引き直す。
ただし方法論はできているしTD1での知見も利用するので、ここまで時間はかからないだろう。

ニッポン放送はたなか:タッチダウンの成功率を定量的に表せるか、自信を持っているのか

津田:運用計画を組み立てる中でいろいろ確率を計算する。エンジニアリングなので100パーセントとはならないがある確率に入っていれば合格というのを積み重ね、いろいろ組み合わせてこの計画が成立した。
計画が完成した今となっては想定の範囲では成功すると考えている。安全の意味で妥協していないと話したが、ゆるめているところはない。
どちらかというとアボートの確率を高めていると話した。チェックポイントのどれか一つでも問題があればアボートする。ただ何パーセントというような定量的な確率は申し上げられない。

はたなか:アボートした場合、再チャレンジはいつになるか。

津田:アボートの種類によるが3月4日の週、前回バックアップ日と案内した日が最短。22日にアボートして翌日などということはない。バックアップのお尻はその週の土曜、3月9日。
これは軽微な問題だったらのことで、もっと根本的に考え直す必要があればさらに翌週に持ち越す可能性もある。

毎日新聞永山:最後のリハーサルからE1へ着陸する決断のキモになった判断はなにか。実現するのに手間取ったところは

津田:手間が一番かかったのは地図、地形をいかに正確に知るかということ。資料7ページの地形図は作るのがとても大変だった。

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ここにはいろいろな情報が埋め込まれている。何度も見直しをした。着陸に使う図なので、サイエンスの解析チームは自信がないところは(岩を)大きく出してくる。本当にこの大きさですかと聞くとだんだん小さくなっていったり。解析の用途も説明して、ここは見なくてよいなどマージンなど議論していく中で精度が上がっていった。
半透明の青い安全領域を出すには、岩の大きさだけでなく地形そのものの凹凸も再現する必要があった。さらにこれをリュウグウ全体の3次元モデルにうまくはめこまなければならない。スケールを変えたら地形がずれるというのではよくない。一貫したモデルになるよう何度も作り直した。自信が持てるものができた。
キモになったのはこの地図をベースに着陸精度の向上をさせているところ。誘導航法の制御をチューニングするために探査機の12のスラスターの個性を一つずつ調べるとか、プログラムもコーディングレベルの動きを細かくチェックした。軌道上で実際にデータを取ってみて運用を設計。数字を詰めることを細かくやっている。エンジニアリングチームのがんばりでこのような自信のある着陸計画ができた。

永山:運用の流れで、高度500メートルから45メートルまでの間になにかが起きたとき地上からアボートを送れるのか

津田:アボートの信号は送れるが間に合わない。地上からの信号がはやぶさ2に届くまで20分かかる。高度500メートル時点での探査機の状況をもとにGO/NOGOを判断する。そこでGO/NOGO判断の信号を送ってもそれがはやぶさ2に届くのは高度100メートルに来たころ。その直後にアボートを送っても間に合わないということ。
なので500メートル以下は事実上、探査機の自律でしか動くことができない。最後にはやぶさ2に送るのがGO/NOGO判断ということ。

ライター林:着陸計画の一番の懸念は

津田:資料11ページ。

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4つあるチェックポイントは探査機が自分で合否判定し、すべてGOにならないと進まない。リュウグウの地形や探査機の挙動など、こうのはずだという我々の事前知識をもとに設計している。ある程度余裕を持たせている。設計した身としては「本当にその通り動いてくれるのだろうか」と、探査機を信じているところもあるが心配もある。
これらのチェックポイントを通過できるか、当日は注視したい。4つのチェックポイントはどれが特に心配ということはない。

林:プロジェクタイルの発射実験の様子を見ると、タッチダウンポイントは60センチ以下の岩が敷き詰められているように見える。その岩をプロジェクタイルで砕いて採取するのか。タッチダウンポイントはどういう環境なのか

吉川:資料23ページ。60センチの岩と岩の間、平らなところはMINERVA-II1が撮影したように岩が敷き詰められている。そこでプロジェクタイルを発射する。

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林:60センチの岩の間に数センチの岩がある?

