小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(2018/10/23)

小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。
今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、10月14日~15日に実施したタッチダウンリハーサルと、10月24日~25日に実施予定のタッチダウンリハーサルについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/10/23) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年10月23日(火)16:00~17:00

登壇者

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(image credit:JAXA

※左から久保田氏、吉川氏

中継録画

リンク

本日の内容

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.TD1-R1-A運用報告

TD1-R1-Aの目的
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TD1-R1-Aの運用実績
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LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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時刻はUTC
航法誘導の精度の実績
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ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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太陽電池パドルの隙間やスタートラッカー(本体の右側にちょこんと出ている2つのツノ)もはっきり見えている。
ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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写真の右側に大きなボルダーがある。たぶん高さは7~8メートル。こういうものを避けて接近する必要がある。丸で囲んだL-08-Bには大きなボルダーがないことを確認。

3.TD1-R3運用計画

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TD1-R3のスケジュール
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TD1-R3 低高度シーケンス
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ターゲットマーカ
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最初に分離するターゲットマーカはBと決まっている。

4.DPSでのプレスカンファレンス

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5.今後の予定

(久保田氏から)

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12月6日には記者からの質問を受け付ける懇談会を予定。合運用(はやぶさ2が太陽に隠れて地球から見えない期間)に入っているのでメンバーも多めに出席できると思う。

質疑応答

読売新聞とみやま:ターゲットマーカを切り離す高度は

吉川:ほとんど20メートルでホバリング。そこから2~3メートル下で切り離す。

TD1-R3 低高度シーケンス
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久保田:探査機が少し速度を上げて下りていき、ターゲットマーカを切り離す。そこではやぶさ2が降下を止めるとターゲットマーカだけが地表へ下りていく。初代のはやぶさと同じ方式。

とみやま:今回は下りる目標高度は20メートル?

久保田:20メートルを目指していく。切り離しのとき少し下りるので、図は少し下げている。18メートルなのか17メートルなのかはそのときの状況による。20メートルより少し低いところへ行く。

とみやま:「条件が満たされれば、ターゲットマーカを切り離す」とあるが、必要な条件は

3.TD1-R3運用計画
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吉川:LRFによる制御ができるかどうか。前回は高度を測っただけ。今回はLRFの計測データを使って探査機を制御する。それがうまくいけばターゲットマーカを切り離す。

とみやま:TD1-R1-Aでの誘導精度の実績値が「小惑星地表に対して10.8メートル」とある。ここを詳しく

航法誘導の精度の実績
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吉川:最下点(22.3メートル)でどのくらいのずれができたかということ。

とみやま:TD1-R1-AではL-08Bへ行きたかった?

吉川:この近辺へ行ってみるということ。LRFの計測状況を確認。L-08Bも含めて周囲の状況を観測。

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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とみやま:誤差の数字の意味について。目標のポイントに対して実際に下りた場所は10.8メートルずれていた?

吉川:その通り。

ライターあらふね:LRFを誘導制御に使うと精度は上がるのか

吉川:今までLIDARのデータでナビゲーションしていたが、低高度のナビゲーションにLRFを使うということ。

あらふね:ナビゲーション精度があまり変わらないとしたらなぜLRFを使うのか

久保田:制御をかけると精度が上がると思うのではないか。9ページの「LIDARからLRFへの引き継ぎの実績」を参照。

LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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久保田:LIDARで高度50メートルまで来たとき精度は10メートルとお話していた。そこから下は速度誤差があると高度を下げたとき時間が経つにつれてずれていくなと思っていた。相対速度の誤差が小さいと伝搬(?)も小さくなるだろうということで、今回は10.8メートルということで位置だけでなく相対速度も比較的小さくできた。(今村註:ちょっとよくわからない)
LRFは4本のビームを地表に当てて高度を測る。表面地形の影響を受けるということ。制御をかけると精度は上がるだろうが地形の影響がどれだけ出てくるか。でこぼこしているときの影響の大きさを今回のリハーサルで確かめたい。
また小惑星は自転しているので地表は動いていく。10メートルの精度は、探査機の1.5倍くらいの精度で誘導できているということ。

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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であれば赤丸のL-08Bには時間をかければ誘導できるだろう。写真ではL08-Bは離れて見えるかもしれないが、かなりうまくいっている。
地形の影響を受けつつ制御できるかを次のリハーサルで確認する。ターゲットマーカを追跡できるとわかれば、タッチダウンの準備が整ったということになる。

あらふね:L-08Bは20メートルの円と前回聞いた。そこに誘導できそう?

久保田:なんとか入るところに行ったかなと思っている。L-08Bにある岩は1メートル以下なのでやはり候補の一つとして準備している。

あらふね:ピンポイントタッチダウンについてはどうか

久保田:ピンポイントタッチダウンの方式を使わなくても、通常の方法でかなり追い込めていると思っている。

時事通信かんだ:TD1-R3の低高度シーケンスに「小惑星自転速度に同期するために横方向スラスタ噴射」とある。これは前回のリハーサルでも行った?

TD1-R3 低高度シーケンス
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吉川:TD1-R3で初めて行う。

かんだ:12ページの写真での位置のずれは自転速度を考慮するともっと近づける?

