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「はやぶさ2」タッチダウン後の記者説明会(速報)

日時

  • 2019年2月22日(金)09:20~

登壇者

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(image credit:NVS

(左から吉川氏、久保田氏)

中継録画

説明と質疑応答


久保田:午前8時42分、はやぶさ2が正常であること、タッチダウンシーケンスがすべて正常に動作したことを確認。小惑星リュウグウへのタッチダウンに成功と発表した。弾丸発射コマンドが発行されたことも確認済み。

吉川:速報でタッチダウン前後の状況を説明する。
秒速10センチメートルで降下、ホバリングに移行したのが7時26分(地上時刻、小惑星上ではこの19分前。以下同)。計画値で高度45メートルに到達した。
一連の動作を順調にすませ、高度8.5メートルへ降下したのが7時46分。タッチダウンし上昇を始めたのが7時48分。上昇スピードは姿勢方向のスピードで詳細は調査中だが毎秒45センチメートル。
テレメトリを確認(ハイゲインアンテナへの切り替え)は8時9分。

時事通信かんだ:時刻を確認したい。機上時刻は

吉川:電波の遅延時間は19分なので19分を引いて。

かんだ:当初計画の6メートルの範囲内に下りた?

久保田:画像を下ろしたりして詳細に確認する。LRFで地形を見て照合をかけているのでほぼ計画通りとみている。

かんだ:「目標地点に下りたとみられる」?

久保田:はい。

日本テレビいだ:お二人にいまの感想を

吉川:タッチダウンが終わって上昇するまでが長かった。非常に順調でシーケンスが早く進んだ。テレメトリを確認できてよかった。

久保田:スタートは5時間遅れたがリカバリできて自律へ移行、ドップラーモニタで速度しかわからない。チームはそれを見て予定通りに行動しているか確認していた。姿勢制御も早く収束しノミナルより早く進んだ。
完璧なミッション、完璧な運用。見事な運用ができた。初号機はいろいろトラブルがあったが今回は完璧、なにもいうことはない。

いだ:長男というか初号機はトラブルがあったが次男はどんな言葉をかけたいか

吉川:メンバーは親しみを込めて「はや2くん」と呼んでいる。はや2は3.4億キロかなたの遠い宇宙でひとりぼっちだが完璧なミッションをこなしてくれてありがとうといいたい。

いだ:8時9分のテレメトリが返ってきた時点はどう表現できるか

久保田:HGAからデータが来て機器が正常であると確認した。続いてタッチダウンシーケンスが順調にいったか確認。
ドップラーモニタで動きを見ていて完璧だったのでその時点で拍手が出た。
実際にタッチダウンができたかは
次の拍手は、8時10分に津田プロマネが無事を確認してシーケンスが通った、計画通りに進んだことを確認したため。

共同通信すえ:予定より40分ほど早い進行だったがバッファがあった

久保田:時刻指定で動くものではなく、探査機が自律で動作するため時刻は読めない。ノミナルでの時刻をお伝えしていた。その前後30分の見込みというのはそういうこと。
ドップラーデータを見ていると探査機の動きがわかる。最速で進んだ。これはすごいこと。

すえ:完全なシーケンスということで試料を採れていると期待していいか

久保田:玉手箱なので地球へ持ち帰るまでわからないが、コマンドが出たこと、タッチしたのは事実なのでなんらかのサンプルが採れているだろう。

読売新聞とみやま:7時46分は確認、タッチダウン時刻はその19分前?

吉川:地上でドップラーデータ(速度のデータ)を見ていて降下方向から上昇方向へ変わったのが地上で7時48分。タッチダウンしたのはその19分前の7時29分。

とみやま:降下から上昇へ切り替わった小惑星の時刻は7時29分?

吉川:その通りです。

NHKすずき:はやぶさ2の今後のミッションに今回をどう生かしたいか。またサイエンスの意義は

久保田:最初のタッチダウンなので慎重にしたが訓練のおかげで完璧。6メートルという狭い領域にピンポイントに着地できたのは世界初。
インパクタを表面に下ろして人工クレーターを作るミッションがある。今回の経験は非常に生かされるだろう。作ったクレーターに下りられるかわからないが今回の経験は大きな自信になる。
SLIM(月着陸実験ミッション)やMMX(火星衛星サンプルリターン探査)にも活かせるだろう。
狙ったところへのサンプル採取の幕開け、実証できたのは大きな自信だし次に活かしたい。

吉川:サイエンス的には、カプセルを開けるまでなんともいえない。しかしとりあえずタッチダウンは成功しおそらく弾丸も出ただろう。初号機よりはるかに多い量のサンプルを採れるだろう。初号機は全部合わせてもマイクログラム単位だった。
非常に大きなことがわかると期待している。
サンプル分析の人はタッチダウン時直接は関係ないが管制室に来ていた。海外からも来ている。

NVSさいとう:カプセルは3つの部屋に分かれているが、ふた閉め運用はいつになるか

吉川:ふた閉めの時刻は決めていないが、ホームポジションに戻ったら行うはず。弾丸を撃ったかどうかにかかわらず着地し上昇したことは確実なので、まず1つめのふたを閉める予定。

さいとう:弾丸を撃っていなくても地上を引っかけているかもしれないから閉める?