吉川:7ページでピンクの丸は60センチの岩。青い領域が23ページのような、数センチの岩がゴロゴロしている場所にタッチダウンする。
E1には60センチの岩はなく、小さい岩が敷き詰められている。

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林:サンプルを採取できたかどうかはいつわかるのか

吉川:サンプル採取のセンサーは積んでいないないので、サンプルが入ったかどうかはその場ではわからない。初号機ではサンプラーホーンが接地しただけで弾丸が出なかったが微粒子を採取できた。プロジェクタイルが発射されればなんらかのサンプルを採れるだろう。
弾丸が発射されたかどうかはタッチダウン時にわかる。

ライターあらふね:E1に下りると決めたのはいつか

津田:ターゲットマーカが落ちた場所に近くて平らな場所をと考えてE1になった。当初候補のB1領域にこだわらず、ターゲットマーカの近くで我々が情報を持っていて着地に最適な場所はどこかと考えてE1を選んだ。

あらふね:結果的にはいい場所が見つかった?

津田:E1はもうちょっと広かったらよかったが、ターゲットマーカが落ちた場所の近くに平らな場所を見つけられてよかった。

あらふね:西側のほうがボルダーが少ないとのことだがそちらを優先して下りるように重み付けなどしているのか

津田:場所の好みを教えることはできず、円の中心を指定してそこへ下りるようにしか指示できない。

あらふね:姿勢を事前にプログラムして下りると決めたのはほかの場所へ行ってしまうとリスクにもなると思うが、着地精度を上げる意識のあらわれか

津田:今回はピンポイントタッチダウンなのでターゲットマーカが見つかることが前提。見つからなかったらアボートする。見つかればこの地域に下りられると保証されているのでそれ以外の場所へ行ってしまうリスクは考える必要がない。この地形に下りることに特化した姿勢を取る。

あらふね:11ページの4つの関門にはどんなチェック項目があるか

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津田:①:LIDAR→LRFへセンサー間の引き継ぎ、②ターゲットマーカを捕捉できるか、③水平移動しつつLRFの凹凸検知。予想外のデコボコがないか判断、④ターゲットマーカに対してオフセットした位置で、ターゲットマーカをきちんと見すえつつ自分を小惑星表面に対して静止させる。十分静止して収束してから制御を外して降下。④では一番厳しく収束を見ている。

時事通信かんだ:資料11ページにある8.5メートルという高度は、ターゲットマーカを視野に入れつつ平行移動できる高度ということ?

津田:はい。高度を下げるほど精度がよくなるが、低すぎるとターゲットマーカが視野から外れてしまう。そのかねあいで8.5メートルと決まった。

かんだ:ターゲットマーカと着陸点の距離は算定してあるか

津田:7ページの図でわかるかと…5メートルくらいですかね。

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かんだ:着地時は機体をどのくらい傾けるのか

津田:具体的な数字は失念。10度から30度くらいと思う。リュウグウの山に沿った姿勢にする。かなり傾く。

かんだ:タッチダウンでプロジェクタイルが発射されてできたくぼみ? の写真は撮れるのか

津田:プロジェクタイルが当たった場所は撮影したいが、タイミングが合うかどうか難しい。試みようとはしている。

NHKつつい:7ページの図③での水平移動は何メートルくらいか。そこからななめに下りていく?

津田:3メートルくらいだったかと思う。ターゲットマーカの直上から3メートルほど移動し、さらに着地点まで水平にも移動しつつ、放物運動でななめに下りていく。③のあと「ターゲットマーカ相対オフセット点でのホバリング」とあるように、ここでしっかり止まって自分自身を落ち着けてから決められた速度で移動させると下りていく。

つつい:その難しさはどの程度か。ちょっと噴きすぎてしまうなどの心配は

津田:ここは非常に厳密に見ている。④の挙動で最後の精度が決まる。スラスティングの大きさ、12あるスラスタのどれをどのくらい噴くのかをチューニングしているし、姿勢のぶれをどのくらいまで許容するか、ターゲットマーカを狙った付近のどこまで近くではやぶさ2の視野に入れさせるかなども考慮して精度を確保している。

