同じ場所や人々を72時間にわたって撮影し、30分の番組にまとめるという趣向のドキュメンタリー「ドキュメント72時間」が放送されている。これがなかなか面白い。
今まで放送されたのは、神宮外苑の花火大会、山谷に寝泊まりする海外からのバックパッカー、東京駅の高速バスターミナル。次回は新宿の献血ルームが出てくる由。
そこにいろいろな人がやってきて、それぞれの生活や家庭についてちょっと話をしてくれる。自分の隣にいるような、見知らぬ普通の人の事情を知る。出てくるのは、偉い人でもないしすごい人でもない。普通の人の普通の話を、特定の場所で切り取るという手法。こういうのは大好き。
ああそうか、これは以前デイリーポータルZに載った「ふつうの人にインタビュー」の面白さと同じだ。
- →「@nifty:デイリーポータルZ:ふつうの人にインタビュー」(→この日記での言及:d:id:Imamura:20040825:interview)
「普通の人」なんて本当はいなくて、それぞれに百人百様の現実がある。それを聞くと、こちらには思いもよらない事情や考えが見えたりする。「世の中」の人たちはみんな、そういうものを持っているんだ。
新明解国語辞典の「世の中」はとても味のある説明になっている。
「日々カタログ。 : 新解さんふたたび」から孫引きすると:
同時代に属する社会を、複雑な人間模様が織り成すものとしてとらえた語。愛し合う人と憎み合う人、成功者と失意・不遇の人とが構造上同居し、常に矛盾に満ちながら、一方には持ちつ持たれつの関係にある世間。
(新明解国語辞典第2版〜第5版「世の中」)
最新の第6版では全面改稿されている。
社会人として生きる個々の人間が、だれしもそこから逃げることのできない宿命を負わされているこの世。一般に、そこには複雑な人間関係がもたらす矛盾とか政治・経済の動きによる変化とかが見られ、許容しうる面と怒り・失望を抱かせる面とが混在するととらえられる。
(新明解国語辞典第6版「世の中」)
すばらしいです、新明解国語辞典。
話を元に戻して「ドキュメント72時間」、公式サイトにはこんなことが書かれていた。
「ドキュメント72時間」は、全く新しいタイプのドキュメンタリーです。同じ場所や同じ人々を3日間・72時間撮り続け、30分に凝縮させる。ドキュメンタリーにありがちなお説教や予定調和の構成は一切ありません。「リアリティ」に徹底的にこだわって、撮影開始から72時間のあいだにカメラの前で起きたことを、ありのままに伝えます。
気にもとめていなかった社会の片隅の出来事。ニュースからはこぼれ落ちてしまうささやかな喜びや悲しみ・・・
そうした日常の断面の3日間を見つめているうちに、自分には関係ないと思っていた社会の営みが、自分ととても近しく、一瞬一瞬を大切にしていることが見えてくる・・・そんな番組を目指します。
ドキュメント72hours | 番組紹介