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小惑星探査機「はやぶさ2」地球スイングバイに関する記者説明会

開催日時

  • 2015年10月14日(水)14:00~

登壇者

中継録画

※01:10くらいに始まります

関連リンク

記者説明会

おかげさまで打ち上げから現在まで10か月強、順調に経過

スイングバイはひとつのマイルストーン

スイングバイの概要


(1)地球スイングバイの目的

2018年6~7月にリュウグウに到着

そのための軌道変更

(2)スイングバイ軌道

地球の公転速度は秒速30キロ

地上からはやぶさ2を見ると秒速10.3キロで移動して見える


(3)地球スイングバイに関する運用

緑の点で軌道修正(TCM)を行う

地球に対して奥行き方向の計測が従来

Delta-DOR観測は実運用では初実施

緑の楕円が従来手法のみ、赤い楕円がDelta-DOR観測も併用した観測による軌道決定

運用中唯一の日陰運用

スイングバイに関する予定

(1)概要


(2)地上望遠鏡による観測キャンペーン

地球最接近が午後7時7分ごろ、太平洋上空

明るさの予測は難しいがかなり暗く肉眼では無理、大きい望遠鏡でないと見られないだろう

探査機の面がどちらを向いているかによって明るさが変わる(SPE角を参考に)

「のぞみ」の明るさは15~16等、はやぶさ2も同程度かもしれない

(3)スイングバイの結果の公表と説明会について


参考:スイングバイの原理


スイングバイの様子を示す動画

質疑応答

NHKつちや:最接近とスイングバイは同じ時刻か

津田:スイングバイはポイントのことを言うわけではなく、軌道を曲げる運用そのもの。

つちや:日陰は最接近を中心に前後10分か

津田:その通り。はやぶさ2に光が当たらないので地上からは見えないだろう。

つちや:最大光度の予測は

吉川:予測は難しい。小惑星の計算式をあてはめると10等くらいと出るがあまり信憑性はない

つちや:はやぶさ2と地球の運動の関係について

津田:太陽側から太陽の反対側へ飛んでいく。なので日陰がある。はやぶさ2が地球に追いつく感じ。

産経新聞くさか:運用中の唯一の日陰について。日陰を経験するのが唯一なのか、バッテリーのみによる運用は初/唯一なのか

竹内:太陽電池パネルに光が当たらないことを指している。バッテリーのみの運用は初/唯一ではない。

くさか:Delta-DORはやぶさ2が初なのか

竹内:ボイジャーなどがすでに使っていた。このところの技術革新で精度が向上した。デジタル機器の一般化、GPS衛星が飛ぶようになったことなど。
「新手法である」というのはJAXAでということ。IKAROSで実験的に運用したことはある。

毎日新聞さいとう:軌道計算の上で日本の夜に観測できるようにしたのか

津田:そういう期待はあったが実際は違う。リュウグウに到着する最適な軌道を選んだ結果。

さいとう:スイングバイは月や惑星を使うとのことだが地球以外の星でということは考えなかったのか

津田:一般的には他天体を使うことはよくあるがリュウグウは近地球天体であり地球を使うのが都合がよい。

NVSさいとう:はやぶさのときと同様カメラのテスト撮影は

津田:計画としては入れたい。しかしあくまでスイングバイを成功させることが主目的なのでカメラが都合よく地球を向けられればの話。

共同通信ひろえ:はやぶさ2の面というのは太陽電池パドルということか

吉川:探査機の姿勢はわかっているが微妙な変化で明るさは大きく変わるため正確な予測は難しい。

ひろえ:「およそ10等」とは

吉川:探査機の形状を断面積と同じ大きさの小惑星(球)と仮定したときの明るさ。

ひろえ:スイングバイのときの運用はあるのか

津田:最接近時刻そのものの運用はない。その時刻にアンテナでトラッキングする予定はない。前後数時間に運用がある。スイングバイ前と後の探査機の状態がわかる。

ひろえ:マイルストーンとのことだが意気込みを

津田:マイルストーンとしては打ち上げ、イオンエンジン稼働に続く関門。はやぶさ2としては新しいチャレンジ(軌道運用)。
リュウグウに着くまでにはたくさんすることがある。はやぶさ2としては着実にすませることで道が開けていく。着実に進めたい。

NHK水野:軌道制御は12月何日何時に行うか。化学エンジンはいくつあるかと今までの稼働実績は

津田:TCMは3回、11月3日、11月26日、12月1日を予定。このとき12基ある化学エンジンを使う。軌道修正に使う方向の化学エンジンを使う。
軌道上での12基の噴射試験はすんでいる。
軌道修正の時刻は運用時間のまん中あたり。のちほどお答えしたい。

水野:TCMの時刻が確定するのはいつか。教えてもらえるのか

津田:まず精密な軌道計測、決定するのは前日または前々日。そのときこのくらい噴こうと決まる。事前にお知らせはする予定。
噴いている時間は数秒から長くて10秒程度。すでに正確なスイングバイ軌道に入っているのでそのくらいですむ。

水野:じゃあそんなに難しいものではない?

