ロケットまつり58:宇宙機の熱設計とおおすみ、はやぶさ

ということで、ロケットまつりは無事終わりました。大西晃さんの熱設計の話は独特のぼやき節と相まってなかなか楽しめたのではないでしょうか。

熱設計は宇宙機が太陽光などで温められたり陰になる部分が冷えたりするのをうまくコントロールして、搭載機器それぞれの「こんな範囲の温度でおさまるように」という要求を満たすようにする仕事です。と言葉で聞くとうん知ってる、と思うかもしれませんがそれを実現するためには宇宙機を全体にわたって深く理解していなければならない、というのは新鮮な驚きでした。

そして「わたしはここを担当しました」というわかりやすさがないためにあまり脚光を浴びないという点でも独特の立場なのだとわかったのが収穫でした。

おおすみ」と「はやぶさ」の熱設計

大西さんは日本初の人工衛星おおすみ」から熱設計を担当しています。「おおすみ」から最新の科学衛星「ひので」までの熱設計をふり返ってもらった中で、「おおすみ」と「はやぶさ」の熱設計はこんな話でした。

おおすみは熱設計がされておらず、だから想定よりずっと短い15時間くらいで死んでしまったのだという言われ方をしますがそうではなく、大西さんはちゃんと仕事をしていたとのこと。ただし「おおすみ」の後ろ側、黒い球体の第4段ロケットの熱がどのくらいかについて正確な情報を得られなかったそうです。担当の先生に「第4段モーターは燃焼後何度くらいになりますか」と聞いたら「手でさわれるくらいだヨ」と言われた、しかしそれは熱が逃げやすい大気中の試験での話であって、実際はもっと熱くなってしまったのだそうで、間違った値をもとに熱設計したために早くダメになってしまったとのこと。「だからその後はもう人の言うことを信用しないことにしました」と大西さんは言っていて、その言い方が冗談めかしつつでも本気という感じで面白かったりして。

そして「はやぶさ」も実際とは違う数値をもとに熱設計されたそうです。

はやぶさが目指す小惑星イトカワ」がどのくらい熱を持っているかは行ってみないとわかりません。地球からの観測で推定された値をもとにはやぶさを熱設計したら、実際の熱量はもっと小さいことが行ってみてわかったとのこと。つまりはやぶさは熱設計についてはオーバースペックで、イトカワへの一瞬のタッチダウン程度では十分冷え冷えな作りになっていたのでした。

本番のイトカワ探査では、はやぶさは最初のタッチダウンイトカワの表面に30分ほどとどまってしまいました。この予定外の長時間着陸でイトカワの熱にあぶられてもはやぶさが壊れなかったのは、十分すぎる熱設計が幸いしたという話でした。

こんなふうに、知っているものを熱設計の視点から見るとまた広がりをもって理解できていい感じなのでした。

「なぜそうなっているか」をきちんと言える立場

以前からよく考えているのが「身の回りのものがそうなっているのは誰かがそうしたから」ということです。お店で売られているものはもちろん、自作したものは作った人がそう作ったからそうなっています。鉄道のダイヤや法律のような形を持たないものも、誰かがそうすると決めたからそうなっています。

そしてこれらの裏側には「なぜそうしたか」が必ずあります。プロの仕事とは「なぜそうしたか」をきちんと説明できることだといえます。

宇宙機の設計はまさにプロの仕事であり、その中でも熱設計の人は「この衛星のここをなぜこうしたか」を一番よく説明できるのではないかと、今日のロケットまつりを終えて思ったのでした。

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