こうのとり3号機の大気圏再突入をつくばで取材

7月21日にH-IIBロケット3号機で打ち上げられたこうのとり3号機は国際宇宙ステーションISS)に無事到着し物資を運ぶ任務を終えました。ISSから出るゴミを積んで、今日大気圏に再突入して燃え尽きます。筑波宇宙センターへ取材に行ってきました。

今日は、こうのとりが大気圏に再突入する時間帯の管制室と、ミッション終了後の記者会見を取材します。

こうのとりが大気圏に再突入する時刻は14時24分ごろとアナウンスされていました。30分ほど前に、記者会見室から車両で管制室がある建物に移動します。

取材ブースは管制室とガラスで区切られた一角です。ここには電波を発する機器を持ち込めないということで、携帯電話などは入口にある100円の小さなコインロッカーに預けます。100円は戻ってくるタイプでした。

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取材ブースが暗いのは節電とかではなく、こちらの影がガラスに映り込まないようにするためです。窓の上のスリットは開いていて、管制室の声がかすかに聞こえてきます。

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管制室では40人くらいが画面に向かっています。中央付近、ピンクのシャツの人が運用担当のトップ、フライトディレクタの内山崇氏です。

このアングルでは柱の向こうですが、壁には日の丸がかかっていました。

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管制室ではこうのとりのぬいぐるみも緊張した面持ちで見守っています。

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14時の少し前、管制室の中から小さい声が上がると周囲から「よしっ」という声が続きました。こうのとりを大気圏に再突入させるための最後のスラスター噴射(マヌーバ)です。数分後、また「っしゃー」という声があちこちから出ました。スラスター噴射が無事完了したとのことでした。速度を下げて地球へ落っことすための噴射となると数分間続くのですね。ここまで万全であれば14時24分の大気圏再突入は確実で、あとは待つだけです。

「コマンド送信します、3、2、1、送信」という声がときどき聞こえてきます。最後になにかしているようです。

14時24分になりました。管制室の様子は変わりません。意外だったのはこの段階でもなにかのコマンドが送信されていたことでした。このあとの記者会見では、大気圏再突入の時刻になっても通信がとだえるまでは、技術的なデータをなるべく取ろうとしていたとのこと。しかしこのときはどういうことはわからず、ちゃんと進行しているのかな、とちょっと不安になりました。

14時31分、拍手が起きました。どうやらこうのとりは無事に大気圏に再突入したようです。しかし報道には状況が伝えられず、なにがどうなったのやら状態でした。

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内山フライトディレクターと握手しているのはHTVのプロジェクトマネージャ、小鑓幸雄氏です。後ろのこうのとりのぬいぐるみもどこか誇らしげです。

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少したつと、女性職員が箱を持ってきました。

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なんかケーキが出てきた!

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紙コップとラベルでよく見えません。広報の方に「こちらに向けてもらえませんか」とお願いしました。

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無事こちらに向けていただくことができました。顔と手がついてますね。「みんなおつかれ様でした!HTV応援団」「ゆっくり疲れをいやしてください」とあります。これは『ぼくがHTVです』の作者さんがケーキ屋さんに作ってもらったものとのことでした。

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ぼくがHTVです―宇宙船「こうのとり」のお話

ぼくがHTVです―宇宙船「こうのとり」のお話

記者会見が始まる16時半まではしばらく時間があります。一般の人も見学できる展示館に行ってみました。

H-IIBロケットのカットモデルは以前来たときにはなかったような気がします。

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気象衛星「ひまわり」は宇宙開発、宇宙利用の重要性を人に説明するのにぴったりです。

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16時半から、先ほどの小鑓プロジェクトマネージャと内山フライトディレクターが登壇しての記者会見が行われました。記者会見の様子ははてなブログのほうにアップしました。

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会見のあと、おふたかたに話をうかがいました。(これを「ぶら下がり」といいます)

まずこうのとりはこの3号機をもって開発を完了することを目標にしてきました。3機とも問題なく任務を達成でき、開発フェーズは予定通り完了しました。

「開発を完了」とはどういうことか、小鑓プロジェクトマネージャに話を聞いてみました。端的にいえばこうのとりのプロジェクトマネージャがいなくなることだといいます。こうのとりは全7機の打ち上げが予定されていますが、部品の大部分を国産化できたこの3機目でどんなものを作るか、設計が固まったということでしょう。

また内山フライトディレクターへの質問では、こうのとりISSから切り離すときのアボートに関するものが中心でした。こうのとりを切り離すときアームが接触したかなにかで、こうのとりISSのほうへ近づいてきました。安全距離をとれなくなったためこうのとりは緊急にスラスターを噴射、ISSの下側(地球寄り)に離れ前へ抜けていく予定だったのを上側へ回り込ませ、ISS後方500キロに移動させました。これまですべてが順調に進んできたこうのとり計画の中で珍しいトラブルです。しかし非常時に備える訓練の成果で、この予備軌道からリカバリするための新しい軌道計画がすぐに作られ、こうのとりへ送るためのデータ中継衛星の予約などもすませたのでした。

小さなトラブルを克服する体験はチームを大きく成長させます。その意味でよかったのではないですかと聞くと「今になればそう言えますけれども、あのときは本当にはらはらしました」と話していました。

また管制室にいる運用チームは若手が中心で、平均年齢は30歳代だろうということでした。JAXAではまず運用を経験し、そのあと開発にたずさわるというのが基本の流れとのこと。

そんな話をうかがい、取材を終えて外に出ると夕闇が迫ってきていました。

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今回のH-IIBロケット3号機とこうのとり3号機については、打ち上げと大気圏再突入を取材できました。次の打ち上げはH-IIAロケット22号機ですが、これはペイロード情報収集衛星なので取材はちと大変そうです。

H-IIB3号機の打ち上げ取材をまとめ読み
[H-IIBF3] - Imamuraの日記(http://d.hatena.ne.jp/Imamura/searchdiary?word=%2A%5BH%2DIIBF3%5D

こうのとりの大気圏再突入のハイライト、i-Ballについては夜9時過ぎ、取得画像が公開されました。

(9月17日記)