小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星到着に関する記者会見(2018/06/27)

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星Ryugu(リュウグウ)の高度20㎞地点到着に際して、以下のとおり記者会見を開催いたします。

小惑星探査機「はやぶさ2」の小惑星到着に関する記者会見(18/06/27) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年6月27日(水)16:00~17:00

登壇者

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(image credit:JAXA

  • ミッションマネージャ 渡邊誠一郎(わたなべ・せいいちろう)
  • プロジェクトエンジニア 佐伯孝尚(さいき・たかなお)
  • 光学航法カメラ担当 杉田精司(すぎた・せいじ)

中継録画

配付資料とリンク

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非公式サイトのリンク

津田プロマネからコメント

今日はお集まりいただきありがとうございます。今日はいい報告をさせていただきにまいりました。

(原稿を読む)本日私たちは前人未踏の探査の入口に立つことができました。今日午前9時35分にリュウグウホームポジションに到着。1302日、32億キロメートル。探査機は正常。今後1年半かけて探査を行う。

はやぶさ2が正常な状態で探査できることを喜ぶ。後押ししてくれた日本と全世界の皆様に感謝を申し上げたい。

技術スタッフ、運用メンバーについて。きわめて高い精度で往路を完走に導いた方々におめでとうと言いたい。

今後とも見守っていただければ。

佐伯さんからコメント

無事到着しほっとしている。長い航海をへて探査機が健全な状態で到着できた。この先に期待。これからはリュウグウが支配する領域。放っておいたら落ちてしまう。これから毎日運用し探査していく。手をかけていく。これまで以上に慎重に一歩一歩着々と進めていきたい。

渡邊誠一郎さんからコメント

プロジェクトサイエンティスト

リュウグウがどんな天体か解き明かし、最高のサンプルを取って帰れるようにしなければならない。時間は限られている。理学と工学、人馬一体のミッション。

これから1か月半くらいかけて表面を探査し、どこからサンプルを取るか検討する。皆さんにも関心を持って応援していただきたい。よろしくお願いします。

カメラ観測理学責任者杉田さんからコメント

これから本格的な科学探査が始まる。非常に面白い画像が撮れている。リュウグウが興味深い星であることはわかっている。問題はタッチダウンする決断するまで、ベストの情報を得て望みたいということ。理学の研究者の力の見せ所。

リュウグウ到着

(津田プロマネ)ここから取得できたデータなどについて。

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管制室の写真。ふだん巡航中は3人くらいで運用。今日はプロジェクトにとって歴史的な瞬間なのでたくさん入った。20キロメートルは宇宙のスケールでは短い距離。正確に小惑星に横付けしなければならなかったため集結。

到着時のデータ

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なにで到着を判断したか。3つの条件。

  • 小惑星上空20キロメートルに到着したこと
  • 高度を維持できていること(小惑星に対する相対速度をゼロにすること)
  • 探査機が正常であること

到着時の速度はドップラーで見る。0時51分は地上で観測した時刻。電波が届く15分間を引いて午前9時35分に到着と判断。

これで近傍運用フェーズに入った。

リュウグウ観測の連続画像

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イオンエンジンを止めた6月3日以降、小惑星がどこに写っているかでスラスティングの計画を立て指令を送っていた。そのコマ送り。

スラスターを吹くのは2日に1回程度。その間に詳細な観測をし噴射計画を作り送っていた。

リュウグウの最新画像

(距離約22キロメートル)

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撮影時刻は昨日の12時50分。ホームポジションから見えるのはこの姿。のちほど詳細に解説。

リュウグウのカラー画像

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このような黒い姿がリュウグウのカラー画像。非常に暗い小惑星。これがC型小惑星

新しいミッションパッチ

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スイングバイまで、スイングバイ以降で色を変えた。到着したのでまた色を変えた。竜宮城のイメージでこのような赤にした。

真ん中の紫は乙姫さまの高貴なイメージ。リュウグウも描き直した。

ミッションスケジュール

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佐伯プロジェクトエンジニアから。

今後、どこに下りるかを決めてあげる大きなミッションがある。それが8月下旬。そのために高度を下げた運用を行う。前半のハイライトであるタッチダウンやローバの投下は9月から10月。

