小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。
今回は、「はやぶさ2」に搭載している、小型探査ローバMINERVA-II1の分離に関する運用状況説明を行います。
小惑星探査機「はやぶさ2」のMINERVA-II1分離運用について | ファン!ファン!JAXA!
日時
- 2018年9月21日(金)12:00~13:00
登壇者
- JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム スポークスパーソン 久保田孝(くぼた・たかし)(JAXA宇宙科学研究所 研究総主幹/宇宙機応用工学研究系 教授)
- ミッションマネージャ 吉川真(よしかわ・まこと)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
(image credit:JAXA)
※左から吉川氏、久保田氏
中継録画
JAXA公式
※中継時の問題で、音声の大部分が聞こえないか同時通訳(英語)になっている
配付資料
- 【PDF】小惑星探査機「はやぶさ2」搭載ローバMINERVA-II1の分離運用について(http://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/files/20180921_minerva2.pdf)
- 小惑星探査機「はやぶさ2」のMINERVA-II1分離運用について | ファン!ファン!JAXA!(http://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/detail/12888.html)
関連リンク
- 小惑星探査機「はやぶさ2」のMINERVA-II1分離運用について②(14時~) - ただいま村(http://ima.hatenablog.jp/entry/2018/09/21/140000)
- 小惑星探査機「はやぶさ2」のMINERVA-II1分離運用について③(16時半~) - ただいま村(http://ima.hatenablog.jp/entry/2018/09/21/163000)
久保田スポークスパーソンから
今日はMINERVA-II分離運用を進めている。状況と今後を説明する。
現在はやぶさ2は順調に降下中。探査機は健全。ローバも先ほど電源を入れて健全であることを確認。予定通り降下を行っている。
資料は9月9日と多くが重複しているが新情報もある。
目次
「はやぶさ2」概要
ミッションの流れ概要
1.プロジェクトの現状と全体スケジュール
9月10日に始まった1回目のリハーサルは、LIDARが近距離モードに切り替わらなかったため高度600メートルで中断した。
原因はリュウグウが想定していたよりも暗く、LIDARのレーザーが戻ってこず近距離モードに切り替わらなかったため。LIDARは20キロから数百メートルまで計測する。広いレンジを計測するのは1つのセンサーでは難しく近距離モードを持っている。高度600メートルくらいまでは遠距離モード、それよりも近くでは近距離モードと設定していたが切り替わらなかった。
今回はパラメータを変えて150メートルくらいまで計測するようにした。その途中で近距離モードに切り替わるように。
それ以外に問題はないことを確認したため昨日から降下を始めている。
2.MINERVA-II1分離運用について
小惑星探査ロボット「MINERVA-II1」
MINERVA-II1 Roverの仕様
ここの「直径180ミリ」は前回から訂正した数値。
MINERVA-II1分離の主要なスケジュール
これは新しいページ。本日のスケジュール。ONC-Wで撮影した写真は随時公開している。(下記)
- MINERVA-Ⅱ1分離運用 航法画像のリアルタイム配信 | ギャラリー | JAXA はやぶさ2プロジェクト(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/galleries/onc/nav20180920/)
分離運用シーケンス
高度60メートルで水平移動させるのは分離速度をキャンセルするため。横移動の速度をなるべく小さくする。リュウグウから見てMINERVAがまっすぐ下りてくるようにする。
MINERVA-IIは分離後約15分で小惑星表面に到達。そこでおそらくバウンドする。整定し着地するまで少し時間がかかる。
探査機は分離後すぐにはジェットを噴かない。MINERVAが近くにいるので吹き飛ばしてしまわないように。はやぶさ2の上昇は50センチ/秒くらい。
分離後や上昇する間、MINERVAの写真を撮れればと思っている。広角カメラ(ONC-W)のほか望遠カメラ(ONC-T)でも撮影するが望遠カメラは視野が狭いので、MINERVAが写るかは撮ってみないとわからない。
参考資料
参考:資料P10図の用語解説
これは今回追加。
ホームポジション座標系
MINERVA-IIの着地候補地点選定
MINERVA-IIの着地候補地点選定(MINERVA-IIの着地点候補:北半球で検討)
着陸実現に向けた戦略
レーザ高度計(LIDAR)
動画
MINERVA-IIがどのように分離するかのCG。MASCOTも出てくる。
MINERVA-IIはワイヤーを切ってばねで出てくる。写真を撮ったり温度を計測したりしてジャンプする。
小惑星時刻でいうと昼間に分離するがリュウグウの一日は7.6時間。分離後着地して1時間くらいで夜を迎える。その間はお休みする。3.8時間後に朝が来るとまた活動する。今日の活動時間は短いと推測。
写真はいったんはやぶさ2のデータレコーダーに記録されるため、すぐには地球に下ろすことができない。安定な場所に来たところで転送するので今日の提供は難しいと思う。ご了承ください。
質疑応答
読売新聞とみやま:撮影された画像は22日未明に出てくる?
