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「鉄血のオルフェンズ」の舞台は本当に火星なのかな?

※本稿は公式情報などはチェックせず、アニメ本編だけを見て書いています

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」が放送中である。舞台は地球からの独立の気運が高まっている火星。ガンダムシリーズで地球圏を遠く離れた場所が描かれるのは新鮮だ。

ここ最近のガンダムは見ていて実にしんどく、00は一応最後まで見たがAGEやレコンギスタはわりとすぐ脱落してしまった。「鉄血のオルフェンズ」の監督とシリーズ構成は「あの花」の監督と脚本家のコンビであり、今のところなかなかいい感じで毎週楽しみだ。

(「あの花」こと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」はTOKYO MXで今週の土曜深夜(日曜未明)0時半から放送される。第1話の演出は特に素晴らしくおすすめである)

さて今回のガンダムは火星が舞台ということで、最初に考えたのは1/3Gの世界をどう描写してくれるのかなということ。火星の半径は3400キロで、半径6400キロの地球の半分ほど。重力は地球の1/3である。

火星生まれらしい主人公たちは1/3Gの環境に慣れているから、このあと舞台が地球に移ったら彼らは自分の体重が3倍になって大変なことになる。歩くどころか腕を上げるだけでひと苦労だろう。ホンダの歩行アシスト機器みたいなものを全身につけるとかだったらいいな。

しかし本編を見ていると、どうもここの重力は地球の1/3ではないように見える。たとえば人間の血は地球と同じ速度でポタリとしたたっているように見えた。重力が1/3なら物体が自由落下する速度も1/3になるはずだ。

火星をテラフォーミングするほどの科学技術を持っている設定だから、火星環境への適応にあたって人間の血の比重が3倍になるような遺伝子改造が必要だった、とむりやり説明できるかもしれない。しかし砂ぼこりが地球の3倍高く舞い上がっているようにも見えない。火星の砂が地球の3倍重いということもないだろう。

オーケーわかった、画面に出てくるものすべてが実は3倍重いという仮定の検証はいったん横に置こう。火星はすでに1Gであるという仮定はどうだろう。

火星を1G環境にするには、火星そのものの質量を地球と同じにすればよい。どうやってそうするかは別として。しかしもしそうしたら、火星の軌道は今の場所からずれていき、地球の軌道にも影響が出るだろう。人類がそこまでする理由はなさそうだ。

火星の質量はそのままに、火星の表面全体を1Gにするような謎の技術があるのかもしれない。なぜそこまでするかは別として、これなら画面に出てくる物体の運動は地球とまったく同じになる。

でももしそれほどの重力制御技術があるとしたら、モビルスーツがあのように重量感をもって動く必要はない。「スラスターのガスを補給し忘れた」というセリフがあるから、モビルスーツがジャンプするのに使うスラスターは我々が知っているのと同じスラスターなのだろう。しかし物体の重さを自由にコントロールできるのなら、スラスターを噴いて飛ぶ必要はない。

とすると、ここは本当に火星なのだろうか。

第2話まで見た限りでは、「実はここは火星ではありませんでした」とやることが劇的な効果をもたらすようには思えない。でもこのあとはどうなるかわからない。念のためそういうことになる可能性も考えつつ見ていくことにしよう。

火星が1Gであることの説明を考えた

上を書いているうち、こんな理屈が浮かんできた。

火星の地表を1Gにする技術はロストテクノロジーで、作品の舞台は科学技術がいったん後退した世界だとしたらどうだろう。これなら一応つじつまは合う。「鉄血のオルフェンズ」では300年前に「厄祭戦」という大戦争があったそうだから、そういう可能性もなくはない。これなら主人公たちが地球へ行ったとき体重が3倍になる心配はいらない。低重力下で育った人間はひょろりと長身になるが、主人公たちがそうでないことも説明できる。

ほかにも、実はこの世界の「地球」や「火星」はたまたまそういう名前であるというだけで、我々が住む太陽系とは別の恒星系の話でしたー、というずるい解決方法もあるにはある。ずるいですけどね。

重力描写が気になる作品といえば「ゼロ・グラビティ

ゼロ・グラビティ」は宇宙では起きない物理描写があってもったいなかった。いい映画なんですが。

鉄血のオルフェンズ」では、こういうもったいないことにならないといいなあ。

追記:「オデッセイ」について

後日観たリドリー・スコットの火星サバイバル映画「オデッセイ」も、面白い映画ではあったが1/3Gの表現は皆無といってよくそこがもったいなかった。