11月から12月の通信できない期間を過ぎたらタッチダウンの2回目、クレーターを作る運用など。

ただしスケジュールは組み直す可能性がある。

ミッションの流れ概要

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帰還は2020年末ごろを目指す。サンプルを戻せるよう確実な運用を目指す。

はやぶさ2」の国際協力

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津田プロマネから。

はやぶさ2は日本だけのミッションではなく国際協力の中で実現。NASAとの協力関係は科学、運用の両面でクロスサポート。OSIRIS-RExも今年ベンヌに到着。緊密にコミュニケーションを取りつつ進める。

DLRとCNES。着陸機MASCOTをはやぶさ2に搭載。リュウグウの表面を探査。リュウグウの環境の研究や上空での着陸機の運用でもこれらと共同で行っている。

リュウグウの画像

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渡邊プロジェクトサイエンティストから。

リュウグウの最新画像

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そろばんの珠のような形をしている。円錐の底面を張り合わせたような形。珍しい形というわけではない。そんなに早く自転していない(1周7.5時間)小惑星なのでこのような形はあまり想像していなかった。

クレーターが中央から少し左に。直径約200メートル。リュウグウは赤道の直径が約900メートル。

大きな石が転がっている。それもこの天体の特徴。

約40kmから見たリュウグウ

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ホームポジションより遠く少しぼやけている。大きなクレーターに模様が見える。太陽光が横から当たったことによる影かもしれない。

サイエンスは可視光カメラのほかに赤外線で撮影し温度も見る。近赤外線のスペクトロメーターで表面物質の吸収スペクトルを取得(NIRS-3)。

リュウグウの立体模型を作ってタッチダウンする場所を決めていく。

220~100kmから見たリュウグウ

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少しずつ大きくなってくる。この時期ドキドキしていて毎日新しい画像が来る。少しずつ詳しく見えてきて幸せな期間。

330~240kmから見たリュウグウ

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このころからクレーターが見えている(Cの画像など)。

このミッションは地球から何億キロと離れた天体へ行き20キロまで近づくと倍率1,000万倍。実際に行くことによって得られる大きな成果。

リュウグウのカラー画像

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カメラ観測理学責任者杉田さんから。

非常に暗い天体。炭素をたくさん含んでいる。炭素質コンドライトという隕石の反射率と同等か暗め。炭素に富んでいるといえる。地上からそう見えていたことを確認できたことが大きい。

リュウグウ観測の連続画像

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毎日だんだん大きくなっていくのを見るとダイヤモンドの形に見える。いつ見てもこの形ということは自転軸が立っている…北極が下の逆光自転。「だからいつも同じ形をしていたのだな」と。形が変わらないということは上から見るとまん丸の形をしている。まさにそろばんの珠。

OSIRIS-RExが行くベンヌ(B型小惑星)もこんな形をしている。その形とは違うところへ行くと思っていたら同じ形だった驚き。局面が変わった。向こうのチームも盛り上がっている。

リュウグウの最新画像

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大きめの岩塊がそれなりの数ある。ある程度予想していた。多いほうがうれしい。タッチダウンには向かないが。岩塊から組成が見えたりする。岩塊は母天体が来た可能性が高いのでそれらの構造がわかることは母天体の起原を知ることにつながる。調査のしがいがある星。

真ん中の白い筋は玉手箱のひもではないかと。これも太陽系の起源のヒントになるのでは。

海外機関から届いたお祝いのビデオメッセージを流す

NASAのOSIRIS-RExチームリーダー、ダンテ・ロゼッタさんから

(49:53から)

吉川:彼らとは密接な協力を行っている。

NASA長官、ドイツDLR長官、CNES長官から

津田:はやぶさ2に積んでいるMASCOTはDLRとCNESが開発した着陸機。開発を始めてから3年、運用を始めてから3年、何度も先方と顔をつきあわせて設計を検討、一緒に悩みながら進めてきた。日本だけではなく欧米の科学者もまだ見ぬリュウグウをどう攻めようか考えてきた。いい相互理解に至れている。日本がハブとなってこういうプロジェクトができ責任を感じるとともに(…)

楽しく、激しく意見を戦わせながら進めていきたい。

質疑応答

(1:04:58から)

産経新聞くさか:おめでとうございます。到着の気分は

津田:いやもう天にも舞い上がる気持ちです。とても嬉しいです。いつも慎重になどと言っていて変わっていないつもりだが今日ばかりはもろ手を挙げて喜びたい。本当に嬉しい。

