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「はやぶさ2」衝突装置運用実施にかかる記者会見

日時

  • 2019年4月5日(金)14:30〜

登壇者

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(image credit:JAXA

(左から久保田氏、吉川氏)

中継録画

関連リンク

衝突装置運用の実施について


久保田:はやぶさ2は11時57分に正常を確認した。予定されたシーケンスはすべて完了したことを確認。退避行動ののちホームポジションへ復帰。

吉川:Gate1から5までの運用結果の速報。SCIが作動する時刻の11時53分を過ぎてからが一番緊張した。探査機に異常が出ないか3分間モニタリングした。3分後も正常であり探査機の健全性を確認。

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この写真はSCIを分離した直後のもの。現在データをダウンロード中。

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質疑応答

日刊工業新聞とみい:地上時刻で11時53分と56分の違いは

吉川:11時53分のSCIが作動したと考えられる時刻から3分間、探査機に異常が出ないか見守った。SCIの破片やリュウグウからのイジェクタ、砂れきが探査機にぶつからないか注視。3分経って11時56分になっても探査機の状況に変化はなく、これらは当たっていないと判断した。探査機は退避した後移動速度を下げて健全性を確認した。

月刊星ナビうめもと:午前のブリーフィングで、タッチダウンではあれほど細かいものが舞い上がるとは予想していなかったと話していた。それを受けて今回のSCI運用に工夫はあったか

吉川:タッチダウンで細かなものがたくさん舞い上がったのは上昇のために噴いたスラスタの勢いによるもの。小惑星の重力が低いので軽くないものも舞い上がった。その影響でONC-W1カメラの光量が下がったが運用に問題はないと確認済み。

久保田:スラスタの噴射で細かいものがたくさん舞い上がったのを見て今回のシーケンスを再確認した。SCI分離後に横に移動する距離を約1キロメートルとした。

共同通信すえ:このONC-W1の画像からSCIの分離は成功したといえるか

久保田:その通り。分離コマンドが出た、本体側に分離のアンサーがあった、SCIの分離で本体の温度が下がった、火工品の作動による温度変化、これらをデータで確認。さらにこのような写真もあるので予定通りの分離は確実。
SCI分離時の姿勢や速度は解析中。この写真は確実に分離したものと考えていただければ。

すえ:SCIが作動したと確認できるデータはあるのか

久保田:SCIには通信機能がない。DCAM3の撮像データをはやぶさ2に転送準備中。

ライターあらふね:DCAM3に問題がないことを通信から確認したのか

久保田:DCAM3とはやぶさ2の間に通信が確立していることは確認している。11時50分すぎ通信が回復。通信は良好で乱れはなく姿勢は安定している。
今も通信は取れているのではないか。データが来るのを楽しみにしている。
はやぶさ2へデジタルデータが来ていることは確認済みなので、なにかは撮れているだろう。

NHKふるいち:高度500メートルに到達した時刻は

吉川:機上時刻で10時44分。予定通り。正確な時刻はのちほど。

ふるいち:先ほどの画像についてもう少し絵解きをしてほしい

吉川:ストロボを炊いているので背後にリュウグウは写らない。切り離して数秒後、ONC-W1で撮影。DCAM3の画像は16時半からの記者会見に間に合えば。

読売新聞とみやま:退避はうまくいったことについてどう評価するか

吉川:今回の運用で重要なのはSCIとDCAM3を分離したあと退避するもの。退避は順調にいった。すべて予定通りに行われた。ドップラーデータやテレメトリでも確認している。予定通り加速できてよかった。

久保田:チームはドップラーデータを見たりスラスターを噴く時間のカウントダウンもしつつ見守っていた。
垂直降下からSCIを分離し、横方向に動いてから垂直降下という動きを1つずつ確認しつつ。
航法誘導チームは「いま何秒噴いた」といった報告を上げていた。1つひとつの挙動が正確に動いていることを確認。回避行動は想定通りの完璧なミッションを今日もやってくれた。
衝突装置がクレーターを作れたかはまだわからないが、退避行動に関しては完璧にミッションをクリアした。

とみやま:衝突装置がうまく動いたかについては前のめりな期待はしていない?

久保田:小惑星の内部の物質を採取するのが大目的。人工クレーターを作るのが目標。複雑な運用をこなして、SCIを分離しDCAM3とも通信できたというのは非常に大きなこと。回避行動は成功できたと思っている。

とみやま:惑星防護の観点からはどういう成果があったか

吉川:SCIの威力は小さいので地球に衝突する小惑星の軌道を変えたりはできないが、正確に探査機を運用できた。小惑星のこの位置にという必要ができたときのためには重要な成果になった。