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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吉川:この写真は高度47メートルで撮影したもので最下点ではない。L-08Bにかなり近づいていると認識している。今回もL-08Bを狙って下りていく。

久保田:この写真は横方向の速度をキャンセルしていないときのもの。
TD1-R3では横方向の移動速度をキャンセルするので、高度ゼロになったときに赤丸の範囲に入る。また横方向の相対速度がゼロになってターゲットマーカを分離するとき赤丸の上空に行くよう決めていて、その位置誤差が10.8メートル。TD1-R3では探査機の影が赤丸の中に入っていることを祈りたい。

かんだ:L-08B周辺の地形を見ていて、着陸の安全性を現在どのくらいと見立てているか

久保田:資料9ページ。LRFの黄色い線は4本のレーザーの情報をもとに平均斜面の高度をプロットしている。緑色の線と黄色い線が少しずれているのは、測っているところが違うことからくる誤差の範囲。このくらいの誤差であればいけそうと思っている。

LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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久保田:地形の影響は受けているが、そこをなるべく減らして平均高度を出すことを考えている。どの程度うまくいくかはこのデータとTD1-R3の結果から判断したい。突発的な影響は受けないようにしたい。

朝日新聞いしくら:ターゲットマーカはL-08Bの中心に落とせるもの? はねたりはするのか

吉川:そこが一番気になっているところ。中心に下ろせればよいが高度20メートルで誤差10メートル。どこまでできるかというところ。

久保田:MASCOTなどは着地してバウンドしたが、ターゲットマーカはなるべく早く整地してほしい。反発係数が0.1以下。地形にもよるがバウンドは数回ではないか。誤差10メートルだと端の方に落として少しバウンドしたらL-08Bの範囲を少し外れる可能性もないではないが、バウンドそのものはあまりない。

いしくら:直径20メートルの範囲の中心に落とす?

久保田:上空に到達したとき誤差10メートルだと円の端に行くかも。相対速度をどこまで小さくできるかも検証していきたい。

いしくら:ピンポイントタッチダウンでは目標地点に対してどのくらいのずれにおさめれるのか

久保田:ターゲットマーカを直接狙うのか、一度上昇してターゲットマーカの位置からオフセットして着陸するのかにもよる。ターゲットマーカが視野に入る距離であればターゲットマーカから離れて着陸できる。場合によってはターゲットマーカと目標点の間にもう一つターゲットマーカを落として目標点を狙うことも。
そういったことを確認するのが次のリハーサル。

いしくら:視野の広さはどのくらいか

久保田:L-08Bの直径20メートルの範囲にターゲットマーカが入っていればL-08Bに着陸できる。外れていたらオフセットをかける。

ライター喜多:12ページの画像に対して、はやぶさ2がどんなふうに着陸するのか見てみたい。

※下のツイートは記者説明会後のもの

ニッポン放送はたなか:誘導精度10.8メートルというのは、半径10.8メートルの円の中が平らであれば安全に下りられるということ?

吉川:上空20メートルでのことなので、そこから下りる間に誤差が出るとマズイがその通り。

はたなか:10.8メートルという数字は想定通り?

吉川:最初に想定していたのは半径50メートルの範囲に下りるということだったので、はるかにいい精度で運用ができている。

はたなか:わりと楽観している?

吉川:しかし地表が予想外にでこぼこしているので、いまの10メートルの精度ではまだ危ない。ターゲットマーカを使うなどしてうまく半径10メートルの地点に入るように誘導したい。

はたなか:精度がよくなった工夫は

吉川:工夫というよりは、スラスターの吹き方やリュウグウの重力がわかってきて、どのくらい制御するとどのくらい動くかがわかってきた。

久保田:はやぶさ初号機のときは誘導精度10メートルだった。リュウグウは大きいので重力が大きく、自転速度も速い。誘導精度としては10メートルよりは50メートルと考えるのが妥当だった。しかし着いてみると、そういうところ(着陸に向く平坦な地形)がないとわかったので、リハーサルで画像を見ながら修正をかけるのをうまくやって、高度が高いところへの誘導はできるようになった。
それをうまく伝搬して小さくいくということで、スラスターの性能やLIDARの性能、LRFのデータを見て精度を追い込めた。
厳しい天体なので訓練やシミュレーションを行いリュウグウに合わせた戦略を練ってきた。

朝日新聞はまだ:誘導精度10メートルの意味は、地上のある地点から半径10.8メートルの範囲に下りられるということ?

吉川:上空20メートルの地点での精度ですがそんな感じ。

久保田:最終的にはL-08Bの赤丸の中央にタッチダウンしたい。そのために高度20メートルならこの位置にいたい、という目標と実際の到達地点が10.8メートル離れていたということ。

はまだ:リハーサルでは自律で下りていく?

