12月6日13時から、株式会社Jコミの設立記者会見が開催されました。
登壇者
赤松:今日はよろしくお願いします
司会:現役週刊マンガ家の先生が登壇します
赤松:今週まだ一枚もできてないんですが(笑)
司会:Jコミの事業内容について
赤松:最初はそちら(司会)から
司会:設立された会社は「株式会社Jコミ」。事業内容は「広告入りマンガファイル(pdf)」を無料でファンに公開
赤松:PDFファイルについて説明。PowerPointを用意したが実際にiPadで見た方が早いかも。こうやって表紙をめくると広告が。クリックすると広告ページへ。本編が始まるとしばらく広告はない。(広告が入る場所の説明…見返しなど)
赤松:読者の方には…絶版になった過去のマンガを無料で楽しめる。マンガ家の先生には広告収入が全額支払われる。Jコミの取り分はゼロで
赤松:マンガ家はマンガを見開きで考える。ページをめくったときパンチがあるというように作っている。見開きで見る形で提供したい
司会:PDFに広告を入れる形にしたのはどういう考えがあってか
赤松:多くのマンガはDRMがかかっていて、面白いと思っても人に貸せない。PDFはとても一般性があり、環境で読めないことはないのではないか。汎用性が高い
赤松:渡した友達がさらに友達に渡していき、それぞれが広告をクリックするとよい
赤松:広告は「インプレッション広告」(見るだけで収入になる広告)と「クリック保証」(クリックされると収入になる広告)がありJコミはクリック保証型。Jコミはコンテンツと広告をマッチングさせるかいがある形式なのでこちらにした
赤松:絶版マンガを扱う理由。いま連載中の「魔法先生ネギま!」を配布すると、出版社とわたしがとても被害を負う。「ラブひな」は絶版になっているのでこちらにした
赤松:市場価値はなくなっていても、面白いマンガはある。読み切りで単行本収録されていない作品、あまり売れなかった作品など。これらが埋もれてしまっている。こういう作品を救済していきたい
赤松:クラウド型のコミックサイトは読者の立場で考えて採用しなかった。自分のマシンにコンテンツが入るとネットにつながらない場所でも読める
赤松:広告を動的に交換することはしたくない。読者としては「自分のコレクションをいじられたくない」と考えるだろう
司会:たくさんマンガを買う立場では場所をとるため「ラブひな」の公開はとてもありがたい
赤松:いま水曜日に電車に乗っても、マガジンやサンデーを読んでる人がいない。ジャンプも同様。聞いた話では「小さい子がマンガの読み方がわからなくなっている」という。マンガを読む文化を絶やさないようにしたい。そこに危機感を持っている
赤松:日本の絶版マンガは資源である。資源のない日本が輸出できる数少ない資源だ
司会:「ラブひな」が絶版ではないと思っていたが
赤松:「重版未定」状態だったのを講談社さんに頼んで絶版扱いにしてもらった
司会:公開から1週間経ちました
赤松:初日で45万ダウンロード、1週間で170万ダウンロード。この広告枠を企業様にお売りしたい
赤松:広告を出したい企業様へのアピール:クリック率が初動3日間で10%近くありこれは相当高い。弊社へメールをください
赤松:絶版マンガの作者様へのアピール:ベータ2テストを行う。広告を有料で受けて、実際に作者様へ収入が発生するのを実況したい
- ベータ2テストの予定マンガ
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- 少年マンガ:週刊少年ジャンプ2007年度連載作品(赤松:絶版ではなかったのだがジャンプの佐々木編集長に相談して「絶版にしてもらった」)
- 少女マンガ:新條まゆ先生の読み切り作品(50ページ)
- 青年マンガ:樹崎聖先生(原作・梶研吾先生)『交通事故鑑定人 環倫一郎』全18巻(集英社)
赤松:ジャンプは日の目が当たらない作品を前に出したいと佐々木編集長がおっしゃっていた
赤松:新條まゆ先生へも。実際にどのくらい収入があるかを今回限りで公開します
赤松:樹崎聖(たかし)先生。少年マンガ、少女マンガ、青年マンガでどのくらい収入が変わるか知りたい。樹崎聖先生がいらしてますので一言お願いします
(樹崎聖登壇)
樹崎:こんな作品です(パネル見せる)
司会:スーパージャンプに7年くらい連載していた
樹崎:そうですね。赤松先生からのオファーは1週間前くらい
司会:早いですね!