吉川:それもあるし、初号機は2回タッチダウンしてごく微量のサンプルを採れた。今回新しいツメが働いて、弾丸が出ていなくても微粒子が載るだろう。上昇後スピードを下ろせばカプセルに入るだろう。

ライター林:半径3メートルに精密なタッチダウンできた一番の要因は

久保田:最初はマージン込みで100メートル四方だった。もともとインパクタではピンポイントタッチダウンなので試してみようというのがあった。
平らなところがないとわかってきて挑戦が始まった。リハーサルをくり返して運用者が熟練したこと、そのたびに写真を撮影して詳細な地形がわかったこと、はやぶさ2の挙動がわかってきたこと。
相手を知り、己を知った。運用者も熟練したことで6メートルの範囲に着地できた。
安全なところを見つけられてそこへ行けた。運用者の熟達で達成できた。

林:今回は厳しめで、なにかあったがすぐアボートと話していた。次のタッチダウンはアボートの基準は変わるか。もっと狭い領域を狙うのか

久保田:相手を知るということで、違う場所へ行けば知るべきことも変わるし条件も変わる。燃料も少し使った。安全なサンプリングのためにどうすればいいかを考えて挑戦。チームは今回うまくいっても次は楽とは考えていない。次も知恵を絞って挑戦する。楽観視はしていない。慎重に、しかししっかりとやりたい。
きちんとできたことは大きな自信につながる。次のチャレンジをしていきたい。

林:着陸地としてリュウグウはどこも変わらないと思うがどうか

吉川:リモセンでサイエンスデータを調べるとリュウグウはどこも似たようなサンプルになりそうだが、違う場所で採るのはサイエンス的にはとても重要。
探査機の現在の状況や能力的など総合的に見て次の運用計画を立てる。

ニッポン放送はたなか:当初予定よりタッチダウンができたとのことだが、平行移動が短くすんだ? 目標値点に近かった? 物理的な要因は

久保田:詳細な分析はこれからいろいろなデータを地上に降ろしてからだが、ドップラーで速度変化を見ているとターゲットマーカの正面に行けたのでトラッキングが早くすみ、姿勢変更も早くすんだ。最低このくらいと考えていた時間そのままで進行した。
マージンを使わずドンピシャリでいけた。

はたなか:理想的な視野内にターゲットマーカがあった?

久保田:そうですね、高度を下げてTMを見たとき相対速度が小さかったのではないか。ピンポイントの接近がかなりうまくいったのかも。

NHK:ここ数日の作業を具体的に知りたい。また写真などのリリースはいつになるか

吉川:今はタッチダウン中のデータを解析中。まずホームポジションへ戻るための運用。それをしつつ、写真やサイエンスデータをデータレコーダから再生し地上へ伝送。画像がいつ来るかはまだわからない。なるべく早くしたい。ミッションが順調だったので写真も早めに下ろせるだろう。

NHK:この半年取材してきて、「慎重に」という言葉をみなさん使っていた。しかし実際は5時間の遅れでプログラムの書き換えもあった。これまでの慎重という言葉とギャップを感じている。なにが違ったのか、どういう感覚だったか

久保田:わたしはわりと楽観的なので「大胆かつ細心に」。果敢に挑戦するが難しい天体なので注意しつつ。1回目は様子見でもいいがとにかくトライしよう。相手をよく知らなければならないかもしれないので慎重にと言っていた。
探査機とつき合ってきたので信頼もあった。自分の持ち場を担当するという意味では慎重だが大胆にも。
わたしは「挑戦しましょう、なにかあったら戻る慎重さも含めて」。いろいろなロジックがうまくいったのはすごいの一言。

吉川:わたしのほうはわりと慎重に。しかし臆病というのとは違う。タッチダウンに際して想定をいろいろ考えた上で、考えられる限りのことをリハーサルで経験してきた。それがうまくいった。

NHKタッチダウンを3月に延期する検討はあったか

久保田:準備プログラムに修正が必要とわかったとき、タイムリミットはあったのでちらちらと考えてはいた。しかしチームはやる気だった。
最後に間に合わなければ仕方ないがやろうとしていた。
用意周到に準備をしていけばうまくいくという実例になったのではないか。

NHK:遅れも用意周到の範疇だった?