NHKたかい:画像が出たとき、この会見室に「おお〜」と声が出た。管制室はどういう雰囲気だったか

吉川:画像が出たという一報が出たときはみなが画面に押し寄せて黒山の人だかり。後ろの人はなかなか見えないというくらい興奮していた

たかい:現在の管制室の様子は

吉川:淡々と落ち着いている。20名ほどが作業中。

産経新聞くさか:衝突装置は前例のない作業。新しい探査手法を切り開いていると思うが意義は

吉川:SCIが実際に作動したか確認できないと答えづらいが、SCIとDCAM3の分離には成功していて、探査機も予定通りの軌道を通過した。ひとつの大きな進歩。SCIが作動したことを確認してからまたコメントしたい。

久保田:この画像からどういう分離をしたか解析できる。スピンをかけながらの分離は宇宙でよくやるが、はやぶさ2という深宇宙で行った。
また自動シーケンスでの移動。スラスターを噴くのはけっこう大変なこと。バランスがありずれることもある。それが予定通り進んだ。
DCAM3とも通信できている。チームも不安になっていたところ。通信を確保できたので思わず拍手が出た。難しいミッションをやりとげた。アクロバットでチャレンジングなやり方をこなしてきた。深宇宙探査の可能性を広げた。将来的にいろいろなものを落としたり、その様子を横から見ることもできる。探査機を自由自在に動かせるようになったことは今後の宇宙探査を広げる。

くさか:先ほどのブリーフィングで「平成最後の大仕事」とのことだったがどう評価するか

久保田:控えめには第一関門を突破。4月下旬にはクレーター探索運用。平成最後の大仕事は4月下旬まで続くかなと。平成の中で完璧な仕事をしたい。人工クレーターを平成のうちに見つけて、令和の時代にタッチダウンしたい。

くさか:探査機の無事が確認されたときのお二人は。ほっとした?

久保田:チームは異常がないことを確認する。異常がなければ電波の受信量も探査機の状態も変わらない。なにをもって大丈夫かというのは判断が難しい。ひょうひょうとモニタを見ていた。
速いイジェクタが当たればわりとすぐ異常が出る。3分たてば大丈夫だろうということでプロマネが正常宣言をした。その後も異常はない。みなさんほっとしただろう。データが変わらないのを判断するのが難しかっただろう。

吉川:自分ははらはらしていた。システム担当が3分間のカウントアップを行った。なにも起こらずほっとした。

テレビ朝日いたくら:みなさんの率直な気持ちは

久保田:人それぞれだが顔色を見ているとほっとした、やりとげた感じ。開発から試験、運用と長期間あり、打ち上げからも4年以上たっている。DCAM3に関しては打ち上げ後なにもできない。4年後に動作するかという不安があった中ちゃんと動いた喜び。達成感があるのではないか。DCAM3の映像を待っている。

吉川:画像を見てまずはほっとした。ちゃんと動作したことがわかって、苦労してきたかいがあったと思うだろう。
ミッションはまだ続く。地球へ戻るまでは気を引き締めていきたい。一つひとつクリアしていって、安心材料が増えてきてよかった。

いたくら:もう少し緊張感が続く?

吉川:ここでバンザイと手を上げるわけにはいかない。SCIがちゃんと働いたかが直近の問題、さらにタッチダウン、地球帰還と関門がある。本当に喜べるのはサンプルを手にしたときだろう。

ニッポン放送はたなか:お二人が画像を見ての第一印象は。想像と比べてどうだったか

久保田:管制室にいてオーッと声が上がり駆け寄った。かなりくっきり写っている。白く光っているのはターゲットマーカと同じ反射材。届いているほかの画像とあわせて分離時の速度と姿勢がわかる。分離装置の性能と落下地点を解析できる。2週間後にクレーターがあるか確認しにいくためのデータになる。
ONC-W1はタッチダウン時に暗くなっていたがこの写真を見るとターゲットマーカをとらえることはできるだろう。2回目のタッチダウンができそうで二重に喜んでいる。

吉川:最初の印象はとてもきれい。はっきりくっきり写っていると感じた。連続写真もあり解析中。ONC-W1は暗くなりつつもきちんと働いてよかった。

朝日新聞すぎもと:SCI作動後3分間待ったとのことだが、3分間にした根拠は

久保田:一番心配していたのは衝突の破片が高速に飛んできて探査機のどこかに当たって損傷すること。太陽電池パネルに当たるとか。速いものは早く来る。180秒間なにもなければ大丈夫という今までの解析結果。戻ってくるものがあったりするのでその後も注視していたが、まずはSCI作動後の180秒間が一番危険な時間ということで見守った。

時事通信かんだ:先ほどのタイムテーブルは実際の機上データをまとめたもの?