津田:難しくなくできましたということ。

赤旗新聞なかむら:スイングバイのこれまでの成功率

津田:回数はとても多くて正確に答えるのが難しい。日本はスイングバイの経験が豊富。月探査機「ひてん」、GEOTAILでは月と地球でたくさんスイングバイしている。世界で一位かどうかはわからないが何度も行っている。
「のぞみ」がパワードスイングバイスイングバイ時にスラスターを噴射する手法)に失敗したことはある。このときは噴き足りなかったので軌道の問題ではなくエンジン側の問題だった。

なかむら:スイングバイでの増速量をイオンエンジンで獲得しようとしたらどのくらいの噴射時間や燃料量が必要か

津田:イオンエンジン3基を全速で使うフルパワー運用で1年噴き続けないと獲得できない速度。必要な燃料が6割増しなどになり、探査機が重くなって打ち上げられなくなる。

なかむら:今回のスイングバイでの特徴は

津田:Delta-DORによる精密誘導。
また位置関係が特殊で、北から相当南へ抜ける。北半球から見えなくなるため南半球からの観測が重要。国際協力が重要になる。

なかむら:はやぶさ2は地球と同じ軌道面にあるのか

津田:このスイングバイをしてやっと太陽に対して軌道面は1度くらい変化するといった程度。
リュウグウの軌道系射角は5度程度、それに合わせて打ち上げているからスイングバイで5度変化するわけではない。

なかむら:地球とはやぶさ2の相対速度と距離は

津田:距離は2000万キロ、対地速度は秒速5.2キロで近づいてきている。

朝日新聞おくむら:スイングバイの意味合いについて。全体では2歩め3歩め、リュウグウへ行くイベントとしてはどうか

津田:はやぶさ2リュウグウを観測するだけが目的ではなく宇宙航行技術を磨くという目的もある。深宇宙航行の最先端技術を駆使しないと達成できない。そのひとつであるスイングバイを成功させることが必達事項。
航行技術を進化させるために重要なイベント。

おくむら:リュウグウへ行くために一番大きいイベントといえるか

津田:わたしのような軌道屋としては一番大きいがイオンエンジンも大事。今まで噴いた時間の10倍必要。

おくむら:IKAROSで実験的にDelta-DORを行ったとのことだが具体的には

竹内:Delta-DORのための機器はIKAROSにもあったが独立な系として実装、実験した。
これでうまくいくと確認できたため、はやぶさ2では本格的に運用することになった。

おくむら:IKAROSではDelta-DOR機器がなくてもよかったということか

竹内:新しい機器をいきなりこのような大型計画に載せるわけにはいかないためIKAROSで試験したということ。

おくむら:10等級の明るさの目安は。また大きな望遠鏡とは具体的にどのくらいなのか。市販の望遠鏡で可能か

吉川:10等級をわかりやすく説明するのは難しい。肉眼で見えるぎりぎりが6等級。みんなが知っている天体でというと…見えない天体は知られていないので難しい。
「のぞみ」を観測した望遠鏡は口径60センチ~80センチ。さらに長時間露光でやっとわかるというところ。
60センチはアマチュアの中でもプロ級でなければ無理。ご家庭で買うのは難しい価格。
またはやぶさ2は動きが速い。それに合わせて望遠鏡を動かすのもまた難しい。

読売新聞ふゆき:Delta-DORで使うアンテナは具体的には

竹内:ESAとは行わずNASAと協調。
資料の9ページ、キャンベラ、マドリッド、臼田などを組み合わせる。
天球面上の2点での関係が重要。天球上で南北と東西、なるべく直行する2点から観測することが望ましい。

ふゆき:地上観測の場合体感速度は

吉川:最接近時でも流れ星のようにさっと過ぎることはなく、1秒間に1度か2度程度。近づく手前は1秒間に数分程度だったりも。ただ望遠鏡で見ているとどんどん過ぎていく。

ニッポン放送はたなか:日本を通過する幅は具体的には

吉川:国内の場所によって異なる。
臼田は日本の中心と仮定すると資料13ページ、日没のあと19時まえまで観測できる。首都圏も臼田とそう変わらないだろう。
北海道の名寄石垣島についても図を作った。北海道が観測しやすい。