くさか:今後リーダーとしてどんな心構えで立ち向かう覚悟か

津田:リュウグウは人類が今日初めて到着した天体。誰も見たことがない世界の探査に今日から取りかかる。なにもわからない初めての世界。何が起こるか、どんな発見があるかわからない。果敢に挑戦してわかったことはすぐリアクションをして創造性をもって立ち向かう。

くさか:日本の宇宙探査の歴史の中でどんな意義があるか。

津田:普通のミッションの3倍4倍あり、到着するだけで意義がある。到着前提で探査する、さらにその前提でタッチダウンなどをする。そして地球に帰ってこなければならず多段のミッションが直接につながっていて慎重さと大胆さが求められる。

日本の科学力、技術力で進められること、はやぶさで培ったものを含めて成果としていきたい。

毎日新聞永山:初代はミッションごとに点数が加算された。はやぶさ2は現時点で何点?

津田:帰ってくるまでで100点という考え方もあるが一つひとつが挑戦的。まず今日は到着の成果をかみしめたい。今日までの到着は100点。ここからまた点数を積み上げていきたい。

永山:ボルダーが多いが運用面でどんな課題があるか。どんな検討をしていくか。

津田:リュウグウを見た印象はカクカク、でこぼこしているということ。予想通りだったこともある。自転レートや大きさなど。大きさは予想通りで驚いていたら渡邊さんに「それはサイエンスの冒涜だ」と言われた。サイエンスでは当たり前かもしれないが自分はとても驚いた。エンジニアリング的にどこに着陸するか検討していく。
どのくらいでこぼこしているかはこれからの観測。いろいろな場所の傾斜度も重要。計画の観点での朗報は自転軸が立っていること。同じ場所にいれば7時間半で同じ場所が見えるのは計画の立てやすさにつながる。

共同通信すえ:津田先生に。到着おめでとうございます。慎重な運用とのことだがどんなところに気を遣ったか

津田:2点。まずイオンエンジン航行。3年半のうち合計1年半くらい。イオンエンジンは決められたタイミング、方向、量で噴くのを厳格に守る必要がある。イオンエンジンの具合を見つつ軌道を補正しつつちゃんと飛んでいるか見る。これがうまくないとリュウグウに着かないので気を遣った。もう一つがイオンエンジンの航行が終わってからのアプローチフェイズ。その段階でリュウグウの軌道は100キロメートル以上不確定だった。小惑星の位置を正確に決めつつ到着させなければならない。小惑星の位置決定は徐々に大きく見えてくることで精度が上がっていく。精度が上がるとさらに接近。踏み外すと到着しないので慎重に。
佐伯さんをはじめとするプロジェクトエンジニア、技術陣が面白がってやっていた。難しい運用に挑戦しつつ面白さを加味しつつ、必要以上に正確にやってやろうとしてやりとげた。

すえ:到着時に川口淳一郎先生とどういった言葉を交わしたか

津田:おめでとうと言っていただいた。

サイエンス誌ノーマイユ(?):渡邊先生。まだ早いと思うが観測データを取っていると思う。特に面白いことは見つかっているか。想像外の現象など。普通の小惑星

渡邊:アプローチフェイズで得られたサイエンスについて。近づくにつれていろいろ見えてきていろいろ議論している。データを分析し証拠を積み上げ論文にすることで成果が決まる。それには各機器のキャリブレーションが大事。そういう意味では時期尚早で、これからサイエンスの議論ができるようにしていく。
一つ話すと、着陸の時ボルダー(岩塊)が多いのは予想外。重力が小さいので他天体が衝突すると飛び出していってしまうはず。どういうことが起きているのだろう。リュウグウが経てきた歴史や母天体の歴史がボルダーが多い理由になっている可能性がある。調べていきたい。

NVS齋藤:仮想天体のリュウゴイドでシミュレーションをしてきたがリュウグウが近づいてきてここが合っていた、ここが違ったということがあれば

渡邊:初号機と大きく違うことは小惑星のシミュレーションをし地上でチェックしてきたということ。サイエンスと工学系で協力しいろいろな準備ができた。リュウグウを想像し作ったのがリュウゴイド。実際見てみるとちょっと違うなと思うかもしれないが、いろいろ想像しつつ訓練に向く形を作った。違っていたから意味がなかったということはない。シミュレーションしたことを本物のリュウグウで試せるのでわくわくしている。

