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99/04/16 (Fri.)−SFの新連載『暁星記』

元記事:夜の記憶−99/04/16 (Fri.)−SFの新連載『暁星記』】

あっ、なんということだ。『モーニング』にまたSFが載っているではないか。しかも新連載。タイトルは『暁星記』。暁星(ぎょうせい)は明けの明星、つまり金星のことで、舞台は金星である。
 金星のテラフォーミング惑星の環境を人間が居住できるよう改造すること)が完了してから1万年。文明は衰退し、人間は深い深い森の中でほそぼそと狩りなどしながら樹上生活を送っている。それを影で見守る、知性を持った猿のような生き物。なにしろ第1話だからこのくらいしかわからないが、こいつはすっかりSFなのだった。
 実はこの舞台設定、ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫)によく似ている。こちらは遠未来、森に覆われた地球。人類は知性を失い、進化して動物的な運動能力を得た食肉植物を避けつつ、やはりほそぼそと樹上生活を送っているという話。多彩な植物の描写や豊富なイマジネーションで、魅力的な異世界を作り出していた。
 『暁星記』の作者は、以前に酪農マンガ『牛のおっぱい』を連載していた菅原雅雪。自然の中で生きることに関して自覚的な人のようで、『暁星記』の第1話は、狩りと獲物の解体が話の中心。生きるための細かい描写の「それっぽさ」が、生活感がなく浮ついた異世界ファンタジーとは一線を画している。加えて、スクリーントーンを使わずにひたすらペンで描き込む画風が、ごつごつざらざらした世界の手触りを伝えていていい感じである。
 タイトルの下に「第I部 はじまりの森」と付いているところからすると、そのうち舞台は森を離れることになるのだろう。未来の金星をどんな世界にして見せてくれるか、楽しみなところだ。