- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/06/17
- メディア: 新書
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家から一番近い書店のマンガコーナーで目立つように面陳されていたのを見つけて購入。小さい店なのに自分の好みに合う本に出会えて得した気分。超長寿作品「ジョジョの奇妙な冒険」は今は隔週誌での連載になっているそうだから、時間に余裕が出てきたのかな。稀代のクリエイターの文章を読めるのはうれしい。
本書は、1970年代以降の作品を中心に紹介するとされている。「リアルタイムで見た封切り作品を優先した、『エクソシスト』以降のいわゆる『モダンホラー』中心のセレクションとなっている」とある。「モダンホラー」。「ジョジョ」の初期の惹句、「モダンホラー!深紅の緋伝説」を思い出した。
「まえがき」がまず面白くて、冒頭紹介される映画が「プレシャス」。これって感動ものじゃなかったっけ? と思ったらその通り。
感動作ですし、監督もそうなることを意図して作ったはずですが、それでも僕は、この作品はホラー映画だと思います。映画には、殺人鬼も怪物も出てきません。(…)(主人公のプレシャスの境遇は)もう十分悲惨なのに、でもそれだけでは終わらない。
(…)
とにかく恐怖以外の何ものでもないこの世の地獄を、真正面から描いている。だからこの作品は、僕にとってのホラー映画なのです。
恐怖を対象化し、絶対にそんな目にあいたくない作悪の出来事と向き合う力を身につける、それがどんな出来事であろうと「スクリーンの中の世界」にすぎないと楽しんでしまう、そういう見方もあっていいはずだし、あるべきです。見る人が恐怖するしかないような状況を描く映画、それを目的として救いのない状況を突きつけてくるあらゆる映画が僕はホラー映画だと思いますし、そうした状況にフィクションとして正面から向かい合うことができるのがホラー映画なのだと断言してもいい。
(…)
これを暴論と思われる方にはススメませんが、そう思われない方に荒木飛呂彦が認めるホラー映画とその見方を知ってもらいたくて、こんな本を出すことにしました。
世界のそういう醜く汚い部分をあらかじめ誇張された形で、しかも自分は安全な席に身を置いて見ることができるのがホラー映画だと僕は言いたいのです。(…)登場人物たちにとって『もっとも不幸な映画』がホラー映画であると。だから少年少女が人生の醜い面、世界の汚い面に向き合うための予行演習として、これ以上の素材があるかと言えば絶対にありません。もちろん少年少女に限らず、この『予行演習』は大人にとってさえ有効でありうるはずです。
そして「まえがき」はこう結ばれている。
恐怖を通して、現実世界の不安からひと時の解放をもたらしてくれるのがホラー映画です。僕はこの本を通して少しでもその魅力を伝えたいですし、ホラーという表現手段を理解するきっかけにしていただければと願っています。
「まえがき」の終わりに、「荒木飛呂彦が選ぶホラー映画」が20本挙げられている。
おお、「ゾンビ」が一番なんだ。学生時代、今は人気マンガ家になったH氏がうちに「ビデオ見ようぜー」と持ってきてくれたのが「ゾンビ」だった。ホラー映画は食わず嫌いだったのだけれど、途中の寂寥感あふれる演出で「こういうのもあるのか」と思ったのだった。
まだ読み始めたばかりだけど、文章はとても読みやすいし目次を見るだけでも楽しい。これを目立つように置いてくれた近所の小さい書店さんありがとう。
- 目次
- まえがき モダンホラー映画への招待
- 第一章 ゾンビ映画
- 第二章 「田舎に行ったら襲われた」系ホラー
- 第三章 ビザール殺人鬼映画
- 第四章 スティーブン・キング・オブ・ホラー
- 第五章 SFホラー映画
- 第六章 アニマルホラー
- 第七章 構築系ホラー
- 第八章 不条理ホラー
- 第九章 悪魔・怨霊ホラー
- 第一〇章 ホラー・オン・ボーダー
ゾンビ ディレクターズカット版 HDリマスター・バージョン [DVD]
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2010/10/02
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