齋藤:訓練は本番に役立ちそうか

渡邊:それはものすごく役に立つでしょう。いろいろ起きることを事前に訓練できた。本番で新たなことが起きるだろう。チームとしての力が高いのでサイエンスとしてはその力量を生かしたい。

時事通信かんだ:これからサイエンスの本番に入る意気込み。またOSIRIS-RExと競争になる面もある。はやぶさ2がここは先に明らかにしたいということがあれば

渡邊:意気込みはわくわくしている。小さいものが大きく見えてきて謎が見えてきている。どのように謎を解くか。単に眺めるだけではなく最後にはサンプルを持ち帰らなければならない。それには工学系とともにうまくやらなければならない。その積み上げでなしとげられる。着いて淡々と観測するのではなく冒険が始まる。わくわくしている。
OSIRIS-RExの目的地のベンヌリュウグウは形がよく似ていて意外だった。スペクトルも似ている。ともに広い意味でのC型、炭素質のものが表面にある。似た天体どうしどこが同じでどこが違うかを調べるととても多くのことがわかる。似ている2つを比べるのはサイエンスとしてとてもよい戦略。奇しくもそういう状況が作られた。協力して解き明かしていく。競争的なところもあるがコラボレーティブにやっていきたい。

ライターあらふね:佐伯先生。リュウゴイドでの訓練は到着までどう役に立ったか

佐伯:訓練は何十回もやってきた。訓練をすると課題が出てくる。この手順を入れ替えたほうがよいなど。事前に想像できる範囲で抽出し今後の近接運用に向けて修正し手順をよくしていた。訓練は1年以上密にやってきたのでチームの結束も高まった。コミュニケーションもスムーズに。訓練してよかった。

あらふね:訓練してよかった事例はあるか

佐伯:この方法で下りるのはとうてい無理とわかったりした。非常に有益だった。

あらふね:これからの近接運用で気をつけることは

佐伯:意気込みという点では急に難しいことはできない。訓練はシミュレーションだったが今回は本番。ステップを踏んで少しずつ歩みを進めていく。そのようにスケジュールも組んでいく。日々の運用から得られるフィードバックを反映させることを大事にしていきたい。

あらふね:渡邊先生へ。面白そうな地形などはあるか

渡邊:先ほどの画像いろいろ面白いものが見えてくる。自分の目で画像を見てほしい。キャリブレーションでより正確なことがわかってくる。キャリブレーションはこれから1週間くらいかけて。そのあといろいろお伝えできるようになってくるだろう。

ニッポン放送はたなか:津田先生。今後のタッチダウンインパクターを使うための必要条件は。また現時点で難易度をどのくらいと感じているか

津田:必要条件は…8月下旬までかけて小惑星の素性をよく知る観測をする。重力を測定、三次元形状モデルを作る。小惑星に近づくことの危険性、安全性、どこにアプローチするか決める。重力のかかり具合でタッチダウンできる場所を選び、一番価値が高い場所に下りる。タッチダウンは1回だけでなくMASCOTやミネルヴァを下ろしたりする。それらは同じところではなくリュウグウが自転している中それぞれ違う場所に下ろす。どこをなんのために運用するのか、場所取りのようなことをする。それらを整合させるのが8月下旬。

はたなか:地表面の条件はどうか。でこぼこしていて大変そうだが

津田:難易度が上がることは織り込み済みだが、それにしても難しそう。モノが見えたら「神様はそんなに優しくないんだな」と。それでも着陸できる場所はあると思うので精査して決めていく。

フリーライター喜多:津田プロマネに。月曜のサッカー、セネガル戦を解説していた岡田武史さんが「日本のサッカーは壁を越えた」と言っていた。今回の到着で日本の宇宙探査で越えた壁があるとしたらどういうものか、またどういう景色が見えたか。

津田:直近の比較対象ははやぶさ(初号機)と思う。その経験をふまえて技術を盛り込んだ。それが十分できたから信頼性高く小惑星に到着できたことだと思う。無傷で到着したのは宇宙研としては快挙。そういう意味では壁は越えただろう。ただもっと高い壁がある。ワールドカップ優勝を目指したい。