はたなか:いまのところ10か月のフライトは順調とのことだが感想を

津田:打ち上げ以来チェックアウト、イオンエンジン稼働ときてスイングバイにこぎつけた。これをうまくやらないといけないというイベントばかりだが今回もうまくやりたい。次はイオンエンジンの本格稼働、リュウグウへの接近と続く。
まずはスイングバイを着実に。

宇宙作家クラブ上坂:観測キャンペーンについて。どんな情報が提供されるか

吉川:テキストファイルで方位角、高度、赤経赤緯などの情報を提供したい。

日経サイエンスなかじま:南半球局での運用はもう始まっているのか

津田:まだ。スイングバイ直後から始まる。

なかじま:最接近が3100キロというのは理想の軌道なのか

津田:スイングバイ高度3100キロ前後というのは予定通り。実際は精密な軌道決定ごとにどうすればリュウグウに着けるかを再計算している。短い時は週1回、長くても月1回。
これから先も高度は若干変わると思うがその範囲も予想内。

なかじま:予定から若干変わるというのはなぜ

津田:たとえば、探査機に含まれている水分が打ち上げ後抜けていくとガスになり軌道を乱す。
探査機が光を受けてどう軌道が変わるかは、最初のうちはわからずに誤差が出やすい。飛んでいるうち姿勢ごとの変化がわかってくる。
そういう原因で変化する。

なかじま:運用の結果だんだん枯れていき精度が増すということ?

津田:最終的な観測精度の問題はあるがそこまでは精度は上がっていく

竹内:太陽光圧による軌道への影響はあるが太陽フレアによる太陽風は軌道への影響はない。

フリーランス喜多:あかつきとの運用の干渉をどう克服してきたか。またDelta-DOR観測はどのくらい膨大なデータを扱うか

津田:あかつきとアンテナの取り合いをしているが幸い運用時間が重なることはなく時間をずらしてシェアしている。これははやぶさ2の地球スイングバイまで続く。
スイングバイ後の12月7日にあかつきは金星周回軌道に投入され科学観測に入るが、このころはやぶさ2は南半球局しか使えない時期が5か月続くので運用が重なることはない。

竹内:Delta-DORで扱うデータは1観測1時間で数十GBから100GB程度。2局で行うからその倍。HDDが安くなっているので大変ではないが従来手法のデータ容量はキロバイト単位なので相当大きい。
海外局から数十Mbpsで一日かけて送ってもらったりする。

喜多:はやぶさの場合直径1キロ内を通過したと発表されたと思うが今回は180メートルの輪くぐりをするのか

竹内:噴射の精度もあるのでそのままスイングバイ精度にはつながらない。観測精度が上がったので以前より狭いところを通せるといえる。

喜多:180メートルの楕円というと陸上トラックくらいの範囲。そこを飛ぶといえるか

津田:今どこを飛んでいるかの計測精度はそのくらいだがスイングバイに必要な精度はそこまでではない。

NHKおかだ:Delta-DORによる精度向上は単純に倍数で考えてよいか(2キロが180メートルというのを10分の1などといえるか)

竹内:基本的にはその通り。

竹内:通常運用時の軌道推定は週1回。TCMのようなイベント時は観測回数を増やす。一番多い時は毎日くらいでTCM2とTCM3の間あたり。

毎日新聞さいとう:国際協力について。南半球局での運用が始まったりするとのことだがデータをもらうという形なのか、人が行ったりするのか

津田:今回は海外局ではやぶさ2の電波をトラッキングしてもらうということ。相模原の管制室と海外局をつないでダイレクトにデータをやり取りする。
管制室からはやぶさ2と通信する。

さいとう:リュウグウに到達するのを富士山でたとえたり竜宮城への道のりの中でのスイングバイの位置づけは

津田:ほかのメンバーは感じ方が違うかもしれないが、自分のイメージは打ち上げまでの行いがよかったので亀に認められて打ち上げることができた。スイングバイで海に入れた。海中ではエンジンをふかしてリュウグウへ行く。

NHKすずき:スイングバイアウトリーチ活動について

吉川:スイングバイ時の軌道を公開するのは決まっていてこれは準備ができしだい。
提供するデータははやぶさ2の位置情報が時系列で並んでいるだけで、軌道のことを知らないと扱えないかもしれないがそこは勉強していただいて、速度の変化など計算できる。
動画にしたりアプリにしていただくなど、天球のどの位置にはやぶさ2がいるかわかるといったものなどを想定している。
すでにいくつかアプリ化の要望をいただいていて活用してほしい。

宇宙作家クラブ松浦:スイングバイ時の情報公開について、できるだけ地球を撮影して早く公開してほしい。
初めて通過するターゲットとして観測したことがあったらなるべく当日に出してほしい。研究者からはレーザーレンジファインダで地球との距離を測りたいなどの声があった。

広報:できるだけ対応したい。

(以上)