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三菱重工記者会見:テレサット社向け商業衛星打上げ輸送サービス受注について

登壇者

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  • 航空宇宙事業本部 宇宙事業部長 淺田正一郎
  • 航空宇宙事業本部 宇宙事業部 営業部長 阿部直彦

参考リンク

中継録画

(06:40ごろ始まります。途中中断がありますすみません)


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NVSによる録画(こっちは中断ありません)



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プレスリリース読み上げ


テレサット社の通信双方衛星の打ち上げを受注。商業衛星は初めて。
TELSTAR 12Vの打上げ輸送サービスを受注。
高度化開発の成果を活用。

プレゼン

テレサット社は商業衛星オペレーターのうち4位。
打ち上げ時期は2015年後半。この年は静止軌道への打ち上げ計画が少ない(2機)。そのためこちらの製造能力に余裕がある。
衛星の大きさは契約により非公開、H-IIAとしては204という、SRB-Aを4本備える最大バージョンで対応。
高度化開発(第2段機体改良)の成果を活用。これで初めて打ち上げ可能になる。
JAXAMHIの役割分担について。
(図)
増速量を大きく取れない打上げ条件→高度化で対応可能に。
これまでは衛星を切り離したあと衛星自身の推進力で36000キロの遠地点へ行く。種子島から打ち上げた場合目標軌道面に対してななめに上がる。ロケット側で軌道面を変えるのに推力を使うため打ち上げ能力が落ちていく。これを改良。
まず、打ち上げて30分くらいで赤道面に達してもまだ切り離さず、遠地点近くで衛星を切り離す。
ゆっくりのとき(遠地点近く)で軌道を変換するほうがお得だが電池容量の問題や長いこと飛んでいると液酸、液水が蒸発してきてしまう→タンクを改良して持って行けるようにした。
※「ゆっくり」とはケプラーの法則の話。近地点では速度が一番速くなり、遠地点では速度が一番遅くなる。
5時間くらい飛んでいる間冷やし続ける必要がある。
再着火時の推進力を下げるため(衛星にかかるGを減らすために)スロットリング、60パーセントくらいに。

質疑応答

NHKふじの:初の商業衛星受注の意義、今後どうつなげていきたいか

淺田:ベースは政府衛星。年によって機数が変わる。2014年は政府衛星の打ち上げが多くてうれしい悲鳴だが2015年は2機しかない。平滑化のために商業衛星を受注したい。条件がそろったため受注。テレサット社は世界4位のメジャー。そこに認められた。マーケットに認められたことになり引き合いが増えるだろう。
新型ロケットの開発をお願いしている。コストを半分に。そうなると機数を倍にしないと産業としてもたない。政府の衛星は増えないから商業衛星を。
そのためには今から商業衛星を受注して信用を得ておきたい。輸送サービスをどこに頼むか。無名のところには頼まない。とんでもなく安いとかでないと。

ふじの:現在のネックとそれをどう乗り越えたか

淺田:受注活動の障害が3つ。打ち上げ時期。打ち上げ能力。価格。
時期の制約はおととしなくなった。1年中打ち上げ可能に。
H-IIAの能力は最近の重い商業衛星を打ち上げられない。荷物が重すぎて弊社のトラックでは運べない。
価格。つい1年ほど前まで1ドル80円では勝負は苦しい。100円まで下がってだいぶよくなった。
これらが重なって受注にこぎつけた。

ふじの:テレサット社は「衛星オペレーター」とのことだが

淺田:通信衛星を使いながら通信の場を提供するような。2地点間の通信を提供する会社といったらよいか。放送を行うこともある。スカパーはそう。
衛星を放送会社に貸してトランスポンダの貸し代で営業するところも。送信機、受信機を貸すレンタル費用で商売するところも。

スペースニュース大貫:JAXA/MHI間の役割分担について。第2段機体はJAXAが製造するということ?
民間打ち上げで政府は入っていない。ピギーバックを得る予定はあるか