東京とびもの学会金木:はやぶさ2のファンに一言を

津田:はやぶさ2は打ち上げ前から注目していただき、寄付金でカメラを取り付けることもできた。事前の設計以上の魅力をはやぶさ2に与えていただいたと思っている。初めての天体の厳しさを技術的に克服しきったと思っているが、チャレンジが1回ですむかはやってみないとわからない。2度目も含めて最後にはタッチダウンを成功させたい。引き続き注目していただきたい。
またタッチダウンで終わらないのがこのミッション。クレーター生成運用、MINERVA-II2運用、地球帰還まで見守っていただきたい。

産経新聞くさか:当日の成否判明など、どの程度のことがいつどこまでわかるのか知りたい

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津田:ゲート1~6でどういう判断をしたのかなどの情報はTwitterやプレスセンターを通じてリアルタイムで提供したい。タッチダウンの成否がわかるのは地上時間8時22分(ゲート5)以降、探査機からのデータが全部揃ったときにまず探査機の健全性をチェックする。続いて過去になにをしたのかのデータを取得。これは30分もあれば可能。なので8時22分に電波が受かったとして、うまくいったかは30分くらいでわかると思う。それをできるだけ皆さんにお伝えしたい。
電波がきちんと来て、探査機が健全で、シーケンスをきちんと遂行できたという時点では、それ以上わかることはない(サンプルの採取ができたかはわからない)が管制室は喜ぶと思う。
いろいろなデータをプレイバックしてタッチダウンの時何が起きたのかを詳細に解析するには数日かかる。解析の結果サンプルがどのくらい採れたかの推定は後日改めて。実際サンプルがどのくらい入っているかはカプセルを開けてみるまでのお楽しみ。

くさか:2.7メートルの精度についてわかりやすいたとえはあるか。四畳半くらいとか

津田:陸上のトラックくらいの広さのどこかにタッチダウンする目標が四畳半くらいの狭さになったといえるかも。

ライター喜多:質問ではなくお願い。着陸地点のボードを持っていただいて実況を、5歳の女の子にもわかるようにお願いします。

津田:リュウグウは自転している。そこへはやぶさ2が近づいていき、高度45メートルに来たときターゲットマーカの真上に来るようにする。そこでホバリングを始める。リュウグウの自転に合わせてターゲットマーカの上にいる状態をキープ。ターゲットマーカを見ながら高度8.5メートルへ。E1領域の地形に合わせて姿勢制御、このときもターゲットマーカは視野に入れたまま。そこからE1領域へ数メートル移動して収束を待つと準備OKになる。ここからスラスターを噴いて自由落下し地表にタッチダウンタッチダウンしたら垂直に上昇していく。

日経新聞かとう:着陸地点を決める上で最後はどのような手続きで決めたのか。津田さんが決めたのか、全員の意見で決まったのか。

津田:候補地点の中でも一点を決める自由度があったが、解析を進めていくとある時点からもうE1がB1より明らかに有利だとわかってきた。着陸精度の条件を満たすのがE1だけであると。そこまでは両にらみで、どちらでも成立するよう手順を2つ用意する方向で考えていたが、これはもうE1しかないとわかった時点で関係者が集まる会議で「今日ここで決断する」とし、皆さんの意見を聞きつつメンバーで決めた。最後にここにしましょうと決めたのは私だが、その段階ではほぼ自明で決まっていた。対案や対立はなく、解析の結果すんなり1つに導けた。

かとう:ほぼ皆さん納得されていた?

津田:ほぼというより全員ですね。

ライター秋山:プロジェクタイルの発射実験について。初号機はプロジェクタイル発射の成否が不明だったが、この実験はその結果をふまえたものか。また保管されていたFM同等品は宇宙を模擬した環境で保管されていたのか

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吉川:実験をした理由は4年間たっていて動作状況を確認したかったため。初号機の結果というより動作確認をしたかった。またリュウグウの表面状況がわかったので、その環境でサンプル採取できるか念のため確認した。
保管は宇宙環境ではなくごく普通に。

(以上)