大阪毎日放送の報道番組内で、書店流通も保証するタイプの自費出版について採り上げられたとのこと。
最近、電車や新聞で「あなたの本を出版します」といった広告をよく目にします。
自分の生きた証を残したいという団塊の世代や、小説を世に出したいといった人も多く、自費出版はブームになりつつあるのですが、自費出版にはお金がかかります。
この世界では有名な出版社で、「高い金を払ったのに本屋に並ばない」などと、トラブルになるケースも出ています。
(中略)
MBS報道局に1通のメールが届いた。
「大手自費出版社に、135万円をだまし取られました」
メールの主は、徳島市に住むOさん(30)。
アルバイトをしながら、イラストレーターを目指している。
去年、新聞で、ある出版社が主催するコンテストの広告を見つけた。
大賞を取れば、作品を本にして出版することができるという。
さっそく、書きためていた作品を送った。
(中略)
<担当者からの電話>
「大賞こそ逃したものの、他の作品よりもひときわ輝きを放っていました。ぜひ出版したいので、来ていただけせんか?」
(中略)
「本の制作費300万円を出しませんか?宣伝営業費はこちらでもちますよ」
[http://www.mbs.jp/voice/special/200703/12_7188.shtml:title=[2007/03/12]憤懣本舗「ブームの自費出版『ここが変だ!』」:bookmark]
で結局、135万円を払って本にしてもらったけれど、聞かされていた「全国の協力書店800店以上に本を置くことができる」ということはなかった。本は書店にはほとんど並ばなかったという。
印刷された本を見せてもらうことはできず、倉庫の確認も断られたとのこと。
「東京と大阪で『被害者の会』設立の準備も始まった。」そうだ。
(関係ないですが、「《被害者の会》の設立と運営」みたいな実用書ってできませんかね。企業のマスコミ対策本みたいな作りで)
ここに出てきたOさんの本は『みえないみえないなんにもみえない。』というタイトル。
- 作者:ちいろば ゆうこ
- 発売日: 2006/08/01
- メディア: 単行本
新風舎か。ここと文芸社は、「共同出版」「協力出版」といった名前の自費出版ビジネスで有名なところだ。
こういった出版社に本を作ってもらうこと自体が悪いこととは思わない。
しかし、100万円から数百万円の費用に見合うサービスかというと、多くの人にとっては不満が残るのではないだろうか。
こういうビジネスについては、以前も書いたことがある。
編集の仕事をしていると、ときどき相談されることがある。「自分がしてきた仕事を、本にまとめて出版できないか」といったものだ。「自分の紀行文を」や「自分の趣味の成果を」のこともあるし、「自分が世の中に伝えたいことを」のこともある。いずれにしても、基本的に答えは同じだ。
「一般の書店で売ることにこだわらないのがよいと思います。同人誌のような体裁の冊子として必要な部数だけ作って、関係の方々に配っては」。
これらの企画は、全部が箸にも棒にもかからないわけではない。その人しか持っていない知識や知恵を、なにかの形で残しておくのはよいと思う。
しかし、一般の書籍として流通させるのがふさわしいかというと、なかなか難しいのが実情だ。
(中略)
世の中の誰とも知れない数千人が、1000円なり2000円なりのお金を出して買ってくれる本でなければ、普通の商業出版は成り立たない。基本的にマスを相手にした世界なのだ。
(中略)
本を作りたい人は、その内容が商業出版でいけると思うか、それとも同人誌として作るのがよいか、よく考えてほしい。適材適所で「本」の形にしてほしいと思う。
まんぷく::日記 - 「本を出す」より「本を作る」ほうが好ましい
こういう考え方は、実際に「本を出したい」人には伝わりづらいところがあった。でも今回のように、自費出版商法がテレビ番組で紹介され、被害者の会もできるとなれば、状況は変わっていくかもしれない。
- この日記の関連記事:「同人誌を作るのは楽しいよ」(d:id:Imamura:20061002:doujin):自分の同人誌制作体験。書店流通ありきではなく、自分で作って自分で売るのもまた楽しいです。