阿部:役割分担は開発そのものはJAXA。費用やインターフェース、切り口は商業ベースなので答えは控えさせて欲しい。

淺田:ピギーバッグはなるべく貢献したいと思っているが高度化適用といっても能力ギリギリ。能力が余ればそういう可能性も出てくるかも。

読売新聞きしもと:受注額は。また円安について打ち上げ額が下がり潮目が来ているのか

阿部:受注額はお答えできない。なお価格だけで決まるわけではない。市場は需要と供給。そこへ付加的になにがあるかで千差万別。

淺田:円安で有利な点もあるが不利な点も。スペースX社が商業打ち上げ市場にかなり安く入ってきた。信用力がないため価格破壊を起こしそうな安値。いくら円安でもなかなか勝てない。
一方衛星がオール電化電気推進が中心になりつつある。遷移軌道から最後の軌道へ入るとき自分で加速するのに化学推進から電気推進に。燃料が少なくすみ軽くなる。
軽い衛星が出てくる可能性がある。軽い衛星を2機一度に上げるデュアルロンチができればかなり安くなる。これまで能力的に対応できる衛星はなかったがこれから出てくるかも。信用力を上げていきたい。

HVS(?):今後どんな国に商業打ち上げを受注していきたいか。打ち上げ成功率はほかと比べてどうか

淺田:ぜいたくを言っていられる立場ではないので来るお客さんは拒まない。ただ大手から受注したのは大きい。引き合いがあれば積極的に対応。打ち上げ、運用をまとめて受注する作戦もある。
成功率については、アリアンスペース、長征は高い。最近の成功率はとても高く信用できる。アリアンも最初以外ほとんど失敗なし。アリアンは数百機あって最近うまくいっていない。スペースX社は商業衛星をまだ一度も上げていないが安いためたくさん受注している。
自慢したいのはオンタイム成功率。打ち上げを予告した日にきちんと行う。これはH-IIAがトップレベル。

(?):受注獲得できたのはオンタイム成功率があるのか

淺田:高度化開発の初号機ということで、初号機をいやがる人もいるが成功率、オンタイム率を見てもらった。オンタイム率が高いのは射場での不具合が少ないと言うこと。これを評価してもらったものと。

読売新聞ちの:JAXAとして第2段の実証となる。うまくいかなかったら三菱が補償するのか。

阿部:今回は私どもとカスタマーの間ですのでこちらが負担します。
打ち上げサービスプロバイダーの定型フォームに従っていておおむね標準的なもの。

ちの:高度化2段はJAXAが用意するということは安くなっているのか

阿部:今回私どもとJAXA、カスタマーでWin-Win-Win。それぞれがメリットを享受している。

NVSさいとう:H-IIAと衛星間のアセンブリで水平展開のメリットはあるか(この衛星を一度やったらロケットとの結合部を作ることになるのでほかの衛星もくっつけやすくなるとかはあるか、という意味)

淺田:これまでは国内の衛星メーカーが作ったもの。例外はMTSAT-1R。今回はアストリーム社。これは世界のトップ3。そことの整合性を作れるのは大きい。

さいとう:種子島に運んで打ち上げるのは海外から見るとオーバーヘッドが大きいと思うが衛星メーカーにとって便利にしたいか

阿部:確かに種子島にダイレクトに飛べないのはハンディになっていた。衛星オペレーター、つまりカスタマーとのI/F点をやりやすいよう提案することで受け入れていただいた。

淺田:ほかの打ち上げサービス会社と同等、つまり日本に運んでからの費用はこちら持ち。

さいとう:高度化はやっといてよかったか

淺田:高度化は商業衛星を目指してやっていた。政府衛星ではそれほど必要ではない。日本が種子島から上げるのは、赤道から上げるアリアンより不利な条件。高度化の最初に商業衛星を受注できたのは大きい。

フリーランス秋山:TELSTAR 12Vは今回初の衛星なのか

阿部:衛星関係の情報についてはNDAがあり話せないが、TELSATさんはアリアンをよく使う。今回総合的な面でご指名いただいたと理解している。

時事通信:今回の受注について他社の引き合いは現在のところあるのか

阿部:けっこうあります。なにが契機になっているかというと為替のほかに2015年のうしろから2016年くらいは打ち上げ需要が大きい時期。ほかのロケットの失敗もありロケットが供給不足になっている。価格より信頼性の高さを評価してもらって声をかけていただいた。こうしてTELSATから受注できたというのは今後増えていく期待をしている。

時事通信:先日イプシロンロケットが成功した。宇宙産業の拡大につながるという声があるがMHIはどう展開していくか改めて

淺田:イプシロンロケットの打ち上げ能力はH-IIAの1/10、完全に棲み分けしている。パッケージ輸出、運用も組み合わせた輸出などもあるがものによってはイプシロンがよいものもあるだろう。海外からはイプシロンH-IIAも同じに見えているかもしれない。イプシロンも増えることを期待している。

(以上)

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