久保田:降下中のデータがはやぶさ2のデータレコーダーにたまっていて、順番に下ろしてくることになる。いつになるのか、ちょっと時間が読めない。MINERVA-IIからの写真を取得できたらなるべく早く公開したい。
地球へ送信する順序としては降下中の画像(特に着陸候補地点の写真)、分離してからはやぶさ2が撮影した写真、分離後のMINERVA-IIが電力がある限り撮影した写真となる。
とみやま:MINERVA-IIは着地してから写真を撮り始めるのか
久保田:電力があれば分離直後にも写真を撮る。宇宙空間を撮るかもしれないし、相棒のローバーを撮るかもしれない。着地寸前の写真を撮る可能性もあるが分離時に回転するものと思われるためうまく撮れるかは運まかせ。
着陸前に撮る写真、着陸後に撮る写真がともにある。
とみやま:MINERVA-IIで取得できたデータは、はやぶさ2がタッチダウンするときの役に立ったりするのか
久保田:MINERVA-IIが撮る画像は表面においての画像なので景色が全然違うだろう。降下中にどのくらいの精度でタッチダウンできるかのシーケンスシナリオを向上できる。
MINERVA-IIは高さ7センチしかない。我々が実際に小惑星に立っている状態での景色を撮影できる。科学的に興味深いものを得られればと思っている。
NHKすずき:着地したかどうかの確認はどうやっていつごろまでに?
久保田:確認はなかなか難しいところがある。百聞は一見にしかずで、小惑星表面の写真を撮れれば完全。ただ今日は難しいかも。状況証拠ではあるが、MINERVA-IIにはフォトダイオードという光を検出するセンサーがある。これが一定の値になったら静止した状態といえる。ただ小惑星表面で停止したらすぐホップする。いろいろな情報をもとに「整地している」と言えれば。
写真が撮れれば一番。
すずき:今日のところは「分離は成功した」と記事に書ける?
久保田:はやぶさ2が地表から50~60メートルに近づいてMINERVAを分離した。分離はさまざまなデータを見て判断。
はやぶさ2と通信できているとき、MINERVAははやぶさ2からのコマンドを受けて動く「遠隔モード」で、分離と同時に「自律モード」になる。自律モードではMINERVAが自分で判断して動く。モードが切り替わったという信号を受け取れば分離ができたと考える。探査機とMINERVAからの信号の両面から分離を確認する。
すずき:LRF(レーザーレンジファインダー)の確認はするのか
久保田:できるならしたいが、高度50~60メートル――スラスタを噴かずに自由落下する時間があるのでもう少し下がるが――LRFは下ではなく横を向いて地形の傾きを見るもの。なのでその高度だとなかなか難しい。反射率が高いところに当たればデータを取れるかもしれないが。今回はLRFの試験ではなく50~60メートルの高度まで誘導できることの確認。
LRFのデータを取れればラッキー。
産経新聞くさか:MINERVA-IIがホップして移動するところをおさらいしたい。整定したらすぐジャンプする感じなのか
久保田:条件としては、電力があると写真を撮るのを一生懸命やる。小惑星に接触するので太陽電池に傷がつく可能性もあり寿命はわからない。整地したら電力がある限り写真を撮って移動する。
くさか:小惑星の表面に届く前に充電している?
久保田:分離前にフル充電しておきます。
くさか:充電を待たないとホップできないというわけではない?
久保田:充電池からの電力で1~2回ジャンプできる。たまたま下りたところが真っ暗だとフォトダイオードに光が当たらず、これは危ないと判断してすぐジャンプする。それが1~2回できる。
くさか:ジャンプしたらバウンドしつつ何回か移動するというイメージ?
久保田:小惑星の表面に整地したら写真を撮ってジャンプ。跳んだときも写真を撮る。重力が小さいのでジャンプした後もピタッとは止まらず転がる。しばらくして整地し止まったら写真を撮ってジャンプ。それをくり返す。
くさか:中のモーターを使うのは最初のジャンプのときだけで、バウンドするときは自分ではなにもしない?
久保田:はい。ジャンプするときモーターを回す。ジャンプ中はモーターを回しても姿勢が変わるだけなのでモーターを止める。着地したときもモーターは回さず自然に転がるにまかせる。
くさか:1回のジャンプで15メートルという話があったが、この15メートルはバウンドも含む?