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吉川:これらはあらかじめ探査機に送ってある時刻。

久保田:あらかじめ決められた時刻で、アンサーも確認している。SCI分離は予定時刻で、その通り進んだことも確認済み。SCIの作動は予定時刻。

かんだ:退避は小惑星との位置関係も確認しつつ行ったのか

久保田:軌道決定には手続きが必要なのでできていない。探査機のジャイロや加速度計のデータをもとに、ある意味目をつぶってどれだけ動いたか推定したもの。
小惑星が見えてくれば相対位置もわかるが、はやぶさ2は地球から見て小惑星の向こう側へ行っている(今村註:はやぶさ2の下面にあるONC-W1の視野にリュウグウは入らない)。
スタートラッカーやジャイロで姿勢はわかる。位置はスラスターを噴いた時刻や加速度もわかるのでそこから位置を推定している。

吉川:探査機の絶対座標は数日中にわかる。ONC-W1の視野にリュウグウが入ってくればリュウグウとの相対位置もわかるだろう。

NHKきぬた:先ほどのONC-W1の画像でリュウグウはどのくらいの大きさに見えている?

久保田:視野いっぱいにリュウグウが入っている。フラッシュをたいているのでSCI以外は暗いが、画像全体にリュウグウが広がっている。

きぬた:SCIは画像ではどう動いていく?

久保田:これが分離数秒後の最初の画像。画像内で小さくなっていく。連続写真があるので動画にしたい。

NVSさいとう:小惑星ベンヌ」を探査しているオシリス・レックスによると、ベンヌからはデブリがときどき出ているという。リュウグウはそれほど活動していないとみられているようだが、SCIの衝突によってリュウグウの活動が変化したりする?

吉川:先月の学会でも話題になったが、ベンヌからデブリが飛び出す理由はわかっていない。遠心力では小さすぎて飛び出さない。なにか熱的な力が働いていたのではないか。
リュウグウでも同じようなデブリの噴出があるのか議論になっているが今のところ見つかっていない。リュウグウから飛び出す物体を見つけられるかは検討すべき課題。
SCIをぶつけてからどうなるかは確認してから。だが(半分冗談で)たくさん出てくるようになるのではという人もいる。いずれにしてもSCIがどうなったか確認してから。

ライター林:分離が決められた位置や速度で行われたということは現段階でどうやってわかるのか

久保田:分離でSCIの姿勢が乱れることを心配した。SCIの横が見えておらず底が見えていて安心した。予定通りまっすぐ下りていったと推測できる。これを見る限り姿勢は乱れていない。
予定の方向へ向かってまっすぐ下りていっているだろう。連続写真で回転していることもわかっている。詳細は解析中。

林:リュウグウに衝突した可能性はどのくらいか

久保田:外れることはなく、400メートルの円内に落ちていったと思う。SCIが作動したかが問題。リュウグウ表面には到達しただろう。DCAM3が撮影していなかったらわかるのは2週間後だが、SCIは間違いなく小惑星表面に到達したと推測している。

林:退避行動がうまくいって探査機の無事を確認できた。なぜできたのか、また日本の技術としてどこがすごい?

久保田:小惑星の裏側へ行くのは太陽の陰に入る可能性や、地球から見てリュウグウの陰に入り通信できなくなる可能性があり危険。しかしSCIの衝突で発生する飛来物からの退避先はそこしかない。なるべく近くだけどぶつからずにいけた。はやぶさ2の性能が今までの運用でよくわかってきた。チームが熟練してきた。相手を知り、己を知って怖いものなしになった。
スラスターを噴いて燃料が少なくなっていく中できっちり速度を出すのは難しい。それをこの短期間でできたのはスラスタチームのすごさ。
なにかあれば安全第一で回避できるようにしつつ退避の時間と位置を合わせ込めた。しかもオンボードで自動処理できた。簡単そうに見えるかもしれないが、SCIとDCAM3を分離して自分は退避、写真も撮影する複雑なシーケンスをきちっとできたのは訓練、リハーサル、タッチダウン運用での実績が自信と実力になってきたのだろう。

林:探査機にこのような複雑な動きをさせた例は過去にあるか

久保田:衝突ではディープインパクトがあったが探査機は通り過ぎた。今回は自ら発したもので人工クレーターを作り、さらにそこへ見に行く。これは世界初。小惑星の内部を見たいというサイエンスの夢を実現するアクロバットで世界に例がない。退避行動も初めてでは。
周回や着陸は今まであると思うが退避行動は記憶の限りでは世界初と思う。

毎日新聞永山:管制室でプロマネが安全を宣言したのは手元の時計で11時58分ごろだった。11時56分にデータが下りてきてからそれをチェックして宣言したのか

久保田:SCIは分離の40分後に作動する。地上時刻で11時53分に秒読み(カウントアップ)を始めた。
テレメトリが届く間隔は1秒より少し長い。11時56分に見て、それまでの情報をみて宣言した。そちらで11時58分だったのは中継に1~2分のラグがあったからではないか。管制室では11時56分に宣言した。

星ナビなかの:SCI実験について、イジェクターカーテンを地上の望遠鏡や軌道上の宇宙機などから検出することはできるのか

吉川:リュウグウと地球の距離は今が一番離れており地球からリュウグウを観測するのは難しい。地球近傍からイジェクターカーテンを確認するのはそうそうにあきらめている。

(以上)