ロケットまつり川口先生まつり第2回

ロケットまつりで「はやぶさ」のプロマネ川口淳一郎先生をゲストにお招きして1年あまり。再び川口先生にゲストとしていらしていただくことができた。前回ははやぶさの話よりも、はやぶさに至るまでの川口先生の歴史をたどる内容になった。今回ははやぶさの話が進むといいなーという雰囲気だったけれど、小惑星イトカワにたどり着くあたりで時間切れになってしまった。

今回の話で面白いと思ったのは、川口先生はプロジェクトの中でなにを重視するかの選択がしっかりしているということ。

たとえば「はやぶさ2」ではリアクションホイール(姿勢制御装置)を4つ搭載するにあたって、Z軸を2つ積む冗長系とし、X軸、Y軸は1つのままだという。宇宙機リアクションホイールを4つ積む場合、斜めにつけて各軸に均等な冗長性を持たせる「スキュー」方式が一般的だ。なのになぜ? 川口先生はきっぱりと「Z軸が生き残ることが大切だから」と言い切った。

人間の上半身でいえば、X軸は体を左右に傾ける方向、Y軸はおじぎやイナバウアーをする方向、Z軸は顔を左右に向ける方向である。2010年、はやぶさがあちこち壊れながらもなんとか戻ってこられたのは、各軸1つ、合計3つのリアクションホイールのうちZ軸が最後までもったからだ。X軸とY軸はダメになってもなんとかなる、Z軸を死守すべしという考え方である。

また、大成功したソーラーセイル「イカロス」については分離型カメラを搭載し、帆が開いた様子を「自分撮り」させることにこだわった。「データから帆が開いたようだというのではなく、帆が開いた写真が一枚ほしかった。写真があれば誰にも文句は言われない、世界初だと胸を張れる」。

そしてイカロスは無事に帆を開き、その様子が実際にカメラで撮影された。

データからの推定をよしとしないと聞いて、はやぶさのことを思い出した。

イトカワでサンプルを採取しようとしたとき、サンプル採取ができたモードに移行したというデータが来たため弾丸(プロジェクタイル)が発射されたはずとして、いったんそう発表した。しかしそののち、プロジェクタイルを発射するコマンドがプログラムミスで実行されていなかったことがわかったという経緯がある。

この経験があったから、イカロスで「このデータがこうだから帆が開いたはず」はしたくなかったのではないか。

その一方で、はやぶさにはサンプルを採取できたかどうか調べるセンサーは積まなかった。「小惑星のサンプルを採取できたかどうかは、カプセルを回収すればいずれわかるし、もし採取していてもカプセルを回収できなければ意味がない」という考えだそうだ。なるほど合理的。

こういう選択をできるのは、目標を達成するにはなにが必要か、きっちり考えられるからだな。「こういうときはたいていこうするものだから」と流してしまわず、なぜそうするのかを考える。ちゃんと理解していれば迷うことはないし、余計なこともせずにすむのだ。その積み重ねがあったからこそ、世界初の小惑星サンプルリターンという快挙をなしとげることができたのだろう。

ところで楽屋で「精力的に講演をしていると、はやぶさの話をするのがうまくなったのでは」と聞いてみた。すると「話す内容は毎回少しずつ変えている」と意外な答えが返ってきた。「いつも同じ話ではテープレコーダーと変わりませんからね、時には自分でこんなスライドを入れたのかと驚くようなものを入れたりして緊張感を保っています」だそうだ。

はやぶさの大冒険は波瀾万丈で泣かせるところもある。これは講談の演題にできるとつねづね思っている向きからすると、来場者が聞きたい話をよどみなく聞かせて満足してもらうというのとは正反対の方法論。いつも本気の川口先生なのだった。

宴のあと
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