久保田:本番とほぼ同じシーケンス。高度500メートルくらいまでは地上から支援していたがそこからは探査機自身が自分で判断する、完全自動の自律モード。オンボードなのはリハーサルも共通。

はまだ:LRFについて。4本のレーザーで測距するしくみについてもう少し詳しく知りたい

久保田:目標地点に行くためには、高度と横方向の位置の情報が必要。高いところにいるときはLIDARという高度計と、画像を地球に下ろしてそれを見て判断している。LIDARが検出できるのは30メートルくらいまでで、そこから下はLRFを使う。
LRFは本来1ビームでよいが4ビーム使うのは、高度とともに地上の傾きを知るため。それには最低3ビーム必要で、冗長系として4ビーム使っている。高度を測っているというよりは、平面を仮定して距離を測っている。
横方向ははやぶさ2自身がターゲットマーカをカメラで見て判断する。左右位置はカメラで、高度はLIDARとLRFで見る。地面の傾き(斜度)は4ビームあるLRFで見る。
小惑星の表面を平面と仮定すると、そこにはやぶさ2がある程度以上傾いて下りていくとサンプラーホーンより先に太陽電池パネルが地面にぶつかってしまう。そうならないよう、地上の傾きを見て地上に正対して下りていくようにする。

はまだ:DPSで発表されるのはどんなことか

4.DPSでのプレスカンファレンス
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吉川:リモートセンシングの解析結果。

はまだ:有機物や水などの新情報もある?

吉川:サイエンスチームから詳しいことはまだ聞いていないが、学会発表ではぎりぎりまで解析をしているので最新のデータが発表されるだろう。

毎日新聞いけだ:2回のタッチダウンのスケジュール見通しは

吉川:3回目のリハーサルの結果を見てから検討するので確定的なことはいえない。
結果がよければさっそくタッチダウン、精度が足りないとなればもう一度リハーサルをするかもしれない。今回のリハーサル次第。

いけだ:タッチダウンの回数が減ることはあるのか

吉川:最大3回としてきた。まずは1回目をきちんとやりたい。

久保田:リュウグウの温度環境が予想より低く、タッチダウンできる期間が1~2か月長くなった。余裕が出てきた。

いけだ:MINERVA-II1の現状は

久保田:一度どこかでまとめた記者説明会を開きたい。1Aは今も元気に飛び跳ねている。小惑星上の100日(7.5時間×100日)を迎えようとしている。1Bは途中で電力不足になりデータが来ていない。太陽の当たり方が変われば通信が取れるかも。1Bはテレメトリは受け取っていない。データを見ると電力不足がわかった。
1Aは太陽電池の面積が広く元気。運用時間が延びてきて受け取ったデータを整理しきれていない。一度報告をしたい。画像は100枚以上ある。
画像はまずはやぶさチームに、小惑星上の様子の知見ということで提供している。タッチダウン場所ではないが参考になるだろう。

××新聞くわは:ターゲットマーカをBから落とす理由は

吉川:落とす順番は決まっている。底面はいろいろな機器があって混雑している。Bを落とさないとインパクタを切り離せないためまずBを落とす。

くわは:B以降はどういう順序か

吉川:B→A→E→C→Dだったかもしれない。正確なところはのちほど。

くわは:この会議室の入口にクレーター生成運用は3月~4月とあった。根拠は?

吉川:プロジェクトチームとしてスケジュールを決めてはいない。インパクターを使うのは来年の春。そのあと3回目の着陸を予定していた。1回目のタッチダウンが延期になっているので具体的にはなんともいえない。

フリーランス大塚:LRFがきちんと機能してターゲットマーカも見えた場合精度は上がるか

吉川:ターゲットマーカを追跡できれば精度はもっと上がる。

大塚:着陸直前に地形に合わせて姿勢を変える制御はTD1-R3では行わない?

吉川:今回は姿勢を表面に平行にする運用は行わない。着陸時まで行わない予定。

日刊工業新聞とみい:ターゲットマーカは硬いのか

吉川:よくお手玉のようなものと説明しているがふにゃふにゃはしておらず、殻の中にポリイミドの粒がたくさん入っている。殻の周りは光をよく反射する素材でおおわれている。

とみい:ターゲットマーカの上に下りてしまうことはないのか

吉川:ターゲットマーカを基準に制御はする。ちゃんとできれば問題はない。

NHKはるの:仮にターゲットマーカがL-08Bから大きく外れて落ちた場合リハーサルをもう一度するのか

吉川:もう一度リハーサルをするか、タッチダウンを決行するかは検討の余地がある。ナビゲーションの精度が低いときはターゲットマーカを落としてピンポイントタッチダウンを行うかも。少なくとも年内はリハーサルを追加しない。

はるの:当初より精度よく下りられるとわかったことについてチームの受け止めは

吉川:確かに精度は当初の想定よりよいが、リュウグウの表面に平らな場所が少ないため楽観はしていない。
実際にターゲットマーカを使ってL-08Bに下りられるかを非常に気にしていて、検討を深めていかなければならないという雰囲気。

(聞き取れず):ターゲットマーカを狙い通りに落とせた場合、タッチダウン時に追加でターゲットマーカを落とさないこともある?

吉川:タッチダウンするのにちょうどよい場所に落ちたなら、追加で落とす必要はないと判断する可能性もある。

(…):その判断は早いうちに行われるのか

吉川:合の期間でじっくり検討したい。

(以上)