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小松左京といえばこれ

巨星墜つ。物語の面白さを教えてくれた人がまた一人去ってしまった。自分にとってあまりに重要な人の死だと、社会においてどの程度のことなのかぴんとこないところがある。訃報の大きさで、みなさんにとってもすごい人だったのだと再確認するような。

ニュースでは『日本沈没』が大きく紹介され、続いて『復活の日』も言及されるといった扱い。映画やドラマになったから、小松左京の作品として人によく知られているのはそのあたりだろう。実際面白い。『復活の日』は映画もよいです。

でも個人的には『果しなき流れの果に』をすすめておきたい。

恐竜の時代、崖の奥からけたたましい音が響いてくる。それは鳴り続ける電話機だった、という場面から物語は始まる。そして舞台は現代に移り、何章か進むともう「エピローグ」になってしまう。まだこんなに厚みが残っているのに? しかしエピローグのあとも物語は続く。宇宙のすべてと時の流れを描ききるこの作品を読み終わると、ここにエピローグがあるのが正しいとわかるようになっているのだった。

生頼範義の重厚なカバー絵が描かれた角川文庫版を旅行に持って行き、飛行機の中で一気に読んだ。そして傑作に出会った喜びを得ることができたのだった。

こういう物語体験をするのもなかなか悪くないと思う。お暇を作ってぜひどうぞ。そしてもう新作を読めない寂しさをご一緒に。

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)