日刊工業新聞とみい:津田さんに。往路をふり返りはやぶさ2に関わっている企業や大学への評価は。協力体制についても

津田:順調に来られたのはJAXAだけでなく日本や世界の企業、運用に携わった企業の成果も忘れてはいけない。国内外の研究機関や研究者の知見も盛り込まれている。それらが有機的につながってここまで来られた。宇宙探査技術はメーカーや研究機関含めてさらに高まったと感じている。

久保田:先ほど壁の話があった。はやぶさ2は国際協力で成果を上げている。ビデオメッセージを4つ紹介させてもらったがとても力が入っていた。ふつうは「おめでとう」というメールが来るだけなので驚いた。天文学では日本は世界を引っぱっている。探査でも引っぱっていく仲間に入ったのだなと思う。ベピコロンボESAと協力して秋に打ち上げる。MMXやデスティニーは計画段階だが国際協力でいい感じ。そういう意味で壁を越えたのではないか。

朝日新聞はまだ:津田プロマネに。先ほどの今後の心構えとして、創造性を持ってというのはどういうことか

津田:まだ見ぬリュウグウへの訓練をしてきた。多くのケースを想定し綿密な計画を立てている。理学、工学、メーカーと一緒に。とはいえまだ見ていないリュウグウに対してこうしますとはまだ決まらない。綿密な計画をベースにしてメンバーと議論しつつわくわくしながら計画を練り直そうとしている。

はまだ:ミッション全体を通してJAXAにどういう意義があるか。あかつきやひとみの失敗もあったがどう位置づけるか

津田:C型小惑星を選んだのは科学的なストラテジーがあって。それは狭いメンバーで決めたのではなく国際的な潮流だった。イトカワというS型小惑星の次にサンプルリターンはと科学者に聞くとC型だと。それをはやぶさ2が攻めたことが大事。科学者の興味・関心を牽引してこの企画を立てられた。宇宙科学探査のハブとなってはやぶさ2を企画できた。国際協力としては日本だけがメインになって行うものではなくお互い得意なところをギブアンドテイクして。対等な立場やリーダーとして参加できるのは意義深い。

とちぎテレビいわむら:栃木出身の吉川先生に。改めてミッションマネージャーとしての意気込みと、ふるさと栃木県の人にメッセージを

吉川:自分にとって長い計画。はやぶさ2を最初に提案したのは2006年。はやぶさが大変なときでなかなか予算が通らなかった。ふり返ってみると苦労はあったがリュウグウを目の前にすると吹っ飛んだ。探査できることが嬉しくわくわくしている。
自分は高校卒業まで栃木県にいた。都会ではなかったが宇宙をやりたいという思いがありここまで来ている。栃木に限らず若い人は夢を持って自分のやりたいことをやってほしい。

東京とびもの学会金木:渡邊先生に。リュウグウの自転軸が立っているというのはなにに対して?

渡邊:そのあたりは少しややこしい。地球は北極を上にすると右へ回っている。右へ回せる軸を北とするのが小惑星のルール。大きな惑星になるとルールが変わり、地球の北極と軌道面(黄道面)に対して同じ方向を北と呼ぶ。なので金星のように地球から見て逆回転していても黄道面に対して同じ側の極を北極としている。
リュウグウの場合南極側を北極と呼ぶ。

金木:自転軸が立っているのは公転面に対してか、地球の黄道面に対してか

渡邊:自転軸は少し傾いている。黄道面とリュウグウの公転面の差は5度くらいなのでどちらに対しても立っている。このあと精密観測でより正確な数字がわかるだろう。

ライター林:渡邊先生に。たくさんあるボルダーはどのくらいの大きさのものを指していうのか

渡邊:リュウグウの直径は赤道面でおおむね900メートル。大きなクレーターの直径は約200メートル。たくさんの岩が飛び出している。ぼこぼこ出ているものを仮にボルダーと呼んでいる。100メートルクラスのボルダーもあり、リュウグウの大きさに対してとても大きいので不思議なこと。

林:表面全体に対してボルダーが多いことが不思議?