赤松:マイミクだったので(笑)
樹崎:赤松さんから声がかかる直前に中国の友人から「樹崎さんのマンガが中国で無料でダウンロードできるようになっている」と聞いてショックを受けたところだった
赤松:これは文化が盗まれているのと同じ
樹崎:それを聞いたこともあって承諾した
司会:作者の方にポジティブなフィードバックを返せる。作者に利益が還元されるんですね
赤松:そうです
(樹崎聖降壇)
赤松:ベータ2テストでは収益を公開するので不安をなくしていただけるだろう。講談社の取締役クラスとも打ち合わせをすませており、出版社にも安心感が広がっているのでは
司会:ここでゲストの方を。堀江由衣さん
会場:ほっちゃーん!!
会場:(笑)
司会:お二人がお会いするのは実は久しぶりで
赤松:アフレコには1回しか行けなかった
堀江:「ネギま!」では頻繁に
赤松:しょっちゅう(笑)
赤松:池袋はすごかった
赤松:(司会に)あのころどんな仕事を
司会:しのぶはどうしたら幸せになるかというトークショーをしていた
堀江:久しぶりに「ラブひな」を読み返して、なるちゃんと共通点が多いことに気づいた
司会:10年後の今になって!
堀江:視力が悪くて眼鏡をかけているとか
赤松:アフレコのときにも。ブログに載せたら人気出ますよ
堀江:ではさっそく(笑)
堀江:赤松先生は乙女心をよくわかってらっしゃる。この先生の中に成瀬川なるがいると思うと(笑)
司会:(堀江へ)パソコンは強いか弱いか
堀江:正直負けっ放し。IT全敗
赤松:ついに買ったそうですね
堀江:ついに某iPhoneを
堀江:片付けが苦手で「ラブひな」も全巻揃いで見つからなかったので「Jコミ」はすごいなと
赤松:アフレコ当時のエピソードは
堀江:新人だったので必死だった。今はビデオをもらえることが多いが当時はビデオを事前にもらえず当日現場で合わせるので大変だった
赤松:あれはマルチのあとですよね
堀江:マルチ、あゆのあとですね
司会:PDFになっていないと在庫のある本屋さんを探さなければならなかった。今簡単に読めるようになって
堀江:東大と温泉がある限りずっと読んでいけると思いました
堀江:電車の中で電話のためにテレホンカードを渡すエピソードがありましたね。テレカを赤松先生にもらいました
司会:マンガではテレホンカードを「TC」って書いてありましたね。今ではわからない人もいるかも
司会:マンガの中に当時の風景が切り取られ、データとして残っていくのはすばらしい
赤松:「ラブひな」の単行本はもう小口がまっ黄っ黄なのでこういう状況もなんとかしたい
堀江:きれいな状態で保存できるのがいい
司会:(堀江へ)「ラブひな」のセールスポイントを
堀江:楽しくてそこへ帰りたくなる、わたしにとってもそういう場所です。登場人物がひなた荘で夢をかなえていく。自分自身もこの作品で夢をかなえていった
堀江:時代に関係のない作品です。東大を目指す人に限らず、夢を目指している方に読んでもらいたい
赤松:できれば広告も(笑)興味があったら
赤松:広告と関係のないクリックは…というのが建前としては
司会:堀江さんはいったんここまで
(堀江由衣退場)
司会:質疑応答へ
赤松:技術部の者が登壇します
朝日新聞:広告料は広告代理店の収入以外全額作者へとのことだが運営費は? 作り手自身がこういったサイトを作る意義について
赤松:運営費はJコミのトップページの広告収入で。広告が入らない成人向けにプレミアム(会員)で提供するときは
お金儲けをするよりは失われていく文化をなんとかしたい、P2Pをなんとかしたいというのが出発点。これを使って儲けようという発想はない
赤松:絶版マンガに広告を入れて配布するというのは出版社の仕事になじまない。これは作者がやらないといけない。どこかの企業が同じことをしても信用が…となるが作者自身がするのが大きい
技術部:彼がマンガ家だから成り立つのだと強く感じた。企業や出版社からの企画では成り立たなかったのでは
司会:この方は?
赤松:大学のアニメ研の先輩なんですよ
司会:ますます信用が!
読売新聞:スケジュールについて。Jコミの設立時期は。アルファ版ベータ版の開始時期。正式公開は1月のいつごろ?
