癌で激やせしていたスティーブ・ジョブズが8月にCEOを退いたとき、だいぶ悪いのだろうとは思っていた。しかしこんなに早く別れが来てしまうとは。
Power Macintosh 7600/132が初めて自分で買ったパソコンだった。それまでは入学祝いで買ってもらったり、人から譲ってもらったりしていた。やっぱりMacはすばらしい。Macを初めて買った当時のアップルコンピュータにスティーブ・ジョブズはいなかったが、それでもWindows(当時は95)にはない魅力があった。最初の会社ではIIciやUMAXの互換機を使ったよ。
アップルの製品のすばらしさについて表現するときに、よく「うれしい」という形容詞を使う。これはWindowsしか使ったことがない人にはなかなか理解しがたい感覚だと思う。
それにしてもMacintoshというコンピュータは、OS Xになってもつくづく「うれしいパソコン」だと思う。ちょっとウィンドウを開いたりするだけでも、不思議な楽しさがついてくる。お店でWindowsマシンをいろいろ触る人はあまり見ないが、Macのコーナーではウィンドウを開いたり、アプリケーションを起動したりしてみている人が多いと感じる。OSの基本的な操作だけで心地よさを演出できるのは、Macならではだろう。
ゆこうよまぶしいmac miniの世界
ほかにも、Windowsは画面のエフェクトがうるさくて切りたくなるが、Macのは自分の操作の結果を的確に知らせてくれるから気持ちがよいという話も書いた。
- Windows XPは「必死」感、Mac OSは「柔らかい」感 - Imamuraの日記(d:id:Imamura:20070122:win_mac)
この軽やかさ、美しさはiPhoneやiPadにも引き継がれていて、処理に時間がかかるときでも操作に引っかかりを感じないよう見せ方が工夫されている。
こういう感覚的なところを重視する作りは、まさにスティーブ・ジョブズの美学の結晶なのだった。
PowerMacはCPUをG3に換装したりしてかなり使い込んだ。次のMacは「StartMac体験モニター」でMacBook(Late 2006)をちょうだいし、その次はこの間買ったMacBook Air(Mid 2011)である。このMacBook Airは偶然にも、ジョブズが自ら発表した最後のパソコンになった。
今日のニュースでは、アップルが携帯MP3プレーヤーやスマートフォンを最初に作ったかのようにとれる言い方をしていた。実はどちらも参入は遅く、アップルコンピュータは後発メーカーのひとつでしかなかった。それでもその製品ジャンルの代表になったのだからすごい。
音楽プレーヤーのiPodは音楽配信サービスと組み合わせたところが新しく、iPhoneは革新的なUIと快適な操作性でスマートフォンの方向性を一新してしまった。携帯音楽プレーヤーの代名詞は「ウォークマン」から「iPod」になり、スマートフォンはガジェットマニアのおもちゃから携帯電話の主要ラインアップになった。
昨日のアップルの発表会、次はiPhone 5だろうという予想を裏切って、発表されたのはiPhone 4の改良型であるiPhone 4Sだった。この「4S」は「for Steve」のことなのではないかという話が今日Twitterで流れてきた。いかにもそういうことをしそうだと思わせるものがアップルにはある。
iPhone 5は今回発表されなかったが、すでに専用のケースがいくつもリークされている。新製品が発表される前のいつものパターンである。ということはiPhone 5はすでに完成に近づいているのだろう。もしかすると数か月後にはもう発表されてしまうのかもしれない。
でも「4S」を買おうと思う。デザイン変更のときよりは、今回のように内部が新しくなったときに買い換えるのが実利的だし。「for Steve」がただの偶然でもいいや。すばらしい体験をありがとう。これからは自分たちでなんとかします。
ジョブズに関する記事あれこれ
「ゲームセンターあらし」のすがやみつるが描いた、アップルコンピュータ創業前後の話。
- ■祝! iPhone発売記念 『アップルストーリー』予告編:すがやみつるblog(http://sugaya.otaden.jp/e776.html)
- ■祝! iPhone発売/マンガ『アップルIIストーリー』:すがやみつるblog(http://sugaya.otaden.jp/e2594.html)
1984年にMacintoshを発売した翌年、ジョブズは経営方針で取締役会と対立、アップルコンピュータを追われてしまう。そのころのジョブズを見ていた人の話。
- どん底時代のスティーブ・ジョブズの思い出 - Market Hack(http://markethack.net/archives/51774163.html)
ジョブズが戻ってくるまでのアップルコンピュータと、戻ってきてからの変化を中から見ていた人の話。
- Steve Jobs の思い出 | まつひろのガレージライフ(http://matsuhiro.blogspot.com/2011/10/steve-jobs.html)
その後iMacとiPodでアップルコンピュータを建て直した2005年、ジョブズはスタンフォード大学の卒業式で有名なスピーチをした。これは本当にすばらしい話なので、ぜひ読んでみてもらいたい。
- H-Yamaguchi.net: Steve Jobsのスピーチ、山口訳(http://www.h-yamaguchi.net/2006/07/jobs_2f1c.html)
その日本語字幕つき動画。
http://video.google.com/videoplay?docid=9132783120748987670
このスピーチで例の「ハングリーであれ、愚かであれ」という言葉が出ている。