渡邊:数と大きさ。小さいものがどこまであるかはタッチダウンに関係してくる。ボルダーは日本語では岩塊と訳される。

林:大きい岩塊に模様が見えると杉田先生がおっしゃっていたが

渡邊:そこは聞いていなかった。これから解像度が上がればいろいろ見えてくるだろう。リュウグウは水が関与してできた天体が壊れてできた破片天体であるという予想がある。そうだとすると層を作る可能性がある。それが岩の表面に見えることがあるかも。

林:津田プロマネに。「創造的」と一緒に「大胆に」と言っていたが真意は

津田:見れば見るほどどこに着陸したらいいのかという天体。安全に生き残ることとタッチダウンを成功させることは別で、タッチダウンの可能性は低くても安全は100パーセントという状態は作れる。でこぼこ具合が思った以上でタッチダウン中にはやぶさ2が着陸しないと判断することがあるかもしれない。それでもそこがタッチダウンの成功確率が一番高い場所ならそこへタッチダウンする。
リュウグウという初めて見る天体でどこを攻めるか大胆に決めていきたい。

赤旗新聞なかむら:佐伯先生に。この地形が気になるなどはあるか。

佐伯:写真を見てどこに下りるかの議論が盛んになっている。皆さんはどう思いますか。訓練より格段に難易度が上がっていると感じている。
工学からすると無事着陸させなければならない。(サイエンスの)渡邊先生はここに下りろと言ってくるだろう。そこは話し合って着陸点を選定する。リュウゴイドでの訓練でも白熱した議論があった。実物でも同じような活発な議論が出るだろう。
訓練の時は神様が少しだけ優しくて、着陸できそうな場所を作っておいてくれた。実物は現時点では裏を見てもどこに着陸するべきか悩ましい。皆さんも頭を悩ませてみてほしい。
大きなクレーターの底はどうかと思うだろうが200メートルくらいある。可能かどうか話し合いをしている。

テレビ朝日さとう:津田さんに。着陸の宣言ではどんなことを言っていたのか、映像ではちょっとわからなかった

津田:探査機から計画通りの噴射をしたと返ってきたので、これをもって到着と判断したいと思う。続いてはやぶさ2リュウグウ近傍フェーズに移行しますと宣言した。
宣言のあとの段取りですか。近傍フェーズに移行したらすることは決まっていて、必要なコマンドを淡々と打つ作業に移行した。

さとう:宣言の時の気持ちは

津田:やりとげた。小惑星に向けて32億キロメートルの飛行をタイミングよくすべてのことをうまくこなしてホームポジションに着く。その達成感を感じた。

サイエンスライター青木:本日はおめでとうございます。津田先生に。画像を見るとどこに下りたらいいか大変な状況。安全面と科学的に下りたい場所のバランスが難しいと思うがどう考えるか

津田:基本的には探査機は工学のものであり安全が最優先。探査機の性能の範囲内でどんな挑戦ができるかが科学的な選択となる。安全と成功確率は概念が違う。安全は絶対守らなければならないがその範囲なら成功確率が100パーセントでなくても高いところを選ぶ。それが新しいところでの必要な概念。技術的な要素もあるし科学的にいい場所に着陸しなければならないというところもありそれを掛け合わせて成功確率が高いところを選ぶ。

青木:ミネルヴァIIとMASCOTの切り離しは地上からのコマンドか、それとも自律判断か

津田:基本的に探査機自身に自律で判断させて分離させる。

青木:初号機のときはなぜ地上からのコマンドで切り離したのか

久保田:当時も自律で切り離す予定だったがリアクションホイールの故障でシーケンスを変えたりしたためコマンドでということになった。

読売新聞まえむら:津田先生に。日本は小惑星探査を続けていくべき? もしそうならどんな意義があるか

津田:はやぶさはやぶさ2と続けてこられているのははやぶさの成果が非常に大きかったからと、これによってこんな探査ができると世界に示せた。それによってはやぶさ2ができたしMMXにもつながっている。サンプルリターンは宇宙探査としては珍しく、はやぶさが切り開いた世界。それができるのは我々の特有の技術。これを伸ばしていくことで新しい科学に迫れる。これが我々の宇宙探査の攻め口。これで科学を牽引できる限り広げていきたい。
小惑星探査はS型の次はC型という機運だったのは太陽との距離が関係している。太陽から遠い軌道に行くほどS→C→D…と変化していく。順に調べていくことで生命の謎に迫る。我々がサンプルリターンできるのは今はC型が限界。これをさらに遠く、火星や木星圏までとなるとD型など新しい小惑星の世界が見えてくる。順番に攻めていくことでわかる科学的な世界がある。入口を切り開いた経緯があるので小天体探査を進めるのがよいと思う。

(以上。終了時に記者から拍手)