「工場ナイト」@ロフトプラスワン

【元記事:「工場ナイト」@ロフトプラスワンd:id:manpukuya:20070310:factory

夕べのイベントレポートです。

第1部

壇上には、総裁こと大山顕さん、id:wamiさんこと鉄男さん、書籍『工場萌え』の編集者、角田(つのだ)さん。

鉄男さん撮影のさまざまな工場写真を肴に、あれこれとお話を。

  • 大山さんは『工場萌え』の原稿が遅かった。
  • 鉄男さんは「寄り」で撮る人。仕事(不規則な自営業)の合間の待ち時間にふらりと川崎へ行き、10時間くらい工場を見ていたりする。「配管を追ったりしているとすぐに数時間はたってしまう。時間の流れ方が早くなる」。自動車免許を持たずいつも自転車で移動するので時間がかかるとのことだが、同じく免許を持っていない大山さんと「免許を取って自分で運転していくと、脇見運転で絶対に事故を起こす」。
  • 角田さんはハトが好き。「クルックー」ではなく「ホロッホー」が正しいという持論をお持ち。工場写真では、奥行き感があるものにぐっとくる由。あと「原料の山」も好きとのこと。

第2部

壇上に、団地とタイルが好きな小林さんと工場好きのフクイさんが加わり、彼らが行ってきた「鹿島臨海工業地帯はすばらしいよ」レポート。

  • 「バラを模した」という展望タワーがすばらしい。
  • 土日祝日の13:30に運行される観光フェリー「ユーリカ号」がすばらしい。(→「ユーリカ号」案内
  • 塩の山がすばらしい。(→http://www.youtube.com/watch?v=2lweLVBQtso
  • 通称「貴公子」の蒸留塔がすばらしい。
  • 砂山公園がすばらしい。

そして、フクイさんの工場画がすばらしい。「ユーリカ号の船上でプロポーズされたら即OKしてしまうだろう」とのこと。(→現場写真

第3部

千葉大の八馬智さんが登壇、「人はなぜ工場に萌えるか?」をテーマに語る。

これがとっても面白かったので、メモをもとにまとめ(※以下には、私の聞き違いや誤解が入っている可能性があります)。

工業的景観は一般的に「よくないもの」としてとらえられるが、ではどういう景観が「美しい」のか。そこは人それぞれ。

日本橋の上を走る首都高速の景観は醜悪だといわれるが、じゃあどういう風景が望ましいのか。

寸評
東海道の出立点という日本を代表する名所に、あまりといえばあまりな仕打ちではないか。
美しい景観を創る会 --悪い景観23『お江戸日本橋は甦るのか』

単に首都高をどけて、今の日本橋を露出させるだけでは、昔の木橋だった日本橋の再現とはいえない。よしんば「東海道五十三次」の日本橋のように木橋にしたところで、しょせん背景にある建物は近代的なビルであって、江戸時代の景観が戻ってくるわけではない。

大山「今の石造りの日本橋だって和洋折衷で、相当キッチュな設計ですよね」

八馬「その通り、あれがあるべき日本橋なのかというと、そうとも言い切れないのでは」

人類史全体で主要な産業の変遷をたどると、狩猟・採集→農業→工業(産業革命以降)→情報(IT革命以降)という段階に分けられる(大山「いきなり壮大ですね」八馬「このくらいやらないと」)。

農業の発生で、狩猟・採集をしていた人の一部が「脱猟者」となって農業に従事するようになった。

この段階では、手を入れられていない自然の風景が農業の風景に置き換わった。その際に人間の中に発生したのが

  • 自然風景への郷愁
  • 農業風景への憧憬

という2つの印象。次に産業革命が起こり、農業から工業へと軸足を移した「脱農者」が発生。ここで起きるのが以下。

  • 自然風景の古典化
  • 農業風景への郷愁
  • 工業風景への憧憬

しかし、「工業風景への憧憬」はほかと比べると弱い。また、この次に起きたIT革命で、情報産業へ移った「脱工者」によって工業風景が郷愁の対象となるはずなのに、そうでもないことも同様。これは工業風景には公害などの印象もあり、100パーセント肯定的なものではないからではないか。

大山「工場の風景が好きではないという人に『じゃあどういう風景が好きなのか』と聞くと、たいてい『農村風景』のような答えが返ってくる。しかし農業が始まったころ、田んぼや畑は当時の最先端技術を注ぎ込んだテクノスケープだったはず」

角田「情報産業を象徴する風景というと、六本木ヒルズとかですか」

八馬「それは思い至りませんでした。今度使わせてもらいます(笑)」

1910年代にイタリアで起きた「未来派」運動、20年代ロシア・アヴァンギャルドなどが、「工業景観への憧憬」を視覚化した。ただし、これらは工業化という国策に沿ったプロパガンダの面もあった。

その後、チャールズ・シーラーやベッヒャーが、工場や工業的な景観を美術として扱うようになっている。

産業革命の直後は、工業的な景観は醜悪であるとされた。例がエッフェル塔。1889年に竣工した当時は「20年で解体しましょう」という話になっていた。エッフェル塔が嫌いだったモーパッサンは、よくエッフェル塔のレストランへ行った。なぜかと聞かれて答えたのが、「ここは、美しいパリの風景を見られる唯一の場所であるから」という。

映画における工業風景というと、「ブレードランナー」(1982年)、「未来世紀ブラジル」(1985年)、「スター・ウォーズ エピソード2」(2002年)、「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)などが浮かぶ。これらでも、工場は否定的なイメージで扱われていた。これらの監督はもしかすると工場の風景が好きなのかもしれないが、それをそのまま示すことには抑圧が働いている。

鉄男「『チャーリーとチョコレート工場』は外観が典型的な工場なのに、中はぜんぜん工場じゃなくて小人が働いているだけだったのが不満でした」

八馬「あれはあれで、資本家に搾取される労働者のありさまを表すなど、社会的な暗喩を含んでいて興味深いところでもありますね」

一方でアニメやゲーム、「イノセンス」や「スチームボーイ」、「ファイナルファンタジーVII」などは工業的景観を肯定的にとらえている面がある。

工業の風景は見ようによっては「金属の森」である。規則的に植えられた街路樹など、緑のほうがむしろ人工的、工業的である。

一般的な建築が骨と皮で内部に空間を作るのに対して、工場を作る要素は骨と内臓である。ガワがない。

塔や橋などにはそれぞれ、設計を決定づける外的な要因がある。塔は風力、橋は重力。工場はなにかといえば熱である。「貴公子」などの蒸留塔は、分解された化学物質の、ある温度の層だけを取り出してほかへ運ぶためのもの。このように、熱をどう扱うかを考えることが工場の設計の大きな要素。

(このあと、会場から集めたアンケート「工場好きを自覚したのはいつ、どんな体験からか、工場のどんなところが好きか」などを肴にあれこれと)

会場では、『工場萌え』のほか『ワンダーJAPAN』、手製の工場Tシャツも売ってました。

工場萌え

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  • 作者:大山 顕
  • 発売日: 2007/03/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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