久保田:ジャンプで最初のタッチまでの距離を15メートルとみている。そこからバウンドして戻ることも考えられる。最初のコンタクトまでの距離を15メートルと見ているということ。角度などにもよるが、地表の重力などから15メートルを推定。最終的な移動距離はさまざまになるだろう。
ドキュメンタリージャパンやまもと:初号機のMINERVAを担当した立場の久保田さんから率直なコメントを
久保田:初代はやぶさではいろいろ不具合があり、リハーサル中にMINERVAを分離せざるを得なかった。地球からの信号で分離したが、信号の往復に30分以上かかる遠隔操作の難しさを実感した。
2回目のチャンスがあるのは工学研究者としては嬉しいし恵まれている。惑星探査はいろいろなことが起きるので2台持っていって可能性を高める。時間はかかったが再チャレンジはうれしい。今までの経験から工夫を盛り込んでいる。成功してほしい。小惑星の写真を1枚でも撮れれば大喜びかなと思っている。
フリーランス大塚:タッチダウンリハーサルでの、LIDARの長距離モードと近距離モードの切り替えについて。反射光の強さがレンジを超えるとモードを切り替えるようになっていた?
久保田:光のセンサーは精度よく計測するためにある程度の光量が必要。光の強度が十分あったとき自動的に近距離モードに切り替えるようにしていた。近距離に替えるとき思ったより暗かったので切り替わらなかった。
大塚:高度で決めたわけではない?
久保田:高度ではなく光の量。
LIDARは20キロメートルからずっと計測している。600メートルくらいまでは精度よく行き、それ以降は精度が落ちるよう設定していた(遠距離モードで)。近距離モードに切り替わらなかったので戻ってきた。
今度はもう少し近くまで計測できるように設定。
LIDAR自身は20キロメートルから数十メートルまで計測できる。遠距離モードでも150メートルくらいまでいけるのではないかと思っていたがリハーサル時は安全を見て600メートルまで遠距離モード、その途中に近距離モードに変わると想定していた。
これは小惑星に到着して計測した値や、重力計測降下運用で850メートルまで下りたときのデータからマージンを持って決めた。リハーサルではレーザーが当たった場所が暗かったか、傾いていて光があまり返ってこなかったものと推定。
150メートルまで下りたとき近距離モードに切り替わるかはやってみないとわからないところがある。今回もたまたま暗いところにレーザーが当たると近距離モードに切り替わらないかも。また逆に明るいところだともっと高い高度で切り替わるかも。実際に近づいてみないとわからない。
大塚:近距離モードに切り替わらなかったら今回も分離せずアボート?
久保田:その通り。近距離モードに切り替わらなかったらシーケンスを止めてアボートする。
大塚:ONC-W(広角カメラ)なら写りやすい?
久保田:初号機でも、分離後に何枚か撮ったら広角カメラに写っていたということがあった。今回も写っている可能性は高い。
フリーランス秋山:降下中のはやぶさ2本体が撮った写真は臼田でおろせるのか
久保田:現在臼田から運用中。時間的には海外局に切り替わる可能性も。
秋山:下ろすことは可能だけれど臼田から下ろすかどうかはわからない?
久保田:シーケンスはタイムラインといいまして、時刻で管理しているわけではない。ある段階で小惑星表面との距離をはやぶさ2自身が測定するようになる。分離時刻は予想はしているが高度による。そして場所によって小惑星の重力が異なるため所定の高度にいつ来るかはその時次第ではやぶさ2自身が判断。分離が遅くなるとデータのダウンロードが遅くなり海外局からになるかも。
秋山:ホップ成功の確認方法は写真以外にあるのか?
久保田:MINERVA-IIの目的は移動メカニズム。初号機ではデータをおろすことができなかった。今回は小惑星の表面に下ろすことが第一目的。MINERVA-II1/2、またMASCOTでも下ろすことができれば、はやぶさ2としては分離技術を確立できたということになる。
下りて撮った写真としばらくあとに撮った写真が違うものならホップがうまくいったと判断できる。ホップ中の写真も複数枚あれば距離を予測できる。画像1枚では難しい。異なるアングルの写真が少なくとも2枚撮れれば間違いなくホップできたという証拠になると考えている。
秋山:基本的には写真?
久保田:はい。あとはモーターを動かしたというステータスも取れる。また時間帯にもよるがフォトダイオードで太陽の方向がわかる。フォトダイオードのデータが変わればMINERVA-IIが動いたという証拠になる。写真が一番だが、モータが動いた後のフォトダイオードの値、またジャイロも搭載している。ジャイロのデータからも移動の証拠になるだろう。
ライターあらふね:60メートルまで近づいてからの行動を再確認したい。北側へ移動して自由落下なのか、それとも自由落下しながら北側へ?
