もう木曜日で、すっかり「週末」映画じゃなくなってしまったが、しつこく映画の話をするのだ。
さてさて、『シン・レッド・ラインthe Thin Red Line』。実は『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』を見終わってくさくさした気分のまま映画館を出たところ、『シン・レッド・ライン』がかかっている館の入口から「間もなく開映でーす」という声が聞こえ、ちょうどよいとばかりに飛び込んで席についたというアンバイだったのだ。
映画館で映画を観るという体験の特異な側面の1つに、「観に行かないと観られない」というものがある。映画を観るには、上映館を調べ、上映時間を調べ、上映館の最寄り駅までの交通を調べ、自分の都合をつけ、駅で切符を買って電車に乗り、電車を降り、ふだん行かない街を映画館に向かって歩き、映画館の窓口で切符を買って席につかなければならない。テレビをつければもう映画が始まっちゃうというわけにはいかないのだ。そのぶん、映画館に行くにはより強い動機づけが必要になるわけで、逆にそのことが、いざ映画を観るとなったときに「映画を見に行く自分」の気分を盛り上げ、「観るぜ観るぜ映画を観るぜ〜ッ!!」(©スタパ斎藤)という非日常的精神状態に連れていってくれるというわけだ。一方、飛び込みで入った『シン・レッド・ライン』。この映画についての心の準備はといえば、そのうち観たいねという程度のものだったから、あまりに唐突な今日の自分の行動に、自分の気分がついていかないような感覚もあったのだった。
と能書きはそれくらいにして。第2次大戦のガダルカナル島を舞台にした群像劇である。兵士たちはそれぞれなりの背景を抱えつつ、日本軍との不利な戦闘を戦う。頻繁に挿入される、島の美しい風景、島の生き物たちの姿。匍匐前進する兵士の脇を蛇が通り過ぎ、敵の目をのがれようとする兵士がふと見上げるとそこにコウモリがいたりする。さて戦争ってなんでしょう。
という映画だったのだけれど、うーむ、悪い映画ではなかったのだけど心の準備が足りなかったせいか、残念ながらいまひとつ作品に入り込めなかったんである。「ナニナニを?」という、省略が多い戸田奈津子の字幕にも気をそがれてしまった。この人は「ナニナニを知っていますか」「ナニナニはいかがですか」「ナニナニはナニですか」のあたりを、ぜーんぶいさぎよく「ナニナニを?」の一言ですませてしまうのだ。まさに戸田奈津子節。「ナニナニを?」の字幕が出たら戸田奈津子。いや本当に。