終末期医療のパイオニアである、エリザベス・キューブラー・ロスの足跡と最期を紹介するドキュメンタリー。
死に際した人をモノではなく人間として扱い、安らかな最期を迎えられるよう、医療行為の意識改革を進めた人。代表作は『死ぬ瞬間』(ISBN:4122037662)。
- 作者:エリザベス キューブラー・ロス
- 発売日: 2001/01/01
- メディア: 文庫
この本では、死期が近づいたことを自覚した人がたどるという「死への五段階」が紹介されている。最近はよく聞く気がするけれど、ここでもメモメモ。
- 死への五段階
- 「否認」
- 「怒り」
- 「取引」
- 「抑鬱」
- 「受容」
今ではキューブラー・ロスの考え方は一般化してきていて、ホスピスなどのケアも充実しつつある。
でも60年代から終末期医療のことを考え始めた人には、先駆者としてのストレスがあったのかもしれない。彼女は70年代以降、大霊界の丹波哲郎のようになってしまった。人は死ぬと死後の世界へ行くことを前提とし、「人としてのステージが上がる」のような話をし始めたという。医学どころか科学そのものから離れていってしまった。
しかしある分野のパイオニアなればこそ、このような変化も今ふり返れば仕方がないことのように思えた。
ドキュメンタリーとしては、残念ながらちょっと伝わるものが薄い印象。終末期医療のパイオニアを紹介し、同時に彼女自身の終末期を追った、という以上のものになっていない感じ。企画段階ではよさげに思えたのが、いざ作ってみるとウーンちょっと、となったのかもしれないとも考えた。
追記:番組としてはいまひとつ、と書いたけれど、キューブラー・ロスの昔の業績を紹介するくだりはとてもよかった。医大の教室に、ベッドに寝たままの末期ガンの患者に来てもらい、いまの気持ちやしてほしいことを聞く。白血病の少年を訪ねて、死をどう思うか聞く。「副作用がつらい」「医師や看護婦に避けられていると感じる」といった本音を、患者のストレスにならないように気を遣いながらうまく引き出している。でもこういう話は今まで何度も紹介されてきたのだろう。そういう意味では新味がないんじゃないかなーと考えたのだった。