赤松:会社の設立は…もうからないだろうとわかっていたので以前持っていた会社を名義替えしたものなので…設立は3年くらい前。Jコミのトップページに。実際に始めたのは今年の夏休みから
赤松:ベータ2は今月中に始められれば。1月10日に正式公開を予定しているがユーザーの皆さんにアップロードしてもらうところまでは到達しないだろう。当面はマンガ家の先生から許諾をもらってからPDFを準備する。アップロードはシステムはほぼできているが
読売新聞:PDF化の経費は
赤松:ネットにあるのはJPGをZIP化したもの。これをPDFにしてアップするプログラムは完成している。これを使えば許諾を得たのち自動的にアップできるので経費は少なくすむ
ただ当面は内容と広告のマッチングが必要なのでPDFへの広告挿入を手作業で行う。Googleが本の内容をOCRしてそれに合う広告を入れる特許を持っているが、マンガはOCRでの広告マッチングに向かない媒体なので手作業で
読売新聞:1月の公開でどのくらいの作品数を見込むか
赤松:ベータ2テストで3作品。今意識的に、マンガ家さんへは声をかけていない。声がかかってくるのを待っている。収益がどのくらい出るのか実験をしないで声をかけるのははばかられる。新人さんなどは私からだと断りにくいだろうから。だから正式公開時にどのくらい作品が揃うかは不明
(不明):2007年度ジャンプ作品とは特定の1作品?
赤松:そうです
(不明):絶版扱いにしてもらった作品とはどういう位置づけなのか
赤松:マンガは絶版にならず「重版未定」のことが多い。出版社には有利だがマンガ家さんにはほかで出せない状態。こういうとき「絶版にしてくれ」と頼むと出版社が絶版にしてくれることがある
(不明):世界展開や同人誌への応用について
赤松:今は日本の広告が主ですがほかの
エヴァンゲリオンや「ラブひな」を中国からダウンロードしたとき
無料のPDFを回すことで世界展開への足がかりにできれば
(不明):同人誌は
赤松:わたしも同人誌出身だがコミケへ行くと「日本人は全員マンガがうまい」レベルである。ここから世界へ展開して行ければ。二次創作は作者が許可すれば合法。エロパロはまた難しいが…
朝日新聞神田:著作権違反、無視のコピーが出回っていることについてどう把握しているか。違法ファイルへどういう影響を与えるかの期待など
赤松:アメリカの出版社の方に話を聞いたが、壊滅的といってよい打撃を受けているという。わたしは同人をしていたこともあり目くじらは立てないが打撃を受けてはいるのだろう。違法なアップロードを根絶はできないだろうが、後ろめたい思いでダウンロードしている人はいる。そういう人が作者になにかできれば、でもお金は出したくないというとき、広告入りのPDFは役に立つだろう。善意や好意を集め直すことはできる。そういう形でのささやかな抵抗になれば
赤松:ブックオフのような新古書店さんは出版社の敵なので打撃を与えたいと思っている
朝日新聞:具体的には
赤松:ブックオフは本をブックオフ内でぐるぐる回している。ブックオフの株を出版社が持っているがブックオフの利益にならないことはできない。ブックオフからお金を出そうという話もあったが頓挫した
赤松:ブックオフを敵だ敵だという話ばかりが広がるとあれだが、少なくとも味方ではないなと
司会:Jコミは民放のようなものですね。ブックオフは放送を録画して再視聴できるようにしているようなもの?
赤松:ただブックオフは合法です
フォトセッション
(堀江由衣再登壇)
司会:最後に一言
堀江:わたしも大好きな「ラブひな」を身近に楽しめるのはすばらしい。私も買ったiPhoneでダウンロードしたい
赤松:宣伝になってしまうが、企業の方、作者の方ご連絡下さい。読者の方はどんどん無料でダウンロードして、広告に興味が出ればクリックしていただきたい。Win-Win-Winでやっていきましょう
ぶら下がりで
「海外のスキャンレーションも作者の了解を取れれば扱う?」と聞いてみました。
赤松:将来的には扱っていきたい。スキャンレーションサイトは今つぶされていっていますがみんな持っているでしょうからそれを出してほしい。その言葉向けの広告は現地の広告代理店とつながるかどうか難しいがぜひやりたい。Jコミは成功すると思いますか?
「マンガ家からするとすごくいい話。絶版のままなにも収益を生まないコンテンツが収益を生むかもしれないとなるだけですごく大きい。宝くじは買わないと当たらないが、とりあえず宝くじを買っておくような気持ちでJコミに登録するマンガ家の方もいるのでは」といった話をさせていただきました。