久保田:資料16ページのN6は赤道よりも少し北側。降下は赤道へ向かって。その後N6がある北側へジェットを噴いて移動する。北へ移動しながらMINERVA-IIを下ろす。N6にもし人がいたら、MINERVA-IIがまっすぐ落ちてくるのが見えるだろう。
あらふね:北側へ移動しつつ自由落下なのか?
久保田:太陽を背にして高度60メートルまで下りて来たらジェットを噴いて北側へ。N6へ到達したと判断したら(MINERVA-IIを分離して?)自由落下。スラスターのプルームがMINERVAに影響しないところまで自由落下したら上昇。
あらふね:どこまでがはやぶさ2の自律か
久保田:高度500メートル以下は地上からの遠隔では運転できない。はやぶさ2が自力で近づき、N6へ移動、MINERVA-IIを分離して上昇する。データとしては17~18分遅れで届く。届いたデータを見てこちらからコマンドを送っても、はやぶさ2に届くにはまた17~18分かかる。小惑星近傍の運用はすべてはやぶさ2が自分で行う。
あらふね:MINERVA-IIからはやぶさ2を経由して送られてくるデータは写真以外にはなにがあるのか
久保田:フォトダイオードという光を検出するセンサのデータやジャイロのデータ(加速度データ)。加速度データを取れれば着地の時刻がわかるだろう。また温度センサは外側と内部の両方ある。内部はMINERVA-IIの体温。画像の取得は一番時間がかかるだろう。ステータスデータと一緒に画像データを探査機経由で取得。
ライター林:MINERVA-IIは15メートルくらいジャンプするとのことだが、どのくらいの高さまで上がったかはどうやってわかる?
久保田:ジャンプ中に写真を撮る。特徴点があれば自分の位置はだいたいわかる。何枚か撮影できれば。距離情報は同じ場所を異なるところから撮れればわかる。自分自身の影を撮影できればその面積からも高度を推定できる。数枚あればある程度の予測はできる。
写真が大事。あとは光の強度、ジャイロなどから。ジャンプした時刻と着地した時刻は加速度計のデータから。
林:写真をどのタイミングで撮るのか
久保田:MINERVA-IIが自分で判断。電力や温度環境などから。ジャンプするときの電力と温度状況から何枚撮るかを決定。モーターの回転速度も枚数の決定に使う。遠くへ行くときはたくさん撮る。
写真を格納するメモリに制限があるのでそこも勘案する。
林:MINERVA-IIがリュウグウの上でどういう経路で移動したかはわかるか
久保田:できればそうしたいが、重なっていないといけない(今村註:なにが重なっていなければいけないかはわからず)。MINERVA-IIがどこに着地してどう動いたかがわかればいいのだが難しい。限られたデータからどこまでできるかはなんともいえない。
林:小天体上を移動するロボットはMINERVA-IIが世界初?
久保田:はい。以前ロシアが火星の衛星フォボス上にホッピング型ロボットを分離したが、分離後に通信途絶した。最近ではロゼッタのミッションでチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着地したフィラエがある。しかしフィラエには移動メカニズムがないので、ローバーというよりランダー。
移動するメカニズムはいろいろあるが、MINERVA-IIが小天体でホッピングして移動したとなれば世界初。
林:一般向けにどこを注目してほしい?
久保田:重さ1キロしかないが太陽電池で動き、モーターもあってコンピュータを搭載、カメラも3台や4台ある。日本の技術が織り込まれた一品もの。3億キロメートル離れたところで人工知能を持ったものが活躍できたとすれば、日本の力はすごいと特に若い人に見てほしい。
時事通信かんだ:着地してから日暮れまで1時間半くらいとのことだが、うまく進行すれば夜までに最初のホッピングはしそう? 夜までに写真を送ってくる?
久保田:下りる地点の重力にもよるが15分くらいで最初の着地がある。そのあと整定するまでの時間は…すぐに止まるとは考えておらず長いと数十分くらいか。残り時間で写真を撮って送ってきてくれれば。
夜を迎えてゆっくり休んでもらい、翌朝また活動できれば。リュウグウは7.6時間で一周する。約4時間ずつ昼と夜が来る
かんだ:分離確認について。自律モードへの切り替えタイミングは
久保田:いまMINERVA-IIは暗い箱の中にいる。分離信号が来たら太陽電池モードになり自律モードに自動で切り替わる。我々はMINERVA-IIから「自律モードになりました」という信号を待つだけ。それはテレメトリで確認できる。これはデータレコーダーというよりステータスなので、分離したという情報は比較的早くわかるだろう。
かんだ:分離確認の情報ははやぶさ2から17分後に届くと思う。離れた瞬間に自律モードに切り替わる?
