「生活保護でかなりの贅沢をして暮らせるけど、『働く』為には、ものすごい才能と努力が必要になる社会」である。
これが本当にやってくるかどうかはわからないが、世界はこの方向に向かっている。よほど何か強力な人為的な介入をしない限り、こうなると私は思う。
アンカテ(Uncategorizable Blog) - 働かなくても食っていける社会がもうすぐやってくるよ
この話、とても面白い。
思うに、好きなことをしてお金をもらえたら、それが他人の目には労働にしか見えなくても、すごく嬉しい気がする。
今の自分の仕事はそのクチにけっこう近い。「こんな本を作りたい」と自分で考えて、それを作らせてもらえる。もちろん、自分だけの趣味を全開にして作った本では単なる同人誌なので、より売れるようなしかけを盛り込んだりはする。それでも自分にとって、ほかの仕事をするよりはものすごく幸せな状況だ。
だから、「働かなくても食っていける社会」がやってきても、自分はやっぱり本を作っているだろう。
こういう話でいつも思い出すのが、プラネタリウム「メガスター」を個人で作った大平貴之さんだ。
彼こそ、好きなことをひたすらつきつめていった結果、ついにそれが労働になり「プラネタリウムクリエーター」として食っていけるようになった人である。
この人は、20年以上にわたってプラネタリウム作りにまい進してきた。その間、彼の好奇心や探求心を止めるものがなく、学業や仕事の合間にプラネタリウムを作り続けることができ、そして今はただ、プラネタリウムのことだけで生活できている。この一点において、今はすでになかなかいい世の中じゃないのと思う。
id:DocSeriさんは上の記事を紹介して、「無産主義者を自認する私としては、人は働かずして生活できるようになるべきだと思っている。」として次のように書いている。
残念ながらすべての分野から労働をなくすことは当分できそうにない。まだまだ人手が必要な分野というものはある。けれどそれらも将来的には自動化されてゆくだろう。そうなったとき、労働ははじめて趣味になれる。すべての人が等しく苦行から解放され、純粋に趣味で研究し趣味で製造する世界に。
妄想科學日報 - 人は労働から解放され得るか
これはすばらしい。早くこんな社会になってほしい。
「働かなくても食っていける社会がもうすぐやってくるよ」の記事では、そういう社会を実現するためのハードルは「『働かざる者食うべからず』という倫理である」としている。
この倫理を持ち出す人は、働く以外にやりたいことや好きなことがあまりない人なのかもしれないと考えた。そして、「趣味は仕事」でやってきた団塊世代が、退職後に別の趣味を一生懸命探している様子が思い浮かんだ。
(後日追記:「働かざる者食うべからず」は「労働力を提供できない者は餓死せよ」というスローガンではなかった。不労所得だけで暮らしている資本家を糾弾する言葉だった。「お客様は神様です」のように誤解されているフレーズなんだな)
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