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ガンダムAGEはガンダム以外のモビルスーツに期待

日曜日に「機動戦士ガンダムAGE」が始まる。どこかで「ガンダムは1体」という話を聞いて、それはいいねと思った。ガンダムにとどまらず、モビルスーツ全体への愛が強調されるといいな。

このところ(いやテレビシリーズではGガンダム以降ずっとか)たいていガンダムといえば味方も敵もガンダムだらけであり、ガンダム以外のモビルスーツはやられ役が多い。これが実にもったいないと思う。

ファーストガンダムではなんといってもザクに存在感があり、ことによるとガンダムよりも人気があるのではというくらいだった。

しかしガンダムに匹敵する敵役のモビルスーツが登場するのは「Zガンダム」まで。その後多くのガンダム作品ではガンダムの種類ばかりが増えていくガンダムインフレが進行してしまい、ガンダムでないモビルスーツはやられ役、引き立て役になり相対的に存在感をなくしていった。ガンダムWトールギスガンダムXのベルティゴやパトゥーリアなんかはいい味を出していたけれどごく例外だった。

そんな中、「ガンダム00」に出てきた「ジンクス(GN-X)」はなかなかよさそうだった。本編を見る前にマスターグレードのプラモで存在を知ったのだけど、圧倒的な性能のガンダムと互角に戦える強さを持つというふれこみで登場するのだそうだ。ガンダム的でないながらスマートなシェイプ、いかにも悪そうな顔つきがたまらない。「00」で主人公機であるガンダムエクシアに続いてマスターグレード化されたのがこのジンクスだったという点でも、ほかのモビルスーツとは違う格があるとわかる。

MG 1/100 GNX-603T ジンクス (機動戦士ガンダム00)

MG 1/100 GNX-603T ジンクス (機動戦士ガンダム00)

でも、そんなジンクスで興味を持って再放送でガンダム00を見たら、ジンクスは残念感満載の使われ方だった。

ガンダム00は「強いから強いんだ」みたいな描写が多く、なぜ強いのか、どう強いのかの演出があまりされない。強いといってもなぜか弾が当たりにくいとか、やけに素早いだけだったりする。ジンクスも同様で、強さの描写がうまくないのでせっかく強いのにいまいち強さに納得がいかないのだった。

ジンクスは、主人公側のスーパーテクノロジー「太陽炉」に近い「疑似太陽炉」を持つモビルスーツとして登場する。疑似太陽炉は敵陣営が自ら開発するのではなく、いろいろな経緯で外部からもたらされる。敵陣営としては今までにない技術を突然扱うことになったのだから、それにもとづくモビルスーツの開発は期待とともに苦労があるはずだ。であればたとえば、「例の疑似太陽炉の試験結果は」「すごいですよ、奴らのガンダムが強いわけだ」みたいな描写を入れれば期待を高めることができる。「新型開発のめどが立ちました」「疑似太陽炉は我々の技術では扱いが難しいですが、これが最後の切り札です」的なシーンとか、「くそう、またガンダムにやられたか!」「疑似太陽炉の新型さえ完成すれば!」的なシーンでもいい。そうしていよいよジンクスが登場すれば見る側のテンションも上がるというものだ。

しかし実際には、ふと疑似太陽炉が渡されたら、何週かあとには単なる新型でーすという程度の軽さでいきなりジンクスが出てきてしまうのだった。

ファーストガンダムでは「モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的な差ではない」というセリフがあったがガンダム00には当てはまらず、強いとされているモビルスーツは一方的に強い。だから主人公側のガンダムより強いということになっているモビルスーツが出てくると簡単にピンチになるし、その状況を救うのは遠くから不意打ち的に狙ってくるビーム一閃、という描写が増えてしまう。

強いことにしたモビルスーツを登場させても、強さに納得がいく演出がされないと本当に強くは見えない。それには実戦で活躍するという結果でなく、その前の仕込みが大切だ。魔球がすごいとわかるのは、特訓の様子がえんえん描写されるからなのだ。ジンクスは久しぶりに、ガンダムに出てくるガンダムでないライバルになれる器を持っていたのに、それが作品の中で生かされていなかった。ああもったいない。

ガンダムAGEでは、ガンダムは1体しか出てこないという。途中で改造されて実質的に新型になったりするようだけれど、それ以外のモビルスーツはすべて非ガンダムということになる。

となれば、ガンダムの強さを引き立たせるにはガンダム以外のモビルスーツがちゃんと強くなくてはならない。強い敵の役割をガンダムでないモビルスーツが担う、それだけで期待してしまう。魅力的な敵モビルスーツが出てきますように。