久保田:あまりないほうがよいが、それも入っていた。

産経新聞くさか:着地点は実際どうだったのか、コマンドが出たとのことだが「どうやら入っていそうだ」くらい? 今の認識は、どのくらいの見積もりか

久保田:弾丸を撃ったかどうかは調査中。今日中にわかるようにしたい。コマンドが動いたのは確実。ハードウェア的に動作したかは周辺温度の上昇をテレメトリから調べている。今日中にお知らせしたい。サイエンス的にも採取量にかかわるため最優先で。
シーケンスが思ったより早く進んだ、LRFはモニタとしてだけ使っていたがアボートせずに行ったということは、6メートル内に入っていることはかなり確実。
サンプルを採れているかのセンサは積んでいないが、初号機で小惑星にタッチしただけで採取できていたのでゼロとは思っていない。開けてみなければわからない。硬い岩石ではなさそうなので採れているだろうが量はわからないがまず確実。
わかり次第情報を発信したい。

くさか:あらかじめ持っている地形データとの照合がうまくいった?

久保田:詳細には見ていないが「思ったより早くタッチダウンしちゃったな」というのは皆さん感じたと思うがこちらも同じ。

くさか:地形データとの照合については

久保田:ドップラーデータを見るとそのようだが詳細はこれから。

くさか:8時9分や10分はシーケンスが通ったというデータが届いたということ? 拍手が出たのはシーケンスが通ったとすぐにわかったから?

久保田:ドップラーデータで予定時刻に浮上してきたのはシーケンスがうまくいったからだろうと考えた。しかし探査機が正常かはテレメトリを見ないとわからない。テレメトリが来たら各担当者が自分の担当部位をいっせいに見る。そこでわかって拍手。
次にプロマネが成功宣言をしてもう一度拍手が出た。

月刊星ナビなかの:探査機が表面にタッチしたと判断した根拠を知りたい。

久保田:テレメトリを確認して0メートルに来たか、サンプラーホーンのたわみが出たかは確認中。
秒速60センチで上昇。アボートの場合はもっと早い。予定時刻に上昇を始めた
視線方向で55センチということはアボートではなくシーケンスが働いて上昇したのだろう。
8時9分以降にシーケンスが動いたかチェック。その中にはサンプラーホーンが変形しないと進まないものもある。
これらのことから間違いなく小惑星表面にタッチしたと判断。
そのほかLRFやLIDARなどの高度も。探査機自身のデータからわかる。テレメトリからタッチダウンしたと確信。

赤旗新聞なかむら:タッチダウン時に管制室には何人くらいいたのか

久保田:聞かれると思って数えてきた。最初は40人くらい。メインイベントなので60人~70人くらいが見守っていた。スクリーンのドップラーモニタをみんなで見ていた。
管制室の外にもたくさんの関係者がいた。全部は70~80人くらいかも。
今朝5時のブリーフィングでは機器担当がチェックする。その時点で40人。

なかむら:人工クレーターの生成について。どのくらいの直径のものができると見積もっているか

吉川:正確な見積もりは難しい。サイエンスチームが検討しているが当初の2~3メートルから大きく変わることはないだろう。

なかむら:表面状況が予想と違うとわかってきたが、それでも?

吉川:一つの大きな岩ではなく小さい岩の集合なので、そう大きくは変わらないだろう。

なかむら:直上に来られたとのことだが、TMなしの降下精度がよいということ? TMの投下精度がよい?
次回はTMを下ろす範囲の目標を狭くできる?

吉川:今回の降下が一番精度よくできたという感触がある。それですんなり到達できたのかも。次のタッチダウンに重要なことなので詳細に確認したい。

読売新聞とみやま:初号機での経験がどのように活きたか

吉川:とてもたくさんある。自分の専門の軌道では、どこを飛行して目標へどう行くかを正確に把握する。非常に大きな進展があった。DDORという新しい手法で軌道決定精度が2桁上がった。地味だが大きな進展。
初号機はさまざまなトラブル、リアクションホイールの故障、燃料漏れなどいろいろあった。改良したものを搭載しているのでそこも大きい。
初号機は4つの観測機器を積んでいた。今回はその知見をふまえてよりすぐれたデータを取得できた。それも初号機の経験があってこそ。

久保田:初号機の方法を継承しつつ、できなかったこと、うまくいかなかったところを改良したのが大きい。技術と経験の敬称ができたと思う。初号機の川口淳一郎プロマネも来ていた。今回の津田プロマネも初号機に関わっていた。継承がうまくいった。
工学も科学も一緒になって、大学や企業も一緒になって。難しいことをするにはみんなで知恵を絞らなければならない。それで新しいことができた。

とみやま:検討期間が4か月あったのは大きい?

久保田:初号機は9月に到着して12月には帰還しなければならなかった。それは大きな反省だった。到着してからの時間を大きく取ることは重要でそれも経験だった。
相手を知って自分を知る十分な時間を取れた。

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(image credit:NVS

(以上)