久保田:その通り。
かんだ:MINERVA-IIが分離したという信号を出すタイミングと、はやぶさ2がMINERVA-IIを分離したという信号を出すタイミングは同時?
久保田:少しタイムラグはあるかもしれないがほぼ同時。
かんだ:2つの信号が揃えば分離と判断?
久保田:はい。
毎日新聞永山:初代MINERVAは分離時の速度が小惑星からの脱出速度を上回ってしまった。今回は分離時の速度が脱出速度以下であるというのはどうやって知るのか
久保田:分離速度がどのくらいだったかを知るのは難しい。ドイツの落下塔を使った地上試験で推測はできている。はやぶさ2自身の速度からも。MINERVA-IIの移動速度の推定は誤差があるがちゃんと着地できるようにはやぶさ2が支援する。
初代は上昇中に分離信号が来て分離してしまった。今回は自分の状態を知ってから分離する。最初の着地点の推定なども難しい。脱出速度を超えないよう分離することに集中したい。
永山:脱出速度以下で分離したと確認する方法は
久保田:MINERVA-IIをどのくらいの速度で分離したかは通信しながら見ていくしかない。すぐにはわからない。着地すればフォトダイオードの値から小惑星上にいると判断できる。また写真が届けば絶対的な証拠になる。
分離したことはすぐにわかっても、いい分離だったかはすぐにはわからないだろう。
林:写真の送信について。写真はすぐに送るのか、ためてから送るのか
久保田:撮影してもなにも写っていなかったらメモリにも入れない。いったんメモリに入れてから電力を見つつ送信。1枚だけ送るケース、数枚まとめて送るケースどちらもある。あとになるほど電力が厳しくなるのでなるべく早く送るようプログラムしている。
林:1枚の送信にどのくらい時間がかかるか
久保田:写真の内容でデータの容量は変わり送信時間も変わる。通信速度は最大32kbps、1秒間に4KB。2台のMINERVA-IIで通信回線をシェアするので通信速度は10kbpsくらい。4KBの画像なら1秒、もっと大きければもっと時間がかかる。
ニッポン放送はたなか:着地の衝撃はどのくらいか
久保田:聞かれると思って考えてきました。分離速度は秒速20センチくらいと推定。ただし横方向の移動成分ははやぶさ2の動きでキャンセルするので、リュウグウへ下りていく速度は毎秒数センチだろう。その衝撃は地球の重力でいうと1センチくらいの高さから落とした程度。まず壊れない。着地時にMINERVA-IIと小惑星の間に放電が起きて壊れないかは心配だが、着地そのものの衝撃では壊れない。
はたなか:どのくらいの衝撃に耐えられるのか
久保田:振動環境が一番厳しいのはロケットの打ち上げ時。何百Gにもなる。そこを耐えた。
着地時にとがった岩に当たって太陽電池が破損し、得られる電力が下がる可能性もある。それがくり返されたり、帯電してちりがついても作れる電力が下がっていく。
多少の傷では動作するよう作ってある。
久保田:場所にもよるが35センチ~40センチ/秒。倍くらいのマージンは取ってある(=MINERVA-IIはその半分の速度も出ないようにしてある)。
NVS齋藤:MINERVA-IIがフルでホッピングしたときそれを超えない?
久保田:それはとても大事なので、そこを上回らないようリュウグウの重力を教えてある。
ライター林:MINERVA-IIが下りる場所で撮影とのことだが、科学的な観点からの注目点は
吉川:サイエンス的な注目は小惑星の表面すれすれの至近距離で写真を撮れること。はやぶさ2が小惑星表面へ接近したときもはやぶさ2から撮影するが、表面から横方向に撮影することはできない。MINERVA-IIからの写真でレゴリスなどの状態がより詳しくわかる。
林:N6という着地候補地点の特徴は
吉川:リュウグウの表面は場所による大きな違いはない。どこに下りてもサイエンス的なデータに違いはない。MINERVA-IIやMASCOT、はやぶさ2のタッチダウンはそれぞれ離れた場所で行いリュウグウの全体像を知る。N6はそれを総合して決定した。
久保田:今後の予定としては、13時から13時半くらいにMINERVAを分離するだろう。要所要所でご報告に上がりたい。14時ごろ目安で。探査機は予定通り降下中とのこと。
(いったん終了)